もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
アドラメレクは、ルカを睨む。そして混沌のオーラを高めながら突撃し、背中の曲がり棘を束ねてその胸を穿とうと振るった。
直撃し、威力がルカの背を突き抜け、地面を抉る。だが……当のルカは、ノーリアクションのままアドラメレクを睨み返した。
「その程度か……?」
「……!!!?」
ルカは剣を振って曲がり棘を切り払う。その際にアドラメレクも後退し、だが吹っ飛ぶまいと踏ん張った。
「次は、僕の番だ……!!!」
ルカは気を高めながら白翼を羽ばたかせ、ふわりと浮かぶ。その目が鋭くなり、姿が消失した次の瞬間だった。
アドラメレクの腹に雷のような速度の飛び蹴りが直撃する。身体をくの字に曲げ、蹴りが炸裂してる腹どころか全身をビキビキと軋ませた。そして、遅れて衝撃波がビリビリと大気を震わせ、地面をめくれ上がらせた。
「だぁあああっ!!!」
ルカはそのまま腰を捻って足を振り抜くと、アドラメレクは一瞬にして遥か後方にまで蹴っ飛ばされた。大地のあらゆる起伏にぶつかってゴロゴロ転がったかと思いきや、岩盤に激突し、それも崩落させてしまう。
「は、はははは……! あのアドラメレクが、子供扱いだ……!!」
「ルカ……いったい、どうなったの……?」
思わず、ルカに注目してしまうアリス達。
そんな時、崩れた地形から瓦礫をかきわける触手が出てくる。敵の攻撃を警戒したアリスとソニアだが、その触手には見覚えがあった。
「きゅっ!」
「ヌルコ!」
しかも、触手でヴィクトリーを巻き上げている。
「よかった、ヌルコ……!」
「よく無事だったな……何をしたんだ?」
「きゅ!」
アリスに聞かれたヌルコは、マキナの『電磁アーマー』を取り出す。どうやら、これでバリアを張って凌いだらしい。
ヌルコが無事なのは分かったが……ヴィクトリーは目を覚まさないままだ。
「この、
「きゅ……」
「みんなの怪我もついでに治すわ、『オールメガヒール』!」
ソニアの白魔法による癒しの波動が、アリス達を包む。
ルカは三人の方を見てから、アドラメレクの方に向き直す。すると、彼女の混沌の気が、瓦礫を吹っ飛ばしながら噴き上げた。
「ただちに、消去、する……!」
ほぼ全身に亀裂が入ったアドラメレクは、右手を天へ向ける。隕石を警戒したルカだが、すぐに違うと分かった。
彼女の手の中で、光と闇のエネルギーが渦巻きを描いて融け合う。それが何倍にも巨大に膨張し、見上げるほどのエネルギーボールとなった。混沌の力がこの場を席巻し、世界のカオス化が進行する。滅びゆく世界にトドメを刺さんとするそれを掲げ、ルカの方を凝視してきた。
「あ、あやつ……この世界を滅ぼして決着をつけるつもりか……!!?」
「お、終わっ……た……」
「きゅ…………」
絶望する、アリスとソニアとヌルコ。掲げられたエネルギーボールの力は、計り知れない。だが、この世界を消すには充分だと察する事が出来る。
しかし、それとは裏腹に──ルカは口角を吊り上げ、母親ゆずりの笑顔を浮かべながら気を解放した。
そんな時だった。不意にアドラメレクの背後から飛んでくる影が一つ。そして、彼女の背に抱きついて首を絞め、足に足を絡ませてホールドした。
「っ、っ……!!!?」
「また、タカをくくったなぁ!!」
「ヴィクトリーっ!!!」
「なっ、いつの間に!?」
「『瞬間移動』か!」
「きゅーっ!」
アドラメレクの大技に気取られていたルカ達も、これには驚く。
どうやら、気絶したフリをして今の今までずっと隙を伺っていたらしい。そして、大技を放とうとするアドラメレクを見てここぞとばかりに飛び出してきたのだ。ちゃっかり、ソニアの白魔法で傷も回復している。
「よっしゃあルカ、頼む!!!」
「ああ……!!!」
ルカは、その状態のまま気を高め始めた。
流石に想定外のアドラメレクは、本気で動揺の顔を見せる。そして、背中の曲がり棘でヴィクトリーに連続攻撃した。
「うっ、ぐ、ぅうぅっ、死んでも……離さねぇのは、知ってるハズだ……!!!!」
全身をズタズタにされるヴィクトリー。だが、決して力は緩むこと無くホールドし続ける。
ならばと曲がり棘を束ね、まるで翼のように羽ばたかせる。翼の役割も果たせるそれで、飛ぼうとしているのだ。
「考えたなこんちくしょう!!」
ヴィクトリーも、舞空術のその場に留まる力でどうにか踏ん張ろうとする。だが、アドラメレクもエネルギーボールを掲げたままにも関わらず抵抗してきて、右往左往してしまう。
ルカもそれを目で追いながら、歯噛みした。
「くそ……!!!」
今攻撃を撃っても、当たらないかもしれないし……最悪、ヴィクトリーに当たってしまう。そう思っていた時だった。
「舞え水晶……『パゴストゥリア』っ!!!」
唐突にアリスの声が、弾ける。次の瞬間、アドラメレクの翼にレイピアの三連打が叩き込まれた。しかもその刃には氷の力が宿っており、たちまちに翼は凍って動かなくなる。
「消去、消去……!」
ヴィクトリーの背後に、またあの球体が再出現する。急ごしらえに生成したそれはヒビと亀裂で不完全な状態だが、触手を展開しながら迫ってきた。
「っどっせぇええいっ!!!」
「きゅ────っ!!!」
だが、飛び出してきたソニアとヌルコの同時攻撃によりそれも破壊された。
アリスとソニアとヌルコが着地したのは、ほぼ同時。三人ともその場から走り、離れる。
「ね、ねぇアリス! まだヴィクトリーが……! っていうか、ルカはヴィクトリーごと攻撃するつもりなの!?」
「安心しろ、二人を信じるんだ!!」
「きゅきゅーっ!!」
話し合いながら、走ってその場を離れる三人。
とにかく、これでアドラメレクの逃げの手を全て封殺した。後はもう、決めるのみだ。
「やれ────ッッ!!! ルカ────ッッッ!!!」
ヴィクトリーは、ホールドしたままルカの名を叫ぶ。
ルカはそれに頷き、更に気を高め──
「…………」
本当は、自らの母の名を冠する技を放ちたい所だが……それは、今の状態で扱うにも不完全になってしまう。ならば──この技で、決めさせてもらう。
それは、友の技。それは、何度も自分達のピンチを救った技。それは、この世界で奮闘したヒーローの技。この技で、ラ・クロワやここで戦った戦士達の無念を晴らす。
「か、め……!!!」
手を合わせ、そこに全身の気を集約する。そうしながら合わせた手を、腰の辺りに構えた。
「は、め……!!!」
腰の辺りで合わせた手の間から、光が現れる。膨大な気がその手の中で凝縮し、充実し、強大になっていく。
そして──
「波──────ッッッッ!!!!!」
咆哮の後に、凄まじい閃光。開きながら突き出した両手から、無数の粒子と共に青白く膨大なエネルギーが飛び出す。それが、凄まじい速度でアドラメレクを目指して飛翔した。
そう、ルカはヴィクトリーの技でもある必殺技……『かめはめ波』を、放ってみせたのだった。
「■■■■■■■■■■■■……!!」
進退窮まったアドラメレクは、ヴィクトリーにホールドされたままエネルギーボールをぶん投げる。
膨大なエネルギーが地上を焼き付くさんと、落ちてくる。それに対し、ルカの『かめはめ波』が対抗するように飛び……二人の技が、激突したのだった。
衝撃波が巻き起こり、この世界に残った全てが吹き飛ばされそうになる。二人の技は、互角に押し合うかと思われた時だった。
混沌のエネルギーボールの方に、青白い亀裂が入る。禍々しい色のエネルギーが、内側から青白く漂白され──打ち砕かれたのだった。
そして、アドラメレクに向かって『かめはめ波』が迫る。押し負けた彼女は尚も抵抗しようとするが、ヴィクトリーはガッチリとホールドしたまま離さない。
このままだと、ヴィクトリーもかめはめ波に直撃してしまう。もう既に、高速移動で避けれる距離では無い。だが、彼は臆することなくギリギリまでアドラメレクを拘束し──
「あばよ!」
そう言い、密着した状態から『瞬間移動』で自分だけ消えた。
残されたアドラメレクに、既に避ける術は無かった。
直撃し、青白い気の奔流に飲み込まれ、膨大な気に為す術なく体が削れ融ける。
「だだ……だ第二種だだ断界せ……せせ……しょ……消去……かかか……ソ…ア、あと……か…た……」
そう言い残し、その体が完全にエネルギーに融け消える。そして、とんでもない閃光が迸り、この世界全土を揺るがす程の大爆発が巻き起こったのだった。
「ははっ……!」
ヴィクトリーは金髪から黒髪に戻り、ルカの方を見て笑顔を浮かべる。
「ハァ……ハァ……!」
ルカも、肩で息をしながら応えるように笑顔を浮かべていた。
その体から、あの熾天使の力は消え去っている。先程の『かめはめ波』に全てを込めたのだ。
「……っ、やった……! やったわ! ルカとヴィクトリーが勝ったんだわーっ!」
「きゅっきゅっきゅーっ!」
勝利に喜ぶ、ソニアとヌルコ。しかし、アリスはそんな二人の首根っこを掴んで走り出した。
「急げ、この世界の崩壊が迫ってる!!」
「あたたたたたっ!? わ、分かったわよ!」
「きゅーっ!」
走り出す三人。そんな彼女らの背後から、ルカとヴィクトリーが追い上げてくる。そして、五人一緒になって走り出した。
「ヴィクトリー、瞬間移動で脱出できる!?」
「無理だ! 今の俺じゃ世界間まで飛び超えられねぇ!」
「ハーピーの羽も使えないから、走って行くしかない……! もたもたしている暇はないぞ、走れ!」
「崩壊していく……ほんとに、世界が……」
「きゅ……」
崩れゆく世界を、五人で疾走するのだった。