もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「さて、余は事実上、魔王位を追われ……そして現在、三人の魔王が覇を競っているという」
続いてアリスが切り出したのは、複数人いる魔王の事だった。
「まずは母上、アリスフィーズ15世。魔王軍を引き継ぎ、正統な魔王に最も近い存在だ。母上はずいぶん前に失踪し、死亡したと思われていた……なぜ今になって復帰したのか、余には分からん。そして、余が追われた理由もな……母上が何を考えているのか、何も分からんのだ」
「それは辛いよね……なんで親って、ぜんぜん説明してくれないんだろう」
「お互い、親の背を追いかけるだけの立場は辛いものだな……」
ルカの共感に、アリスはしんみりと言う。
「……さて、話を続けよう。次に黒のアリス……かつてハインリヒに討たれた魔王が、生きていたようだ。歴代魔王の中でも最強クラスの力を持つというが……今のところ、大きな動きは見せていない」
「勇者ハインリヒの伝説に出てくる、暴虐の魔王よね? 下手したら、そんなのと戦う羽目になったり……」
ソニアが戦々恐々と言う中、ルカとヴィクトリーは何やら嬉しそうだった。
「腕が鳴るよね!」
「ああ、わくわくするよなぁ!」
そのまま男二人はガッと、力強く握手した。それを見たソニアは、ずっこけそうになる。
「鳴らないわよ! 私はあんたらみたいな勇者マニアでも戦闘狂でもないの!」
ソニアはそう言ってから溜息をつく。
「そう言えば、小さい頃……勇者ごっこで、私が黒のアリス役をやらされてたんだっけ……」
「言うまでもないけど、僕がハインリヒ役ね。でも、ソニア扮する黒のアリスに勝てた事はなかった……ただの一度も勝てなかったんだ……」
「それ、私が悪いの……?」
「ええい、思い出話をしている場合か! 三人の魔王の話に戻るぞ!」
危うくルカとソニアの思い出話に脱線するところだったが、アリスがそう言って話を進めた。
「そして次に、アリスフィーズ17世を自称するネリス……こいつに関しては、まったくの謎だ」
「あのネロって人と、繋がりがあった感じよね。なんか兄妹みたいな事を言ってたけど……」
「あいつらか……ネリスの奴、何で俺の好みのタイプ知ってんだ……?」
「そんな事知るか。その二人だが、その目的も素性も不明。ただ、両者ともに強大な力を誇る事は間違いない。そして、なぜか我々を手助けしてくれる……ずいぶん気紛れに姿を見せる感じではあるがな」
特に、精霊の森では助けられた。二人の助けが無ければ、あそこで冒険が終わっていた事だろう。
「悪い奴じゃ無さそうだよな」
「味方と言うには微妙な距離感だけど……」
「以上、三人の魔王が動いている。もしかしたら、我々と敵対する者がいるかもしれん……」
「今すぐどうこうって訳じゃないけど……三人の魔王にも、気をつけておいた方がいいね」
覇を競っているという、三人の魔王──その動向にも、注意を払わねばならない。
「……ヴィクトリー、次の話は貴様にとっては……」
「リリス三姉妹の事か?」
切り出そうと一応聞くアリスに、即答するヴィクトリー。その目で、遠慮は要らないと言っていた。
「……これまでの旅で、我々は奇妙な者達に会ってきた。世界の裏で、何やら暗躍している連中だ……」
アリスが切り出したのは、やはり暗躍する者たちの話題だった。
「リリス三姉妹は、聖魔大戦の頃に名を馳せた伝説の淫魔。その三人が復活し、世界を乱しているようだ」
「
「サバサの女王を操り、ラダイト村を滅ぼし……気紛れに暴れているわけではないようだが、目的は不明だ。そして、母上……15世とも裏で繋がっているらしい。以上を踏まえ、この三人は敵とみて間違いないだろう」
「…………」
意外なことに、ヴィクトリーは黙って話を聞くだけだった。だが、その目には確かに覚悟のようなものが宿っており、戦うのならば全力で相手をする……そう言わんばかりだった。
「それとは別勢力として、謎の熾天使も姿を見せている。シオンにグノーシス……いずれも最高位の天使だ」
「両者とも、第二世代の熾天使ですね。熾天使は三人いますが、その二人までが地上に現れるなど……」
「残り一人の熾天使も、地上にいるのかは不明だが……この連中と、リリス三姉妹は敵対しているのは間違いない。とは言え、敵の敵は味方だとは言えそうにないな……この天使達も、我々を快く思ってはいないようだ」
あわよくば、二陣営で潰し合ってくれたら万々歳だが……その時は、残った方がこっちの敵になるだけだろう。
「そして両者とも、世界の異変に関わっている節がある。間違いなく連中は、何かの計画を進めているのだ」
「この世界を、滅ぼそうとしているのかな……?」
「リリス三姉妹は、世界を救うのが目的と言っているが……それが事実なのかどうか、今のところ判断はできんな」
「……謎が多い奴といえば、俺の偽物もそうだな」
ヴィクトリーが、唐突にそう切り出してきた。
「……黒のヴィクトリーの事か。そう言えば彼奴も謎のままだったな。名前からして、黒のアリスと関連付けられるし……何より、奴の体からは魔王の力を感じた」
「積極的に敵対してる訳じゃないのが不気味ですね……時に我々の手助けをしているような事も言っていました」
「ヴィクトリーの偽物……だけど、何か別のものが混ざってるような感じがしたよ」
アリス、プロメスティン、ヒルデ……グランドールでヴィクトリーの面倒を見てくれた彼女らは、そう言って頭を捻る。
「ちっくしょ〜、あの時もっと根掘り葉掘り聞くべきだったなぁ。何で俺と同じ顔してんのかとか、
意味深な事ばかり言う黒のヴィクトリーだったが……噂話からしても、その力は間違いなく本物だろう。グランドールの件で株が下がったとは言え、やはり油断出来ない相手には違いない。
「……そうなってくると、分からないのはドミグラだね」
ルカが、そう切り出してきた。
「ドミグラか……ナタリアポートでヴィクトリーを助けたが、その正体は我々の前に度々立ち塞がる凶悪化した敵……その【凶悪化の魔術】の使い手だったな?」
「ああ……何でアイツがこの世界に来て、こんな事をしてんのかさっぱり分からねぇ」
ドミグラ……ヴィクトリーの世界からやってきた魔神。その力はやはり強大で、今もこの世界のどこかに居ると見ていいだろう。だが、彼もまた積極的に動くつもりはないらしい。
凶悪化も、ヴィクトリーの前に居る敵にしか起こらない現象だ。自分達を狙ってやってるのは分かるが、その目的は謎のままだ。
「ともかく、怪しい連中である事は間違いない。リリス三姉妹も熾天使達も黒のヴィクトリーとドミグラも、決して油断はできんぞ」
「ああ、注意しないとね」
奴らとは、また戦うことになるだろう。その時に備え、もっと強くならないといけない。
「最も分からん奴は、余をこの姿に変えた白兎だ。アリスを導く役割と自分で言っているが──」
話は、白兎の事になる。アリスを少女の姿へ変え、イリアス大陸に吹っ飛ばしたという……アリスからしたら、全ての発端とも言える存在だ。
「あの白兎を追って、私達は並行世界の存在を知ったのよね。やっぱり、私達を導いているのかな……?」
「うむ……結果的に、世界の危機を知る事となった。そこに、奴の意図があるのか?」
「当然みてぇに俺の事も何か知ってるみてぇだったし……ルカと一緒に世界を救えってよ」
「父さんからも言われてたよね……しかも、それを呪いっていうから気味悪いよね」
白兎に関しても、未だに謎だらけだ。今の情報だけでは、答えが出そうにない。
「今後も、奴が我々の前に現れるのは間違いないだろう。いつか捕らえて、皮を剥いでやらねばならんな」
アリスを導く白兎──その正体は、一体何なのだろうか。
「とりあえずは、話すことはこんな所かな」
「ああ、これからどうする?」
ルカとヴィクトリーが言い、アリスは頷く。
「この旅の最大の目的は……世界を救う事だ。世界に迫る破滅の危機を、なんとか防がねばなるまい。その大きな目的を果たすにあたり、やらねばならん事がある。まずは、残る4つのタルタロスの探索だ」
「ノア地方にひとつ、ゴルド地方にひとつ──レミナ跡にひとつ、そして大陸中心の巨大タルタロスですね」
「まずは、ノア地方のタルタロスだね」
タルタロスの探索──これは、最も優先すべき旅の目的だ。
「次に、ルカの父マルケルスを探す事だが……これは、タルタロスの探索と完全に重なったな」
「ああ……父さんは、異世界を旅していたんだ」
「何で俺を知ってんのかも、聞きてぇしな」
マルケルスを探す──それが、ルカの旅の理由。そのためにも、タルタロスを探索しなくてはならない。
「そして、残る二精霊との契約。ウンディーネはノア地方、サラマンダーはゴルド地方だな」
「次に行くノア地方にはウンディーネがいるんだよね」
精霊との契約──正史をなぞる事により、破滅の到来を遅らせることが出来るという。
「そして最後に……この世界のラ・クロワに会って、ノートを渡す事。ただしラ・クロワがどこにいるかは全く不明。行く先々で、情報を集めるしかないな」
滅びた世界から託された希望──それを、この世界に伝えなければならない。
「……まあ、こんな所か。やるべき事は、以上だな」
「やる事、いっぱいあるよね……」
「でもそうしねぇと、世界は消えちまうからな。頑張ろうぜ」
溜息を吐くソニアに、ヴィクトリーが言う。それに、アリスも頷いた。
「全ては最終的に収束する筈だ。世界の危機を打ち払うという、最大の目的にな」
「ああ……行こう!」
ルカは立ち上がり、皆に呼びかけた。
「次の目的地は、セントラ大陸北東のノア地方だ!」
「よっしゃあ、やろうぜ!」
ヴィクトリーも立ち、ルカの横につく。
「そろそろ、港町マールポートへの封鎖も解かれているはずだ。ラダイト村のすぐ北にある洞窟へ向かうとしよう」
アリスも立ち上がるが、少し難しそうな顔をして続けた。
「そこで船を入手し、海路でグランドノアに向かいたいが……戦時中の厳戒態勢、そう上手くいくかどうか」
「行ってみなきゃ始まらない! ここで悩むより、行ってやってみよう!」
ソニアも立ち上がって、ルカの横についた。
「うむ、その通りだ。さぁ洞窟を抜けマールポートに行くぞ!」
アリスもついて、一行は揃った。
「よし、出発だ!」
「きゅ〜っ! きゅ〜っ!」
「おーっ!!」
ラダイト村北の洞窟を抜ければ、港町マールポート。そこに向かい、なんとしても船を手に入れなければ。