もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ルカ、ヴィクトリー、ソニア、アリス、ヌルコ、プロメスティン、ヒルデ……勇者一行は、旅路を進む。
ラダイト村から北へ行き、その洞窟を超えた先……そこに、マールポートという港町があった。
この町は、『海軍』という海の治安維持隊の縄張りでもあるという。
「……その割には、なんだかゆるい雰囲気じゃない?」
ソニアは、町を見回してそう言う。
町の様相は、なんてことの無いのどかな港町といった雰囲気だった。屋台の商店が並ぶ通路に人が行き交い、海兵服を着た可愛らしいタツノオトシゴの魔物娘がその中に混じっている。
「とりあえず、港に行ってみよう。グランドノアへの船が出せるかどうか、聞いてみなければな……まぁ、十中八九断られるだろうが。大戦争の当事国への渡航など、そう簡単にいくまい」
アリスはそう言いながら、難しい顔。
「仲間に王様いるし、どうにか権力使って出せねぇか?」
「そうなると、もっと話が複雑になるんじゃないかな……戦争中の国に王様が行くなんて事になると、監視の目も増えるだろうし……」
ルカとヴィクトリーはそう話してから、とにかく港へ向かうのだった。
歩いている途中、やはり目につくのは可愛らしいタツノオトシゴの魔物娘。デフォルメされて、低身長で、おててには海兵らしくトライデントを持っている。
「オッス!」
「おっす、なのです! ただいま警備中なのです!」
ヴィクトリーが挨拶してみると、これまた可愛らしく返事してくれた。ソニアも、これには頬を緩ませる。
「わぁっ、可愛い〜!」
「海兵としての威厳は感じてくれないのです……」
海軍が占拠した町……と言えば聞こえは悪いものの可愛らしい彼女達はこの町の治安維持と発展に貢献している模様。その愛くるしさから、町のマスコットにもなっていた。
ただ実力は確かなもので、そこらの戦士なら倒せる程の力はある模様。見た目に惑わされてはいけないのだ。
そんな彼女らをよそに、港へ向かう。そして、大きな船の前に船乗りが居たので頼んでみることにしたが……
「グランドノアへの船だって? 冗談言うなよ、出てる訳ないだろ」
アッサリと、そう断られてしまった。
「そ、そう言うなよ〜! 頼むって!」
「無理なものは無理だ……あそこは今、戦争の真っ只中なんだ。民間船が許可なく行ける場所じゃねぇよ」
ヴィクトリーが粘るも、やはりダメ。どうやら、ただの船では行けないようだ。
「どうしても行きたきゃ……海上封鎖を請け負ってる海軍と、話をつけるしかないだろうな」
船乗りは言い、アリスも「ふむ」と呟く。
「やはり、そうするしかないか。この町に駐留している海軍の責任者はどこにいる?」
「マールポート総督なら、そこで魚を盗み食いしてるよ。バレてないと思ってるのが、可愛いよな……」
彼がそう言う先には、確かにたつのこ海兵が箱から魚をむしゃむしゃ食べている。
「役に立たなそうな総督ですね……」
プロメスティンがそう言い、ルカ達も目を点にして困惑。だが、あのたつのこ海兵に話を聞くしかない。
「ねぇ、ちょっといい?」
「はっ!」
ソニアに声をかけられたたつのこ海兵は、口に含んでいる魚を急いで食い、振り返る。
「バレちゃったのです!」
「何でバレてねぇと思ったんだ……?」
心底からビックリしている彼女に、ヴィクトリーは言う。だが、そんな事はどうでもいいと言わんばかりにアリスが前へ出た。
「貴様がマールポート総督だな。我々はグランドノアに渡航したいのが……」
「そんな重要な問題、たつのこにはどうにもできないのです……こう見えても、実際のところ一兵卒に過ぎないのです」
「いや、どう見ても下っ端の一兵卒だけど……」
「装備も変わらないしね……」
ソニアとルカにツッコまれる、たつのこ海兵……もとい、マールポート総督。彼女は、えっへんと無い胸を張る。
「総督の職務は、魚を食べる事と、厄介事を本部に丸投げする事なのです!」
「それは、天界並のお役所仕事ですね……」
「タイムパトロールとはまた逆だな」
タイムパトロールは、時の界王神から下請けのトランクスさんや自分達に仕事が行くシステムだ。いざと言う時は全員出張るが、面倒事は下っ端の仕事だ。
そんな事を思ってると、総督は手紙を渡してきた。
「そういうわけで、手紙を書きました。これを船番に渡せば、海軍本部への船に乗れるのです! 後の事は、本部にいる海軍大将に言って下さい。大将は、あたしと違って本当に偉い人なのです」
「おお、紹介状か!」
「ありがとう!」
礼を言うヴィクトリーとルカだったが、総督は食い気味に「ただし」と言ってきた。
「大将は非常に恐ろしい方……あの方を前にして、こんなに上手く行くとは思わない事です。それでは、あたしは本来の職務に戻るのです」
そう忠告してから、総督は魚の盗み食いに戻ったのだった。
「ともかく、これで海軍本部への連絡船に乗れるね」
「よーし、おーい船乗りさーん!」
ルカ達は、再び船乗りの所へ行く。そして、総督の手紙を見せた。
「おや、総督の手紙か……ふむふむ、海軍本部への渡航許可があるようだな。それじゃあ、海軍の連絡船に乗せてやるよ」
「ああ、サンキュー!」
「よし、乗ろう!」
ヴィクトリーとルカは、早速船に乗る。
「なんだかんだ、何とかなりそうね」
「きゅっきゅ!」
「そうかな……面倒な事にならなければ良いのだが……」
「船に乗るのは二度目ですね」
「ヒルデ、はじめて……たのしみ……」
ソニア達も、そう言いながら船に乗る。そして、海軍本部へ向かったのだった。
※
海軍本部へは、何事もなく着いた。
「さて、海軍大将に会いに行くとするか。大将は、そこそこ話の分かる者ではあるものの……今の我々は一介の旅人、すんなり認めるとも思えんな」
アリスの心配をよそに、ヴィクトリーは海軍本部を見る。
「はえー……でっけぇ建物だなぁ」
見上げるほどの、建物。軍の本拠地というより、王城のようなそれを見上げながらヴィクトリーは溜息を吐く。
「きゅっきゅ!」
「随分立派な組織なのね……警備してるのがたつのこ海兵っていうのが、ちょっと心細いけど……」
たつのこ海兵達は、真面目に警備したり、道の隅で寝ていたり、食料庫からめざしを盗み食いしていたり……とまぁ、少し頼りない印象。
ヴィクトリーとルカは、揃ってたつのこ海兵達を眺めた。
「人魚とかは居ねぇのか?」
「ああ、それなんだけど……町で聞いた話によると、人魚族の女王が招集をかけて、今は居ないみたいなんだよね。特に戦闘系のマーメイドは出払ってるみたいなんだ」
「それでこんなヤツらが警備してるのか……」
アリスも周りを見てから、ヴィクトリーとルカに向く。
「驚くなよ、二人とも。これでも海軍はある海賊から生まれた組織だ」
「えっ!?」
「海賊から海軍が!?」
いいリアクションの二人に、アリスは笑う。
「ああ……元々は『ジャスティ海賊団』という高名な海賊団から派生した組織だ。海賊団と言う割には海の治安維持に貢献し……それが時代と共に海軍という形を取ったのだ」
「はえー……組織に歴史ありだな……それにおめぇ、物知りなんだな」
「余は魔王だぞ。魔物や魔物が運営する組織の歴史はだいたい頭の中に入っている。勿論、海軍の大将がどのような者なのかもな……」
そう言われたヴィクトリーは、気の察知を行ってみる。すると、海軍本部の中……その二階から一線を画すような強大な気を感じた。
「……ああ、ワクワクするなぁ!」
「よし、行ってみようか!」
ルカとヴィクトリーは揃って先頭に立ち、アリス達を引き連れて海軍本部の門を潜るのだった。