もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
海軍本部の二階、その奥の部屋へ行くルカ。
「ここが海軍大将の部屋なのです! 失礼のないように!」
たつのこ海兵からそう言われ、部屋に入ると……そこには、巨大な海竜の魔物娘が鎮座していた。
「……む、来たか」
彼女はこちらに向き、見下ろしてくる。身長の関係上、ルカ達は見上げる事になった。
「オッス!」
「私が海軍大将にして、総司令官のリヴァイアサンだ。お前達の話は、マールポート総督から報告を受けている」
挨拶もそこそこに、話は本題に入る。すると、リヴァイアサンは槍をその手に持ち直し、ルカ達の前に歩いてきた。
「……あの、その槍は……?」
「他意はない、少し簡単な質問をするだけだ」
そう言いながらも、槍を持ったその姿が更に大きく見える。威圧がこの部屋を席巻し、彼女の圧倒的な力が嫌でも伝わってきた。
「グランドノアに、何の目的で渡航するのだ? この私の前で、簡潔に答えよ」
そう言うリヴァイアサンからは、凄まじい威圧が放たれている。この問いを間違えたら、殺される……そんな雰囲気すら感じられた。
「お、おいおいおい……ちょっと厳しくねぇか……!?」
「あ、あの……も、もしこの場に見合わない答えだったら……?」
「答えよ。グランドノアに、何の目的で、渡航するのだ?」
有無を言わさず、そう聞いてくるリヴァイアサン。だが、ルカには嘘をつく理由は無い。
「……世界を救うために、グランドノアに行きたいんです。どうか、お願いします!」
ルカはそう言って、頭を下げる。すると、リヴァイアサンも「ふむ」と言い……その威圧が収まり、納得した様子を見せた。
「なるほどな。実は、祝福なき勇者達に関する報告も私の耳に入っているのだ。お前達は、大いなる使命を背負い世界を旅している……その話に間違いはないようだな」
「ならば、話は早い。我々に渡航許可を与えてはくれんか?」
アリスが聞いてみるも、リヴァイアサンは難しそうな顔をして首を横に振った。
「しかし、使命を背負った勇者であろうと渡航は許可できん。それが、グランドノア女王との約定でもあるのだ」
「そこを、特例でなんとか……今ならこの男を性奴隷にしてもいいので……」
「オイ」
ソニアに差し出される、ヴィクトリー。だが、リヴァイアサンは顔をしかめた。
「その男は魅力的ではあるが、私は買収と特例は嫌いだ。買収は秩序を蔑ろにするものであり、特例は往々にして悪しき前例となる」
「あれ、いま俺褒められた?」
「オイ」
ヴィクトリーをしばく、ルカ。
「融通が効かないのですね……エデン様が言い出しそうな事です」
「おめぇ、ここぞとばかりに職場の悪口言うなぁ」
いきなり毒を吐くプロメスティンに、ヴィクトリーはツッコむ。
「しかし……海軍関係者とならば、話は別だ。海軍に属する者ならば、グランドノアへの渡航も認めよう。ちょうど今、実行直前の作戦があるのだ。それに参加するならば、特別に海軍特務将校の地位を与える」
「懸念はしていたが、面倒な雲行きになってきたな……」
リヴァイアサンの提案に、アリスは
「現在、注視すべき海賊団が存在する。お前達は、海賊女王ロザを知っているか……?」
「……ああ、知っている。その強さも……」
ヴィクトリーが、重い声で言う。
記憶の中の自分が、アドラメレクと戦った時……その海賊女王ロザは、自分と共闘してくれていたのだ。なので、その実力は思い知っている。
「す、すっごく有名な、昔の人魚の海賊団じゃないですかぁ〜!」
リヴァイアサンは少し疑問を浮かべたが、ソニアが重い雰囲気を断ち切るように言い、フォローした。
「まさか、ロザの海賊団と戦えって言うんじゃ……」
「いや……ロザの率いる海賊団は、とうの昔に解散している。ロザの謎多き失踪が原因だが、それはまた別の話だ」
リヴァイアサンはそう言ってから、改めてルカ達に向き直す。
「現在、おさかな海賊団なる連中が海を騒がせている。そこの団長は、ロザの子孫を自称しているのだ。小規模な海賊団だし、戦力はさほどでもない……が、ロザの子孫であるという風評は予測不能の影響力がある」
「要するに、組織が大きくなる前にとっ捕まえちまうのか?」
「そうだ、話が早くて助かる。この任務をこなした暁に、海軍の一員として迎えよう」
ロザの子孫を自称するおさかな海賊団を倒し、その身柄を海軍に引き渡す……それが、今回の任務らしい。
「我々は先を急ぐ身だ。海賊と遊んでる暇は無いのだが……」
「海軍の一員となれば、様々な支援が受けられるぞ。人員や物資も提供してやろう」
面倒事になるのを避けようとするアリスに、リヴァイアサンは言う。
「それ、結構お得じゃない? やろうよルカ、海賊退治!」
「海賊は世界を滅ぼすの? 世界を滅ぼすなら、ヒルデの敵……」
ソニアとヒルデは、何やらやる気になっているようだ。
「まぁ、海賊って時点でロクな奴らじゃねぇだろ。ヒーローとして、高く評価しねぇよ」
変な言い回しで、おさかな海賊団を批判するヴィクトリー。
彼の言う通り、海賊は海のロマンを追い求める者というイメージがあるが……メイン行動は略奪行為だ。放ってはおけないだろう。
「お前達の乗ってきた連絡船の近くに、軍艦が停泊している。戦闘の準備を整え、その艦に乗り込むのだ。おさかな海賊団の団長および幹部を逮捕できれば……約束通り、お前達を海軍の一員と認めよう。グランドノアへの渡航許可に加え、人員や物資も都合する。悪い話ではあるまい、活躍を期待しているぞ」
「…………」
さて、どうしようか。海賊団を退治すれば、ノア地方への渡航を認めてくれるという話だが──
「よっしゃあルカ、まずは外に出て考えてみようぜ。ほら、大将さんの仕事の邪魔になっちまうしさ」
「ああ……それでは、失礼します!」
ルカとヴィクトリーは、とりあえず外に出ることにした。
※
「でもさ、なんで海軍はそんなチンピラ程度の海賊に躍起になってんだ?」
「さぁ……?」
外を歩きながら、ヴィクトリーとルカは話す。
「いくらロザの子孫を名乗ってても、自称だろ?」
「うーむ、確かになまじ強い魔物が名前の影響力を使おうと騙るケースは多々ある。聞く限りだとそのパターンだと思えるな」
アリスも参加してきて、ルカとヴィクトリーは更に唸った。
「そういうのって、だいたい能力に裏打ちされてるもんじゃねぇのか?」
「いくら血統を騙っても、実力が無かったら見向きもされないよね……もしかしたら、もしかするかも……」
「……海賊女王ロザは、数多くの男を骨抜きにした事でも有名なのだ。気まぐれに子孫を残し、それがたまたま現代まで続いたというのも考えられる」
可能性がある限り、それを潰しておくに越したことはない……それが、海軍の意向なのだろう。
「わん! わん!」
そう話しながら歩いてると、唐突に犬娘がルカ達の所に来た。
「オッス! 何か用か?」
「こっち、こっちに来て! 会って欲しいヒトがいるの……」
犬娘はそう言うと、ダーッと走って行ってしまう。呆気にとられたルカ達だが、彼らを確認するように犬娘は「こっち! こっち!」と言っている。
「あの犬、会わせたい者がいるようだな。ついていってみるとしよう」
アリスに頷き、ルカ達はその背を追う。
すると、たどり着いたのは海軍本部の裏手……船着場。しかも、そこにこの場には見合わない人魚の姿があった。
「ほらほら、早くボートに乗って! 早くしないと、他の海兵が来ちゃうでしょ!」
錨のような得物を持った彼女は、海賊の格好をしていた。
「おめぇ、海賊か?」
「我々をどこに連れていく気だ?」
「だから、団長に会って欲しいんだって。話はあと、早く乗って!」
ルカ達は、有無も言わさないままボートに乗せられたのだった。