もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「……おさかな号へようこそ」
ボートから乗り継いだ船は、小さな海賊船。
そこで、青い肌で巨乳の、サラシを巻いた人魚が出迎えてくれた。
「あたしが、おさかな海賊団副団長のアシェルだ」
「おさかな海賊団って、討伐を依頼された海賊じゃない! ひょっとして私達、海賊に拉致されちゃった……?」
「やべぇぞ! 腹筋ボコボコにパンチ食らって、凌辱されちまう!」
「敵対行動……? ただちに敵船員を排除する……?」
構えるソニアやヒルデに、アシェルは手を向けて「待った」をかける。
「い、いや取引のために呼んだのだが……あんた、拉致って言葉にどんなイメージ持ってんだ……?」
アシェルに言われたヴィクトリーは、「へへへ」なんて言って誤魔化し笑いする。
「まぁいい、どうやらあんた達は訳ありのようだからな」
「ふむ……あの犬は、おさかな海賊団のスパイだったということか。それで、我々を懐柔して仲間に引き込もうと言う魂胆か?」
アリスに言われたアシェルは、頷く。
「そんなところだ。とにかく、お嬢……うちの団長に会ってやってくれ」
急かす彼女に、ルカとヴィクトリーは頭を捻る。勇者として、ヒーローとして、海賊に手を貸すことに迷いがあるようだ。
「でも、海賊みたいな悪事を働く連中に協力なんて……」
「そうだ、俺はヒーローとしておめぇ達を高く評価しねぇぞ」
「……あたし達は、罪のない民間船を襲ったりはしないよ。奪うのは同業の海賊や、密輸業者なんかの犯罪者だけさ。正義の海賊団なんて、気取った事は言いやしないが……お天道様に背を向けない、ってのがあたしらの掟さ」
「義賊っちゅうわけだな」
「しかし、言葉だけでは信用出来んな」
おさかな海賊団の行動指針は分かったが、まだ実態は分からない。そう思って警戒を続けるルカ達だが、アシェルは調子を崩さなかった。
「ついでに船内を案内するから、見て回るといい。本当に討伐の必要があるのか、その判断もすりゃいいさ……」
そう言われ、船の上で自由行動させられる。
海賊船と聞き、ガラの悪い魔物娘が囲んでくるものかと思ったが……どうやら、そんな雰囲気では無い。むしろ、可愛い低身長のマーメイド達がきゃいきゃいと海賊ごっこを楽しんでいる……そんな雰囲気だ。
「でも、この大砲は立派なモンだぜ?」
ヴィクトリーは、大砲のひとつをポンポンと叩く。重厚な鉄の筒……それは、放てば凄まじい威力を誇るのが分かる。周りを見ると、同じものがあと三つ……合計、四門の大砲が構えられていた。
「その辺は、しっかりと海賊なんだな……」
ルカがそう言って感心するが、アシェルは溜息を吐く。
「それは偽物だ」
「はっ?」
「本物の大砲はあれだけだ」
呆気に取られるルカとヴィクトリーを前に、左舷後ろの大砲を指す。それを、せっせとメンテナンスしているマーメイドがいた。
「ほ、ホンモノはあれだけなんです!?」
「ああ、一門しかないからメンテを欠かせてない。いざと言う時に撃てないと困るからな」
困惑する、ルカとヴィクトリー。
ソニアは甲板後方に犬娘の姿を見かける。ルカ達をここに導いた、あの犬娘だ。
「わん!」
「この子も、ここの海賊団なのね」
「ああ、スパイとして訓練している。多くのスパイ技を教えこんでいるぞ」
「多くのスパイ技……例えばどんなのがあるの?」
「……潜入がバレそうになったら、メザシを渡したりとか……」
アシェルが言いづらそうに言うと、ソニアはその時点で察して黙ってしまう。
「でも、犬娘のためのこういう救命具はあるのですね」
プロメスティンは、船の隅にある浮き輪を見て感心する。だが、それに対してもアシェルは言いづらそうにしていた。
「……それは、団長のための浮き輪だ」
「……海賊団の団長なのに、泳げないんですか……?」
プロメスティンも、流石にこれには困惑していた。
※
アシェルの案内は、船内に続く。
ヴィクトリーは、早速あるものに目をつけた。
「おい見ろルカ、牛がいるぞ! 船の中に牛が居るぞ!」
「ええっ!?」
「ひょっとして、食料……!?」
鉄格子の中で、「モー」と鳴く牛。それに驚く人間三人に、アシェルは溜息を吐く。
「いや、団長が愛着持っちまって捌けずにいるんだよ。おかげでタダ飯食らいさ」
呆れたように言うアシェルだが……ヴィクトリーは、少し笑顔を浮かべた。
「団長って、優しいんだな」
「まぁな」
アシェルも嬉しそうに、笑顔で返す。
「それにしても、船内だというのに環境も整ってて清潔ですね……」
ルカが船内を見回しながら言うと、アシェルは頷いた。
「船の事は大抵あたしがやっている。キッチンもあたしが担当してて、おかしら含めて船員を飢えさせた事は無い」
「おめぇ居なかったらこの船沈むんじゃねぇか……?」
「組織のナンバー2が、実質的な要となっているパターンですね」
ヴィクトリーとプロメスティンは、心配そうに言う。
この船は、もはやアシェルが生命線のような状態だ。むしろ、よくこんな状態で海軍に目をつけられたものである。
「中間管理職は大変そうですね」
「先代からお嬢を頼むって言われたからな。あたしがしっかりしないとダメなんだ」
「それは……余とたまものような関係だな。うーむ……」
感慨にふける、アリス。
そしてヴィクトリーは一足先に団長の部屋へ向かい、そこに鎮座する存在と向き合っていた。
「オッス! おめぇがおさかな海賊団の団長か?」
「にゃあ!」
「よっしゃあ、早速この船をかけて勝負だ!」
「にゃーあ!」
船長室に鎮座してるねこまたを相手に馬鹿な事を言ってるヴィクトリーの頭に、ルカの剣が叩きつけられる。
「すみません、馬鹿な子なんです……」
「……見ての通り、団長はあれではない。アレは単にこの船に勝手に乗ってるねこまただ。まぁ、ここに居ないと言うことは何処にいるかは分かる。ついてこい」
アシェルの案内で、ルカ達は食料保管庫に連れてかれる。
「もぐもぐ……」
そこに、食料をつまみ食いしている巨乳の海賊人魚がいた。彼女はすぐにこちらに気付き、振り向いてくる。
「これはな、違うぞ!」
「何が違うんですか、お嬢……もう今日のおやつは済んだはずでしょう」
「船長として、食料のチェックをしていただけだ!」
「往生際が悪ぃぞ」
バレバレの嘘をつく、船長。アシェルは溜息をつきながら、「まぁいいや」と許す。
「それで、何の用事だ?」
「ほら、例の海軍に選抜された討伐メンバーです」
「おお、お前達が噂の! あたしがおさかな海賊団のお頭、ボニーだ!」
元気よく挨拶する海賊団の団長、ボニー。
「きゅっ!」
「よろしくね……」
ヌルコとヒルデは言い、他のメンバーも会釈で返す。
「お前達の事も報告されている。海軍にそそのかされ、我らを逮捕しようとしているのだな!」
「まぁ、そういう約束だしなぁ」
「僕達はグランドノアに行かなきゃならないんだ」
ルカの言葉を聞いたボニーは、それに反応する。
「お前達、グランドノアに行きたいのか? それじゃあ、このおさかな号で送ってやってもいいぞ?」
「えっ? ならそれで問題解決じゃない? この船でグランドノアに連れていってもらおうよ!」
「……いや」
嬉しそうに言うソニアだったが、ここでアシェルが意義を唱えてきた。
「それじゃ太っ腹すぎますよ。こういう時は条件を付けるのが海賊ってもんです」
「そうか、そうだな……えっと、よし、あの計画を手伝ってもらおう!」
ボニーは、大きな胸を揺らしながら思いついた顔をする。
「ここから西の孤島に、大海賊の洞窟と呼ばれる場所がある。そこには、かの大海賊ロザの秘宝が眠っているのだ……その秘宝、ロザの末裔たる私が手にするべきだが、少し理由があってだな……海軍の厳重警戒地に指定されており、警備も厳しい。私達だけでは少し無理があるのだ」
「それで、我々に手伝えと……しかしそれだと、海軍に敵対することになるな」
アリスの言う通り……この条件を呑むという事は、海賊側につくという事。海軍か海賊か……どちらかにつかないと、グランドノアには行けない。
「さぁ選ぶが良い! 海軍の手先となるか、我らに手を──」
「ちょっと待ってください、お嬢」
ボニーは高らかに言うが、アシェルはそれを止めた
「ここで決断を迫ったら、色々と面倒でしょうが。海軍側につくって決めてたら、至近距離で斬り合いになります。そうなるとあたし達は無事で済まないし、船もメチャクチャになります」
「あっ、そうか……そうだな、うん。アシェルの言う通りだ、ここでは決断するなよ」
「やれやれ……」
ボニーのポンコツっぷりに、プロメスティンは呆れを隠せていない。
「そういうわけで、場を改める。元の場所に送ってやるから、そこで決めてくれ」
「お前達とは仲良くやれそうな気がするぞ。仲間として戻ってくる事を期待しているぞ!」
「…………」
アリスの懸念通り、やはり面倒な事になってしまった。