もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
洞窟に入るなり、海軍の兵士が待ち構えていた。しかも、三体もだ。
「この洞窟は海軍の管理下にあるのです! ただちに引き返すのです!」
二体のタツノコ海兵が、武器を向けながら言ってくる。口調は変わらないが、その声はマジの威圧が込められていた。
「あたし達は、おさかな海賊団だ! 海賊女王ロザの秘宝、渡してもらうぞ!」
ボニーが、武器を抜いて啖呵を切る。
「なんと、おさかな海賊の襲撃……!? 海兵の誇りにかけて、ここは通しませんよ!」
残る一体、ウミウシの魔物娘……ウミウシ海兵も、そう言って構えてきた。
「はぁあっ!!」
「どりゃあぁあっ!!」
「だぁあっ!!」
アシェルとルカとヴィクトリーの同時攻撃により、海兵隊はアッサリと蹴散らされてしまった。
「きゅう……」
「負けちゃいました……」
倒れる海兵達。ルカとヴィクトリーは、「これで本当に海軍を裏切ったことになるな」と言わんばかりの表情で目を合わせた後、道の奥へ向く。
「よし、奥へ進むぞ! ロザの秘宝を見つけ出すのだ!」
「この分だと、奥まで海兵でぎっしりだね……お嬢、うかつな行動は慎むんですよ」
「分かってるぞ、うるさいなぁ……」
自分が攻撃に参加出来なかったので、少しバツが悪そうに言うボニー。
「隙ありなのです!」
そんな彼女に、物陰からタツノコ海兵が来る。危ないと思ってヴィクトリー達が駆けつけようとするも、それより速くボニーは得物の巨剣を両手持ちし、振り向きざまの薙ぎ払いを放った。
「ぐえーっ!?」
それで、タツノコ海兵はぶっ飛ばされてしまった。
「ほら、この通り油断はしてないぞ!」
ボニーは、軽々と剣を振り払ってから鞘に納める。
「……お、おでれぇた、ただのポンコツ船長じゃなかったんか……!?」
一連の流れを見ていたヴィクトリーは、素直に驚いて言う。それに対し、アシェルとボニーは「ふふん」と得意気な笑みを浮かべて見せた。
「お嬢は戦闘力は確かだ」
「あたしはロザの子孫だからな! もっと頼るがいいぞ!」
「ああ、頼りになるよ」
そう言葉を交わし、奥へ進む。だが、海兵達やこの洞窟に元々住んでたであろう魔物娘達もここに来て、行く手を阻んできた。
「美味しそうな冒険者さん……」
「あはは、こんな所に来るなんてねぇ!」
海洋生物の魔物娘である、ダゴン娘。霊体のゴーストモンスターである人魂娘なんかが、海兵と協力してこちらを囲んでくる。
「おっしゃあ、波──っ!!」
ヴィクトリーは【かめはめ波】で敵を薙ぎ払い、吹っ飛ばしていく。
「吹きすさべ、紅蓮の刃!!」
ルカも、【紅蓮廻天斬】で敵の群れを薙ぎ払った。
「あの二人、やるではないか! おさかな海賊団のアタッカーに相応しいな!」
「おかしら、あたし達も負けてないって所を見せてやりましょう!!」
アシェルとボニーも剣を手に取り、次々に海兵や敵を倒していく。彼女らも、負けじと乱戦に対応しているのだ。
「ゴーストモンスターはヒルデとヌルコに任せて……キルリアンレンジ!」
「きゅっきゅきゅーっ!」
ヒルデとヌルコはマキナの【キルリアンレンジ】を作動させ、電磁フィールドを巻き起こしてゴーストモンスターを蹴散らす。
「怯まないのです! 一人を三人以上で囲み、袋叩きにするのです!」
指揮権を握っていたたつのこ海兵が、そう言う。すると、海兵達はフォーメーションを変えてきた。
可愛い見た目でも、戦闘慣れした海軍。統率力とチームワークは、半端では無い。
だが、戦闘慣れしているのは向こうだけでは無い。それが乱戦となると、尚更だ。
「そりゃあっ! どっせぇいっ! むっしゅめらめらぁ!!」
「きゅきゅっきゅーっ!」
ソニアとヌルコが背を合わせ、互いをカバーしながら危なげなく海兵の猛攻に対応していく。
「海軍とだけあって、数が多いな……!」
「元々ここに住んでたモンスターも、ルカさんとヴィクトリーさんが来たことで活性化しています。海軍がここを取り締まっていたのもありますが、こんな所に冒険者は滅多に来ないのでしょう」
アリスとプロメスティンも、互いに背を預けて対抗している。
「マスター、後ろを援護するよ」
「分かった……! ヴィクトリー、ボニーとアシェルの所へ!」
「おう!!」
ルカとヒルデが固まり、ヴィクトリーはおさかな海賊団二人の所へ翔ける。邪魔するものを殴り倒しながら二人の所に来た。
「おお、ヒーローの方か!」
「あの海兵を倒せば指揮が崩れるが、敵が多い……! どうにか火力のある技を繰り出して、一点突破できないか!?」
「任せなぁっ!! はぁああああ!!」
ボニーとアシェルの前でヴィクトリーは気を高め、ようやく
「うおおっ、金髪!? これが、ヒーローの【変身】か……!?」
「むむっ……!!」
「あだだだだだだだだ────っ!!」
ヴィクトリーはその状態で、気弾を連射する。敵に当たる度に爆発し、それが連続して群れは総崩れになる。
「うわーっ!」
「きゃーっ!?」
「こんなの聞いてないのですーっ!」
爆発、衝撃、そして戦塵と砂煙が舞って視界も悪くなる。
だが、そんな中を泳ぐように駆け抜ける影が二つ。アシェルとボニーだ。
彼女らは一気に敵の間を駆け抜け、そして指揮を出していたたつのこ海兵に肉薄する。
「……っは!!?」
爆煙を突き破りながら出てきたボニーとアシェルに、たつのこ海兵は驚いて止まってしまう。その次の瞬間、二人の同時攻撃が炸裂したのだった。
「ぐはーっ!?」
たつのこ海兵はぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられる。そして、「むきゅう」と言いながら目を回して倒れてしまった。
指揮役が居なくなった海軍は、大慌てで撤退する。野生の魔物娘もそれに便乗し、居なくなったのだった。
「……っ、ふぅ!」
「この場は何とかなったね……!」
ヴィクトリーは黒髪に戻り、ルカ達も武器をしまう。
「ふはははは! おさかな海賊団は止まらんぞ! この調子で進むのだ!」
「おかしら、まだ伏兵がいる可能性もあるので油断せずに」
元気よく駆け出そうとするボニーに、そう言うアシェル。
「む、むむぅ……ひ、引き続き警戒しながら進むのだ!」
鼻をくじかれたボニーはそう言い直し、ルカ達も頷いてそのあとをついていくのだった。
※
海兵や魔物をどうにか凌ぎながら、入り組んだ洞窟を上へ右へ左へと進む。
そうして、一番上と思われるフロアに辿りつき、そのどん詰まり……最奥へとやってきた。
「ロザの秘宝は、この先だぞ!」
「記録によれば、貴重な武器らしいよ。もしかしたらロザが使っていた代物かもしれないな……」
ボニーとアシェルは、元気そうに言う。
「武器かぁ、錆びてねぇか不安だなぁ」
「秘宝だから、多分大丈夫だよ」
ヴィクトリーとルカで話しながら、進むと……何やら、宝箱が安置されていた。
それを見たヴィクトリーは、ぎょっとした顔を見せた。
「げっ、宝箱か……」
「ヴィクトリー、すっかり宝箱がトラウマだね……」
「まぁあれだけ天丼したからな、無理もあるまい」
躊躇う様子のヴィクトリーに、ルカとアリスが言う。だが、おさかな海賊団の二人は違った。
「この洞窟にミミックの類は居ないさ」
「という訳で、遠慮なく貰うぞ!」
ボニーが宝箱を開ける。そこには『闇のサーベル』が入っていた。
「ついに手に入れたぞ! これが海賊女王ロザの残した秘宝、闇のサーベル!」
ボニーはそれを手に入れ、嬉しそうにする。
「でも……この剣、そこまで強くないって感じがしない? 確かに良い剣だけど、海賊女王の秘宝って割には……」
「確かに、今はちょっと強い程度の剣だが……しっかり鍛えれば、かなりの力を発揮する気がするな」
ソニアとアリスが武器を見てみるが、特段に強力な力は感じないとの事だが……
「長いこと放置してたから、力が萎んじまったんじゃねぇか?」
「なら、じっくり鍛え直さないとね。もしかしたら、見違える程の力を発揮するかも……」
秘宝の秘宝たる所以は、長い時の中で失われてしまったのかも知れないが……それも、鍛え直せば輝きを取り戻せるだろう。
「どちらにしろ、モノの品質自体は大した問題じゃないさ」
疑問に思うルカ達に、アシェルは言う。そして、得意気に『闇のサーベル』を振ったり構えたりするボニーの方に向いた。
「海賊女王ロザの末裔であるお嬢が、ロザの秘宝を手にしたという事実が重要なんだよ。この一件は、たちまち海賊達の間で広がるぜ。これでおさかな海賊団の名も、ますます上がるってもんさ」
「そうか、武器の継承か……」
「ああ……」
ルカもヴィクトリーも、それを聞いて納得した模様。
そうこうしてる内に、ボニーは満足気に納剣する。そして、ルカ達の方へ向いた。
「それじゃあ、凱旋だ! おさかな号に戻るぞ!」
「おう!」
無事に秘宝を手にしたボニー達は、ルカ達を連れておさかな号へ向かうのだった。