もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
海賊旗を奪還したおさかな号は、海軍本部から北上してノア大陸に辿り着く。
「あたし達はおさかな号のメンテナンスがある」
「しばらくはお別れになるぞ……あたしもおさかな号のメンテを……」
「団長はまたしばらく潜水訓練です」
おさかな海賊団の二人は、船に留まるらしい。
結局、いつものメンバーでノア大陸を進むことになった。
「ここがノア大陸っちゅうところだな……」
「それじゃあ、すぐそこに村があるからそこで小休憩してから進もう」
いつものメンバーを連れ、ルカとヴィクトリーを先頭に進むのだった。
※
たまに襲いかかって来るモンスターを蹴散らしながら進み、フィノアという村で軽く情報を収集し、少し腰を休めてから再び進み──その道中、グランドノアの城が遠くに見える所で日が沈みかけてきた。
「日が暮れちゃったな……ここらで、キャンプにしようか」
「おっしゃ、手伝うぜ!」
ルカは、野営の準備を始める。それに伴い、メンバーも盛り上がった。
「ふふ、今日は私が料理しようかなーっ!」
「きゅきゅーっ」
珍しくそんな事を言う、ソニア。だが、横からアリスが飛び出してきた。
「ダメだダメだ! ルカの料理がいい! ルカの料理がいーい!」
そう言って駄々をこねるアリスに、ソニアは少し引き気味に苦笑いする。
「やっぱあいつ、精神まで子供に戻っちまってるんじゃねぇかな……」
「…………」
とにかく、野営の準備をするのだった。
※
「ご馳走様でしたーっ!」
ルカの作った飯を食い、皆で寝るまでの間を過ごす。誰かと話したり、焚き火に身を寄せたり、その辺をうろついたり……思い思いに過ごす中、ヴィクトリーはルカとアリスとソニアとで焚き火を囲んでいた。
「それで、フィノアで得られた情報だが……グランドノア城では、近々コロシアムが開催されるが……」
アリスが、少しうんざりしたような感じで切り出す。
「コロシアム……っちゅう事は、天下一武道会みてぇな奴だろ!? っくぅーっ! 参加してみてぇなーっ!」
やはりヴィクトリーはそんな感じの反応で、体を疼かせているようだった。戦闘民族としてのサガか、こういうイベントになるとワクワクを抑えられないようだ。
というか、フィノアの村で話を聞いた時からこんな感じだったのだ。
「でも、まだ参加するって決まったわけじゃないよ……僕も気にはなるけど……」
「そうよ、私達は重大な使命のために冒険してるんだから……私だってそりゃ参加して、棍棒で敵をボコボコにしたいけど……」
「そっか……そうだよな……」
ルカとソニアの言葉を聞き、ヴィクトリーはがっくりする。
グランドノア城で開催される、コロシアム……はるばる遠い所から、あらゆる武道武術の達人たちが自慢の強さを競う夢の武道大会。
気になるのは山々なのだが、現状としてはそれに参加する理由がない。
「まったく、脳みそ筋肉め……そんなあからさまにガッカリするな。強い奴ならば、これから嫌という程戦うことにもなる。それより気になるのは、エスタだ」
アリスの言う通り……フィノアで得た情報は、これが重大なものになる。
エスタ……ノア大陸のタルタロス近くの街だが、ある日突然に住民が一人残らず消えたという所だ。
「……やっぱ、その状況って」
「ああ……ルビアナによく似ている」
ルカが言い、アリスも返す。
思えば、あそこも突如として住民が一人残らず消えたゴーストタウンだったか。今回行くエスタと状況が似ており、もしかしたら何かしらの糸口が見えるかもしれない。
「だが、あそこはグランドノア城の管轄だ。恐らくは街の前には警備もあり、一般冒険者である我々は門前払いされてしまうだろう」
「そうね……色々と物々しい状況だから、尚更……」
ソニアの言う通り……グランドノアは、グランゴルドと戦争中だ。フィノアの村周辺は、大陸の隅とだけあって子供も多く平和だったが……城では戦える若い男は全て兵となってる状況だと言う。
コロシアムも、あくまで戦う若い男の士気を上げる為のイベントのようだ。
「そこで、グランドノア城にエスタの調査許可を交渉する」
「なるほどな……けど、城もそんな状態だから一般冒険者は入れないんじゃないか……?」
「一応、冒険者証明は出来るから国には入れると思うけど……」
「王様に謁見すんのは、ちょっと一筋縄ではいかねぇかもな……何か策とかあるんか?」
疑問を口にする人間組に、アリスは「フッ」と笑う。
「心配するな、何の策も持たずにこんな事を言う訳では無い……ポケット魔王城のある人間に協力してもらうことにした」
アリスがそう言うと、後ろから歩いてくる人影。人間組が目を向けると、そこに見覚えのある顔があった。
「久しぶりね、皆」
「サラ!」
ルカの呼んだ名の通り……なんと、ポケット魔王城からサラが来てくれたのだ。
「今回行くグランドノア城は、厳戒態勢により謁見が困難……それは、普通の冒険者の話ね。けど、私から直接交渉しておけば、話は変わるわ」
「けど、サラは女王様じゃ無くなっちまったんじゃ……」
ヴィクトリーの疑問に、サラは頷く。
「そうだけど……あの後暇を見てサバサに帰って、議員と話したのよ。それで、私がまた元首を務めることになったわ。サバサの国政には議会制と王制が同居してる、みたいな状況ね」
「それは、凄い話になってきたな……ますます前線に出すのを躊躇しちゃうよ」
「けど、これならグランドノア城で交渉できるわ……ここぞとばかりに王権を使うなんて、大胆ね!」
「そういう事だ……暫く、サラはまたパーティで共に行動してもらう事になる」
サバサの女王たるサラがパーティに入った事により、グランドノアでの交渉はやりやすくなっただろう。
「それにしても、サラも相当腕を上げたみてぇだな……」
「そうね……ポケット魔王城には剣士系のモンスターも居るから、それでかなり鍛えられたわ」
ヴィクトリーが気を感じてみると、サラはあの時より遥かに強くなっているのを感じ取った。ポケット魔王城の練兵所で、ずっと頑張っていたらしい。
「またサラと冒険できるのは嬉しいわ! 宜しく!」
「そうね……じゃあソニア、早速今晩は同じ寝袋で……」
艶っぽい笑みを浮かべながら、迫るサラ。ソニアは笑いながら「近い近い」なんて言って冷や汗を浮かべている。
「おっしゃあ、俺達も負けてらんねぇなぁ!」
「ああ、修行だ修行!」
ルカとヴィクトリーは、それぞれ修行しようとする。
「全く、男というのは……どれ、ルカ。精霊の力を活かした新しい技を教えてやろう。精霊の力を持たんヴィクトリーには……まぁ、少し『拳豪』の面白い技を教えてやる」
「ははは、そりゃ楽しみだ!」
寝るまでの間の特訓は、アリスの監修のもとに行われる。二人とも修行に励むが、ふとルカはヴィクトリーに向いた。
「ヴィクトリーは、精霊の力はいらないのか?」
「俺には既に
精霊の力に、
アリスも、頷いた。
「うむ……まぁ、ヴィクトリーにはそれがいいだろう。既に自身を強化する術を持っているのなら、無理にその引き出しを増やす必要はない……逆に貴様に足りんのは、生命維持の為の補助技だ。今までは仙豆でそれを補っていたが……残り少ない仙豆を少しでも温存しておけるように、この技を覚えておくがいい」
「ああ!」
「僕も負けないぞ……!」
アリス監修の二人の修行は、寝る時間になるまで続くのだった。