もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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無謀な挑戦

「開始前に挨拶できなくてすまなかったな、俺はヴィクトリーってんだ」

 

 キュバの前に躍り出たヴィクトリーはそう言い、構える。

 

「ヴィクトリー……ふふ、いい名前ね」

 

 普通に話したその声は、艶がある。会話しているだけなのに、何やら舐め回されているかのような淫気に晒されているのだ。

 

「おめぇ、淫魔って奴か。それも相当強ぇみてぇだな」

「ふふ、夜のベッドではもっと凄いのよ?」

「そういう返しする辺り、エヴァと同類なんだな」

 

 ヴィクトリーはそう言い、気を解放する。そのまま蹴り出し、拳を振りかぶって突撃した。

 

 だが、キュバは手を突き出す。それだけで突風がヴィクトリーの全身を叩き、吹っ飛ばしてしまった。

 

「うぐぁっ!?」

「ヴィクトリー!」

 

 ヴィクトリーは、どうにか着地する。近くにいたルカが、横に駆け寄ってきた。

 

「ルカ……あいつ、相当やべぇみてぇだぞ」

(スーパー)サイヤ人のお前が片手で一発だからね……本当に挑むのか?」

「まぁな……それが俺だからな!」

 

 会話する二人を待つように、キュバは構えもせずに棒立ちになる。

 

 ヴィクトリーは額に指を当て、彼女の背後へ瞬間移動する。そして、拳の一撃を繰り出した。

 

 キュバは見向きもせずに、その一撃を掌で受け止める。

 

「くっ……!!」

 

 次にヴィクトリーはステップを踏んでキュバの側面を取る。そのまま強烈な蹴りを放った。

 

 しかし、それも簡単に防御されてしまう。

 

「だりゃあぁあああっ!!!」

 

 そんな事では勢いを落とさないどころか、更に加速するヴィクトリー。目まぐるしく高速移動を繰り返し、四方八方から格闘を挑む。だが、キュバはその猛攻を眉一つ動かさずに(ことごと)く防いだ。

 

「ヴィクトリーさんの攻撃、全て防がれてます!!」

「アドラメレクとの戦いの後、頑張って修行してたのに……こんな実力差……」

「きゅ…………」

 

 観客席のプロメスティン達も、思わず歯噛みしてしまう。

 

「当たり前だ……奴は、今のヴィクトリーが単騎で勝てるような相手じゃない……!」

 

 アリスも、腕を組みながら言う。この攻防を見て、キュバの正体を察したらしい。

 

「これでも、くらえっ!!!」

 

 痺れを切らしたヴィクトリーはキュバの背後に回り、渾身の【かめはめ波】を放つ。青白い気功波が彼女を背から飲み込み、大爆発が巻き起こった。

 

「はぁっ、はぁっ……!!」

 

 肩で息をするヴィクトリーの前で、爆煙がもくもくと舞い上がる。それが次第に晴れ、見えたキュバの姿は……まったくの無傷だった。

 

「なっ……!?」

「今のが奥義なら、あなたに勝ち目は全く無いわよ」

 

 次の瞬間、ヴィクトリーの股間にキュバの手が触れる。そこから【エナジードレイン】が炸裂したのだった。

 

「うぐぅうぅうっ!!?」

 

 ヴィクトリーは後方へ跳んで着地しようとするも膝を震わせ、跪いてしまう。

 

「あら……ふふ、イかなかっただけ大したものよ」

「はぁーっ、はぁーっ……!!?」

 

 キュバの手が股間に触れた瞬間、凄まじい快感が炸裂した。しかも、余韻だけで果ててしまいそうな感覚に陥っている。

 

「ねぇ、どうせならもっと気持ちよくイッてみない……? 手でしてあげるわよ? お口の方がいい? おっぱいを使ってもいいわよ? それとも、夜のベッドで……」

 

 キュバは、フードで顔の上半分が見えないながらも口を開けて舌を出し、マントから覗いてる胸の谷間を強調するポーズを取る。

 

 だが、唐突にヴィクトリーは勢いよく地面に頭突きする。予想外の行動に、キュバは言葉を止めざるを得なかった。

 

「っはぁあっ!!」

 

 ヴィクトリーの額が割れ、血が噴き出す。股間に疼いてる快感を、痛みでかき消したようだ。

 

「……大衆向けのコロシアムで血は御法度よ?」

「エロも大概だろ!」

 

 そう言うヴィクトリーに追撃をしようと走り出す、キュバ。

 

「くっ!! 僕が相手だ!!」

「あらぁ!」

 

 だが、ルカが飛び出して横から蹴りを放った。キュバは足を止め、当然のように(かわ)してしまう。

 

「っち……!!」

 

 ルカは、風の力を全開放する。荒々しい旋風が吹きすさび、猛スピードでキュバの周囲を飛び回る。

 

「へぇ、風の力を操るなんて……でも」

 

 キュバは、手を突き出す。すると、そこから突風が放たれて高速移動してる最中のルカを吹っ飛ばした。

 

「ぐあっ!?」

「そんな乱暴なだけの風じゃ、私を捉えることなんて出来ないわ……」

 

 吹っ飛ばされてる最中のルカは体勢を整え、着地する。そこから蹴り出して突撃し、キュバに剣を振り下ろした。

 

「えい」

 

 だが、彼女は指二本でその刃を挟み止める。柔らかく、紙でも摘むような動作なのに、刃がピクリとも動かない。

 

「なっ!?」

「ほぉら……」

 

 次の瞬間には、キュバの手がルカの股間を掴む。そこから【エナジードレイン】が炸裂した。

 

「ひゃあぁあぁあっ!?」

 

 ルカは情けない声を上げながら顔を歪め、剣を手放しヨロヨロと後退し、股間を抑えながらうずくまる。

 

「可愛い反応ね……もっといじめたくなっちゃう……」

「あ、あうぅぅ……」

 

 泣きそうな顔で悶えるルカに、手を振りかざすキュバ。だが、ルカの後ろからヴィクトリーが強襲してきた。

 

「!」

 

 ヴィクトリーの蹴りを防御しながら、彼の顔を見る。額の傷が、みるみるうちに塞がっている途中だった。

 

「まだまだぁああっ!!」

「それっ!」

 

 キュバは変わらず涼しい顔で、追撃しようとするヴィクトリーを受け止めてルカの横に投げ飛ばした。

 

「っくそっ!!」

「う、ヴィクトリー……!」

 

 ルカとヴィクトリーは、並んで歯噛みする。そして、ルカは目を閉じながら【瞑想】し、ヴィクトリーは気を額に集中させて治癒させた。

 

「ヴィクトリーさんの傷がひとりでに塞がりました! アレは……」

「余の教えた『拳豪』の技、【チャクラ】だ……一晩でモノにするとはな」

 

 興味深そうに言うプロメスティンに、アリスは答える。そして、苦しそうに続けた。

 

「だが、状況が好転したわけじゃない……ピンチには変わらんぞ……!」

 

 コロシアムの女王・キュバ……その実力は、やはり圧倒的。今のルカとヴィクトリーがどう頑張っても、勝ち目は無いように思える。

 

 そんな彼女は、ぬけぬけと笑っていた。

 

「噂に聞いた通り……流石ね、『祝福なき勇者・ルカ』と『赤のヴィクトリー』。ここまで相当の冒険を積んだのが分かるわ……きっと、コロシアムに参加した冒険者の中の誰よりも強いと思うわ」

「言ってくれるじゃねぇか……あと、偽物ベースで異名作んな

「でも、僕達は優勝しなきゃ意味が無いんだ……」

 

 治癒が終わって構え直す二人に、キュバは「クスッ」と笑った。

 

「でも、そんな二人をこんな早い段階で落としちゃつまんないわよねぇ……だから、今は見逃してあげるわ」

 

 そう言い、(きびす)を返して背を向けた。

 

「なにっ!?」

「逃げる気か!?」

「いいえ、ステージ上で私とルカちゃんチーム以外全員が落ちたら相手してあげるわ。それまでに勝ち残れなきゃ……ちょっと、失望して自分から場外に行っちゃうかも。私は適当に楽しんでるから、頑張ってね?」

 

 キュバはそれだけ言い残し、二人の前から消えてしまった。ステージから去った訳ではなく、高速移動で自分の戦いに戻って行ったようだった。

 

 呆気に取られるヴィクトリーと、剣を拾い直すルカ。

 

「アイツらしい、気まぐれな展開だな……二人の気持ちはどうあれ、危機一髪と言ったところか……」

 

 そう言いながら、息を吐くアリス。だが、横にいるプロメスティンが難しい顔をしていた。

 

「いいえ……安心するのはまだ早いです。先程のキュバの発言により、ルカさん達の場外によりキュバも場外に行くかもしれないという事になりました。周りのチームは同盟を組み、どうにか協力してルカさん達を落とそうと躍起になるでしょう」

「袋叩きだね……マスター、大丈夫かな……」

「きゅ……」

 

 そう言ってる間にも……肩で息をするヴィクトリーとルカの周りを、選手が囲む。

 

「……むしろ、この状況を乗り切れんと奴に挑む資格は無いと言えるだろう」

 

 アリスは、腕組みしながらルカ達を見る。そして、心配が無用な事を確信した。

 

 二人は怖気付く事無く凛然と立ち、構えていた。

 

「……何だか、すごい状況になっちゃったなぁ」

「ああ、ワクワクするよなぁ!」

 

 周りにいる選手を全て落とせば、またキュバと戦える……そう思うと、俄然と力が湧いてくる。

 

 サバイバル・オブ・グランドノアは、ここからが本番だ。

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