もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「聞いたか……あのパーティを落とせば、キュバも……」
「今の私達じゃ、キュバには絶対勝てないし……やるしかないわ……!」
「とにかく協力して、あの子達を落とさないと……!」
話を聞いていた周りの選手は、内々に同盟を組み始める。
「こいつら、プライドとかねぇのか?」
「言うなよ、ヴィクトリー……残念だけど、優勝を狙うならそれが一番手っ取り早くて簡単なんだから……まぁ──」
ルカは剣を構え直し、キッと目を鋭くする。
「──無理って点に目を瞑ればの話だけどね」
ルカの言葉を合図にするように、周りの冒険者がルカとヴィクトリーに殺到してくる。二人も気を解放し、迫り来る選手達相手に大立ち回りで次々にちぎっては投げを繰り返した。
「ルカ、ヴィクトリー! くっ……!!」
「安心しろ、あんな有象無象どもで勝てる相手では無い」
肩で息をするサラと攻防しているアーサーが、言う。
その後ろで、オーク娘とソニアが一撃をぶつけ合わせてから距離を取った。
「と言うか、あんな発言本気に捉えていいの……!?」
「ブヒ、キュバの自分から場外に落ちるという文言ですが……たぶん、本当にそうすると思いますよ。彼女は圧倒的な実力を持ちながら、例年の大会では一回戦か二回戦で自ら棄権する事があったので」
「そうだな……」
オーク娘の言葉に答えたのは、ケルベロスのシーザー。オーク娘が所属してる第二連隊の隊長だ。
「恐らくは、大会のレベルを見て自分に見合う選手が居るかどうか……その日の気分で真面目にやるかどうかを決めているのだろう……」
「なるほど……ルカとヴィクトリーは、彼女の琴線に触れてるって訳ね……!」
オーク娘とソニアは、再びぶつかり合う。
「……さて、あんな攻防何時間やっても無駄だ。そろそろ、この武舞台に相応しくない者は去って貰うか……!」
シーザーが、腰を低くして気を高める。三つ首それぞれから喉の奥から獣の低い唸り声を発し、その両腕に凄まじいパワーが宿る。
そのまま勢いよく飛び、ルカとヴィクトリーに腕を振りかぶった。
「!!?」
「『お手』かっ!!?」
二人は早急に反応し、その場から離れる。
標的を逃したその一撃だが、とてつもない威力でステージの真ん中が粉砕され、コロシアムを大きく揺らす。その余波で場外になってしまう選手も居た。
「ひ、ひえぇ……あんなん食らったら一溜りねぇぞ……!!」
「ヴィクトリー、攻撃は終わってない!!」
ルカに言われたヴィクトリーが構え直すより先に、シーザーは次の行動に出る。地面に埋めたその腕に青筋を立たせ、ステージを抉り持ち上げる。
「うおぉおっ……!!?」
「何をする気だ……!!?」
警戒するルカとヴィクトリー。周りの選手も、あまりの光景に固まっている。
シーザーはその岩石と化したステージの一部を、上空へぶん投げた。
「ッガァアアアアッッッ!!!」
シーザーは三つ首で、同時に吼える。重圧を伴った咆哮が衝撃波となって、ぶん投げたステージの一部に直撃し──その破片が、流星群のようにステージ全体に降り掛かってきた。
「うわぁああぁあっ!!?」
「きゃあぁあっ!!」
「に、逃げろ!! 命が惜しかったら逃げろーっ!!」
逃げ惑い、あるいは直撃し、あるいは衝撃波に押され、次々に惰弱な選手が脱落してしまう。
「白の奔流、堅固たる鎧となりて我等を守れ!! 息を吸ってぇ!! オールガァァァドッッ!!!」
ソニアがそう唱えると、ルカとヴィクトリーとサラに白魔法のバフがかかる。防御力を上げる【オールガード】だ。
「ソニア、ありがとう!! でも……!!」
「サラ、後は気合いで耐えて!!」
ソニアもサラも、得物を振ってなるべく直撃は避けて凌ぐ。
「くそっ!! なんちゅう技だ!!」
「うおおおぉおおっ!!」
ヴィクトリーは腕をクロスし、ルカは土の力を解放し……その場で二人は踏ん張り、全身に力を込めて耐える。
「ふふ、シーザーちゃんも張り切ってるわねぇ……」
キュバは何と棒立ちのまま高速移動を繰り返し、迫り来る破片を全て避けていた。
その他にも、逃げて場外へ行く選手、耐えきれずに場外へ飛ばされる選手、踏ん張って耐える選手……さまざまだったが、ようやく瓦礫の流星群が止んだ。
「……これで、相応しい者達が揃ったな」
瓦礫をかき分け、シーザーが出てくる。後ろからは彼女の率いる獣人娘達が控えている。
「相変わらず馬鹿力なものだな……」
アーサーも、自らの部下を引き連れて登場する。
彼女らの前には……ルカのパーティが、全員揃っていた。しかも、ソニアの【オールヒール】により全回復している。
「……どうやら、人間の選手はもう僕達だけみたいだな……!」
「グランドノアの精鋭たちだけじゃねぇ……手練の魔物もそこそこ生き残ってる……!」
「これは……ちょっと、ピンチって奴かしら?」
「ええ……けど、まだ焦るには早いわ!」
惰弱な選手が
「お覚悟、おさかな海賊団!!」
「生き残って早々だけど、落ちてもらうわ!!」
唐突にそう言って急襲してくる魔物達。
だが、その間に雷が落ちて彼女達を阻んだ。
「うわあっ!?」
「きゃっ!?」
「えっ……!?」
ルカが振り返ると、そこにはイリアスの姿があった。
「イリアス様!」
「助けてくれるんか!?」
「……私のパーティは、もう私以外残ってませんからね」
イリアスが場外に目を向けると、そこには彼女の仲間であるスライム娘と犬娘が応援していた。スライム娘の方も、さっきの瓦礫流星群で落ちてしまったらしい。
「ただ、勘違いしないでください! 貴方たちがあそこの
イリアスはそう言い、魔力を解放して魔物達に突撃する。
戦況を見ていたプロメスティン達は、この状況に唸っていた。
「イリアス様、ルカさん達を信用しているみたいですね……」
「笑ってやりたい所だが、仲間も全滅して顔見知りもルカ達だけとなると……悔しいが、余も同じ判断をするだろう。それよりも、ルカ達とグランドノアの精鋭か……」
「4対8……数で言えば、圧倒的に不利だけど……マスターなら、大丈夫だよね?」
「きゅきゅきゅっ……」
やはり、戦況はややピンチのように思える。アリスは腕を組んで考える。
「……グランドノアの精鋭を倒す事自体は出来るとは思う。だが、その後にキュバが控えてるとなると、そこまで体力が持つかどうか……」
「あの四人のチームワークを信じましょう」
やや不安のアリスとプロメスティンが見守る中、ルカ達はアーサーとシーザーに向く。
「それにしても……こんなオイシイ状況にしちまってもよかったんか?」
「なに」
得意気に言うヴィクトリーの言葉に、シーザーが反応する。そして、ルカが納得したように笑った。
「ああ、確かに……これで負けたら、君達言い訳出来ないもんね?」
揃って笑うルカとヴィクトリーに、アーサーとシーザーは目を鋭くする。
「オスガキという奴か……勝ち気な男は嫌いではないぞ」
「そっちこそ、言い訳は考えてるのか?」
二人はそう言いながら体から気を滲ませ、歩み寄ってくる。彼女らだけではなく、その部下も後から来ている。
「よし、やるわよ……!」
「全力を尽くすわ……!」
ソニアとサラも気合いを入れ直し、構える。
「よし、いくぞ!!」
「ああ、フルパワーだ!!」
ルカとヴィクトリーは気を解放し、その場から蹴り出して突撃する。
「一時共闘だ、アーサー!」
「足を引っ張るなよ、シーザー!」
アーサーとシーザーも気を解放し、地面を蹴る。
そして、両陣営は激突するのだった。