もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
魔導学園を進むルカ達は二階への階段を上がり、大きな気を感じる方へ走る。そして遂に学園長室に辿り着く。
「……!!!」
ヴィクトリーは目を見開き、学園長室に居た者を凝視した。
「おや、まさかここまで辿り着くなんて……」
呑気な様子でそう言うメフィスト。その横に──
「メフィスト……それに……!!」
「リリス……!!!!」
──ヴィクトリーの怨敵であるリリスが、立っていた。
忘れもしない、ラダイト村を壊滅させた三姉妹の一番上の姉。ヴィクトリーと約束を交していた少年を、その手で殺した張本人。
「おや……こんな所で会うなんて……ちゃんと噛み締められましたか、『ヒーロー』?」
その言葉に、ヴィクトリーは青筋を立ててギリッと歯軋りをする。
「きさま……!!!」
「三姉妹の
アリスはメフィスト達にそう言いながらも、飛び出そうとするヴィクトリーをさりげなく押さえる。
「グランドノアをメフィストが動かし、その裏にはリリス……背後で糸を引いていたのは、アリスフィーズ15世か!」
「その通り……私の主はグランドノア女王ではなく、魔王様ただ一人」
メフィストは、妖しく笑いながらそう言う。格好も相まって、その笑顔は不気味な雰囲気に包まれていた。
「リリス、お前もアリスフィーズ15世の手下なのか!?」
「我々は、今の魔王の配下という訳ではありませんが……同盟的な関係により、計画を支援しているのです……いいえ、正確には逆ですね。我々の計画を、魔王が支援していると言えるでしょう」
ルカの質問に、リリスは正直にそう答える。
「そこまで正直に話すということは……我々を、生かして返す気もなさそうだな」
「ええ、申し訳ありませんが……私とリリスを同時に相手にしては、生還は不可能かと」
「……ち……!!!」
ヴィクトリーは鬼のような形相でリリスを睨み、握り拳に力を込めながら歯噛みしている。怒りで我を失いそうではあったが、堪えていた。
「どうする、ルカ? ここはいったん退いて……」
ソニアが言いかけると、リリスはフッと姿を消す。そして、ルカ達の背後に現れた。
グランベリアと戦ってる時のアルマエルマ……それ以上かも知れない速度で、背後を取られたのだ。
「残念ですが、逃しはしませんよ」
「ぐっ、速い……!!」
「まだ……まだ、見切れねぇ……!!」
背中を合わせる、ルカとヴィクトリー。他の仲間も前後どちらかに向き、構えてはおく。
「そうですね……まずはあなたからです、『ヒーロー』。今の力を魅せてもらいましょう。期待外れなら……ああ、怖がらなくてもいいですよ。あなたが守れなかった、
冷たい声で、だが嘲笑うようにリリスは、ヴィクトリーに言う。
その言葉を聞き入れた彼は──腹の奥で密封していたドス黒いものが一気に沸騰する。今までに無いほどの怒りの感情が、グツグツと煮え滾っているのが傍目からでも分かるほどだ。
「……あの時、持てる力全てを使ってもアスタロトにも勝てなかったのに。少し毛の生えた程度のあなたがいくら怒っても──」
次の瞬間、リリスの顔面にヴィクトリーの鉄拳が叩き込まれる。そして、派手にぶっ飛んだ。
しかし彼女は至極冷静に体勢を整え、一回転しながら着地した。余裕を感じさせる軽やかな身のこなしに、アリスとヒルデが注目する。
「……ヴィクトリー、残念だが全然効いておらん!」
「瞬間移動でこの場から退却する事を提あ──」
ヒルデが言いかけてる途中……ヴィクトリーは一歩、また一歩と前進する。リリスはその前で、殴られた所を手で撫でる。
「……へぇ、やはり時間を置けばパワーアップするものですね。金髪にもなってないのにこの威力……まるで別人のようです」
ぬけぬけと言うリリスの前で、ヴィクトリーの腹の奥の密封が爆ぜる。そのドス黒いものは、剥き出しの心からの言葉となった──
「ぶっ殺してやる」
普段の彼からは考えられないような、低くドスの効いた声。言われた訳でもないアリス達も、背筋を震わせていた。
「まぁ怖い」
だが、リリスは笑ってそう返す。
やはり余裕。気圧された様子も無ければダメージもほとんど無く、ピンピンしている。
そんな時だった。
「ヒーローがそんな言葉使っちゃダメよ」
響く真剣な声に、ヴィクトリーはハッと我に帰る。
リリスも声のした方へ向くと、そこにはアルマエルマがいた。
「あなたは、確か……魔王を裏切ったという四天王、アルマエルマ!」
「ヴィクトリーちゃん、こいつの言葉を真に受けないで。今のあなたが戦うべき相手は、リリスじゃないわ」
「アルマエルマ……」
真剣なアルマエルマの言葉に、ヴィクトリーの怒りがシュンと収まる。
「あと……『殺す』なんて言葉、二度と言わないで。コロシアムで一緒に楽しんだ仲よ……ヴィクトリーちゃんに、そんな道は似合わない。歩んで欲しくない。だから……もう一度、自分が何の為に戦ってるか考えて」
「…………」
真剣に、だが優しく言うアルマエルマ。それにヴィクトリーも黙って、こくりと頷くだけだった。
「ふふ……知らないのですか? あのヒーローはサイヤ人という種族で……その本性は残虐にして野蛮なものですよ?」
「ええ、知らないわ。あの子はヴィクトリーちゃん。戦う事が大好きで、ルカちゃんの相棒で、カッコイイ道着のヒーローよ」
アルマエルマとリリスはそう言い合ってから、ぶつかり合う。恋人繋ぎのように押し合う二人だったが、リリスが力を解放するより先にアルマエルマが気を一気に高める。
「ぐっ!!?」
「ここじゃルカちゃん達の邪魔になっちゃうわ……場所を変えましょう!!」
アルマエルマはリリスを押し出し、壁を突き破って学舎から飛び出した。
「……よし、リリスの相手はアルマエルマに任せて、我々は……!」
アリスが、メフィストの方へ向く。彼女は、大人しく待っていてくれたようだ。
「リリスとの間で何があったのかは分かりませんが……少しヒートアップし過ぎですね。しかし、この状況は私にとっても都合が悪い」
一連の流れは、流石にメフィストにとっても愉快な状況では無いらしく、いつもの薄ら笑いが消えていた。
「上級生の皆さん、ここに来るように。勇者ルカの仲間の足止めを、少しでもするのです」
メフィストが言うと、学園長室の前に生徒たちが殺到してきた。しかも入り口付近で戦ったのより、魔力が熟達した上級生のようだ。
「くっ、ここまで数が多いなんて……!」
「しかも、さっきより手練よ!」
「こちらの人数が8人に対して、倍以上……人数差は、圧倒的に不利だよ」
「一人頭の練度はこちらが上です。囲まれないように立ち回りましょう!」
「きゅきゅ!」
ソニア、サラ、ヒルデ、プロメスティン、ヌルコは魔導学園の生徒達に向く。
ヴィクトリーとルカとアリスは、メフィストに向いていた。
「ほう、三人ですか。多対一ですが、私とて過去にはその名を鳴り響かせた妖魔──」
メフィストは、そこまで言って気を解放する。そのままローブと帽子を脱ぎ捨て、尾が二又になっているラミアの姿をさらけ出した。
「真の姿で、相手して差し上げましょう」
気を解放したメフィストは、凄まじい威圧感を放って杖を構えてくる。魔導学園の学園長とだけあり、その魔力も半端なものでは無いのが分かる。
そんな魔力がビリビリと肌を痺れさせる中……ヴィクトリーは、自分の頬を叩き、
「……
「おう、おかえり!」
「気を抜くなよ! 四天王には及ばんが、先代魔王の腹心だった妖魔だ!」
ヴィクトリーとルカとアリスが話し合い、メフィストに向く。
「あなた達の処遇、ずいぶんと意見が割れていたようですが……私の全責任をもって、ここに葬らせて頂きましょう!」
メフィストはそう言い、ルカ達に襲いかかったのだった。