もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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メフィストの"授業"

「勇者ルカ、赤のヴィクトリー、アリスフィーズ16世……葬る前に、私が戦いというものを教授しましょう」

 

 メフィストはそう言うと杖を向け、そこに魔力を集中させる。その魔力が熱を帯び、更に高まっていく。

 

「業火の息吹、灼熱の悪夢をもたらせ! 【ブレイズ】!」

 

 メフィストが唱えると、熱を帯びた魔力が巨大な火球となって飛んできた。

 

「おっしゃあっ!!」

 

 ヴィクトリーは両手の指を組み合わせ、ハンマーのようにして打ち返そうとする。だがその寸前にメフィストが指パッチンしたかと思いきや、火球は起爆した。

 

「!!!?」

 

 爆発に呑まれ、吹っ飛ぶヴィクトリー。

 

「うわっ……!!?」

「奴の魔法攻撃に正面から挑んではならん!」

「というより、普通避けるものですよ」

 

 驚くルカとアリスの背後に、既にメフィストが回り込んでいる。そして、二股になってるそれぞれの尻尾で二人を薙ぎ払った。

 

「くっ!!」

「ちっ!」

 

 ルカもアリスも、寸前で剣で防御する。だが、巨蛇である彼女の尾には筋肉が詰まっているらしく、防御する手が痺れた。

 

「なんて、パワー……!!」

「だが、ラミアにはこれだろう!」

 

 アリスは剣の先に冷気を纏う。そのまま突撃して冷気の剣による三連突き──【パゴストゥリア】を放った。

 

「っ、正解! 私のようなラミアには冷気が有効です!」

 

 メフィストはそう言いながら腕を交差し、どうにかガードする。

 

「ずいぶん正直だな!」

「あなたもそうでしょう?」

 

 追撃しようとするアリスの胸に、メフィストの杖が向けられる。そこから膨大な魔力が発せられ、それが冷気となった。

 

「なっ!?」

「【メガブリザード】!」

 

 メフィストの魔法がアリスの胸で炸裂し、彼女を吹っ飛ばした。

 

「ぐあぁあっ!!」

「うおぉおおっ!!」

 

 吹っ飛ぶアリスに入れ替わるように、ルカが剣を構えて走る。そのまま、メフィストに猛攻した。

 

 高速で上下左右を往復するルカの剣技を、メフィストはひたすら後ろに引きながら避け続ける。

 

「剣の長さはおよそ1.3m、身長と腕の機動性、踏み込んだ時の最大射程を加味し、その範囲は前方に扇状。この扇の中に入らない限りは当たりません」

「俺も居るのを忘れんなよ」

「はい、しっかり覚えています」

 

 後ろから蹴りで強襲してきたヴィクトリーに対し、メフィストは横に跳んで避ける。すると、標的を外した蹴りはルカに飛んでくる事になった。

 

「うわっ!?」

「ノームっ!!」

 

 ルカは踏ん張って土の力を解放し、ヴィクトリーの足を掴む。そのまま勢い付けて一回転し、メフィストへ投げ返した。

 

「素晴らしい連携! けど魔導師相手に真っ直ぐ突っ込むのはバツです」

 

 メフィストは杖を向け、魔力を集中させる。そして、魔力が雷となってヴィクトリーに殺到し、着弾と同時に爆発のような衝撃と電熱が巻き起こった。目にしみるような白煙が、視界を遮るように立ち込める。

 

「っだぁあっ!!」

「およっ!?」

 

 ヴィクトリーの足が白煙から飛び出し、床を這うメフィストの蛇体を踏みつける。そのまま出てきた彼は、既に【チャクラ】による身体の治癒を終え、拳を振りかぶってきた。

 

「これは答えにあったか、メフィスト先生!?」

 

 そのままパンチを繰り出したヴィクトリーだが、その拳が形になる前に蛇体が彼の身体を巻き上げる。

 

「なっ!?」

「はい、この通り」

 

 そのままメフィストは、アリスに目を向ける。そして、彼女目掛けてヴィクトリーをぶん投げたのだった。

 

「うぐぁあぁあっ!?」

「ぎゃあぁああっ!!」

 

 ヴィクトリーと衝突したアリスは、壁を破壊しながら吹っ飛ぶ。だが、二人で体勢を立て直して起き上がった。

 

「っちくしょう!」

「流石だな、戦い慣れしている……!」

 

 魔王の腹心……その実力の高さはさることながら、戦いの経験も今までの相手とは段違いだ。この世界の荒波に揉まれた古参のモンスターは、ほぼほぼ『生き残り』なんて表現しても差し障りないだろう。

 

 そんな二人の緊張など露知らず、メフィストは呑気に笑う。

 

「赤のヴィクトリーの赤は、赤点の赤なのですか? もう少し頭を使いましょう」

「あんにゃろ!! 偽物ベースの異名でバカにしやがって!!」

「落ち着け赤点のヴィクトリー!」

「誰が赤点のヴィクトリーだ!」

 

 ヴィクトリーとアリスが言い合ってる最中、メフィストは魔力を高める。それを見逃さなかった二人はすぐに向き直し、左右へ走った。

 

「そこだぁっ!!」

 

 土の力を解放したままのルカが、高い所から兜割りを放った。

 

 だがメフィストは尾二本を交差し、それを受け止める。そして、ルカに杖を向けた。

 

 直後、アリスの剣がメフィストの眼前にまで迫る。鼻先にまで迫っていた先端だったが、どうにか横に避けた。

 

「だりゃあぁあっ!!」

「!!!」

 

 避けた先に、蹴りを繰り出していたヴィクトリー。カウンターのように直撃し、メフィストは蹴っ飛ばされる。

 

「やるぞ、アリス!!」

「おうっ!!」

 

 ルカとアリスは、同時に手に魔力を凝縮させる。そして同時に手を突き出し、魔力を解放した。

 

「鉄槌の雷、魔を許さず! 滅魔祓邪(めつまふつじゃ)、響け轟雷!」

「凍てつく氷、冷たき嵐で滅びをもたらせ! 【メガブリザード】!」

 

 ルカは【滅魔の雷】、アリスは【メガブリザード】を放ち、それがメフィストに直撃する。轟音と衝撃と電光と冷気が巻き起こり、この学園全体を揺るがした。

 

「っ、やりますねぇっ!」

 

 手傷を負ったメフィストが、だがまだ元気な様子で爆煙から出てくる。そのまま杖を突き出したが、目の前にヴィクトリーが降りてきた。

 

「!」

「だりゃあぁあああ!!」

 

 格闘による猛攻を仕掛けるヴィクトリーだが、メフィストは距離を取って彼の射程距離外へ逃げ続ける。次々と繰り出される拳と蹴りのラッシュは避け続けられてしまうが、その間に気が高まっていく。

 

「どりゃあぁあっ!!」

 

 ヴィクトリーは床を蹴って水平に飛び、弾丸のような頭突きをメフィストの胸に当てた。

 

「ぐあっ!?」

 

 怯むメフィスト。そして、ヴィクトリーの後ろから疾風を纏って飛び出すルカ。

 

「【瞬剣・疾風迅雷】っ!!!」

 

 矢のように飛び出し、猛スピードの突きをメフィストに叩きつける。そのまま腰を捻って突き抜き、ぶっ飛ばした。

 

「ナイス連携! 今のは花丸ですよ!」

 

 メフィストはそう言いながら、体勢を整えて着地する。そして杖をしまい、何かを詠唱し始める。

 

「では、最終試験です……我が名を冠したこの魔法、凌いでみせなさい!!」

 

 合わせた両手に魔力が集約し、凝縮する。一目見てもヤバいと確信できるほどの、凄まじい魔法を撃つつもりだ。

 

「不味いぞ、相当な魔法が来る!!」

「ヴィクトリー、頼む!!」

「任せろ!!」

 

 ヴィクトリーは気を解放し、アリスとルカの前に立つ。そのまま踏ん張って腕を交差し、絶対防御の構えを取った。

 

「【メフィストフェレス】!!!」

 

 メフィストはおぞましい魔力を解放し、周囲を巻き込む大爆発波を放った。全方位に容赦のない魔力の奔流が、飲み込むもの全てを融かしていく。

 

「うおおぉおおおおおおっ!!!」

 

 そんなものを、ヴィクトリーは全身に気を纏って受ける。気ではカバーしきれずに魔力が肌を焼くが、そのそばから【チャクラ】を回して治癒する。

 

「ばぁあぁああああああああっ!!!」

 

 メフィストは、ダメ押しと言わんばかりに全力を込める。すると、一際強い魔力が壁のようにヴィクトリー達を飲み込んだ。

 

 爆発し、その衝撃で魔導学園中のガラス類が全て割れる。廊下で戦っていたソニア達も戦いを止めた。

 

「な、なに……!? 今の……!?」

「メフィスト先生の魔術だね……こわ〜……」

「見に行こうよ!」

 

 生徒達も戦いをやめ、学園長室へ行く。ソニア達もそれに続いた。

 

「ッッ、はぁっ……はぁっ……!!」

 

 メフィストは、何もかも吹き飛んだ学園長室で息を切らしながら爆煙に向いている。その煙が晴れると……ヴィクトリーは、腕を交差したまま耐えており、ルカとアリスを守っていた。

 

「な、なんと……私の最大の技が……!」

「へ、へへへ……!! 耐えきっちゃったもんね……!!」

「見たか、これが余のパーティの『ヒーロー』の実力だ!!」

「僕達も、反撃開始だ!!」

 

 反撃に出ようと踏み込む、三人。メフィストはそれを前にして、腕を振り上げた。

 

「──参りました、降参です」

 

 メフィストはその手に白旗を持っており、それを掲げただけだった。

 

 ヴィクトリーもアリスもルカも、それを見て三人揃ってずっこけてしまった。

 

「降参しちゃった!?」

「きゅきゅっ!」

「どうにかなったようですね……試験は合格と言ったところでしょうか」

「敵の残存体力は30%……確かに、普通の魔物なら逃げ出してるよ」

「でも、まだ何か企みがあるのかもしれないわね……」

 

 ソニア達も、呆気ない幕切れに驚くばかりだった。

 

「あはは〜! 先生の負けだ〜!」

「お掃除しなきゃ……ガラス類が……」

「え〜、めんどくさーい」

 

 生徒達も、メフィストの負けを認めて思い思いに解散し始める。割れた窓ガラスを片付けたり、自分の事に戻ったりと、さまざまだ。

 

「はい。全てを込めた技がこうもあっさり耐えられてしまうとは思いませんでした。肉弾戦では絶対に勝ち目が無いのはコロシアムを見て分かっています」

「い、(いさぎ)がいいな……!」

「……まぁ、降参って言うんならしょうがねぇよな」

「それじゃあ、グランドノア城に連行するぞ」

 

 アッサリと降参したメフィストを、ルカ達は連行する。

 

「今更、隠しだてなどしません。遅かれ早かれ、我々の干渉が露呈するのも折込み済み……」

「ふん、この後に及んで余裕綽々ではないか」

 

 メフィストも特に抵抗せず、大人しくルカ達についていくのだった。

 

「……アルマエルマとリリスはどうなったんだろうな」

「そうよね……二人とも強大な淫魔だから、そのぶつかり合いも苛烈を極めるんじゃ……」

 

 心配そうに言うヴィクトリーに、ソニアも言う。

 

「さぁな……今は、アルマエルマを信じるぞ」

「ああ、行こう!」

 

 ルカとアリスを先頭に、メフィストを連れてグランドノアへ向かうのだった。

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