もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
グランドノアから西に行き、そこの山間にある迷宮へ続く洞窟に着く。洞窟の中は入り組んでおり、更には襲ってくるモンスターがいるものの、ヴィクトリー達なら難なく進むことが出来ていた。
そうして洞窟を踏み越え、北上すると……件の廃城が見えてきた。
「ここか……ホントに廃城なんだな」
「こんな所ですきやきパーティなんて絶対嘘よ……」
ボロボロの城を見上げながら言う、ヴィクトリーとサラ。
「ふーむ、由緒ある城のようですが……これは、戦闘の痕? 少なくとも自然に劣化したものでは無いと見られます」
「うむ……何があるか分からん。警戒するに越したことはないな」
「ヒルデ、戦闘モードオンにしておくよ」
プロメスティンとシーザーとヒルデも言い、五人が城の入り口まで来ると……それを察していたかのように、扉が開いた。
「オッス!」
ヴィクトリーが挨拶をしたのは、なんとミノタウロス。だが、ただのミノタウロスではなく鎧に身を包んだ戦士型──ハイミノタウロスというらしい。
「あら……すきやきパーティに招待された方たちかしら?」
「おう、招待状も持ってる!」
ヴィクトリーがそう言って出した紙を、ハイミノタウロスは見る。拝見した彼女は納得した顔で、こちらに向き直した。
「確かに確認したわ、中へどうぞ!」
「よし、今すぐに真実を暴いてやる……!」
シーザーがそう意気込み、ヴィクトリーも廃城の扉を開けて中に入る。
そうして入った先で見た光景は……大人数のミノタウロスが、長いテーブルに並んで座り、すきやきを美味しそうに食べていた。まさに、ミノタウロスのすきやきパーティだった。
「って、本当にすきやきパーティなの!?」
「あ、ありゃ……ホントにミノタウロスがすきやき食ってるだけだ……」
「少し考えすぎでしたね……」
「すきやき……いい匂い……」
サラもヴィクトリーもプロメスティンも、呆然とする。ヒルデは、呑気にもすきやきの匂いに涎を垂らしていた。
「おい、これはどういう事だ!? なぜこんな所ですきやきパーティなんかしている!」
シーザーが、ミノタウロスの一人に言う。
「あっ、シーザー隊長! すきやき食べますか!?」
「おう、いただこう!」
だが、差し出されたすきやきを前にコロッと豹変して食らいついてしまった。
「いや食うのかよっ!」
「おいしそう……すきやき……」
ツッコむヴィクトリーと、美味しそうに食べるシーザーを見つめるヒルデ。
「うーむ……これって……」
「ホントにこんな廃城ですきやきパーティを開催して、それで夢中になって帰ってこなかったという訳ね……深く考えすぎて損したわ……」
拍子抜けしている、プロメスティンとサラ。
すきやきに夢中なミノタウロス達に、危害を加えられた形跡はない。ただ夢中になりすぎて戻って来れないらしいのだ。
「良ければ皆様もどうぞ、空きテーブルへ!」
「……そーいや俺腹減っちまった!」
「栄養補給……」
ハイミノタウロスに言われたヴィクトリーとヒルデはそう言ってテーブルにつき、サラとプロメスティンもやれやれと言った調子で彼に続いた。
そうして配膳されたすきやきを、皆で食べる事にしたのだった。
「こんな大量のメシ久々だぜ!」
「あら、美味しいじゃない……でも、ちょっとボリュームがあるわね」
「私は肉は食べないのですが、実験生物にあげるためにとっておきます。野菜だけでも美味しいですよ」
「むしゃむしゃ……おいしい……!」
「うまい! うまい! うまい!」
すっかりすきやきパーティを楽しむ一員になったヴィクトリー達だが……ここで、彼のサイヤ人としての体質が光った。
「おかわり!」
「ええっ!? まだ食べる気なの!?」
驚くサラの目線の先には、既に何杯ものすきやきの鍋がすっからかんになっている。
「ヴィクトリー、食いしん坊……」
「っていうか、明らかに胃袋の大きさ以上に食べてますよね……少し解剖して消化プロセスを見せてもら」
「はははははは! 獣人以上に食うのだな! 嫌いではないぞ!」
ヒルデもプロメスティンも驚き、シーザーは笑い飛ばしている。
「でも、そんなにおかわりしたら申し訳無いわ……」
「あら、そんな事無いわよ?」
心配するサラの後ろから、ヌッと新手のミノタウロスが来る。割烹着に身を包んだ、年増で水牛の下半身を有する『ミズタウロス』だ。彼女は、大盛りのすきやきをヴィクトリーの前に配膳した。
「はい、大盛りどおぞ! おばちゃん、いっぱい食べる男の子は大好きよ!」
「おーっ、ありがとなおばちゃん!」
「こ、こんな上物の肉をこんなに……本当にいいんですか?」
「ええ、お肉は牛魔王様の奢り……料理は私の気持ちよ。特に若い男の子が食べに来てるなんて聞いたら、張り切っちゃって……うふふふ……」
嬉しそうに笑うミズタウロス。ヴィクトリーを映しているその目は、少し艶がかって歪んでいた。
その視線にサラは寒気を感じ、ヴィクトリーは知らぬ風でひたすらすきやきにがっつく。
「おばちゃん、こっちもおかわりだ!」
すると、何やら元気な声が響いてきた。目を向けると、これまたすきやきの鍋が大量に重なっている。しかも食べてるのは、ミノタウロス族ではない、拳法着に身を包んだ女性だ。
「はいはーい! まぁ、こんなに食べて……! おばちゃん、とっても嬉しいわぁ!」
おかわりの声に応えるように、すぐにすきやきが用意される。それを見たヴィクトリーは、笑ってミズタウロスの方を向いた。
「おばちゃん、俺のもおかわり頼む!」
その声を聞いた拳法着の女性が、反応する。
「おばちゃん、俺のは二人前で頼む!」
そう言う彼女を、ヴィクトリーはチラ見する。そして、対抗するようにミズタウロスに向いた。
「おばちゃん、俺は三人前だ!」
「やっぱ四人前だ!」
「五人前頼む!」
「六人前!」
「七人前!」
「八!」
「九!」
ここで、ヴィクトリーと拳法着の女性が同時に立ち上がって睨み合った。
「「なんだお前やんのか!!?」」
いきり立って同時に言う二人に、シーザー達はずっこけた。
「ええい、こんな場で事を荒らげるな!!」
「同レベルの知能ですね……」
「もぉ、喧嘩はメッよ? 仲良く食べなさいな」
ミズタウロスはそう言いながら、十人前のすきやきをヴィクトリーと女性に配膳した。二人はそれを見て歓喜の笑顔を浮かべて食らいついてから、改めて向き合ったのだった。
「よぉ、よく食う奴だな!」
向き合ったその姿……頭には輪っかをつけており、拳法着の前ははだけて飾り付きのニップレスが貼られてる巨乳と鍛え上げられた腹筋を晒していた。
「オッス! おめぇもめちゃくちゃ食うなぁ! サイヤ人か?」
「いいや、聞いて驚け! この俺様こそ、斉天大聖こと孫悟空だ!」
箸を向けながら言う彼女に、シーザー達は驚く。
「な、なんだと……!!? 孫悟空!!?」
「せ、斉天大聖孫悟空って……神話の主人公じゃない!」
「そんな存在が、何で地上を歩いてるんですか……!!?」
孫悟空。どうやらこの世界にも存在しているらしく、目の前ですきやきをかっ食らっている彼女こそがそのようだ。しかも、シーザー達の反応を見るにその格はかなり高い。
「孫悟空……!!!? ひゃー、驚いたぞ! おめぇ、俺の憧れの人と同じ名前か!」
孫悟空と聞いたヴィクトリーは、それとは違う意味で驚いていた。
「ヴィクトリーの世界にも、孫悟空がいるの……?」
ヒルデに聞かれたヴィクトリーは、口の中のすきやきを飲み込んで水を飲む。
「そうだぞ、俺なんかよりずーっとずーっとずーっと強いんだ! その人の活躍見ながら育ったから、独特な喋り方とかも写っちまったんだ」
「そっちの孫悟空は、ずいぶん田舎っぽい喋り方なのね……」
「というか、自覚あったんですね」
そう話すヴィクトリー達の耳に、ガランと音が聞こえる。あの十人前のすきやきの鍋が、空になって置かれた音だった。
「ははは、そっちの異世界の方にも孫悟空が居るんだな! 戦ってみてぇなぁ!」
「おう、あの人と戦えるなんて戦士としてこの上ない名誉だぞ!」
ヴィクトリーも、大量に盛られていたすきやきをまるで蕎麦やうどんでも啜るかのように食い、空になった鍋を置く。そして、斉天大聖に向き直した。
「所で、仲間の反応見る限りおめぇかなり格の高い魔物だろ? なんでこんな所に?」
「ん? なんだお前ら、何も知らずにここに来たのか?」
斉天大聖はそう言うと、人差し指を上げて上を指した。
「俺は、この上に居る牛魔王を倒しに来たんだよ」