もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「ほ、本当に勝っちゃうなんて……流石ね、ヒーロー」
「サイヤ人……いや、ヴィクトリーさんはいつも我々の予想を超えてきます。観察しがいがありますよ」
「ヒルデ、最初からヴィクトリーの勝ちを信じてたよ」
仲間に言われるヴィクトリーは、笑顔のサムズアップで返した。
「ははは、いい戦いっぷりだったぜ! 赤のヴィクトリー!」
「その異名あんま好きじゃねぇんだけどなぁ……」
斉天大聖にも言われたヴィクトリーは、苦笑いで返す。
そして、改めて牛魔王に向き直した。
「よっし、これでミノタウロス達を解放してくれるんだよな!?」
牛魔王はそれを聞き、重そうに身体を起こす。そして、ヴィクトリーの方を見てから……ため息をついた。
「な、なんだよ! 納得してねぇんか!?」
「いや……戦いの結果には納得している。妾は少なくとも全力で戦い、そして負けた……それは良い。だが、ここで勝つにしろ負けるにしろ、野望というのは上手くいかないものだ」
「ん、どういう事だ?」
「……まさかとは言うが、すきやきの肉の為に全ての軍資金を投じたのではあるまいな?」
シーザーに言われた牛魔王は、頭を抱えた。
「そのまさかだ! こやつら、妾の遠慮なくバカスカ食いおってからに、もぉーっ!」
「わーっ、牛みてぇに鳴くな!」
「牛ですよ」
泣き出す牛魔王に、ヴィクトリーとプロメスティンが言う。
どうやら、牛魔王はミノタウロスを集う為のすきやきに金をかけすぎて軍資金が底を尽きてしまっていたらしい。これでは、ヴィクトリー達が来なくても野望は叶えられなかっただろう。
「凄かったな、すきやき王様!」
「おかわりくれ! ぎゅーすき王様!」
「ええい、帰れ帰れ! すきやきパーティはもう終わりだ〜〜!!」
牛魔王は泣きじゃくりながら腕をぶんぶん振って、そう叫ぶ。それに驚いたミノタウロス達は、ワーワー騒ぎながら解散するのだった。
「ありがとなー!」
「またご馳走してくれよー!」
どうやら、ミノタウロス達は純粋にすきやきパーティを楽しんだだけになったらしい。
依然として泣きじゃくる牛魔王に、彼女の配下のミズタウロスやハイミノタウロスが寄り添う。
「あらあら……泣いちゃったわよ……」
「これじゃ俺達が悪いみたいじゃねぇか……」
「破綻していたとはいえ、計画を潰した事には変わりありませんからね」
困惑しているサラとヴィクトリーの横で、プロメスティンは真剣に言う。
「しかし、事件の犯人が……ましてや牛魔王がこのような者だったとは……」
「まぁー、代が進めば高名な魔物も変わるものだぜ」
ヴィクトリー達と同じく困惑するシーザーに、斉天大聖は見慣れてきたかのように言った。
「牛魔王、大丈夫……? すきやき、食べる?」
気遣うヒルデに言われた牛魔王は、いっそう号泣した。
「もう、すきやきはこりごりだ〜〜〜〜!!」
※
かくして、ミノタウロス族連続失踪事件はこのような終わりを迎えた。
すきやきパーティは終わり、ミノタウロス達もグランドノアに戻った事だろう。
「あらあら、もぉ行っちゃうの?」
ミズタウロスが、名残惜しそうにヴィクトリー達にそう言ってきた。その後ろには、牛魔王やハイミノタウロス、その他の牛魔王の配下なんかも控えている。
「ああ、ミノタウロス達はグランドノアに戻ってくるだろうし……次の所のプランセクト村は、ちょっと急を要するかも知れねぇんだ」
「そうね、立ち止まってる暇なんかないわ」
ヴィクトリー達が次に向かう場所は、戦火が再燃したプランセクト村。植物族と昆虫族の戦争が睨み合い、一触即発の状況だという。
「ふむ、そうか……忙しい身の上なのだな」
「ああ、牛魔王はどうすんだ?」
ヴィクトリーに聞かれた牛魔王は、自分の根城であるミノタウロスの迷宮を見上げる。
「妾はもう暫くここに居るつもりだ。軍資金は無くなったが配下は居るから、その面倒を見なければな」
「もし良かったら、私たちの拠点……ポケット魔王城に来てみない? 牛魔王ぐらい体が大きくても、スペースは有り余ってるわよ」
サラがそう言って誘ってみたが、牛魔王は悩む様子を見せた。
「それは……妾がそっちの仲間になるという事か? まぁ実力で負けたから文句は言えんが……」
「いや、無理強いはしてねぇさ。全力で戦った仲だからよ、困ったらお互い様っちゅう事だ!」
ヴィクトリーの言葉を聞いた牛魔王は、驚いたような顔をしてから……フッと、笑って見せた。
「そうだな……前向きに検討しておこう」
「あはっ!」
一旦、牛魔王とはこれでお別れだ。その後を上手く行くことを願うしかない。
「それで、あなたはどうするんですか?」
プロメスティンが聞いた先は、斉天大聖。余ったすきやきを平らげ、ご満悦の様子だ。
「いや、それ妾のすきやき……」
「ああ……俺はいつも通りに、気ままにこの地上をブラつくさ。もしかしたら、今回みたいなすげぇ戦いに立ち合えるかも知れないからな!」
斉天大聖は、そう言ってヴィクトリー達とは違う方を向く。どうやら、仲良しこよしする気は無さそうだ。
「あ、そうそう……次にお前らが向かう先はプランセクト村とか言ってたか?」
斉天大聖はそう言って振り返り、ヴィクトリー達に向く。
「ああ、そうだけんど……」
「なら、一つだけ忠告してやるよ……トリとネコには気をつけておくんだな」
彼女は意味深にそう言ってから、自分の行く道に向き直す。それで、片手を振りながら「じゃーなー」なんて言いながら歩き去ってしまった。
「……トリとネコ……どういう意味でしょうか?」
「次に行く場所って、植物と昆虫の所だよな……?」
プランセクト村は、植物族と昆虫族が睨み合っている場所……それなのに、なぜトリとネコなんてものが出てくるのだろうか。
「まぁ、言ってみなければ分かるまい……次も私は付き添うぞ」
「ああ……次は、みんなで戦わねぇとヤバそうだしな……」
「ヒルデ、いつでも準備万端だよ」
とにかく、事件も解決した事だから一刻も早くプランセクト村に向かわなければならない。ヴィクトリーも仲間達も、お腹いっぱいにすきやきを食べたおかげで戦闘準備は万端だ。
「よし、じゃあ行くぞ!」
ヴィクトリーを先頭に、牛魔王達に見送られながら一行は歩き出すのだった。