もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
一旦グランドノアに帰ってから準備をして、西へ進むヴィクトリー達。ひたすら進むと一面の森が広がっており、その中心部には目印のように一際大きな木がそびえている。
「アレか……」
大きな木を見たヴィクトリーは、魔物の為に舗装されている道を歩きながら、呟く。
「それにしても、道が複雑ね」
「昆虫族と植物族の魔物の為の道なのでしょう、私達のように二足で歩く事を想定されていませんね」
サラとプロメスティンはそう言いながら、足元の悪い道を何とか歩き続けている。
「ヒルデなら、らくしょーだよ」
「私も問題は無い……それよりも、気になる事がある」
らくらく進むヒルデの横で、シーザーはそんな事を言った。そんな彼女に、皆は向き直す。
「気になる事?」
「ああ……植物や虫の匂いに混じって、獣の匂いがする。それも、かなり高位のな」
ケルベロス娘であるシーザーは、三つの頭で鼻を鳴らしてそう言う。
「高位の獣……斉天大聖が言ってた、ネコとトリっちゅう奴か?」
「かも知れんな……そうだとして、何故こんな場所に居るのだ?」
ヴィクトリーもシーザーも、ハテナを頭に浮べる。
疑問に次ぐ、疑問。今の獣道を踏む足取りのように、深まる謎に思考が引っかかるばかりだ。
「っていうか、口ぶりからして斉天大聖はその事を知ってたのよね……」
「これは……随分怪しいですね。恐らくは斉天大聖もその高位の獣も同じ所に所属していると見ていいでしょう」
サラとプロメスティンの言う通り……知っていたということは、少なくとも繋がりがあるという事になる。
「じゃあ、斉天大聖も敵だったの……? 敵なら、ヒルデが滅ぼすよ」
「何でおめぇはサイヤ人の俺より血の気が多いんだ」
何やら物騒な事を言うヒルデに、ヴィクトリーはビシッと言った。そして、顔を真剣な表情に上塗りする。
彼の気の察知が、周囲で反応しているようだった。
「……待てみんな、周囲に魔物の気を感じる」
ヴィクトリーの言葉で、皆に緊張が走る。そんな彼の横で、ヒルデは頭から「ピピピ」と鳴らしながら目を凝らした。
「ん……ヒルデのサーチにも引っかかってるよ。これは……敵性反応?」
ヒルデがそう言った時だった。
唐突に、植物のツルがドリルのようにうねりながら襲いかかって来た。
「あぶないっ!」
サラが一番早く反応し、それを剣で切り払う。そして、ツルが飛んできた方を睨みつけた。
「出てきなさい!」
「むぅ、どうやら手練のようですね……」
出てきたのは、アルラウネ系の魔物達。草花から菌糸類まで、様々な種類の植物の魔物が周りを囲んできたのだ。
「やっぱ戦争間近だからピリピリしてるんか」
「それ以上に、男が居るからだろうな」
「両方でしょう」
静かに構える、ヴィクトリーとシーザーとプロメスティン。サラとヒルデは、既に得物を抜いて周囲を見回している。
「こんな時にこんな場所にわざわざ来るなんて……貴方たち、もしかしたら昆虫族の回し者かしら?」
「いや、どっちでも構わねぇぜ! 女は養分として吸って、男は繁殖の為に生け捕りだ!」
そう言いながら襲いかかってくる、アルラウネ達。ヴィクトリー達も応じるように気を解放し、迎撃した。
「だりゃあぁああ!!」
ヴィクトリーは四方から迫り来るアルラウネ達を、格闘で制圧する。
「アオーンッ!!!」
シーザーは腕を地面に叩きつけ、大地が瓦解するほどの力で敵の群れを吹っ飛ばした。
「ヴィクトリー、その剣貸して! 投げてもいいわ!」
「ん、分かったぁ!」
サラに言われたヴィクトリーは、背中の剣をぶん投げる。
高速回転しながら飛ぶそれを、サラは難なくキャッチする。そして、自分の剣とで二刀流の構えを取り、敵の群れを見据えた。
「はぁああああっ!!」
咆哮しながら疾走すると共に、周囲の敵を次々に切り倒すサラ。二刀流による多方向攻撃で、群れを削っていた。
「皆さん、離れて下さい!!」
プロメスティンが、手の内で魔力を「ボボボッ」と発破させる。そのまま敵の群れに手を向け、指を鳴らし──【超熱輻射】による大爆発を巻き起こした。
「ヒルデも、全体攻撃するよ……! 【フルガトリング】!!」
ヒルデは両手でマキナの銃を持ちながら、体の節々から銃器を展開する。そのまま一斉射撃を開始し、敵を掃射した。
次々に吹っ飛ばされる、植物族の魔物達。ヴィクトリー達の圧倒的な猛攻に、集団が逆に押し返されているのだった。
「そ、そんな……!?」
「おいおい、こんな強い冒険者なんて……!!」
後退りを始める、アルラウネ二体。そんな彼女らの前に、ヴィクトリーが来る。
「まぁ、落ち着けって。戦ってもムダなことぐらい今ので分かるだろ? 出来れば俺も無為におめぇらを傷付けるような事はしたくねぇ」
「……ちっ!」
「それでも、今回ばかりは退けない!」
ヴィクトリーに、アルラウネ二体が襲い来る。ドレスのような白百合のアルラウネと背中に大きな花を有するアルラウネの二体が左右に迫り、攻撃してきた。ヴィクトリーも、格闘で防戦に徹する。
「おい、その口ぶりからして事情があるんだろ!?」
「何処の馬の骨かも分からん冒険者に話す義理はねぇぜ!」
ヴィクトリーの説得など、聞く耳持たず。アルラウネ達の猛攻は、激しくなるばかりだ。
「はぁっ!」
そんな時、ヴィクトリーの後ろからサラが躍り出てくる。そして、二刀流でアルラウネ達の攻撃を止めて見せたのだった。
「……っ!?」
「何処の馬の骨かも分からない冒険者……それが、サバサの女王だとしても?」
サラはそう言い、顔を上げて目の前の二人を見る。アルラウネ達は、動揺した様子を見せていた。
「さ、サバサの……女王……?」
「な、なぜこのような者と冒険を……?」
「こっちの身の上話は後で話すわ……そっちの様子を見るに、尋常ではない事は明白。それにここに来たのもグランドノアの王室からの依頼よ。どうかここを通して、アルラウネの女王と話だけでもさせて頂戴」
真剣にそう言う、サラ。鋭い眼光は、偉大を謳われた父親譲りのものだろうか。
アルラウネ達は少し話し合った後、臨戦態勢を解く。そのまま、道を開けてくれたのだった。
「グランドノアからの依頼を、ましてやサバサの女王本人が引き受けているとなると……ここは、通した方が良さそうですね」
「おい冒険者ども! 不審な動きを見せたら養分にするからな!」
「少し話すだけだっちゅーに」
警戒されつつも、襲撃は止まった。村への案内も、アルラウネ達がしてくれるようだ。
「ありがとな、サラ」
「大丈夫よ」
そう言葉を交わしながら、サラはヴィクトリーに剣を返す。
「村に近付いた者を、容赦なく襲撃するほど状況は切迫しているようですね」
「ああ……これは、一筋縄ではいかんかもな」
「敵が居るなら、ヒルデがやっつけるよ」
プロメスティンとシーザーとヒルデは、先頭を歩くヴィクトリーとサラの後ろについて行くのだった。