もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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プリエステスの憂鬱

 プランセクト村にやってきたヴィクトリー達。

 

 中央に大きな池があり、そこにアルラウネ族達が身を寄せあっている所だった。民家などは無く、村と言うより森の溜まり場だ。

 

 揺れる木々の音、香る自然、目を覆う深緑……いかにも、アルラウネ達が住むにはピッタリの環境だった。

 

「ここにもクィーンとかが居るんか?」

 

 ヴィクトリーは、何気なしに案内してくれているアルラウネに聞いてみる。彼女も「ああ」とは答えるが、少し事情がありげな表情。

 

「クィーンアルラウネ様は、今はご不在です。その理由も、行方も分かっておりません」

「だから、今はプリエステス様が代わりにここを統治してるんだぜ。次期クィーンは、あの方に決まってるも同然だしな」

「何か複雑なんだな」

「そんな時にこの戦争騒ぎなんて……災難ね」

 

 複雑な事情を抱えたまま、こんな騒ぎが起きてしまうとは……まこと、運の悪いことである。

 

「ああ、だからアリスフィーズ17世がこの地を平定した時は「ようやく休める」なんて言ってたんだけどな……客人として今から会わせるけど、正直話が出来るかどうか……」

「やべぇ状態なのか?」

「怪我ならば私が居ますし、そもそもアルラウネは癒しの術に長けた種族の筈ですが……」

 

 心配そうに言うヴィクトリーと、冷静なままのプロメスティン。だが、アルラウネは二人揃って溜息を吐いた。

 

「まぁ、やべぇ状態だな……」

「その目で見てもらった方が早いです……」

 

 そうして案内されるは、村の中央。綺麗な水が流れる大きな泉が、女王のスペースを囲んでいた。

 

 そのスペースは高貴なアルラウネらしく、玉座のように緑が生い茂り花が香る。そして、そこに座っているのは緑色の髪と生地の薄いドレスの、少し病んだ様子の儚げな雰囲気の少女だった。

 

「……ぷ、プリエステス様! お客じ──」

「はぁあぁあぁあぁあぁああああ〜〜〜〜〜…………また、面倒事ですかぁあぁああ〜〜〜〜…………」

 

 儚げな雰囲気はどこへやら。彼女は露骨に嫌そうに溜息を吐き、膝に手をついて頭をガクリと下げた。

 

「おいおい……」

「っていうか、憔悴(しょうすい)し切ってるわね……」

「肌荒れ、目の下のクマ、しゃがれた声……かなりのストレスに晒されてきたのでしょう。すみません、肉体的な怪我は治せても精神的な傷は私ではどうしようもありません……」

「大丈夫……?」

 

 心配するヴィクトリー達。だが、シーザーは毅然とした態度で彼女に向いた。

 

「心労、察するぞ……だが、我々は事を荒立てにここに来た訳ではない。今現在、この村は植物族と昆虫族が争ってると聞き、それを平定しに来たのだ」

「それは本当です……? ならば、一刻も早くこの騒ぎを終わらせて欲しいのですが」

「ああ、グランドノアの魔道顧問・メフィスト先生からの直々の依頼だぜ。とりあえず、何があったのか教えてくれねぇか?」

 

 ヴィクトリーも、シーザーに並んでプリエステスに頼んでみる。すると、彼女は少しばかり考え始めた。

 

 その間……彼女の後ろについていた食虫植物のアルラウネ達は顔を見合わせ、ヴィクトリーを見ていた。

 

「……あの男……」

「ええ、そっくりね……というか、同じね」

「でも、格好は赤よ……雰囲気も違うわ」

 

 ヒソヒソ話されてるヴィクトリーは、「ん?」と言って彼女達の方へ向く。

 

「オッス! どうかしたんか?」

「あら……」

 

 そんな彼女らの胸の内など知らず、あどけない表情で聞くヴィクトリー。それを見た彼女は、少しばかりの警戒を見せたが……プリエステスが、それを制止した。

 

「控えなさい、カナン三姉妹……貴女たちが好き勝手に動くと、私の胃袋の穴がまた一つ増えます」

 

 食い気味の本気の声に、カナン三姉妹も「はい」なんて生返事。

 

「何かつくづく大変なんだな……」

「早く解放されたい……いっそ、貴方を襲って責任を取らせて寿退社なんてことも……」

「追い詰められてるのは分かるけど、そんな事したらこの村の植物族はリーダーを失って崩壊するわよ」

 

 ジットリと言うプリエステスに、サラは厳しめにそう言う。

 

「サラ、ちょっと怒ってる……?」

「無責任なのが許せないだけよ」

 

 ヒルデとサラが話し、横に居るヴィクトリーは「ははは」なんて苦笑い。

 

「お、襲われねぇ内に解決しねぇとな……」

「そうだな、助力を頼む」

 

 真っ直ぐそう言うヴィクトリーとシーザーに、プリエステスは改めて向き直した。

 

「そうですね……アレは、ほんの数週間前の事でした──」

 

 

「私は太陽の蛇神、ケツァルコァトル。黒のアリス様の命令により、この地は私が支配するわ」

「ウニャー! あたしはネコのテスカトリポカなのニャ! みな、あたしのシモベとなるのニャー!」

 

 束の間の平和を過ごしていた村に、突如として奇妙な二人組がやってきた。蛇の下半身を有するハーピーのケツァルコァトルと、豹の下半身を持つ猫耳の少女テスカトリポカ。

 

 しかも、この二人は仲がいいという訳では無さそうだった。

 

「村の者達、そこのネコは無視しなさい。この私を、偉大なる太陽神として崇めるのよ……」

「みんな、そこのトリは無視するのニャ。エサを捧げるのニャ。まずはカリカリでガマンしてやるのニャ」

 

 演説していた二人は、険悪なムードを醸す。そして、ついにバチバチと睨み合った。

 

「いい加減にしなさい、このバカネコ……」

「トリなのに生意気なのニャ、コアトリ!」

「昆虫族よ、戦の始まりです! 敵はこの忌々しいネコ、テスカトリポカ!」

「植物のみんな、あたしについてくるのニャ! ケツァルコァトルと戦うのニャ!」

 

 

「……そのままヒートアップして、今の戦いに至ります」

「えぇ……」

「なにそれ……」

 

 ヴィクトリーとサラは、揃って困惑する。

 

 黒のアリスから使わされた、ネコのテスカトリポカとトリのケツァルコァトル。この二人が勝手に喧嘩を始めて、それに植物族も昆虫族も巻き込まれたという事らしい。

 

「ネコとトリ……聞いてはいたが、まさかテスカトリポカとケツァルコァトルとはな……!」

 

 シーザーが、真剣な顔でそう言う。そんな彼女に、何も知らないヴィクトリーは向いた。

 

「知ってんのか?」

「ああ……どちらも聖魔大戦で活躍した強大な妖魔だ。言われるがままになってしまうのも、致し方なしか……」

「というか、今の情報で斉天大聖が黒のアリスと繋がってる可能性が出てきましたね……」

 

 話し合う、ヴィクトリーとシーザーとプロメスティン。

 

 とにかく、格の高い妖魔がまたこの辺をうろついているらしい。しかも、黒のアリスと繋がっているとも来た。だとすると、この事を知っていた斉天大聖もまた、彼女の一派と言うことだろうか。

 

「現在、植物族を従えてるのはテスカトリポカ……今は、蝶々を追いかけてどこかに行ってしまったようです。そのまま落とし穴とかに落ちてしまえばいいのに……」

「おいおい……何か口悪ぃな?」

「無理も無いぜ、この村は何かとトラブルが続くからな。前任者も前前任者も心労でこんな感じになってるんだぜ」

 

 溜息混じりに語るプリエステス。それを見たヴィクトリーは苦笑いし、そばに居たアルラウネがそう言う。

 

「立地とか環境が悪いのかしら……」

「立地とか環境が良いからこそ、領土を巡るトラブルが続いているのでしょう……そして、現在植物族で一番の実力者はプリエステスさん。縦社会の魔物の間では嫌でもトップに立たされ、後継者も居ないが故に逃げる事もままならず……」

「あぁあぁあぁあぁあぁあ…………」

 

 サラとプロメスティンの言葉に、プリエステスはどういう訳か悶絶している。どうやら、彼女の言う通りらしい。

 

「そ、それで……戦ってた昆虫族は何処に行ったんだ?」

 

 心配そうに聞くヴィクトリーに、プリエステスは何とか持ち直す。

 

「はい、今はテスカトリポカの助力もあって南東の『レド山』にまで追い込みました。今でもそこで小競り合いと睨み合いが続いています。お願いします、どうか早く決着をつけてください。さもないと貴方で寿退社しますよ」

「聞いたこともねぇ脅迫すんじゃねぇ!」

 

 プリエステスからの依頼……それは、昆虫族を倒すこと。ひいては、昆虫族の代表を力でねじ伏せる事だ。

 

「ヴィクトリーで寿退社されたらたまったもんじゃないわね……でも、私は昆虫族からの話も聞いてみたいわ」

「そ、そうだな……決着つけるのは待ってくんねぇか? おめぇらの味方をする前に、昆虫族からも話を聞きてぇんだ」

 

 サラもヴィクトリーも、そう言って待ったを掛けた。

 

 これまで聞いたのは、植物族からの事情。これだけを聞いて一方的に植物族に肩入れをして、そのまま突っ走ったら……昆虫族側を、踏みにじることになってしまう。そんな事をしたらヒーローとしても正しくないし、勇者であるルカにも面目が立たないだろう。

 

「…………分かりました、判断は任せます。いい返事になる事を期待していますよ」

 

 プリエステスは少し考えた後、そう言ってくれた。

 

 次に向かう場所は、昆虫族が追い詰められているというレド山脈だ。

 

「昆虫族、やっつける訳じゃないんだよね……? ヒルデ、まだ出番なし?」

「そうね、あくまで話を聞きに行くだけ。戦わないで済むなら、それに越したことはないわ」

 

 身体を疼かせている様子のヒルデに、サラが言う。

 

「ここに来る時も迎撃されたので、一応の警戒はするべきです」

「そうだな……よっしゃ、行くか!」

「私なら案内出来るぞ」

 

 ヴィクトリーとシーザーを先頭に、一行は南東にあるレド山へ向かったのだった。

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