もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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レド山の昆虫族

 プランセクト村を出て南下し、街道も横切ってひたすら進むと、山道に突き当たる。そこを東に行くと、(くだん)のレド山に辿り着いた。

 

「ここだ」

 

 シーザーは、山を見上げる。緑も多く程よく涼しい静かな山だったが、所々に戦いの跡があり、それが戦時中だと言うことを物語っていた。

 

「今も戦いは続いているようだが……あまり戦況はハッキリしないな」

「戦局判断……しばらくは膠着(こうちゃく)するよ、たぶん」

 

 シーザーとヒルデは、戦いの跡を見て分析する。戦況はやはり拮抗しており、どっちつかずと行ったところだろうか。

 

「そこそこ大変そうな山道ね……」

「昆虫族も警戒しています。迎撃に備えた方が良いでしょう」

 

 サラとプロメスティンはそう言い、道の先を見る。所々に戦いの疲れを取るために座り込んでる植物族や、未だに警戒している昆虫族の気配もする。

 

「意外と涼しいな……どっかに水源でもあんのか? それに、山頂にでけぇ気を感じる……これが昆虫族の代表の気みてぇだな」

 

 そう言っているヴィクトリーを先頭に、レド山を進むのだった。

 

 

 何度か襲撃されながらも、迎撃して軽くあしらう。そんな事を繰り返しながら進み、とうとう山頂に来たのだった。

 

「オッス!」

 

 ヴィクトリーが挨拶した先……そこには、スズメバチの女王の魔物娘──彼女こそが、昆虫族の代表──クィーンビーが立っていた。

 

「む……冒険者か? 何だ貴様は」

「俺、ヴィクトリー! ちょっと話を聞きたくて来たんだ!」

 

 そう言われたクィーンビーは、目を丸くした。

 

「ヴィクトリーと言えば……確か、そんな名前の戦闘狂がこの周辺を彷徨いているという噂があったな? てっきり、戦いに来たものかと思ったのだが……」

「そっちは偽物で、俺がホンモノのヴィクトリーだ!」

「それは、少し事情があるのだ。それより私達は、ここの戦いを平定すべく動いている。どうか話を聞かせてくれないか?」

 

 話の腰が折れそうになったが、シーザーが軌道修正する。

 

「……そうか、戦う気は無いのだな。まぁ、聞くというのなら話すが」

「助かるぜ」

 

 警戒していたクィーンビーは、手を広げてヴィクトリー達の後方に突き出す。その先で、いつでも殴り込めるように控えていた昆虫族達が警戒を解いて下がっていた。

 

「昆虫族と植物族が領土をめぐって戦ってる所を、アリスフィーズ17世が無理矢理平定して……その後にテスカトリポカとケツァルコァトルっちゅう奴がここに来てケンカ始めて、それに巻き込まれたっちゅう話は聞いてるんだが……間違いねぇんか?」

「話が早くて助かる……全くをもってその通りだ」

 

 クィーンビーは、そう言って心底疲弊したように溜息を吐く。

 

「実の所、我々は戦いに疲弊していたのだ。それを、アリスフィーズ17世が無理矢理にでも平定してくれたのは勿怪(もっけ)の幸だった。だが、あの二人のせいで戦いは再燃し……そして、我々はこのレド山まで追い込まれたのだ」

「それで、今もここで戦いを続けているって訳ね……」

「もしもここを凌げたら、プランセクト村にまた行くつもりなんですか?」

 

 道中を思い出しながら言うサラの横で、プロメスティンが聞いてみると……クィーンビーは、少し考えた様子を見せてから顔を上げた。

 

「いや……追い込まれてここに来たとはいえ、このレド山という土地は存外に住み心地がいい。もしも植物族が侵攻して来なければ、ここを新たな住処にしてもいいぐらいだ」

「ああ……涼しいし広いし、水源も緑もあるからな」

 

 ヴィクトリーは、周りを見ながらそう言う。事実、この女王の間と化してる拓けた場所の手前には、飲んだ者を癒す泉があるのだ。

 

「だが……どうやら、植物族達はそれを許してはくれないようだ。今度は何がなんでも我々を絶滅させたいらしい」

 

 そう言うクィーンビーの様子は、レド山で起きている戦いに胸を痛めているのが分かる。もはや、引き下がることも出来ずにただ拮抗した状態ですり減っていくしかない……そんな風だった。

 

「……そうかなぁ」

 

 ヴィクトリーはそう言いながら、プリエステスの様子を思い出す。ストレスで完全におかしくなっていたのはもちろん、戦いに疲弊していたのは彼女も同じなはずだ。

 

「クィーンビー……その意見、プリエステスに聞き届けるべきではないか?」

 

 シーザーが言うも、クィーンビーは首を振って難しい顔。

 

「今更代表同士で話し合いをしてどうにかなるものではない……そも、話し合えたらこんな事にはなっていないのだ」

「前の戦いの事情は知らねぇけどよ、今回の戦いで(わり)ぃのは、おめぇ達を巻き込んだテスカトリポカとケツァルコァトルだろ!」

 

 ヴィクトリーに言われたクィーンビーは、それでもまだ難しい顔をしていた。それは分かっているが、そんな事でここまで戦って、今更どんな顔をして会えばいいのか分からないと言った所だろうか。

 

「ねぇ……そんなに伝えづらいなら、私たちがプリエステスに伝えに行くわよ」

「向こうもこの戦いに疲弊していました……これから昆虫族がレド山に住むというのなら、プランセクト村を巡るトラブルも再燃しないはずです」

 

 サラとプロメスティンの言葉に、クィーンビーは驚く。

 

「それは本当か……?」

「ああ……早くこの戦いを終わらせて、そんでもってテスカトリポカもケツァルコァトルもぶっ飛ばさねぇとなぁ!」

 

 ヴィクトリーが力強く言うと、クィーンビーは暫く考え……そして、頷いた。

 

「……分かった、そちらを信じよう。頼んだぞ」

「よっしゃあ!」

 

 クィーンビーからも、裏が取れた。そして、上手いこと話し合えばこの戦いも収まりそうな事が分かった。

 

「お互いに妥協点を見い出せそうね。これなら戦いも収まるはずよ」

「ですが、テスカトリポカもケツァルコァトルが残っています。遭遇すれば、おそらく戦闘する事になるでしょう」

「その時は、ヒルデが一気に戦闘モードになるよ」

「それは頼もしいな。だが、私もコロシアムの闘士。伝説の魔物の実力を、是非とも拝見したいものだ」

 

 サラ、プロメスティン、ヒルデ、シーザーはそう話し、やることが纏まった。

 

 プリエステスとクィーンビーの利害は一致している……なので、こんな戦いは話し合ってさっさと終わらせるべきだ。ともすれば、問題はテスカトリポカとケツァルコァトル。まだ対面もしていないが、相手は聖魔大戦で活躍した伝説の魔物……今の自分達に、勝てるのだろうか。

 

 ヴィクトリーは不安を抱きながらも、その本心はワクワクに満ちていた。

 

「伝説の魔物がなんだ、立ちはだかるなら俺達の手でぶっ飛ばしてやるぜ!」

「そうね、ヴィクトリーが居るなら平気よね!」

 

 力強く言うヴィクトリーに、サラが応える。

 

「妾も、吉報を待つ。頼んだぞ」

 

 クィーンビーもヴィクトリーにそう言い、彼はサムズアップで返事する。そうしながら、額に指を当てて気を探り始めた。

 

「プランセクト村の、プリエステス……居た、この気か! みんな、行くぜ!」

 

 ヴィクトリーがそう言いながら、右手を差し出す。その右手をサラが取り、プロメスティンは左手を握り、ヒルデは後ろから抱きしめてきて、シーザーは肩を掴んできた。

 

「…………一斉に俺に掴まらなくても、俺に触れてる誰かに触れてれば平気だぞ?」

「そうなのか? ならば次からそうしようか」

 

 一斉に女の子から体を掴まれて若干緊張気味のヴィクトリーと、そんな事は知ったことでは無いシーザーが話す。

 

「このやり取り二回目ですね」

「こういうのを天丼って言うのよね」

「天丼……食べてみたい……」

 

 プロメスティンとサラとヒルデがそう言ったところで、ヴィクトリーは瞬間移動する。

 

 移動先は、やはりプランセクト村のプリエステスの下だ。

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