もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「だぁあぁあああっ!!」
ヴィクトリーが走り出し、一瞬でグノーシスの眼前に迫る。そして、パンチを放った。
「!!」
回避しようとするも、先程までの速度で想定された回避では間に合わずに拳が頬を掠った。
そこに、ルカが流れるように突きを放った。ゆるりと力の入ってないように見えるハズのそれは、見事に命中したのだった。
「ぐ……!?」
グノーシスが、初めて顔を歪ませる。明確に、ダメージリアクションを取ったのだった。
「通用している……二人の攻撃が!!」
「その調子でガンガンいっちゃえーっ!!」
盛り上がる、アリスとソニア。二人に応えるように、ルカとヴィクトリーはどんどんギアを上げていった。
「あだだだだだだだだだぁああっ!!!」
真正面から猛攻するヴィクトリー。その速さも鋭さも、徐々に増している。それに防戦を強いられるグノーシスだったが、エネルギーをその身に集約し始めた。
「っ、【ショックウェイブ】!」
グノーシスの身体を中心点に、雷のエネルギーを伴った衝撃波が発生する。ヴィクトリーは寸前に腕を交差して受けるが、吹っ飛んでしまった。
だが、吹っ飛ぶ彼の陰からルカが飛び出す。技の終わり際を見切って、グノーシスに剣の一撃を叩き込んだ。
「うぐ……」
だがグノーシスはすぐに持ち直し、【ビームデスサイズ】を起動する。それで、連続攻撃を仕掛けた。
「く……!」
流水のような動きで凌ぎ続けるが、次第に攻撃が掠めていく。
水の精霊の力……それは、水面すら揺らさない繊細で無駄の無い動きを実現する事だった。ただ動くのではなく、まるで水の流れのように周りの流れに身を任せ、その流れのままに剣を振るう。流れに身を任せることによる回避性能は高く、無駄な力の入らない一撃は何よりも重い。
だが……それをもってしてもグノーシスが格上である事は変わらない。実力に差があると、流れに身を任せる事がかえって負担になる。
だが──
「どぁあぁああっ!!!」
ヴィクトリーの雷のような蹴りがグノーシスの胸に直撃し、彼女は湖を切るようにぶっ飛んで行った。
──僕には、コイツがいる。
「平気か!?」
「大丈夫……今の僕の心は、イリアスヴィルの裏山の清流のように澄んでいる」
そう話していると、湖が爆発を起こした。
聖なるエネルギーが大爆発のように高まり、天を衝く。姿を現したグノーシスは、目を殺気に染め、耳まで裂けた口を開けて牙を剥いていた。
「……無駄な事を。神罰を受け容れるがいい」
そう言ってから姿を消したかと思えば、瞬間移動のようにルカ達の目の前に来る。そして、冷気を纏った機械の翼を振り下ろしてきた。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーが、それを肘打ちで止める。
だがグノーシスはもう一方の翼を赤熱させ、それでヴィクトリーにアッパーカットした。
「ぐぁあっ……!!」
「くっ!」
ルカはそんなグノーシスの横から、兜割りの振り下ろしを放った。
しかしグノーシスはそれを後ろ跳びで避け、全身の銃器を起動する。
「【フルガトリング】」
ルカに、無数の銃弾が迫る。だが、割って入るようにヴィクトリーが着地してきた。
「そんな豆鉄砲がなんだってんだぁああぁっ!!!」
なんとヴィクトリーは銃弾に体を穿たれながら突っ走って突撃し、腕を振りかぶる。そのまま、右ストレートでグノーシスの顔面を打ち抜いたのだった。
「っ……!? っ!!?」
何が起きたかも分からないまま、グノーシスはよろめき、そこにルカが高速回転しながら飛び込んできた。
「【紅蓮廻天斬】!!」
廻りながら剣に紅蓮を纏い、腰を捻って振り抜く。流水の動きに身を任せたそれは、今までとは比べ物にならない破壊力でグノーシスを薙ぎ払ってぶっ飛ばした。
吹っ飛びながらも体勢を整え、機械の翼を地面に突き立てて止まり、顔を上げる。
「波ぁっ!!!」
そこを狙ってヴィクトリーは【かめはめ波】を放つ。それは確かに直撃し、大爆発した。
流水の動きを宿したルカと、
「優勢……なの?」
「そうよ! このまま攻めて攻めて攻め続けるのよ!!」
不安そうに言うサラ、相変わらず盛り上がってるソニア……だが、アリスとプロメスティンは難しい顔をしていた。
「まずいな……確かに実力差は縮まったが……」
「これじゃ、首の皮一枚を互いにカバーし合ってるだけです……それに、グノーシス様はまだ実力の十分の一も出してません」
「ホァッ!?」
プロメスティンの分析に、驚くソニア。
「でも……グノーシスは何でその程度のパワーで二人の相手をしてるの……?」
「試しているつもりか……? 舐められたものだな……!」
「きゅう……」
ヒルデとアリスの会話に、不安そうに鳴くヌルコ。
余りのパワーのぶつかり合いに、ルカとヴィクトリー以外はこの戦いに参戦できそうにない。今は、この二人が頼りだ。
「……やはり、想定以上……いや、戦闘の中で常に力を上げ続けている」
グノーシスは、身体の汚れを払いながら言う。ヴィクトリーの渾身の技も、大したダメージにはなっていないようだ。
「シオンが危惧した理由が分かった……甘いのは我の方だったか」
グノーシスはそう言いながら静かに浮かび上がり、耳まで裂けた口で【口にしてはならない文言】を紡いだ。
「■■■■■■■■■■……」
グノーシスの頭上に、核熱を帯びたエネルギーが現れる。それは何倍にも膨れ上がり、空を覆うようなエネルギーボールと化した。
どう見ても尋常ではないエネルギーを見上げる、アリス達。その顔は、一様にして絶望に染まっていた。
「な、なんて魔力…………」
「あんなの落ちてきたら、この町ごと消えちゃうわよ……!?」
「きゅ…………」
無駄と知りながらも、一応は身構えるアリスとソニアとヌルコ。
「核エネルギー……!? あんな小規模に圧縮されてるとはいえ、この威力では……!!」
「退避は無駄……仮に避けれても、周辺が消えて大勢が死亡……」
グノーシスの技を分析する、プロメスティンとヒルデ。
「……信じるしか無いわね、あの二人を」
サラは、そう言ってルカとヴィクトリーを見ていた。
「ヴィクトリー、何としても押し返すぞ!!」
「分かってるさぁ!!」
ルカは両手を突き出してそこに聖なるエネルギーを込め、ヴィクトリーはかめはめ波の構えを取る。
どうやら、持てるエネルギー全てを込めてグノーシスの技を押し返すつもりらしい。
「快進撃もここまでだ……これで、塵と消えるがいい」
ついにグノーシスは、エネルギーボールを振り落としてきた。
膨大な核熱が込められたそれは、近づくだけでも地表を焼き、触れるもの全てを灰燼にしながらルカとヴィクトリーに落ちてくる。
「【汚れなき光】、闇を照らして不浄を払え!!!」
「【超かめはめ波】ぁああああ!!!」
ルカの手からは聖なるエネルギーが、ヴィクトリーは渾身の力を込めたかめはめ波が、グノーシスの技を打ち砕かんと伸び、螺旋を描いて混ざり合う。そして、二人の気が合わさった凄まじいエネルギー波となってグノーシスと押し合うのだった。
「はぁあぁぁぁぁ…………!!!」
「ふんっ、ぎぎ、ぎぎぃぎぎ……!!!!」
二人は力を合わせて全力を出すものの、踏ん張る足が地面にめり込み、肌を焼くエネルギーが近づいているの感じ、嫌でも押し負けていることを感じていた。
「こ、こりゃまずいかもなぁあぁあ……!!!」
「うっ、ぐぐくく……!!! だ、駄目だ──」
「諦めないで」
弱音を見せる二人だったが……唐突に、声が響いてきた。
ルカの中に居る、ウンディーネだ。彼女が二人の肩を包むように付き、声をかけてきたのだ。
「荒ぶる心を落ち着けて、力を一点に集中させるの……大丈夫よ」
ウンディーネの言葉に、二人は目を瞑って息を吐く。迫る熱が肌を焦がす感覚も、髪が激しく
「……?」
二人の様子に気付いたグノーシスは、疑問を浮かべながらも力を込める。だが手応えが固く、これ以上押すことが出来なかった。
「これは……」
未だにバチバチと、激しく押し合うエネルギー。着弾せずに、空中で邪魔されている。
グノーシスの技を、二人は止めていたのだ。
「なっ……!」
目を瞑りながらゆっくり呼吸を合わせている二人に、グノーシスの技が止められている。力など入っていなさそうな雰囲気まで感じるそれを、グノーシスは潰す事は出来なかった。
「馬鹿なっ……!!?」
本気の動揺を見せた、グノーシス。それを、ウンディーネが見逃さなかった。
「今よ、解放しなさい!!」
「っっ、はぁあぁあああああ!!!」
「だぁああぁあああ────ッッ!!!」
ルカとヴィクトリーは、目を見開いて全ての力を解放する。その次の瞬間、空中で凄まじい大爆発が巻き起こり、地鳴りとまばゆい閃光がエスタ全域を覆った。
光が晴れ、地鳴りが収まる。そんな爆発の余韻が残る中、アリスが目を凝らした。
「ど、どうなった……!?」
「エスタは無事よ!」
「二人も立ってるわ……」
アリスもソニアもサラも、とりあえずルカとヴィクトリーの無事を確認して息を吐く。
「安心できないよ……」
「グノーシス様もまた無傷です!」
「きゅぅぅ……」
ヒルデとプロメスティンとヒルデは、空を凝視している。そこには、全く無傷のグノーシスがルカとヴィクトリーを見つめていたのだった。
「そんな、押し勝ったんじゃ……」
「相殺……!!?」
動揺する、ソニアとアリス。
アリスの言う通り……ルカとヴィクトリーは、全力を出した。そして、グノーシスの技を相殺してみせたのだった。
だが、それだけだった。状況は、何も好転していない。
「はぁっ、はぁっ……」
「く、クソ……やんなっちゃうぜ……!!」
「なるほど、無視できない力だ……」
ルカとヴィクトリーは、グノーシスと再び睨み合う。
「くそ、どうすりゃいいんだ……」
「やっぱり、格上には違いないか……今の僕達じゃ、歯が立たない……!」
「ふむ……万策尽きたと言った所か」
グノーシスは降り立ってきて、【ビームデスサイズ】を起動する。そのまま、ジリジリと近づいてきた。
「くそ、まずい……!!」
「……二人に加勢しましょう。頑張れば、何人かはこの場から逃がせるはず」
歯噛みするアリスに、サラが前へ出ながら言う。
「そ、そうね……最低限、ルカとアリスだけは生かさないと……!」
「私達も全力を尽くしましょう」
仲間の回復に徹していたソニアとプロメスティンも、武器を構えてルカ達の後ろにつく。
「きゅーきゅ!」
「エネルギーの残量には余裕がある……ヒルデ、まだ戦える」
「ああ……余も、やるだけやるぞ」
ヌルコとヒルデに続き、アリスもルカ達に並んだ。
仲間が揃っても、グノーシスは無感情に近づくだけ。貼り付けられたかのような無表情は、機械のようで……それが、ただ『殺す』という事だけを実行するという意思が見て取れた。
「おいグノーシス……俺達を殺す前に、一つ聞かせろ」
ヴィクトリーが、会話で時間を稼ごうと口を開く。それでもグノーシスの歩みは止まらないが、彼は構わずに続けた。
「ラファエラって奴は何者なんだ。おめぇの差し金か?」
その言葉を聞いたグノーシスは、目を見開いて歩みを止めた。
「ラファエラ……様……!?」
どうやら、ラファエラと名前に驚いたようだ。
「デマカセを言うな……どうして貴様がラファエラ様を知っている」
「デマカセじゃないよ……僕達は、ラファエラっていう天使に楽園みたいになったエスタを見せられたんだ。この町の人間は、お前達が連れ去ったんだな?」
口を開いたのは、ルカ。ヴィクトリーに便乗し、切り込んでみたのだ。
「貴様ら……まさか、天界を見たのか? それに、ラファエラ様とも話したのか?」
「どうせ殺すなら答えろ……納得もできないまま殺されるぐらいなら、僕達は最後まで抵抗するぞ!」
グノーシスは、未だに構えてるルカとヴィクトリーを眺めながら逡巡し……遂にはビームデスサイズの電源を切り、自らの体に組み直した。
「それを聞いて、事情が変わった……早計だったのは、やはり我だったか」
そう言って踵を返し、宙に浮き始めた。
「なにっ、逃げんのか!?」
「おい、僕達の質問に答えろ!」
「勇者ルカ、ヒーローヴィクトリー……」
啖呵を切るヴィクトリーとルカに、グノーシスは振り返る。
「貴様らは、近くに大いなる決断を迫られるだろう……それは、二つに一つ。第三の選択など無い。それまで慎ましく生き延びることだ……」
そう言い残し、彼女は異次元への穴を開いてその中へ消えていってしまったのだった。
異次元の穴が閉じ、元に戻る。吹く風と湖の水音がやけに大きく聞こえ、静かに消え入る時……ルカ達の緊張は解け、その体にドッと疲労が乗ってきた。
「た、助かった……今度こそ、ダメかと思ったわ……」
「きゅきゅ〜……」
ソニアとヌルコは、へなへなとその場で崩れる。
「行っちまったみてぇだ」
「大いなる、決断…………」
黒髪に戻ったヴィクトリーと剣をしまったルカが、呆然と話す。
ラファエラと沙蛇にも言われた、『決断』。それが、何時しかやって来るらしいが……それは、どういう意味なのだろうか。
「ふむ……なんだか分からんが、今回も上手く乗り越えられたようだな……」
「そうね……とにかく、ひとまずはグランドノアに戻りましょう」
アリスとサラが話し、ようやくルカ達は自分が何をやっていたのか思い出す。
ルカ達はアーサーの依頼を済ませ、禁断の泉でウンディーネの力を得て来た。
ヴィクトリー達はシーザーの依頼をこなし、プランセクト村での争乱を収めてきた。
そしてエスタの調査も終えて、次はグランドノア女王と共にグランゴルドを解放するために進まねばならないのだ。
「軍議はもう終わってるかな……とりあえず、行こう」
「ああ、急がねぇとな……」
そういう訳で、調査も切り上げてグランドノアに戻るのだった。ルカは『ハーピーの羽』を使い、それで皆飛んでいく。
「っちゅうか、俺の
「相手が相手だから仕方ないよ……」
ハーピーの羽の移動に身を任せながら、二人はそんな事を話すのだった。