もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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作戦会議

 ポケット魔王城……アリスの招集で、ルカ、ヴィクトリー、ソニア、そして何故かヌルコが、大きめのテーブルに集められた。

 

「それでは、作戦会議を始めるとしよう」

 

 会議を仕切るのは、もちろん招集をかけた本人のアリス。魔王と言うだけあり、多人数を仕切る事には慣れているのであろう。

 

「あらためて、これからどうするかを決めないとね。変なモノを見過ぎて、頭がゴチャゴチャだよ……」

「そうよね、なんだか夢でも見てたような気分。まさか、異世界に行っちゃうなんて……」

「それ以前にも、ツッコミどころは満載だぜ。さぁどうするよ?」

「きゅ〜! きゅ〜!」

 

 ソニア、ルカ、ヴィクトリー、ヌルコの順番で、思い思いの事を吐き出す。彼女らに共通する事は、情報量が多くて困惑している事だった。

 

「なんで、ヌルコまでいるのだ……? まあいい」

 

 アリスはコホンと咳をついて、改めて頭を抱える皆を一望する。

 

「貴様らにとっては、降って湧いた話かもしれんな。発端は、ウサギによって余がこの姿に変えられた事だった……それ自体は、あくまで余の個人的事情……その解決に、貴様らの手を借りているに過ぎなかったのだ」

「でも、一気にそうじゃなくなったわね。自分の墓を見せられたんだから……」

「俺も、こんな事情を知っちまったからな。今更退けねぇ」

 

 異世界転生と形容出来るものに巻き込まれたヴィクトリーには、特に関わり合いの無い話ではあったが……彼は、サイヤ人。困っている人を見た時や、()()()()()()には、首を突っ込んでしまう性分である。

 

「こうして、貴様達も当事者となった。いや、この一件の当事者は世界全ての者なのかもしれん。こういう時、問題の切り分けが重要だとたまもは言っていた。状況を理解していれば、今後為すべき事も見えてくるだろう」

 

 アリスの言う通り……まずは、一つ一つの情報を分析する事が重要である。その中から必要な情報を、取捨選択する。さすれば、(おの)ずと為すべき事が分かるというものだ。

 

「ああ……そんじゃあ、まずはあの白兎についてだな」

 

 ヴィクトリーが、誰よりも早くそう発言した。

 

「あの白兎か……アイツは突然に魔王城に現れ、余をこの姿に変えた。奴の目的は、現在に至るまで不明だ。奴自身は、魔王を導く事が使命と言っている。そして実際、その使命を忠実に行使している節もある……」

「ウサギを追いかけて、異世界に行っちゃったんだもんね。やっぱり、わざとあそこに私達を導いたのかな」

 

 パッと現れては、煙のように消え……追いかけた先には、問題がある。これが白兎の計りかどうかはさておき、まるで彼女は導き手のような役割を果たしていた。

 

「奴は余に、何かを見せたいようだ。それは、この世界に迫る危機と関連があるように思える」

 

 アリスも何となくそう思っているようで、神妙な表情で言う。

 

「宇宙が消えるって奴か?」

「……そういう事に、なるだろうな」

 

 ヴィクトリーの言葉に頷く、アリス。憶測の域は出ないにしろ、絶望を叩きつけられたかのようだ。

 

「でも、あのウサギって一体何者なんだろ」

 

 ソニアは顎杖をついて、そう発言した。

 

「魔王さえ翻弄するって事は、魔王以上の存在……?」

「多分、それどころじゃねぇと思う」

 

 アリスが応えるより先に、またヴィクトリーが応えた。言葉を遮られた彼女は、イラつくでも無く彼に向く。

 

「どういう事だ……?」

「どんな矮小な存在だろうと、生き物には『気』ってものが放たれている。コントロールで極限まで小さくしたり、消えてるようにカムフラージュしたり出来るが……あの白兎からは、それが感じられなかった……俺はこの感覚に、覚えがある。神の気だ」

 

 あの、底知れぬ深淵の覗いたような気分……人とは次元の違うあの感覚は、間違いなく神の気か、その領域に辿り着いた者の気である。

 

「神の気……!?」

「馬鹿な、あんな奴が神クラスだと……!?」

「いや、神なんてクラスじゃねぇと思う……もっとやべぇ奴だと見ている。あいつの底がどの程度なのかはこっちも神の次元に至らねぇと分かんねぇけど……とにかく俺は、あいつはそれほどまでの実力者なんじゃねぇか、と睨んでる……あ、そうだ」

 

 ヴィクトリーが、思い出したかのようにアリスの方に向く。

 

「伝承の事について、何か思い出せたか?」

 

 彼の問いには、アリスは難色を示した。

 

「伝承……『アリスを導く白兎』の事か? 残念だが、全く……」

「う〜ん、それが分かりゃあちっとは苦労しねぇんだが……」

「奴は、導くだけの存在……それゆえ、異世界さえも行き来出来る……これからも、ウサギを追う事は目的の一つとなるだろう。奴の術中にハマるのは癪だが、仕方あるまい……」

 

 正体は分からないが、とりあえず追跡するしかない──白兎については、こんな感じにまとまった。

 

「じゃあ、タルタロスの事も考えないとね」

 

 ルカの発言で、今度はタルタロスについて話し合う事になった。

 

「そもそも、タルタロスって一体何なんだ? 俺の世界にも、あんなもんは無かったぞ」

 

 その通り……ドラゴンボールヒーローズの世界に、あのような者は無い。あれは、最早暗黒魔界の所業の領域を遥かに超えている。タイムパトロールがスッ飛んできても、おかしくはない。

 

「タルタロスとは、30年前の大異変で出現した時空の裂け目。その正体は、謎に包まれていた……」

 

 アリスが、話を切り出す。

 

「ああ、そう言えば何かそんな事言ってたな……今んところ、大異変で発生した謎の大穴って見方しか出来ねぇのか」

「うむ。しかし今回、タルタロスを抜ける事に成功した。なんとそこは、我々の知る世界に酷似した異世界……貴様の言葉を借りると、今の我々の世界線とは別の世界線だった……」

 

 ヴィクトリーとアリスの言葉を聞いたルカは、「なるほど」と言う。

 

「つまりタルタロスは、異世界へのトンネルだったんだね。でも、どうしてそんなものが……」

「何度も言うが、タルタロスが出現したのは30年前の大異変。異世界のトンネルが出来たことで、大異変が発生したのか……」

「または、その逆かってんだな……今んところ、それが分かんねぇからどうしようもねぇんだけどさ。ヌルコ、おめぇなら分かるんじゃねぇのか?」

 

 ヴィクトリーはそう言い、ヌルコをゆさゆさと揺する。それに対して、彼女は「きゅー」と鳴くだけであった。

 

「なぜヌルコに聞く……」

 

 呆れながら言うアリスに、ヴィクトリーは頭を搔きながら「へへへ」と笑う。だが、その表情を一瞬で真剣なものへと塗り変えた。

 

「それに、あん中はアリスでさえ知らねぇようなやべぇ魔物ばっかだった」

「なんだか、どれも不気味な魔物だったよね……」

 

 ソニアの心配そうな声も相まって、更に話題は不気味さを増していく。

 

 アポトーシス……あの大穴に居た、異形の存在。今はまだ、強さこそは無いものの、明らかに普通ではない。

 

「魔素と聖素が、不規則に入り交じっていた……余は、そんな印象を受けたな。更に我々は、人間らしき魔物が変異するのも見た。あそこにいた魔物は、全て人間だった可能性がある……」

「きゅ〜! きゅ〜!」

 

 何故かヌルコが、反応する。元気に鳴く彼女を、ソニアが撫でた。

 

「ヌルコちゃんも……そうなのかな?」

「分からん……どこか違うような気もするがな」

 

 アリスはコホン、と咳をついてから続ける。

 

「変異した魔物は、我々を敵として認識しているようだった。外敵として、排除するのが使命だったようだな。しかし奴等は仲間同士で社会を営んでる様子はない。その生態も、全くもって分からん……」

 

 続けたはいいものの、そう言って頭を抱えるアリス。

 

「何より分からないのは、中にあったあの町だよ。なんだかおかしな事になってたし、それにレミナって……」

「あそこには、マトモな人間も居なかったしな。唯一マトモそうなのも、ぶっ壊れちまったし」

 

 ルカとヴィクトリーも、アリスにつられて首を傾げる。

 

「30年前の大異変で、消滅したはずの都市……その一部が、タルタロスの中に存在していた。しかも、空間自体に侵食されているかの異様さ……住民ともども、取り込まれてしまったとでも言うのか?」

「分からない事だらけだよね……」

「しょうがねぇさ、まだまだ情報がこれっぽっちもねぇんだから」

「タルタロスに関して、もっと調べねばなるまい。あそこだけではなく、他のタルタロスもな……」

 

 他のタルタロス……世界各地に空いている、不気味な大穴。

 

「……」

 

 ヴィクトリーは難しそうに思慮し、頭を掻いてから、顔を上げる。正直、この話題を振るのはソニアやルカに申し訳無くなるが……

 

「そのタルタロスの先……そこは、別の世界線だったな」

 

 あの先には、危険なオーラを放つ平原にポツンと、滅ぼされたイリアスヴィルがあった。

 

「そこでは、村が滅ぼされていた……そして、私達も死んでた……異世界とはいえ、すっごくヤな気分……」

 

 ヴィクトリーの思った通り、ソニアがそう吐き出す。しょんぼりした彼女を見て、少し悲しい気分になる。しかし、アリスが続けた。

 

「我々の世界と似ているが、異なる点も多い。10年以上は未来だし、ルカは冒険に挫折したようだ……」

「これから先、あの世界みたいになる事はないよね? まさかあの世界が、私達の世界の未来だったり……」

「なんとも言えんが……現在の時点でも、違いは出ているぞ。ヴィクトリーの指摘した通りだ」

 

 急に振られたヴィクトリーだったが、彼は冷静に「ああ」と返事する。

 

「そもそも俺達は、グランべリアに会ってすらいねぇ」

「内容があっちとこっちで違うよね……」

「非常に似てはいるが、やはり別の世界なのだ。もしかしたら、ありえた未来なのかもしれんが……」

 

 ここで、ソニアが挙手した。

 

「気になったんだけど……タルタロスは世界に7カ所あるよね。それ全部、あの異世界に繋がってるのかな……?」

「そうかもしれんし……あるいは、他にも異世界があるのかもしれん」

「まさか、あれ以外にも異世界があるって言うのか!? タルタロスの数だけ、他に6つも……!?」

「……世界線の分岐が、アレだけとは限らねぇ。そこら辺は、確かめてみるしかねぇみてぇだ」

 

 そう、世界線とは分岐するものだ。『一本の苗木』の例を出したように、簡単なきっかけで世界は変わってしまう。そして、それが無数に分岐するのだ。

 

「他のタルタロスの探索かぁ……でも、行けないような所にもあったんじゃない?」

「今すぐ、全てのタルタロスを探索するなどというのは無理だ。だが、冒険の目的の一つとして考慮するべきだろうな」

 

 タルタロスの探索……これも、冒険の内にやらなければならなさそうだ。

 

「……なんであのイリアスヴィルは滅んだんだ?」

 

 ヴィクトリーは、不意にそう言う。彼には、それが腑に落ちていなかったのだ。

 

「あの日記を見る限り天使の仕業みてぇだけど、そんなことをする意味が分からねぇ」

「やっぱり、イリアス様のお考えよね?」

「天使どもが独断で行った事だとは思えんな。間違いなく、イリアスの指示あっての事だろう」

「でもよ、あんな事をしてもイリアスにメリットはねぇ気がするぞ」

「うーん、こちらで小さくなっているイリアスと関連があるのか?」

「もう、さっぱり分からないや……」

 

 疑問に次ぐ、疑問……謎が謎を呼ぶ状況にルカは頭を抱え、机にダウンしたのだった……

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