もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
夜が明けた。
宿屋で一晩を過ごし、体力も全快したルカ達は元気にグランドノアを出る。
「おっしゃあ、そんじゃいっちょやってやるかぁ!」
「ああ……これから大変だろうけど、僕達に失敗は許されない!」
ヴィクトリーとルカ……いつもの二人が先頭に立ち、仲間がその後を着いていく。
行先は、北西にあるというリマ村。そこで工作員と落ち合い、共にゴルド砦を抜けるという手筈だ。
「これからは、大規模な戦いになる。我々は作戦の
「ええ、必ずやり遂げて見せるわ!」
「きゅっきゅきゅ!」
「グランゴルドの地下にはマキナも秘蔵されているとの事です……楽しみですね!」
「ヒルデ、エネルギーも準備も万端……いつでも戦えるよ」
「ええ、私はサバサの代表としての面子もあるわ。お互い、頑張りましょう!」
アリス、ソニア、ヌルコ、プロメスティン、ヒルデ、サラ……仲間達もそれぞれ意気込み、気合を入れている。
こうして、ルカ達はまずリマ村へと向かったのだった。
※
エスタを通り過ぎ、禁断の泉を北上し……橋を渡った先の右手に、その村はあった。
「これは……酷いな……」
ルカ達を出迎えるのは、白骨死体の山と破壊された建物と放置された汚水の水溜まり。
路地に死体が詰め込まれ、子供のものと思われる小さな骨も一所に集められ……街道の脇には、文字通りの死体の山が積み重なっていた。
「…………」
ヴィクトリーは、小さな頭蓋骨を見て歯軋りをする。きっと、年端もいかないような子供まで、グランゴルドの凶刃の餌食となったのだろう。
「……女子供、民草も兵士も関係無かったのだろう。全て皆殺しにされている」
「ひどい……」
「きゅ…………」
冷静に見回すアリスに、絶句するばかりのソニアとヌルコ。
「骨に何か刻まれてますね……これは?」
「風化して読めないけど……何かの見せしめね」
プロメスティンが頭蓋骨の一つに目をつけ、それを見たサラも言うのだった。
「……ここは、エスタと違うな」
「ああ……本当に、破壊と虐殺が目的だって嫌でも分かるよ」
冷静になろうと話す、ヴィクトリーとルカ。だが、彼等の前に一際高い死体の山が現れた。
「…………」
「グランゴルドを操ってる奴は、どこまでやりゃ気が済むんだ……!!!」
静かに拳を握るルカと、抑えきれずに言葉に出るヴィクトリー。そんな彼等の前にソニアが歩いてきて、死体の山に向かって静かに祈り始めた。
苦しんだ分だけ、どうか今は安らかに……せめて、そう祈るソニア。ルカとヴィクトリーの二人も、彼女に続いて黙祷を捧げた。
祈りを終えたソニアは、二人の方に向き直す。
「ねぇ……私、今日ここに来るまで、こんな国家間の戦争に介入していいのか迷っていたの。けど、この惨状を見て考えが変わったわ。こんな悲劇、他の所で繰り返しちゃいけない……!」
「ああ、その為に僕達も全力で戦わないと!」
「そうだな……グランゴルド操ってる奴を、必ずぶっ飛ばさねぇとな!」
決意を新たにする、ルカ達。だが、彼等とは違う足音が建物の陰からこちらに近付いてきた。
「なんだ!?」
グランドノアの工作員か──そう思っていたが、明らかに違った。
「奉仕します、奉仕します、王妃様のために、王妃、サマの、タメに……」
出てきたのは、娼婦の格好をした女性型のロボットだった。しかも、一体だけでは無い。わらわらと、湧くようにその辺から出てきているのだ。
「アレは……オートマータ娘! 噂によると、グランゴルドの性処理用からくり人形です!」
「明らかに味方では無さそうね!」
「敵を確認……戦闘モード、オン」
プロメスティンの言葉を聞きながら、サラとヒルデも武器を抜く。
「なんで、こんな所に……虐殺が起きたのはもう数年前だろ!?」
「調査しに来た者を、ここで始末するために配置されたのかもな……大量に来るぞ!!」
ヴィクトリーとアリスは武器を抜き、迫り来るオートマータ娘達を迎撃した。
「奉仕します、全ては、王妃様の為に……」
「王妃様……!? それが、グランゴルドを惑わせてる黒幕か!?」
ルカとオートマータ娘が、攻防しながら話す。だが、彼女も何かしらの洗脳をプログラムされているのか、あまり話は通じなそうだ。
「【アンスタン】!!」
「【ショックウェイブ】!!」
「【烈風剣】!!」
アリスもヒルデもサラも、全体攻撃でオートマータ娘の群れを薙ぎ払う。しかし、その度に新手がどんどん迫っていた。
「でゃあっ!! どりゃあっ!!」
「はぁっ! せいっ!」
ヴィクトリーとルカは、一撃で次々にオートマータ娘を戦闘不能にしていく。
「皆さん、殲滅するまで耐えてください! 【裏代謝活性】!」
「白の奔流、堅固たる鎧となりて我等を守れ!! 息を吸ってぇ!! 【オールガード】ッッ!!!」
「きゅ、きゅきゅきゅ……!」
プロメスティンとソニアは、サポートに徹する。並んでヌルコは、複数本の触手でお茶を淹れ、それを乱舞させるように皆にばら撒く。その茶には高い活性作用があり、飲んだ者の気力を大きく回復させるものだった。
「サンキューヌルコ!」
「よし、一気に削り切るぞ……!!」
「出し惜しみをする必要は無さそうだ、一気に決める!!」
前衛の皆でヌルコの茶を飲み、仲間のバフも受け取り、ここで一気にスパートを掛けて殲滅する──そう思っていた時だった。
唐突に、強いつむじ風がその辺を吹く。遅れて、周囲のオートマータ娘が派手に吹っ飛んだ。
「うわっ……!!?」
「こ、この風って……まさか!!」
今の風により、わんさか居たオートマータ娘が全て遥か遠くに吹っ飛んでしまっていた。
「もう、こんな所で全力出してる場合じゃないでしょ?」
そして、聞こえた声──振り向けば、そこにアルマエルマが立っていたのだった。
「アルマエルマ!」
「来てくれたんか!?」
「いや、まさか、グランドノアの工作員というのは……!!」
ルカ、ヴィクトリー、アリスの順で声を掛ける。
アルマエルマは「クスッ」と笑い、ルカ達に向き直した。
「ある時は謎の女学生、ある時はコロシアムの女王。そして、その正体は──現在、ただのニート淫魔よ」
妖艶な笑みから、一転して気の抜けた声。
「エヴァと一緒だな」
「何か傷つくわ。否定できないだけに」
ヴィクトリーのコメントに、そう言うアルマエルマ。
「そうか、貴様はもう四天王ではなかったか……それにしても、グランドノアに協力するとはな」
「コロシアムを潰されちゃったら困るし……それに、今の魔王軍のやり方は好きじゃないしね」
「余が放逐された後、魔王軍はどうなったのだ? 母上は、一体何を企んでるのだ?」
「詳しい事は私も分からないの。いきなり戻ってきて、手綱を握って……与えられる任務も、陰険な裏工作ばっかり。王家の誰々を堕落させろとか、誰々を暗殺しろとか……それで、ウンザリして止めたら、今度は裏切り者として追われる始末よ」
どうやら、四天王のアルマエルマでさえアリスの母親──アリスフィーズ15世──が、何を考えてるのか分からないらしい。魔王の意図は、やはり本人のみぞ知るといった所だろうか。
「でも、これで合流できたね。アルマエルマが味方なんて、心強い事この上ないよ!」
「ああ、俺達二人よりもずっとずっと強いもんなぁ!」
「ふふ、そう言われたら張り切っちゃうわ。よろしくね!」
アルマエルマはそう言い、コウモリを飛ばす。それは、グランドノアに向けて素早く飛び立つのだった。
「これで、合図完了。三国の同盟軍が進軍を始めるはずだけど……ゴルド砦から敵軍が出払うには、少し時間がかかるわね。その間に、ちょっと訪ねたい人が居るのよ。もしかしたら、この作戦に協力してくれるかも」
「訪ねたい人……だと?」
「アルマエルマがそう言うって事は、そんだけ強ぇ奴なんか? 行ってみようぜ!」
「ヴィクトリーちゃんはノリが良くて助かるわぁ! それじゃ、行くわよー♪」
アルマエルマは、有無を言わさないままワープするのだった。
そうして誰も居なくなったリマ村だが……ひょっこりと、アリ娘が顔を出す。どうやら、先程までのやり取りを見ていたらしい。
「王妃サマニ、報告……」
彼女はそう言い、その場を後にしたのだった。