もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ルカ達がワープさせられたのは、ヤマタイ村だった。それも、狐神社という所らしい。
初めて来たヴィクトリーは、興味深そうに周りをキョロキョロ見回す。周りでは、耳を寝かせた狐達が群れで丸まっていた。
「ここがヤマタイ村かぁ……ちょっと俺の故郷に似てるかもな」
「この作戦が終わったら、一緒に見て回る?」
話すルカとヴィクトリーの前を、アルマエルマが歩く。そうして彼女について行った先は、狐神社の右脇にある屋敷。そこには──
「……何の用じゃ?」
金髪で少女体型の、九尾の狐娘が座って居たのだった。
彼女の体から滲み出ている気、そこから感じるノームと同じ土のパワーに気付いたヴィクトリーは、只者では無いと確信する。
「誰だアイツ?」
「……魔王軍四天王の、たまもだが……まさか、引き込むつもりか!?」
ヴィクトリーの質問に、代わりにアリスが答えた。
アルマエルマの狙いは、たまもの協力らしい。魔王軍四天王の二人が、この戦いに加わる──それは、凄まじいアドバンテージになるだろう。
「おお、四天王が二人も協力してくれんのか!? そいつは──」
「悪いな、そこの若いの……ウチは、もうこの戦いには関わらんと決めているのじゃ」
元気に言い出そうとするヴィクトリーを、たまもが直接遮って言う。その声は悲壮感に溢れており、心苦しそうに、だが迷いも含めた声色であった。
「え……」
ようやくヴィクトリーは、この場が明るい雰囲気ではないと察した。
たまもの表情は、迷いに満ちていた。口元を扇子で隠し、ただ心苦しそうに唇を噛んでいるのだ。
「お願いよ、たまもちゃん……私たちはグランゴルドと本気で戦う気でいるの。魔王の手先が、どんな手を使うか分からないわ」
「あの者たちとて、確かな理があって行動している。ウチに邪魔などできん」
「でも、納得はしてないんでしょう……?」
「……ウチは、もはや何にも関わらん。それだけじゃ、早く失せい」
あの明るいアルマエルマが真剣に問答しても、たまもは暗いままだ。
取り付く島もないとは、まさにこの事……彼女は、諦観しているのか、迷っているのか……兎に角、『もう関わらない』という一点張りだった。
「今の魔王様がやっている事は、正しい事……そう思ってるのかしら?」
「ならば、他に方法があるのか!? だったら、ウチに教えてくれい!」
いきなり、凄い剣幕で声を荒らげるたまも。それで、この場が沈むように静かになった。外の葉が落ちる音が、やけに大きく聞こえるほどの静寂だった。
「たまも……」
ここまで感情的になるたまもを見るのは初めてらしく、アリスは心苦しげに彼女の名を呟くしか出来なかった。
「なぁ、ルカ。アリスが話したがってた四天王との接触って……」
「ああ……一つはこのたまもの事だね。見ての通り、全部諦めちゃって誰とも何も関わるのも嫌みたいなんだよ。僕達に出来ることは無いから、どうしようもない……だから、依頼中に挨拶だけして帰るしか無かったんだ」
ヴィクトリーは、閉口する。自分達が牛魔王と戦っている間、ルカ達はこんな重い出来事に遭っていたのか……そう思うと、関われなかった自分達はもう口を挟めなかった。
「そこの二人が話してる通りじゃ。貴様らがウチに出来ることなどない。もう、なるようになるしか無いのじゃ……」
「だからこそ……感情に正直になるべきよ。割り切れないと思う時こそ、余計にね」
「それで済む程、ウチは若くない……ウチは、長く生きすぎたのじゃ……」
消え入りそうなほどか弱い声で、言うたまも。アルマエルマも、それを聞いて目を瞑って黙った。
「……話は終わりじゃ。ウチを頼るでない、力になれん……」
たまもがそう言い、しばしの沈黙が訪れる。
屋敷の外で、風が吹く。アルマエルマはそれを聞いて、振り返ってきた。
「それじゃあルカちゃん、行きましょう。そろそろ作戦決行の時間よ」
「ああ、うん……」
ルカは仲間を連れて一足先に屋敷から出る。
「……お邪魔しました」
ヴィクトリーも一応そう言い、ルカ達に続いた。
彼等の背を見送る、アルマエルマとたまも……二人は、改めて向き合った。
「今、動かないと……一生、そこで後悔し続ける事になるわよ」
「それまで、地上が存在したらな」
そのやり取りを最後に、アルマエルマは屋敷から出るのだった。
※
その頃、エスタ付近では……三国の同盟軍が進軍しており、既にゴルド砦の目と鼻の先にまで迫っていた。
「我らが、グランドノア、サン・イリア、サバサの勇士!! 我らこそ三国の誇り!! 今こそ、邪智暴虐のグランゴルドとの決戦の時だ!!」
先頭を立つ騎士がそう言い、後ろに続く兵士達も「オオ──ッッ!!!」と吼える。
それを見ていたゴルド砦に居た軍勢は、応えるように雄叫びを上げる。その中にはオートマータ娘が複数体、アリ娘が群体を成し、そして極めつけは女体を成した巨大なゴーレムが居た。
「進めぇーっ!!!」
三国の同盟軍と、グランゴルドの軍勢がぶつかり合う。魔法、マキナ、戦技、あらゆるものが飛び交って爆発を巻き起こす。
エスタ周辺は、戦塵、砂煙、火花……そして、血が飛び散る戦場と化したのだった。
「……始まったわね」
「ああ……僕達も、行こう!」
「よっしゃあ、待ってろグランゴルド!!」
リマ村に戻っていたアルマエルマとルカとヴィクトリーが言い、気合いを入れ直した仲間達は、手薄となったゴルド砦へと向かう。ここを攻略し、ゴッダールへ向かうのだ。
ルカ達は、ゴルド砦へと西進する。
そんな彼らの上空で、邪悪な影が二人──
「……なんだ、いったい何が起きているというのだ?」
「ふむ……どうやら、人間共で争っているようだ」
──黒のヴィクトリーと、魔神ドミグラだった。
「正史のグランゴルドは、クィーンアントが造反を起こし……それを勇者ルカが止めたというのが大まかな筋書きだ。なぜこの反乱に、サン・イリア、サバサ、グランドノアが絡んでいる……?」
戦場の軍旗を一つ一つ見ながら、黒のヴィクトリーは困惑していた。だが、そんな事は知ったことではないという風のドミグラ。
「これも、『パラドックス』というものかも知れんな……それで、どうするのだ? 私達は指でも咥えて待てばいいのか?」
そう言われた黒のヴィクトリーは、暫く考え……ドミグラに向き直した。
「もしもの事があったら、私の求める究極の力が……『100人目』の計画が、パァだ。勇者ルカの手助けをするしかあるまい。『勇者ルカは、グランゴルドで起きた争乱を鎮めた』……そういう風に、書き直すのだ」
「ふん、黒のアリスに断りも無く動いていいのか?」
「これは私が黒のアリス様の刃に足りうる為のものだ。それに──」
黒のヴィクトリーは、グランゴルドの方を向く。
気の察知が、凄まじい気を捉えている。明らかに、今のグランゴルドに居るべきでない何かが、そこに鎮座している。今のルカ達がアレとマトモに戦ったら……おそらくは、全滅は免れない。
「勇者ルカとヴィクトリーに、少し『ズル』を仕込むだけだ」
感じる強大すぎる気に臆する事なく、黒のヴィクトリーは笑うのだった。