もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ゴルド砦に到着した、ルカ達。
林と壁で周囲を囲んだ砦……その大扉の前に、警備の兵士が一人居た。
「警備は手薄になってるが……流石に、無人とはいかんな」
「グランゴルドは、アリ娘と自動人形の兵ばかりって聞いてたけど……ちゃんと人間の兵士もいたのね。今更だけど……人間を叩きのめすのって、抵抗感があるかも」
「おめぇよく俺の事ボコボコにしてんじゃねぇか」
いらん事を言ったヴィクトリーが、ソニアに棍棒でしばかれる。ルカも、「言わんこっちゃない」と思いながら眺めるだけだった。
「それじゃ、私に任せてもらおうかしら」
「アルマエルマ、策があるのか?」
「ふふ、とびっきりのがあるわよ♪」
そう言うとアルマエルマは前に出て、おもむろに兵士の前に立つのだった。
「な、何者……妖魔か!?」
「うふふ、私と遊ばない?」
アルマエルマがそう言いながら、目を光らせる。それは淫技の【チャーム】で、兵士はアッサリと引っかかってしまったようだ。
「お、お願いします!」
「じゃあ、こっちに……ね?」
二人は、揃って砦を囲う木々の陰に行く。
「あっ、あぁああっ、あぁあぁあ〜〜〜っ!」
そうして間もなく、兵士の情けない声が響くのだった。
「ごちそうさま……♪」
「ひえぇ、おっそろしいぜ」
「あぁ……羨ま、恐ろしいな……」
戻ってきたアルマエルマを迎える、腕を組んで半笑いのヴィクトリーと、ソニアに棍棒でしばかれるルカ。
そんな彼らを横目に、アリスがアルマエルマの方を見た。
「一応聞くが、殺してはないだろうな?」
「うふふっ、ちゃんと生きてるわよ。数時間は天国を見てるでしょうけど……♪」
彼女は笑い、次に砦を見上げた。そして、ヒュウと吹く風が肌を撫でるのを感じ、また「クスッ」と笑った。
「それじゃあ、この気の量なら……だいたい、10秒ぐらいね♪」
アルマエルマはそう言い、おもむろに砦の扉を開けて中に入る。
「10秒……?」
「……!!」
ヴィクトリーは、気の察知で中で起きている異常を捉える。
中に居る人間の気が、次々に乱れ減っている。それも、先程の兵士と同じく死なないレベル……おそらくは、昏倒するほどの程度で。
10秒と言うのは、アルマエルマが自らの腕とこの砦の規模と感じた気の数……それらを考慮して適当で言った時間。
並んだロウソクの火を暴風で吹き消すような、そんな感覚で次々と気がフッと消え──当代の
間もなく、アルマエルマは高速移動でルカ達の前に戻ってくる。
「人間の兵士は片付いたわよ。一人も死んでないから、安心してね♪」
「す、すごい……」
「一人も殺さず、こんな短時間で……やっぱアルマエルマは只者じゃねぇな」
こうして、ルカ達はゴルド砦へと踏み込んだのだった。
※
この砦は、攻め入られてもまっすぐ通り抜けられないようになっていた。
当然、抜けるための道を探すことになるが……その道中で、牢屋に見知った顔が居た。
「あけてください……だしてください……」
「たすけてー!」
「あけてほしいワン……」
イリアスと、そのお供のスライム娘と犬娘だ。
「おめぇら……なんでわざわざこんな所に居るんだ?」
「この戦争を止めようと、私なりに奔走したのですが……無念、捕らえられてしまいました……」
イリアスも神様らしく、国同士の争いは見ていられないタチのようだ。志は立派なのだが、捕まってしまって情けなく声を上げていては台無しである。
「見ていられんな……ルカ、開けてやれ」
「待ってて、今開けるから……」
アリスに言われたルカは、牢屋の鍵を剣で破壊し、開放してあげた。
すると、先程まで弱々しかったイリアスがシャキッと仕切り直した。
「よし、プルエル! イヌエル! 私達がこの戦争を止めてみせますよ!」
「よーし、いくぞー!」
「わん!」
そして、意気揚々と走っていくのだった。
「…………」
「あいつらの気を追えば、出口が分かるかもな」
ルカとヴィクトリーは、砦の探索に戻るのだった。
※
出口を探しに砦内を探索し、ある一部屋に辿り着いた。
そこには、一際豪華な鎧を着た男が倒れていた。また、アルマエルマの犠牲になって倒れてるのかと思いきや、彼は既に事切れていた。
「……こいつ、死んでんぞ」
「なっ……アルマエルマ、貴様!」
「濡れ衣よ……この男、私が来た時には既に死んでたわ」
そう言うアルマエルマの顔に、嘘をついている様子はない。
ここで、ソニアがしゃがんでその男を見るのだった。
「そうね……既に、死んでから何日か経ってるみたい。死因は不明、外傷も無いわ」
「ソニア、そういうの分かるの?」
「ルカは忘れてるみたいだけど……私は神殿僧侶で、医療の基本も学んでるのよ」
「神殿僧侶って、いろんな事学ばねぇといけなくて大変だなぁ」
呑気な事を言うヴィクトリーだったが……彼は顔を真剣なものにして死体を改める。
「そんでもって、コイツは鎧の派手さからして……やっぱ将軍か?」
「だろうな……砦の責任者が、なぜこんな所で死んで……なぜ、こうなるまで放置されていたのだ……?」
「失礼……」
話し合うアリスをよそに、プロメスティンが部屋の本棚に目をつける。そして、一冊の本に目をつけて机で開き始めた。
「皆さん、これを」
彼女が見せてきたのは、将軍の日記だった。
そこには、執拗なまでに『王妃様』と殴り書かれていた。
「うひゃっ!? なんじゃこりゃ!?」
「王妃様……」
驚くヴィクトリーと、リマ村での事を思い出すルカ。戦っていた相手も、虚ろに王妃様の名を口にしていたはずだ。
「……どうやら、マトモな精神状態では無かったようですね」
プロメスティンがそう言いながら捲る日記……殴り書かれて内容も不明瞭だったものが、日を追うに連れて意味が通る文章になっていく。
そして将軍は、ある時我に返った。理性が戻り、『王妃様』とやらに洗脳されていた事に気付いた旨が書かれていた。
更に、その洗脳はグランゴルド城にも及んでいたらしい。この将軍が洗脳から免れたのは、城から離れて洗脳効果が薄れたからだ。
そして、最後のページは──
思えば、あの王妃は何者なのだ? いつからあの女は、我が国の王妃となった? そしていつから、あの女は我が国を支配している? 王は、王は
──そこで、途切れていた。
「…………」
日記を読み終え、ルカ達は顔を上げる。
「どうやら、王妃様って奴が今回の黒幕らしいな。クィーンアントの事?」
「いや……クィーンアントは確かに強力な妖魔だが、そこまでの力は無いはずだ」
「でも、国をまるまる洗脳が出来るほどの魔力を持つ敵が相手だなんて……」
ルカの疑問に、アリスとソニアは頭を悩ませる。
どうやら、グランゴルドにはクィーンアント以上のヤバい敵が居るらしい。だとすると、その候補に上がるのは──
「──リリス……!!!」
ヴィクトリーは、歯噛みしながら声を震わせる。メフィストとの問答もあった為、思いつくのに時間はかからなかった。
「そうね、リリスは私を洗脳してサバサを堕落させようとした……十分に有り得る話よ」
「思わぬ情報でしたね……」
「…………」
サラとプロメスティンが話す中、アリスは黙って考え込む。
「……ここで話してても仕方がない。早く出口に向かおう」
「そうだな……」
ルカ達は、再び出口を探すのだった。
※
どうにか出口を見つけ、外に出たルカ達。
「よし、無事に砦を抜けたな!」
アリスの言葉に、皆頷く。このまま、ゴッダールまで一直線に進むだけなのだが……
そういう所で、唐突にアルマエルマが踵を返した。
「……ここは、私に任せてもらおうかしら。あなた達は、先に行きなさい」
「いったい、何を──」
アリスが言いかけた、その時だった。
吹き荒ぶ
「この世界のサキュバスクィーン、アルマエルマ……まさか、一人で私達を足止めしようというのかしら」
「リリス姉さん相手に、そこそこやったらしいが……二対一じゃ、ちょっと無茶なんじゃないか?」
来たのは、アスタロトとモリガン──リリス三姉妹の、次女と三女だった。
「やっぱり……!!」
「リリス三姉妹……!!!」
ヴィクトリーとルカが、突撃しようと身構えるが……アルマエルマが腕を伸ばし、静止してきた。
「何をしているの? 早く行きなさい」
「で、でも……」
「く……」
何時になく、真剣なアルマエルマの声。どうやら、彼女は本気でリリス三姉妹を足止めするらしい。
アスタロトとモリガン……気を測るに、彼女らは熾天使と同格。記憶に新しいグノーシスと戦った時でさえ、総力戦にも関わらずあのザマだった。
そんな相手が二体も──
「二人とも、行くぞ! 我々が残っていても、足を引っ張るだけだ!」
アリスは、ヴィクトリーとルカの肩を引っ張る。
彼女の言う通りだった。自分達がいても、グノーシスの時みたいに何も出来ずにただ蹂躙されるだけだ。
「っ……必ず無事でいてくれよ!」
「死ぬんじゃねぇぞ、アルマエルマ!」
ルカとヴィクトリーは、仲間を連れて砦から走るのだった。