もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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どうも、スパイです

 モリガンとアスタロトの強襲をアルマエルマに任せながら砦を抜け、ついにゴルド地方にやってきたルカ達。

 

 すぐ北には町が見えており、あれが話に聞く『ゴッダール』だろう。

 

「でも、アルマエルマを置いてくなんて……」

「心配ない、奴は四天王だ。必ず窮地を切り抜けるはず。さぁ、我々は我々の使命を果たすぞ! ここで右往左往している時間は無いはずだ!」

 

 アリスが言うと、戸惑っていたルカも次第に覚悟を決めた顔になり……頷いて、進むべき方向に向き直した。

 

「そうだな……行こう!」

「おう!」

 

 ルカとヴィクトリーを先頭に、北へ進む。

 

 進みながら、後方にいたソニアがポケット魔王城のスイッチをポチポチ押していた。

 

「あれ、ポケット魔王城が起動しないんだけど……もしかして、故障?」

「あれ……おかしい所はありませんね」

「ハーピーの羽も使えないわ」

「俺の瞬間移動も使えねぇぞ」

 

 どうやら、移動魔術の類(たぐい)が使えなくなっているようだ。それに、「ふむ……」とアリスは腕を組む。

 

「何やら、この大陸の全域に妙な結界が貼られているようだな……そのせいで、外界に出れないようだ」

「それは、不便だな……早く王妃って奴を倒さないと!」

 

 ルカ達は、ゴッダールへ急ぐのだった。

 

※

 

 ゴッダールへ着いたルカ達の目に飛び込んできたのは、異様な光景だった。

 

「あへぇぇぇ……王妃様、王妃様ぁぁ……」

「王妃様ぁ……おう、ヒ、ひ、ヒヒ……さま……」

「王妃様の、為に……この身を、捧げますぅ……」

 

 住人が全員、目も虚ろで『王妃様』と連呼している。

 

「こ、これって……」

「ポルノフの変態みたいな感じじゃないわ……なによ、これ……!?」

 

 ルカもソニアも、異様な光景に後退りする。

 

 ヴィクトリーも、顔をしかめながらプロメスティン達の方を振り返った。

 

「プロメスティン、アリス、何か分かるか!?」

「これは……相当な洗脳ですね。それに、恐らくは脳機能に障害が出ないギリギリの調整までされています。こんな高度な洗脳は初めて見ました……」

「それに、この全身を舐め回されるような淫気……只事ではないな。放っておけばこの町の人間が全員廃人になってしまうぞ……!!」

 

 冷静に分析する、知恵の者二人。それを聞き入れたヴィクトリーは前に出て、住人を一人一人改めた。

 

 精神汚染は、主に若い人間を蝕んでいた。

 

「あぅ、ぅぅ……おうひ、さま……」

「あたしね、あたしね……頭の中、ドロドロ……」

 

 年端もいかない子供までもが、『王妃様』の餌食になっていた。

 

「…………早い所、王妃様っちゅう奴をぶっ飛ばさねぇとな」

「ああ……こんな事、放っておけないよ!」

 

 青筋を浮かべて歯噛みするヴィクトリーと、彼の隣に立つルカが、同時に酒場の方に向く。

 

 そこまでの距離は無く、足早に酒場へ入るのだった。

 

「ここで、店主にローストチキンを頼むのだ。そうすれば、二階にいる工作員と接触できる。もっとも、店主がまだマトモならばな……」

 

 酒場に入るなり、アリスがそう言う。それに従い、ルカ達は動くのだった。

 

「うぅぅ……い、いらっしゃいませ……ご注文をうかがいましょう……」

「えっと……ローストチキンをお願いします」

 

 ルカが頼むと、店主は首を横に振る。

 

「お客さん、ここは酒場です。そういうのは扱っておりませんよ……そういう訳で、二階へどうぞ。そちらで特大のローストチキンを用意しましょう……」

 

 作戦の段取り通り、ルカ達は二階へ案内された。

 

「でも、工作員ってどんな人だろう……いかにもスパイって感じの怪しい人物なのかな」

「一人目がアルマエルマだったからなぁ、二人目も頼りになる奴に違いねぇぞ」

 

 ソニアとヴィクトリーが話すも、アリスは「ドアホどもめ」と振り向いてきた。

 

「ここは町……スパイっぽい格好でスパイが務まるか。なんの変哲もない、町に溶け込む外見の者に決まってるだろう」

「あっ、そっか……」

「そう言われたらそうよね……怪しい外見なんて、してるわけないか……」

 

 ヴィクトリーとソニアがそう言い、ルカも二階に行く。

 

「どうも、スパイです」

 

 ルカ達を迎えたのはなんと、ネロだった。相変わらず派手な格好をして、大鎌を背負っている。

 

「すっごく怪しい!」

「ネロ! おめぇも工作員なんか!?」

「いえ、実は違うのですが……義理と人情で、その代理を務める羽目になりました。本来の工作員は、そこにいる商人風の男性。しかしまぁ、ちょっと事情がありまして……」

 

 ネロが、後ろの方に目を向ける。そこに、商人風の男性が居たのだが……ぼんやりしたまま棒立ちで、額に御札が貼られていた。

 

「あれは、陰陽術の札か……貴様、何をしたのだ?」

「その、彼に少し話を聞こうとしたのですが……不審者と勘違いされ、騒ぎになりそうだったので……」

「まぁ、その格好じゃそうなるか……」

「あれでは数日はデクノボウだな……」

 

 そういう訳で、ネロもまた工作員代理として協力してくれるらしい。

 

「そういうわけで、私が彼から聞き出したメッセージを伝えます。皆さんにはグランゴルドに向かってもらう訳ですが……ここから北東に『進軍の丘』があり、そこを通過する必要があります」

「『進軍の丘』か……過酷な地形だと聞いている。しかしそこを越えればグランゴルドは目前だな」

「進軍の丘にはゴーレムが複数体配置されてるとか。ご存知の通り、外敵を撃退する魔導の巨人です。その対策のため、グランドノアから助っ人が送られました。東の大毒沼にて、その助っ人と合流しろとの事です」

「助っ人……ゴーレム退治の専門家か何かか? そいつの力を借り、進軍の丘を越えればいいのだな」

「はい……進軍の丘を越えれば、グランゴルド城は近いです。そこでまた、新たな工作員に接触してください」

「うむ、分かった……」

 

 東の大毒沼で助っ人と合流し、その者の力を借りて進軍の丘を攻略。そしてグランゴルド城に向かう……それが、大まかな流れになる。

 

「──私が工作員から聞き出したメッセージは、以上です」

「そうか……よし、とりあえず東の大毒沼だね」

「ああ、とっとと向かってやろうぜ!」

「あっ、少しお待ちください」

 

 早く行こうとするルカとヴィクトリーを、ネロが呼び止めた。

 

「なんだ? まだなんかあるんか?」

「はい。個人的な贈り物です」

 

 ネロがそう言って渡してきたのは、これまた陰陽術の呪符だった。ルカが受け取り、しげしげと見る。

 

「これは……お札?」

「はい、その名も『アンチワープキャンセラー』です」

「呪符なのに、呪符っぽくない名前!」

 

 ツッコむソニアに、ネロは「ははは」なんて笑う。

 

「ハイカラでしょう? これを持っていれば、移動魔法などの封印が解除されます。この地では移動魔法やポケット魔王城などが使えないでしょう? その封印効果を無効化し、普通に使えるようになるのですよ」

「俺の瞬間移動も使えるっちゅう訳だな!」

 

 ヴィクトリーの瞬間移動もこれで復活し、ポケット魔王城も機能を取り戻し、ひとまずは安心だ。

 

「しかし、こんな貴重品を……なぜそこまでして我々の旅を助けるのだ?」

「いえ、ただの親切に過ぎませんよ……」

「工作員相手にミスをする上、嘘までヘタなのだな……」

「す、すみません……」

 

 アリスに詰められる、ネロ。やはり、彼にはそれなりに深い事情がありそうだ。

 

 ここで、ヴィクトリーが思い出したかのように手を叩いた。

 

「そう言えば、精霊の森では助けられたよなぁ! 礼を言うぜ!」

「いえいえ、あれもただの義理人情です……それに、あの時貴方の偽物の方も取り逃してしまいました」

「またまたぁ、おめぇが助けてくれなかったらあそこで旅が終わってたんだぜ。こういうのは、ちゃんと感謝しねぇとなぁ!」

 

 ヴィクトリーはそう言い、サムズアップする。ネロはそれを見て、笑顔で返してくれた。

 

「ありがとうございます……やはり、この世界でも貴方は貴方ですね」

「うん? それって、どういう──」

 

 ヴィクトリーが聞きかけた時、ネロは食い気味に「ですが」と遮った。

 

「貴方の偽物が、またこの辺を彷徨(うろつ)いています。何を企んでいるのか分かりませんが、どうか注意を払ってください」

「黒い俺が……?」

 

 まさかの、ネロからの新たな忠告。それで、ヴィクトリー達の顔も真剣になった。

 

「黒のヴィクトリーが……? 全てを超えた先でって、言ってたけど……」

「ここに来て、またそいつか……こちらは、王妃の相手で忙しいと言うのにな」

 

 ルカとアリスも、それを聞いて難しい顔をする。

 

 注意すべき事が、ひとつ増えてしまった。この戦い、とことんまで一筋縄ではいかないらしい。

 

「黒のヴィクトリーについては、私の方で追ってみます。貴方達はグランゴルドを惑わせている『王妃』の方に集中してください」

「ああ、分かった」

「おう、気を付けろよ!」

 

 とにかく、これでゴッダールでやる事は終わった。

 

 ルカ達は、北東にある大毒沼に向かうのだった。

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