もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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意外な工作員

 ゴッダールを出て、大毒沼に到着したルカ達。

 

 その名の通り、見える風景全てが毒沼の拓けた場所だった。

 

「うわぁ……幾ら隠密任務とはいえ、こんな所で待ち合わせなきゃいけないの……?」

 

 ソニアが、ポコポコと泡立っている毒の沼を見つめる。色も毒々しい紫で、あまり触れてるとダメージになってしまうだろう。

 

「飛べないメンバーが居る以上、避けれませんね……」

「そうね……毒のダメージを覚悟で工作員を見つけるしかないわ」

 

 プロメスティンとサラも、そう言う。ルカも、仕方なく毒の沼に足を踏み入れようとした時だった。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 ヴィクトリーが、立ち止まってルカを止める。

 

「どうしたの、ヴィクトリー?」

「毒沼の向こうの気……覚えがあるぞ。瞬間移動出来るかも知れねぇ」

「瞬間移動……ああ、アンチワープキャンセラーがあるから……!」

「む……行けるのか?」

 

 ヴィクトリーは、ルカに手を差し出して額に二本指を添える。

 

 ルカ達が準備出来たのを確認してから、ヴィクトリーは瞬間移動する。

 

「うわっ」

 

 唐突にヴィクトリー達がいきなり現れ、そんな声を出したのは──グランドノアの魔導顧問、メフィストだった。

 

「やっぱり! メフィスト先生じゃねーか!」

「あら貴方……こんな場所で瞬間移動なんて出来るのですね」

 

 嬉々として言うヴィクトリーに、メフィストはそう言って微笑む。

 

「ネロっちゅう奴が便利な物くれたんだよ! あいつには、また礼を言わねぇとなぁ!」

「そうだね……それで、ここの工作員って……」

「はい。この私、メフィストがその工作員……進軍の丘を陣取っているゴーレム達は、私にお任せ下さい」

 

 自信満々に言う、メフィスト。どうやら彼女は同行してくれるらしい。

 

「やけに自信満々な事を察するに……どうやら、奇策があるらしいな」

「メフィスト先生が居てくれたら、百人力だぜ!」

「グランドノアの魔導顧問が、直接手を貸してくれるのね……相手が魔導人形なのもあって、頼りになるわ!」

 

 アリスとヴィクトリーとサラは、メフィストを歓迎するが……ソニアは、怪訝な表情をしたままだった。

 

「ねぇ……メフィストは前までグランベリアを連れてきたり、リリスと密会してたり……更には、魔王の腹心なんでしょ? 本当に裏切らない……?」

「おいソニア、メフィスト先生に失礼だぞ!」

「いや、アンタのメフィストへの信頼は何なのよ!?」

 

 ソニアとヴィクトリーのやり取りを見て笑う、メフィスト。彼女はその調子を崩さずに口を開いた。

 

「まぁ、疑われるのは当然ですが……安心してください、グランドノアに誓って、私は粉骨砕身の思いで協力させてもらいます」

 

 微笑んでる顔とは裏腹に、真剣な声でそう言うメフィスト……嘘を言っている雰囲気ではないのだが、如何せん深緑のローブに身を包んだとんがり帽子のラミア魔女なので、どうしても怪しく見えてしまうのだ。

 

「いいえ、どうしても私が裏切りそうなフォルムに見えてしまうのは認めましょう。しかし逆に考えてください。こういう物語では、裏切りそうに見える見た目はミスリードで、実は秘め事を抱えながら主人公たちに手を貸す重要人物だったりするのです」

「いきなり何の(はなし)してるの……」

「地の文と会話し始めたぞ」

 

 ルカとヴィクトリーは、長々と話すメフィストを相手に訳の分からないツッコミをする。

 

「そういう意味では、主人公の幼馴染のヒロインなんかは……裏切り者の役が似合うのでは無いでしょうか?」

「グギギギギ……」

 

 メフィストに笑われながら言われるソニアは、およそヒロインとは思えない声を出している。

 

 それを見ていたアリスは、呆れながら「メフィスト」と呼ぶのだった。

 

「無駄話はそこまでにして……進軍の丘に行って、貴様の策を見せてもらうぞ」

「はい、元よりそのつもりです……」

 

 とにかく、メフィストが仲間に加わってくれた。彼女には策がある上に、普通に戦っても強いのは承知しているので、心強い。

 

 そうして歩き出そうとした時……プロメスティンがおずおずと手を上げてきた。

 

「あの、行くのはいいのですが……この毒の沼、どうするんです?」

「あっ」

 

 今立っている場所は、辛うじて毒沼に侵食されていない場所。だが、周囲に見える景色は完全に毒沼の一色のみだ。

 

「……し、瞬間移動でゴッダールに戻るしかねぇな。酒場のおっちゃんの気は……」

「二度手間だなぁ……」

 

 ヴィクトリーは苦笑いしながら二本指を額に付け、ルカはジト目で彼を見るのだった。

 

 

 一旦ゴッダールに戻り、また大毒沼まで来て、そこから更に北へ行き……ようやく、進軍の丘と呼ばれる所にたどり着いた。

 

 複数体のゴーレムが居ると聞き、ヴィクトリーはせいぜい二、三体程だろうと思っていたが……現実には、十数ものゴーレムが所狭しと洞窟の入口を守っていた。

 

「あ、あの洞窟に入んなきゃ丘は越えられねぇんだよな……ひゃあ、これは流石に骨が折れるぞ……」

「骨が折れるどころか、押し潰されて全身粉々になるのが関の山だな……もちろん迂回路は無いから、メフィストの策に頼るしかない」

「はい、お任せ下さい」

 

 ヴィクトリーとアリスの会話を聞き、メフィストが前に出てきた。

 

「それでメフィスト先生、どうすんだ? やっぱ、あのすげぇ魔術でみんな吹っ飛ばしちまうんか?」

アレ(メフィストフェレス)は、このような巨大な相手には効果が薄いんです。それよりも、もっと効率的な方法があります」

 

 メフィストが取り出したのは、これまた呪符だった。しかも、魔導の力が込められているのが傍目からでも分かる。

 

「ゴーレムは、魔導の産物……そして、私もグランドノアの魔導顧問。魔導回路に作用する魔力を込めた呪符ぐらい、作れるのですよ」

 

 メフィストはそう言い、おもむろにゴーレム達の前に躍り出る。

 

 十数のゴーレムが一斉に注目し、ゴゴゴと音を立てながら動き出す。それを前にしてもメフィストは億さず、呪符を掲げた。

 

 その呪符から光が迸り、照らされたゴーレム達が次々に足を止める。そして、攻撃しようとする姿勢のままボロボロと崩れ、一体も残らずに土塊になってしまった。

 

「おお、やっぱすげぇや!」

「ゴーレムが、一体残らず……」

 

 素直に驚く、ヴィクトリーとルカ。その横で、アリスは「ふむ」と言った。

 

「さて、次はこの進軍の丘を抜けるだけだ……道中は険しい。気を引き締めて行くぞ!」

「ああ……行こう!」

「よっしゃあ!」

 

 ルカとヴィクトリーは、意気揚々と進軍の丘の洞窟に足を踏み入れるのだった。

 

 

 道中、どういう訳かグランゴルドの自動人形が立ちはだかってきた。

 

 ヴィクトリーが、やけに胸の大きな幼女を模した人形と格闘している。

 

「なんだこのふざけたデザインのロボットは!?」

「それはパイズリ人形。気を付けてください、油断してるとパイズリで搾られてしまいますよ」

 

 メフィストが、パイズリ人形と攻防するヴィクトリーにそう言う。

 

「だぁあっ!!」

 

 ヴィクトリーが正拳突きで胸を打ち抜き、ぶっ飛ばして壁にまで叩きつけるが……パイズリ人形は、立ち上がってくる。

 

「胸部が緩衝材となって打撃のダメージを吸収していますね」

「そんなら、こいつでどうだぁ!」

 

 ヴィクトリーが剣を抜き、パイズリ人形に突撃する。すると、パイズリ人形は応じるように背中から銃のようなものを展開し、そこから火炎放射を放ってきた。

 

「うわぢゃぢゃぢゃぢゃーっ!?」

「ちなみに自己防衛用の兵器も搭載されてますので、油断なさらず」

「それを早く言ってくれ──っ!!!」

 

 絶叫しながらヴィクトリーは、エネルギー波を放ってパイズリ人形を爆破した。流石にこれには耐えられなかったのか、それで機能停止するのだった。

 

 周りの皆も、戦闘を終えて一息つく。

 

「ふむ、及第点と言った所でしょうか……思うに、こういう相手はニガテのようですね」

「っちくしょー……ロボット系の魔物は、気を感じねぇから上手く立ち回れねぇぞ……兵器も普通に痛いしよ」

 

 メフィストに言われ、素直に言うヴィクトリー。すると彼女は「オホン」と咳払いし、人差し指を立てて注目させた。

 

「ロボット系の魔物は、それぞれ特徴があります。今のパイズリ人形の場合は見た目通りにパイズリで搾り取ってくるのがメインで、中距離を維持された際にサブウェポン……そう言った具合でどんな戦い方をしてくるのか、どんな兵器を使ってくるのかを予測出来れば戦いやすいハズですよ」

「対策と傾向っちゅう訳だな。タイムパトロールの入隊試験思い出すなぁ……頑張ってみるよ、メフィスト先生!」

 

 やけに仲の良い二人を見たルカとソニアが、目を点にする。

 

「ヴィクトリー……やけにメフィストと仲がいいな」

「いつからメフィストはヴィクトリーの先生になったのよ……」

「いつからって……メフィスト先生は魔導学園の先生じゃねぇか」

 

 ヴィクトリーは、キョトンとした様子でルカ達に言う。何でメフィストが裏切りそうなのかが、分からないと言った様子だった。

 

 ソニアは何かを思い出したような顔をしてから、キッとメフィストに向き直した。

 

「ねぇ……そう言えば、昨日の作戦会議の終わりに二人きりで話してたよね? いったい、何を(はな)してたのかしら?」

「私が個人的に、彼に確認したい事があっただけですが……」

「ああ、本当に少し(はな)しただけだぞ!」

 

 疑いの目を向け続けるソニアだったが……アリスが、手を叩いた。

 

「そこまでだ、ドアホども。余も何を(はな)していたか気になるから後で聞くとするが……今は、この進軍の丘を抜けるのが先決だ」

 

 アリスはそう言ってから、ヴィクトリーの腰をパンと軽く叩いた。

 

「こやつは脳みそ筋肉ではあるが、簡単に絆されるような者ではない事は我々は知っているはずだ。余は、この男が信用するからメフィストを信用している節もある。だから、信じてやれ」

「そうね……ごめんなさい」

「いえいえ、疑われるのは慣れています……今回工作員として動いてるのは、その疑いを晴らす為という目的もあります。宣言通り、グランドノアの威信にかけて貴方たちを全力で勝利に導くつもりですので、どうかご期待を」

 

 ここで話をひと段落させ、ルカ達は先に進む。

 

「僕が気になったのは、なんで一晩でそこまで仲良くなってるのかって事だけど……もしかしてヴィクトリー、メフィストとセッ」

「してねぇよ!」

 

 先頭の男二人は、そんな会話をしながら進軍の丘を進むのだった。

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