もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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野営:グランゴルド前

 進軍の丘を進み続ける、ルカ達。

 

 道中は険しい上に長く、普通に進むだけでも体力を要する。そこに元々住んでいたハーピーや配備されたと思われる自動人形の魔物が襲いかかってくるので、過酷を窮めていた。

 

 だがルカ達はそれでも進み、そして──

 

「ふぅっ!」

「これで突破だな!」

 

 二人は、出口に陣取っていたゴーレムを倒していた。

 

「いやはや、二人ともお見事ですね……呪符を切らしてしまって申し訳ないです」

「大丈夫だよ、僕達二人ならどうにでもなる強さだったし」

「入口のゴーレム達を無力化しただけでも、メフィスト先生はすげぇよ!」

 

 申し訳無さそうにするメフィストに、二人は快く言う。

 

 入口で使っていた呪符は魔力が切れて使い物にならなくなっていた為、ヴィクトリーとルカが力を合わせてゴーレムを倒したのだ。

 

 そして、遂に進軍の丘を越えたのだった。

 

「それで……貴様も単独行動するのか?」

 

 アリスがそんな事を聞いてくるが、メフィストは首を横に振る。

 

「いいえ、このまま貴方たちと行動を共にします。次の工作員とは少し段取りを確認したいのです」

「次の工作員も、頼りになる人なの?」

 

 ソニアが聞くと、メフィストは「ええ」と頷いた。

 

「人間なので単純な力としては微妙なのですが、大いに戦力になります。この作戦の要にもなりますので、どうかご期待を」

「人間かぁ……今までアルマエルマだったり怪しい通りすがりだったりしたから、今更な感じが凄いわね……」

「おやまぁ、手を貸してくれるのが裏社会の首領、『ドン・ファーザー』と聞いてもですか?」

 

 メフィストがそう言うと、ヴィクトリーとプロメスティンとヒルデ以外の者達が驚愕した。

 

「ドン・ファーザーですって……!?」

「知ってんのか、サラ?」

「知ってるも何も、文字通り裏社会の首領(ドン)よ。この世界には色んなマフィアがいるけど、ドン・ファーザーには誰にも逆らえないのよ」

 

 どうやら、この世界では有名な話らしい。

 

 マフィアには、何回か会ったが……その中のトップが、今回になって手を貸してくれるというのだ。

 

「モンテカルロに居た時、話聞かなかったのか?」

「いやぁ、俺達別件で忙しかったし」

 

 ルカとヴィクトリーは、そう話しながらあの時の事を思い出す。

 

 ヴィクトリーはヒルデとプロメスティンと共に、ジャスティスカイザーと名乗る女のヒーローの依頼をこなしていたのだ。

 

「プロメスティンと一緒に、ヒーローズしてたよ」

「やっぱり私もヒーローズの一員だったんですね」

「元気にしてっかなぁ、ジャスカさん」

 

 あの時の事に思いを馳せる、ヒルデとプロメスティンとヴィクトリー。

 

「っといけねぇ、今はグランゴルドだったな……」

「ああ……」

 

 ヴィクトリーとルカが向き直した先……夕焼けが燃える空の下、高壁に囲まれた城が見えていた。

 

「もう見える距離に居るけど……時間が時間だな」

「では、キャンプの用意をしましょう。ラミ達は火起こしを、パピ達はテントの設営を手伝ってください」

 

 メフィストが言うと、ポケット魔王城からインプ達やパピ達が「はーい!」と元気よく出てきた。

 

「わっ!? いつの間に仲良くなったの!?」

「なるほど、先生だから子供には慣れてるのか……」

 

 驚くルカに、納得するアリス。

 

「っちゅーか、ポケット魔王城ってこっちの様子丸わかりなんか!?」

「ラディオとヒルデを修理してる間、二人はずっと貴方達の戦いを祈りながら見てましたよ」

 

 別の理由で驚くヴィクトリーに、プロメスティンがそう言うのだった。

 

 

 テントが張り終わる頃には既に帳が降り始め、そこから晩飯を食べて一息つく頃にはすっかり夜。

 

「ふんっ、だぁああっ!!」

「もっと土の力を剣に込めるがいい、最大限だ」

 

 アリスの監修の元、ルカは修行する。土の力を活かした新技を教えているらしい。

 

「ヴィクトリーさんは、もっと戦闘中にリラックスした方がいいですね。常に全開で戦っていては、スタミナが持ちません。必要な時に必要なだけの力を引き出すイメージトレーニングを」

「うげげ……俺、こういうの苦手だぞ……」

 

 メフィストがそう言いながら、ヴィクトリーに瞑想させていた。禅を組まされて静かに目を閉じるが、苦手意識が顔に出ている。

 

 二人は独自に修行し、納得がいくまで鍛えた後はぶつかり合って実戦訓練……そんなことを、繰り返して強くなっているのだ。

 

「……そう言えば、まだ聞いていなかったな。あの時、何を話していたのだ?」

 

 アリスはそう言い、メフィストを見る。

 

 あの時……それは、作戦会議が終わった後にヴィクトリーと二人きりで話し合った事だ。

 

 気になっていたらしい仲間の皆も、注目してきた。

 

「ええ。話しても構いませんね、ヴィクトリーさん?」

「ああ」

 

 ヴィクトリーの承認を得たメフィストは一息休み、静かに語り始めるのだった。

 

 

「貴方は……リリスに『復讐』したいのですか?」

「違う」

 

 まさかの、即答。至極冷静に、メフィストの目を見ながらの答えだった。

 

「……なんでそう思ったんだ?」

 

 呆気にとられているメフィストに、逆に質問するヴィクトリー。

 

「……失礼。リリスと対峙している際の貴方の様子と、彼女の発言からして……貴方は、大切なものをリリスの手によって失ったと察しました」

 

 メフィストの言葉に、ヴィクトリーはズキリと胸が痛む。だが、それを表情には出さずに真っ直ぐに前を向いた。

 

「俺は……ある男の子と約束してたんだ。名前も聞きそびれちまったんだけどな。家族想いの男の子だ……ラダイト村で自分の力で家族を助けたら、俺と手合わせするって約束したんだ。でも、リリスはラダイト村を滅ぼして……その子も、目の前で殺された」

「……お察しします」

 

 小さな子供が目の前で殺される……それがどんなに辛いことか、教師職のメフィストには容易に想像できた。しかもその子が自分と約束を交わしていたのだとしたら、尚更だ。

 

「でもな、その子は最期に俺に助けを求めた訳じゃねぇ。ましてや自分のカタキを討ってくれって頼んだ訳じゃねぇ。俺に……ヒーローの俺に、この世界を守ってくれって頼んだんだ」

 

 これが、ヴィクトリーがヒーローとして戦う理由だった。

 

 ワクワクの詰まったこの世界を、守る……ヒーローとして信じたあの子の為にも、もちろんルカ達の助けになる為にも。

 

「……リリスは、憎しみだけで勝てる相手じゃねぇ。復讐なんてもってのほかだ」

「その通りです。復讐心に駆られて突っ走ってるようならば作戦から外す事も考えましたが……どうやら貴方は、()()()()はとっくのとうに越えていたのですね」

「俺一人じゃここまで思い至れなかったのも事実だ。アルマエルマに言われて、仲間と冒険して……グノーシスに追い詰められて、ようやく自分の戦う理由が分かったって感じだ」

 

 ヴィクトリーはそう言ってから、拳をギュッと握った。

 

「それはそうとして、リリスとは再戦してぇ! やられっぱなしは、サイヤ人の本能が許さねぇからなぁ!」

「その心は盲目な復讐心ではなく、徹底的な闘争心でしたか……」

 

 シャドーボクシングしてやる気を見せるヴィクトリーに、それを見つめるメフィスト。

 

 彼女は微笑み、改めて向き直した。

 

「貴方の覚悟は伝わりました。語ってくれてありがとうございます」

「へへへ、そういう訳だしこれで……」

 

 立ち去ろうとするヴィクトリーを、メフィストは「お待ちなさい」とまた呼び止める。

 

「時間を取らせた詫びに、私からも出来ることをしましょう。もし良ければ、長旅で溜まったものを吐き出させるコトも……」

「そ、それは大丈夫だ……メフィストさんは明日、出来る限りの事をしてくれればいいんだけど……俺、ヒーローだから個人的にっちゅうのは……」

 

 妖しく誘うメフィストに、ヴィクトリーは遠慮気味に言う。謙虚だがイケズな彼に、彼女は頬を膨らませた。

 

「いくら見返りを求めないヒーローとは言え、相応の報酬が無ければ人として腐ってしまいますよ」

「うーん……」

 

 そう言われてヴィクトリーは考え……そして、思いついた。

 

「じゃあ、師匠になってくれ!」

「し、師匠ですか……?」

 

 まさかの提案に、困惑気味になるメフィスト。だが、ヴィクトリーは続けた。

 

「なんだよ、戦い方を教授してくれるみたいな事言ってたじゃんかよ。それに、戦闘の経験ならそっちの方が上だし……物教えるのは、得意な方だろ?」

「そう言われてみればそうですね……分かりました。出来るだけの事はしてみせましょう」

「ああ、よろしくな、メフィスト()()!」

 

 

「──そういう訳で、私とヴィクトリーは先生と生徒になりました」

「うーむ、戦闘バカもここまで来ると感心するな……」

 

 メフィストの語りに、アリスは呆れる。

 

「なるほどね、だからヴィクトリーはメフィストの事を先生って呼んでたのね……」

「……ラダイト村のその子の願い、私達も無下には出来ないわ」

「ヒルデも、世界を守るために戦ってる……同じだね」

 

 ソニアとサラとヒルデも、思い思いに言うのだった。

 

「しかしまぁ……無敵に思えた金髪の変身も、間近で見れば心が乱れてるのが丸わかりです。どんなに肉体が強くても、心が乱れていると実力が引き出せなかったりするのです」

「そうだな……かく言う余も、明鏡止水にはまだまだだ」

「僕もウンディーネの力を扱うために、そこを努力し始めた所なんだ」

「マジかよ、置いてかれてるのは俺だけか」

 

 強くなる為に、心を鍛える……それは、どの世界でも同じ事のようだ。

 

 心の迷いや邪念は、戦う際には足枷となる。ルカとヴィクトリーは、そこを鍛える段階に立ち入ったのだ。

 

「よし、それじゃあ二人とも。寝る前に戦いながら平常心を保つ練習だ。二人で思いっきり戦ってみろ」

「いいですね、エリクサーなら余ってますのでそのつもりで」

 

 なんと、アリスとメフィストからのまさかの提案。だがルカもヴィクトリーも「待ってました」と言わんばかりに乗り気で、向き合った。

 

「敵はリリスかも知れねぇからな……鍛えられるときにうんと鍛えねぇとな!」

 

 そう言いながら、(スーパー)サイヤ人2になるヴィクトリー。

 

「ああ……僕の精霊の力も、そろそろ核心に迫らないと」

 

 そう言ってからルカは目を閉じ、ウンディーネの水の力を己に宿す。

 

 二人は、ミダス廃坑で行った実戦訓練の時と全く同じ構えで向かい合い──そして、ぶつかり合った。

 

 アリスとメフィストに見守られながら、二人は夜遅くまで修行するのだった。

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