もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
野営から、夜が明けた。
思いっきり修行してからエリクサーで回復してから睡眠を取ったヴィクトリーとルカは、同じく万全の状態の仲間達を連れて進み続け──そして、グランゴルド城に到着したのだった。
「これって……」
「ひどいな……」
町の様子は、ゴッダール以上におかしかった。
「王妃様ぁぁぁ……あひぃいぃい……」
「王妃様、王妃様ぁ……全て、捧げますぅぅ……」
呻き声が、そこら中から聞こえる。廃人寸前といった人間が、その辺で倒れながら虚ろに言っている。もはや、町として機能していない状態だった。
「淫気が濃い……長居すると、我々も不味いな」
「ですので、早い所工作員の所へ向かいましょう」
アリスの言葉を聞いたメフィストの案内で酒場に行こうとするが……そこに、アリ娘が一匹来た。
「むっ……任せますよ」
「えっ!?」
アリ娘がそこら中に倒れてる人間を一人一人見て回り、王妃の洗脳にかかってることを確認……その間に、メフィストはアリス達を連れてその辺に隠れ、残されたのはルカとヴィクトリーだけ。
そんな彼らの番が、ついに回ってきた。
「あへぇぇぇ……王妃様ぁぁぁ……」
「王妃様ぁ……あひぃぃぃ……」
ルカとヴィクトリーは迫真の演技を披露する。物陰から冷たい視線を感じながら、その調子を維持し続けた。
「……ヨシ」
アリ娘は二人が王妃の術中にかかっているのを確認し、立ち去って行った。
「な、何とかなったな……」
「うぅ……トランクスさんが見てたら、なんて言われっかな……」
「それでは、今の演技が無駄にならない内に行きましょうか」
メフィストはそう言い、先頭を歩く。彼女の案内で、入り組んだ町の裏路地に入り、隠れ家のような酒場に辿り着いた。ここが、協力してくれる工作員──ドン・ファーザーと落ち合う場所らしい。
メフィストが扉を開け、その酒場に入る。
「おう、来たな」
そこに居たのは、スーツに身を包んだ男だった。
ヴィクトリーは「オッス!」といつもの感じで挨拶するが……男の顔を見たルカとソニアは目を見開いて彼を凝視した。
「って、ぇええぇええええ────っ!!!?」
「ら、ラザロおじさんっ!!?」
「どわぁあぁああぁあっ!!? お前ら、なんでこんな所にいるんだ!!?」
顔を見合せて驚く、ルカとソニアとスーツの男。
「…………???」
「あ、ありゃ……なんか、やべぇ感じか?」
メフィストとヴィクトリーは、困惑するばかりだった。
※
グランドノアが用意した工作員は、ドン・ファーザーとその部下達。彼らと、テーブル席を共にする事になった。
この場に居るのは、ドン・ファーザーとその側近の渋い雰囲気の老人。そして、モンテカルロを縄張りにしていたエルカという男だった。あとついでに、酒場で優雅にカクテルを作っている店主もそうらしい。
だが、問題はそのドン・ファーザーだった。
「ちょっと、なんでラザロおじさんがこんな所にいるのよ!!」
「お前達こそ、なんで国家転覆作戦に加担してんだ!! ガキはガキらしく健全に冒険しやがれ!!」
ソニアとドン・ファーザー……もといラザロが、そう言い合っていた。
「その、失礼ですが……知り合いだったのですか?」
「はい……その、ラザロおじさんは僕の父さんの親友で……親が早くに居なくなっちゃった僕やソニアの面倒を見てくれてたんです」
メフィストに質問され、ルカは答える。
彼ら二人からしたら、ラザロは育ての親も同然だ。そんな人がまさか、マフィアの首領を張っているなんて知れば心底に驚くに決まってる。
「そうか、あんたラザロさんかぁ! イリアスヴィルでは一回すれ違っただけだったもんなぁ! 格好が違いすぎて分かんなかったぞ!」
「ん、お前は……あぁ、思い出した。ソニアが言ってた、空から降ってきた男か。この二人とは仲良くやれてるか?」
「もちろんだ!」
ヴィクトリーとラザロは、ここで初めてマトモに会話する。そのタイミングで、彼の隣にいた渋い雰囲気の老人が手を叩いて注目を集めた。
「さてさて……まずは自己紹介を。お初にお目にかかります、私はマーリンといいます」
「マーリン……それって、父さんのパーティの魔法使いの……!?」
マーリン……マルケルスのパーティの、魔法使い。ここに同じパーティで戦士をやっていたラザロが居るという事は、間違いなくその本人だろう。
「マジかよ、そんな人まで作戦に加わってくれるんか!」
「ははは、それはまた懐かしい話を……ですが、今では魔法の腕はすっかり錆び付いた老兵ですよ」
謙虚に笑うマーリンだったが、ヴィクトリーの気の察知は彼が只者では無い事を見抜いている。
「ドン・ファーザーっちゅうから、てっきりそっちがそうなのかと思ったけんど……」
「あ、普段は私がそう名乗っていますよ」
「俺みたいに若い奴がドンを名乗ると色々不都合があるからな……表向きはマーリン爺さん、真のドンはこの俺って訳だ」
得意気に言うラザロと、澄ました顔のマーリン。だが、彼らにゴゴゴと迫る影が一つ。もちろんソニアだ。
「ラザロおじさん、マーリンさん……戦いが終わったら、どういう事か、納得するまで説明してもらうからね…………」
「わ、分かった分かった落ち着けソニア! 納得させるから、な!?」
「いやはや、カレンに似ましたねこれは……」
凄んで大きくなるソニアに、小さくなるラザロとマーリン。
その様子を見ていたメフィストが、「オッホン」と深く咳払いした。
「……失礼、そろそろ本題に行っても宜しいですか?」
「あぁ、分かってる……今回の作戦だろ?」
メフィストに言われたラザロはタバコを吹かしてからグラスの酒を飲み、テーブルに広げられた紙を改めた。どうやら、グランゴルドの街の地図らしい。
要所に印があり、西北の方に矢印が書かれていた。
「まずは、俺達の工作員がこの印の所で爆発を起こす。騒ぎを聞きつけたアリ娘どもを引き付けるんだ」
「爆発って……いきなり物騒だな?」
「それじゃ、爆破テロじゃないのよ!」
始めの作戦を聞いたアリスとソニアが、そんな事を言うが……ラザロは、落ち着いていた。
「安心しろ、一般人は巻き込まねぇ……それでいて尚且つ、物的被害が大きい場所を狙う。目的はあくまでもアリ娘どもの陽動だ」
「どうにかして一般人は避難させられないの……?」
サラが聞くが、ラザロは難しい顔をする。
「配備してる部下は15人……総動員してもこの国中の人間をまるごと避難させるのは無理だ」
「ご安心を、サバサの女王様。私達は爆破テロに関しては長いキャリアを持ちます。一般人を巻き込まずに派手な破壊工作を起こすなど、お手の物です」
「あまり安心したくない言葉ね……」
爆破テロで安心なんてものは無理な話だが……この国ではアリ娘が巡回し、異常があれば自動人形がすっ飛んでくるような所だ。出来るだけ派手に注目を集めるには、そうするしかないだろう。
「そして奴らの目を引き付けている間にこの矢印の先を行く。地下水路を通るんだ。案内も兼ねて俺達も同行するぜ」
「地下水路から城に行けるのか……?」
「私の下調べでは、地下水路はマキナの研究所にもなっています。そこから城内にアクセス出来ることも確認済みです」
ルカの疑問に、スラッと答えるメフィスト。だが、次に難しげな表情を浮かべた。
「ですが、グランゴルド城は大改修されたと聞いています。城内の間取りは不明……ダンジョンに挑む気分で進む覚悟した方がいいでしょう」
「そこを越したら、いよいよ王妃様っちゅう奴と対決か!」
──作戦の概要は、こうだ。
まずは一般人を巻き込まないように、町の要所で爆発を起こしてアリ娘達を引きつける。
そこに注目してる隙にルカ達は地下水路を辿り、グランゴルド城へ侵入。
そして城を攻略し、王妃を討ち取るのだ。
「もちろん我々が失敗すれば、ここに三国同盟軍の生き残りが乗り込んで、王妃と戦うことになるでしょう……グランドノアは当然我々を無関係のテロリストと突っぱねます」
「ハッ、尻尾切りには丁度いいメンツだもんな。その辺の冒険者に、マフィアに……魔王から遣わされた、魔導顧問なんてな」
そう話すメフィストとラザロの言葉を聞き、ヴィクトリーはメフィストの方へ向き直した。
「えっ……メフィスト先生もか……?」
「ええ、なので失敗はできません。あなた達を信じていますよ」
失敗できない理由が、一つ増えてしまった。だが、今更臆する必要も無い。
「俺達は既に準備を終えてる。ルカ、忘れ物は無いか? 武器もアイテムも万全か?」
「子供扱いしないでよ……大丈夫だ、僕達も準備万端でここに来てる」
ルカがヴィクトリー達の方へ向き直すと、皆覚悟を決めた目で頷いた。
ラザロはそれを見て笑い、グラスの酒を一気飲みしてから立ち上がった。
「それじゃあ、国家転覆作戦……もとい、グランゴルド事変の幕開けだな」
「皆さん、配置につきましょう。エルカさんも、ルカさん達に例のものを」
同じく立ち上がったマーリンに言われ、エルカがルカにアクセサリを渡してきた。
「一応、淫気から身を守るアクセサリだ。安くない金払って部下の数は確保したんだが、残りはこんなもんでな……」
「いえ、心強いです」
次にエルカは、ヴィクトリーに向き直した。
「聞いてるぜ、ヒーローヴィクトリー……モンテカルロでは娘が世話になった。礼を言う」
「うん……? あっ、あんたジャスカさんの父ちゃんか!」
モンテカルロでヴィクトリーと関わった娘と言えば、ジャスカぐらいだ。彼女は、エルカの娘だったのだ。
「あんたは来てくれないんか?」
「いやいや、俺には人を動かすって役割がある……それに、そこの二人みたいに戦いが得意な訳じゃないからな」
「そっか……頑張ってくれよ!」
「そっちもな」
軽い話もそこそこに、ルカ達はラザロとマーリンの案内で配置に着くのだった。