もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ルカ達は、ラザロの手引きで配置に着く。
「よし、始めろ!」
「ああ、やれーっ!!」
そして合図により、エルカが号令。グランゴルドの町の各地で爆発が巻き起こった。
「ナ、ナニ……!?」
「爆発!? 王妃サマニ、報告……!!」
町を巡回してたアリ娘は、爆発した場所に集まりつつも大混乱に陥っている。充分に、目は惹きつけられたらしい。
「ほ、ホントに爆破テロだな……!!」
「安心しろ、再三言ってるが人的被害は出ねぇようにしてある」
狼狽えるヴィクトリーに、冷静にそう言うラザロ。
「それでは、行きましょう」
ラザロと並んで、マーリンが先導してくれるようだ。
「ああ、頼むぜ!」
「よし、行こう!」
ヴィクトリーとルカが返事をして、一行は地下水路へ立ち入るのだった。
※
地下水路を進む。だが、その水路では様々な機械……それも、最新鋭の設備が動いていた。
「やはり、マキナが研究されているようですが……タルタロスにあったものとは技術的には及びませんね。それでもこの世界の水準では最高クラスの技術です」
プロメスティンが、興味深そうに並ぶ機械を観察していた。その横で、ヴィクトリーは同じく機械を見つめる。
「そうなんか……やっぱ、自動人形とかもこの技術の応用なんか?」
「恐らくはそうでしょう。資料は残されてないでしょうか」
「ちょっと、今は作戦中よ!」
一人でどっかに行こうとするプロメスティンを、ソニアが服の
そんなこんなで、水路を進む。ラザロとマーリンが先頭を進み、たまに出てくる魔物を銃で撃って撃退していた。
「ちょっと、ラザロおじさん……そんなの撃って、腕は平気なの?」
「あぁ、この程度の衝撃じゃ根は上げねぇよ。力が要るのも指先だけだしな」
心配するソニアに、そう言うラザロ。彼はマルケルスとの冒険の途中で、腕を負傷しており、以来調子が悪く戦士も辞めることになったんだとか。
「マーリンさんは、魔法は使わないの?」
「私は魔導の腕はすっかり衰えてしまって……情けない事に、この杖も今では歩く助けにしかなりません。老いるのは嫌ですな」
ルカに言われたマーリンはそう言って銃をしまい、カツカツと歩き出した。
「普通に歩いてるじゃん……」
ジト目でそう言うルカに、マーリンは「ははは」と笑うのだった。
「そういえば、グランゴルド王様は何してんだ? 王妃っちゅう奴に何かされてるのは聞いてっけど、牢屋にでも入れられてんのか?」
ふと、ヴィクトリーがそんな事を言ってくる。
今は王妃とやらがこの国を掌握している訳だが……ヴィクトリーは、グランゴルド王の話を聞いたことがない。
「あら……言ってませんでしたか。今現在、グランゴルド王も戦線に居ます」
「戦線に……? 王が?」
「はい……恐らくは王妃に洗脳を受けたのでしょうが、それにしても様子がおかしいそうです。兵士の話によると、心臓を貫かれても死ななかったとか、圧倒的な魔力で小隊が全滅したとか……」
「馬鹿な、グランゴルド王とて人間の筈だ! それが、なぜそこまでの生命力と魔力を……!?」
メフィストの話を聞き、アリスは驚愕する。
「恐らくは、ヒト古種の力を無理矢理目覚めさせられたものと思われます」
「ヒト古種……?」
疑問を口にしたヴィクトリーにメフィストは「はい」と答え、説明が始まった──
ヒト古種。それは、最も古い人間。
単体の生物として見た場合、現生人類よりも強く、妖魔にも劣らない
だが、エネルギー収支が劣悪、生殖能力が低い、精神異常、魔力暴走、などの様々な欠点があったため女神イリアスにより欠陥種とされた。
女神イリアスはそこに手を加え、その個体の強さはランクダウンさせた代わりに、欠点を克服した現生人類へと繋がる種を創り出したという。
人々のリーダーとなるべく設定された初期型には、遺伝子にヒト古種のデータを残し、それが王家の血脈となり今も残っているという……
「──ちなみに、グランゴルド王家は特に魔力に秀でた血筋です。ついた
「そ、そんなに強い奴なんか……!? た、戦ってみてぇな……!」
メフィストの説明を聞いたヴィクトリーは、ウズウズと手を震わせる。それを見たラザロは、少し引いた顔をしていた。
「おいルカ……今の説明を聞いて、戦ってみたいだなんて感想になるか?」
「ヴィクトリーはそういう奴なんだよ……」
呆れ気味に言うルカだが、すぐに真剣な顔になった。
「でも、そのグランゴルド王も王妃に惑わされてるんだよね。どうにか、洗脳を解かないと……」
「やっぱ王妃を叩きのめさねぇとダメか」
「もしくは、洗脳が解けるほど強烈な一撃をお見舞いするかですね」
「そこまでしている暇は無い……王妃を叩く方が優先だろう」
グランゴルド王について、ヴィクトリーとメフィストも話すが……アリスの言う通り、今は操られた王に割く時間は無い。
「大体、そのグランゴルド王も今は戦線だろ? 鉢合わせるなんて有り得ねぇ」
「……いえ、どうでしょうか」
ラザロの言葉に疑問を呈したのは、マーリンだった。
「『魔導王』の
「ああ、それは俺も使える。知ってる気がある場所なら、すぐに瞬間移動できるぜ」
「余も、行ったことがある場所ならば使えるが……」
ヴィクトリーとアリスの言葉に、マーリンは首を振った。
「甘いですね……どんな魔法も、鍛えれば卓越した技となるのです。それこそ、知り合いが居ない場所だろうと、行ったことが無いような場所だろうと……この世界のあらゆる場所への無条件の瞬間移動が、魔導王には可能なのでは?」
マーリンの、鋭い考察……それは、歴戦の魔導師としての言葉でもあった。
「オイオイオイ、爺さん……いや、アンタが言うなら有り得そうだ」
「……我々の事を察知して、やってくるかも知れんな」
ラザロとアリスもそう言い、納得する。
「面倒な事になる前に行くぞ。城の入口はもうすぐそこだ」
案内するラザロの足が、早くなる。そして、間もなく城の入口が見えてきたと思った、その時だった。
ルカ達の後ろに、凄まじい気が【ワープ】してきた。
「!!!」
皆して、一斉に振り返ると……そこに、豪華な格好の青髪の青年が立っていた。線の細い、爽やかで端正な顔立ちをしていたが……その目は、やはり虚ろだった。
「……答えよ、お前達は何者だ」
「マジかよっ……!!」
「噂をすれば……!!」
「グランゴルド王……!!」
ヴィクトリーとルカが、構える。メフィストが名を呼んだ通り、彼こそがグランゴルド王だ。
「クソ、見事に面倒な事になっちまったな!」
「こういうのを、若者はフラグ回収なんて言うそうですね」
そう話しているラザロとマーリンに向け、グランゴルド王は手をかざす。次の瞬間、鼓膜と網膜を
「……何者か、答えよと言っている」
「この魔力は……やはり、明らかに普通では無いな!!」
アリスが武器を抜き、臨戦態勢を取る。
次々に構えるルカ達だったが……ここで、ラザロとマーリンが前に出てきた。
「……こいつの相手は俺達に任せろ。ルカ、お前達は先に行け」
「えっ……!?」
「ちょっと、ラザロおじさん……! まさか、死ぬつもりじゃないでしょうね!?」
驚くルカとソニアに、ラザロは振り向く。
「死ぬ気なんざねぇよ、バカタレ! 王妃を叩くのが優先なんだろ!? ここで適当にやり合って時間稼ぐだけだ!」
あれ程グランゴルド王の話を聞いてゲンナリしていたラザロが、何故か今は真剣なやる気を見せている。どうやら、自分達がここでグランゴルド王を食い止め、王妃をルカ達に任せた方がいいと判断したらしいが……もうひとつ、大きな理由があった。
「それに、コイツはこれでも人間だ。お前達は
「…………」
「…………」
黙って歯噛みする、ルカとヴィクトリー。そんな彼らを見てから、ラザロはグランゴルド王に銃を向けた。
「俺なら、遠慮なく殺れる。ここは引き受けてやる」
「ええ、でしたら私も付き合いましょう。王様を殴る快感、中々癖になるものでしてね」
どうやら、この場はラザロ&マーリンVSグランゴルド王という事になったらしい。
「王の御前で、何を──」
「てめぇは動くんじゃねぇよ!!」
ラザロがそう言いながら、引き金を引く。すると、銃弾が連射されてグランゴルド王の体を次々に撃ち抜き、トドメと言わんばかりに額に銃弾が命中した。
それで大きく仰け反り、倒れるかと思いきや──倒れずに踏ん張り、ゆっくりと体を起こす。そうして見えた額を始め、体の傷がみるみるうちに塞がっていく。
「余に銃を向けるとは──」
「業火の息吹、灼熱の悪夢をもたらせ──【ブレイズ】!!」
マーリンが杖を向けて詠唱すると、グランゴルド王の体を中心に大爆発が巻き起こった。
「うおぉっ!? あんた、魔法使えねぇんじゃなかったんか!?」
「いやはや、失礼。王を焼けると思えば腕が勝手に」
驚くヴィクトリーに、マーリンは笑いながら言う。
だが……グランゴルド王の気は、減ってない。もくもくと晴れた爆煙から、身体を再生し終えた姿が見えていた。
「……良かろう。王の力、その目で見よ」
グランゴルド王はそう言い、自らの身体に秘めた魔力を解放する。爆発のように跳ね上がる魔力と共に、その肉体も変異する。
「爺さん、足止めって言っただろうが! 思いっきり煽ってんじゃねぇ!」
「すみません、盛り上がってしまって……」
言い合うラザロとマーリンの前で、グランゴルド王は腕を交差する。
「これが、我が力……我が血脈を宿す、真の器……」
体から光が迸り、閃光に包まれる。その光がひび割れるように散り、完全に異形と化したグランゴルド王が姿を現した。
「その命、王に捧げよ……」
顔のない頭にその頭上の天使のような輪。異様なまでに長い、紫色の腕。下半身は無く、代わりに触手が見えている。
そんな姿を晒したグランゴルド王の背中で、唐草模様で描いた炎のような光背が
「ラザロおじさん、あれ普通じゃない!!」
「おいルカ……俺はアレを見て「普通だなー」って思うようなマヌケか?」
「これは、なかなか強烈ですね……普通にやりあったら、間違いなく死ぬかと」
ラザロとマーリンは、ようやく本気の目になって構える。圧倒的な魔力を持つグランゴルド王を、本気で二人で引き受けるらしい。
「おい、二人とも! 俺も戦うぞ!!」
「そうだ、僕達で力を合わせないと!!」
「何言ってんだバカタレ、とっとと行け!! 俺達は格上とやり合うのも慣れてんだよ、お前達がそこでモタモタしてなきゃな!!」
ラザロの言葉を聞き、アリスはルカとヴィクトリーの肩を引っ張る。
「行くぞ、二人とも! ここで余達がモタついていたら、ラザロ達が自分のペースで戦えん!!」
「っ……ラザロおじさん、マーリンさん、どうか死なないで!! 私達は、自分の務めを果たすから!」
「ここは、任せたよ……みんな、いくぞ!!」
ソニアとルカが言って走り、ヴィクトリー達もそれに続く。そして、皆が城に入ったのを確認したラザロとマーリンは、改めてグランゴルド王に向き直した。
「さぁて、約束した手前死ぬ訳にはいかねぇな……」
「ここで私達が死ねば、彼らは安易な自己犠牲を学んでしまいます。それは避けたいですね」
「ああ……まぁ、天井も遮蔽もある。せいぜい時間を稼ぐか!」
ラザロとマーリンはそう話してから、武器を構える。
「捧げよ、その命……」
グランゴルド王は魔力を解放し、二人とぶつかり合うのだった。