もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
グランゴルド王をラザロとマーリンに任せ、ルカ達はついに城へ潜入した。
辿り着いたのは、王城にしては質素な部屋だった。地下水路に繋がっているから、当然だろう。
「よし、入れたぞ……!」
「早く王妃をぶっ飛ばさねぇとな……!」
「そうね、ラザロおじさんとマーリンさんの為にも!」
ルカとヴィクトリーとソニアはそう言いながら、部屋から出る。
城内に、牢屋が並んでる。倒れて「王妃様」と呻く者や、牢に縋って無実を叫ぶ者が並んで収監されていた。
「これが、王城……!? まるで、監獄じゃない!」
ソニアが、並ぶ牢屋を見て絶句する。
「グランゴルド城の大改修って、城の監獄化だったんか……!?」
「その通りのようですね……これも、王妃の手引きによるものでしょう」
歩いていると、グランドノアの学者が囚われているのが見えた。
「出してくれー! 私はグランドノアのスパイなんかじゃないー!」
そう言いながら牢を掴んでいるが、こちらを通るメフィストの姿を見て目を丸くした。
「はっ、メフィスト様!?」
「どうも」
「思いっきりスパイじゃねぇか」
「しかもバレて捕まってるし……」
ヴィクトリーとソニアのツッコミもそこそこに、学者とメフィストは話し合う。
「貴女がこちらに居るということは、例の作戦の最中……?」
「ええ、そうです。もうすぐ作戦も大詰めなので、救助はその後になります」
二人が話してる最中、ルカとヴィクトリーは牢に剣を突き立てたり、掴んで力を込めてみたりするも、全く歯が立たなかった。
「か、固い牢だな……」
「ビクともしねぇや、どうなってんだ?」
二人の横で、アリスが「ふーむ」と牢を見つめる。
「牢に魔力が掛けられているな……王妃の魔力だろう。どの道王妃を倒すのが優先になりそうだ」
牢屋まで、王妃お手製らしい。王妃を早く倒さねばならぬ理由が、どんどん積み重なっていく。
「……一際強いエナジーが、三つもあるよ。そこに行こう」
「ああ、俺もキャッチしてる」
ヒルデとヴィクトリーが
※
「この辺の筈だぜ」
道なりに行き、二階へ上がる階段を上がってすぐ。ヴィクトリーは気の感じる方向へ向くと……
「アイツじゃねぇか?」
「む……アレは!!」
アリスが駆け出し、牢を掴む。
「クィーンアント!!」
そう言うアリスに、牢屋で項垂れていたそれがこちらを見る。
「む……貴女達は……」
見れば、アリ娘を成長させて大人にしたような見た目の昆虫の魔物娘だった。ただし感じる気は、アリ娘の比にならない。
「こんな姿だが、余はアリスフィーズ16世だ! それより、貴様程の者が何故このような場所で囚われている!?」
「……不覚を取りました。我が娘を洗脳し、この国を冒した者に……」
少し考えたクィーンアントだが、納得してアリス達に向き合う。
「それは……まさか、リリス三姉妹の事ではあるまいな!?」
「そのまさかです……リリス三姉妹を名乗る者たちの長女、リリス……彼女こそが妾を捕らえたのです」
「リリス…………!!!」
疑念が確信に変わり、ヴィクトリーは青筋を浮かべて歯噛みする。
疑念通り──王妃とは、リリスの事だったのだ。彼女が王妃となり、リマ村で虐殺を起こし、グランゴルド王を操り、国家間で戦争を起こして血の雨を降らせていた張本人だ。
「クィーンアントですら、被害者に過ぎなかったのね……」
ソニアの言う通り、王妃だと思われていたクィーンアントが、まさかの被害者。こうして囚われの身になり、自分の娘を操られているのだ。
「……お願いします。どうか、リリスを討って我が娘達を……いえ、グランゴルドを救ってください」
「はい、元よりそのつもりです。敵がリリスと判明しただけの事ですので」
クィーンアントに言われ、メフィストは至極冷静に答え……そして、ルカとヴィクトリーに向き直した。
「しかし、相手は大淫魔リリスです。今の貴方たちで勝てるでしょうか?」
「それは……やってみないと、分からないな」
「どの道、やるしかねぇんだろ?」
「余達で総力戦を仕掛ければ、チャンスはあるかもな……待っていろクィーンアント! すぐに解放してやる!」
ルカ、ヴィクトリー……そしてアリスが言い、クィーンアントも頷くのだった。
※
二つ目の大きな気は、クィーンアントの牢から少し行ったところにあった。
「あけてください……だしてください……」
「お腹すいたワン……」
「たすけてー!」
なんと、またイリアスだ。あの犬娘とスライム娘も、仲良く捕まっていた。
「イリアス様!? また捕まったんですか!?」
「愉快だと笑いたいが……さすがに、哀れに思えてきたぞ……」
呆れるソニアと、アリス。昨日ゴルド砦で捕まっていたのに、もう再収容されているのだ。
「イリアス様のパワーでもこの牢は開かねぇんか?」
ヴィクトリーは、牢を掴んで引っ張ってみるも……やはり、開かない。それを見たイリアスは、「ぐぬぬ」と悔しそうな声を上げる。
「口惜しや……私がこんな姿で無ければ、一発で開けられるのに……」
「残念ながら、この牢は外側からでも開かん……まぁ、鍵があっても開けはせんが」
意地悪に言うアリスに、泣きそうになるイリアス。
「もう、意地悪しちゃダメでしょ!」
ソニアがそう言い、アリスを叱る。小さくなってしょぼんとするアリスを横目に、イリアスに向き直した。
「とにかく、リリスを倒すまでは開けられないわ……待ってて、イリアス様!」
イリアスの為にも、リリスを倒さねば──
※
三人目の大きな気を感じる所を尋ねてみると……そこに、見覚えのある姿があった。
グラマラスな肉体を強調する衣服に、角と羽と尻尾。そんな彼女が、妖しく笑っていた。
「もう堪忍して……この牢に入れられて以来、兵士達が代わる代わる私を」
「何やってんだアルマエルマ」
「顔が笑ってますよ」
言葉の途中で、ヴィクトリーとメフィストのツッコミが入る。
そう……彼らの言う通り、ここにはアルマエルマが囚われていた。
「もう、せっかく囚われの身なんだからそういう事も言いたくなるでしょ。実際には拷問とかも無くて暇なんだけど……」
「貴様の力でも、この牢は破れんのか?」
「この牢、強固な壁、魔導による結界……あらゆる方法で封鎖されてるの。床を吹っ飛ばして牢をくぐり抜けようとしても、その床も硬すぎるし……」
あのアルマエルマでさえ、ここの牢を破れないと来た。どうやら、妙な小細工もパワーによるゴリ押しも通用しないようになっているらしい。
「そうじゃなくても、ダメージが残ってるからフルパワーは発揮できないわ。流石に太古の大淫魔二人が相手じゃ形無しね」
「おめぇがここに居るって事は、モリガンとアスタロトも居るのか?」
そう言えば、アルマエルマはゴルド砦で襲撃してきたモリガンとアスタロトを引き受けて離脱したのだった。
「安心して、ここにいるのはリリスだけよ。その二人は魔王城で療養でもしてるんじゃない?」
「えっ……あの二人を、そこまで痛めつけたの!?」
「俺達じゃ全く歯が立たなかったのに……やっぱ、アルマエルマはすげぇな!」
驚愕する、ルカとヴィクトリー。
「これは
「しめた、リリス一人だったら何とかなるかも知れねぇぞ!」
「そうだな……よし、行こう!」
メフィストに言われ、ヴィクトリーとルカもやる気を出して行こうとする。
だが、アルマエルマは「ちょっと待って」と止めてきた。
「淫魔として言わせてもらうけど、ここに満ちている淫気……ちょっと変なのよね」
「む……確かに、そうかもしれんな。淫魔のものにしては、荒々しすぎる」
そう話すアルマエルマとアリス……魔物として、感じる淫気に違和感があるようだ。
「この先にリリスが居るのは確かだけど……それだけじゃないかもしれないわ。気をつけてね」
アルマエルマの警告……それは、リリス以外にも何かがいるというものだった。
「何が待ち受けていようと、僕達は止まる訳にはいかない!」
「そうだな、行くぞ!」
「おっしゃあ!」
ルカとアリスとヴィクトリーは、そう言って気合いを入れ直す。そして、リリスの気を感じる玉座を目指して進み始めたが……その最中に、ヴィクトリーが立ち止まった。
「ヴィクトリー、どうしたんだ?」
「……グランゴルド王の気が、すげぇ勢いで国の外に出てったぞ」
ヴィクトリーがそう言うと、ルカとソニアが反応した。
「えっ……でも、そいつはラザロおじさんとマーリンさんが戦ってたはず!」
「ラザロおじさんもマーリンさんも、やられた訳じゃなさそうよね……すごい勢いで、国の外に……ぶっ飛ばされたのかな?」
疑問を口にするソニアに、メフィストは「いいえ」と答える。
「二人とも名の知れた冒険者ですが、そこまでの力はありません。小細工を要して時間を稼ぐ腹積もりに思えましたが……」
「気になる話だが……リリスは、もう目前だ。余達は、目の前に集中するぞ!」
アリスの言う通り……この国を地獄に変えた王妃──リリスが、もう目前に迫っている。今更引き返してグランゴルド王と、ラザロとマーリンの様子を見に行く余裕は無い。
「そうだな、行こう!」
「よーし、待ってろリリス!」
「ラザロおじさんもマーリンさんも、無事で居ますように……!」
何だか知らないが、都合のいい事が起きてる……そう思う事にして、ルカ達は進むのだった。
※
数分前──
ラザロとマーリンは、グランゴルド王を相手に立ち回っていたが──どういう訳か傷付けても再生し、魔力もみるみる内に湧き、撃っても燃やしてもどうにもならない状況だった。
「クソッタレ!! 魔力もスタミナも無限じゃ、話にならねぇぞ!!」
「何度も王を焼けるのは良いのですが……失礼、さっきのでエルフの霊薬も切らしてしまいました」
二人は、所詮人間……体力も気力も魔力も、有限。頼みの綱のアイテムも切らし、いよいよジリ貧だ。
「その命、捧げよ……」
グランゴルド王が手を向けると、二人の間に光の柱が立つ。
「なっ!?」
「まずい──」
次の瞬間、大爆発が巻き起こった。圧倒的な魔力によって引き起こされた大爆発は、マーリンの魔術の比にならない。そんなものに直撃したかに思えた二人だったが──
グランゴルド王の背後から、着地するような足音が聞こえる。
「あ、危ねぇ……誰だか知らねぇが、助かったぜ……」
「恩に着ます……」
次に聞こえたのは、ラザロとマーリンの声。何者かに襟袖を掴まれ、爆発から避けたらしい。
グランゴルド王が振り向くのと同時に、二人も自分達を助けた者の顔を見ると──
「……はぁっ!!?」
「なんと……!」
そこには、ヴィクトリーが居た。しかも、先程とは格好が変わり、黒い道着に左耳に可愛い白兎のイヤリングをしていたのだ。
「……先程逃がした者では無いな。何者か答えよ」
「黒のヴィクトリー……」
グランゴルド王の問答通り──どういう訳か、この場に黒のヴィクトリーが乱入したのだった。