もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「おいテメェ、何でこっちに戻ってきた!? あと、その格好は何だ!?」
ラザロの声を聞いた黒のヴィクトリーは、驚いて彼を二度見する。
「妙な気を感じて様子を見に来ただけだが……貴様、ラザロか!? なんだその洒落た格好は!?」
「さっき会ったばっかだろうが!!」
「落ち着いてください、ラザロさん……彼は、ルカと共に居た彼ではないようです」
ヴィクトリーが単身で引き返してきたと思ってるラザロは声を荒らげるが、マーリンは冷静に黒のヴィクトリーの方に向いた。
「お初にお目にかかります、私はマーリンです。貴方は……確か、黒のヴィクトリー。貴方の噂も、グランドールでの活躍も聞いています」
「グランドールでの活躍は、主にサバサの女王のせいだ……奴は何者だ」
黒のヴィクトリーは、グランゴルド王に向き直した。
「あれは、あんなんでもグランゴルド王だ……なんでも、ヒト古種の力が目覚めた姿なんだとよ」
「アレがグランゴルド王だと……!? この身体の記憶とは、全く違うぞ!」
驚くばかりの黒のヴィクトリーと、その発言に違和感を覚えるラザロ。マーリンは構え直し、グランゴルド王に向き直した。
「すみません、私達ではこうして足止めするのが精々……どうにか、協力してくれませんか?」
「ああ、そうだ……生きて合流しなきゃならねぇ奴らがいるんだ」
「勇者ルカの事か?」
黒のヴィクトリーが言うと、左右に並んでいたラザロとマーリンはそちらに目を向ける。
「知ってんのか?」
「既にこの世界では有名人だ……彼らの所に向かうのなら、これを渡して欲しい」
そう言って懐から何かを取り出し、構えたままのラザロのポケットに突っ込んだ。
「おい、安くねぇスーツだぞ」
「知らん。そう言うのなら、そこで見ていろ……」
黒のヴィクトリーは、前に出る。その気を高め、体の内側から金色の気を滲ませ──黒から金に変色した髪を逆立たせる。
「金髪の変身……ふむ」
「噂通りだな、オイ……」
「控えよ……王妃の為に」
「…………」
グランゴルド王と向き合いながら、黒のヴィクトリーは考え始めた。
ラザロとマーリン……ラザロはともかく、マーリンは魔王に紙屑のように八つ裂きにされたと聞いている。だが、どういう訳かこの世界では生きているようだ。とりあえず助けた方が、カオス化には影響しないだろう。
問題は、目の前の異形──グランゴルド王。しかも、洗脳されて王妃とやらの言いなり。この二人では、まず勝ち目が無い程の力も秘めている。本来の歴史とは異なる異分子ではあるが……同じく異分子の私が、相手を務めるしかない。
「【神裂斬】!!」
黒のヴィクトリーはいきなり、気を纏った手刀を振り上げる。そこから飛んだ斬撃がグランゴルド王の胸から肩にかけて切り裂いた。
「!!」
よろめくグランゴルド王だったが、その背中に浮かぶ光背が光る。それと同時にみるみるうちに身体を再生させた。
「やっぱり効いてねぇぞ……!」
「ついでに魔力も戻っていますね」
「ほう……!」
ラザロとマーリンの話し声を聞き、黒のヴィクトリーは腕を横に振りかぶる。そして、首狙いの【神裂斬】を放った。
しかし、グランゴルド王はそれを手で払い除ける。弾かれた斬撃が、無意味に壁を切り裂いた。
「なにっ!?」
動揺する黒のヴィクトリーの顔面を、あの紫色の長い手が掴む。そのままぶん回してから投げ飛ばし、天井に叩きつけた。
「ごはっ……!」
「消え失せよ……【ルミナスレイ】」
そのまま手を向け、魔力を照射して黒のヴィクトリーにダメ押しした。黒のヴィクトリーはそれに押され、地下水路の天井を突き破って吹っ飛んでいく。
「ありゃ死んだんじゃねぇか……!?」
「いえ、まだのようです」
ラザロとマーリンが話す前で、グランゴルド王はおもむろに黒のヴィクトリーを追いかける。天井を突き破って勢いよく出るものだから、地下水路が大きく揺れ、崩れ始めた。
「おい爺さん、崩れるぞ!!」
「これは……退いた方がいいですね……!」
ラザロとマーリンは、急いで離脱するのだった。
※
城の前の大通り……その道が、突如として爆発する。そこから打ち上げられた黒のヴィクトリーが、華麗に宙返りをして着地した。
「ナ、ナニ!?」
「入口ニイタ、大キイ方……!?」
「ハナレロ、巻キ添エニナルゾ!」
ただでさえ侵入者の対応に追われていたアリ娘だが、この時ばかりは黒のヴィクトリーから離れていくのだった。
「っ、はははは!」
身体を再生させながら笑っていると、目の前の地面が光と共に大爆発する。そこから、持ち上げられるかのようにグランゴルド王が浮上してきた。
──グランゴルド王が、ルカ達の背後にワープしてきたのは理由がある。城内に侵入した何者かの排除の為に喚ばれたのだ。
洗脳され、自我も曖昧な彼は、今や王妃の命令に従うだけの殺戮人形。命令により、その牙は常に強者──王妃の脅威になりうる者へと向く。
「やるか!!」
「王妃のため……その命、捧げよ」
グランゴルド王が両手を合わせ、魔力を凝縮させる。その途中で黒のヴィクトリーは気を纏った手刀を振り上げ、また【神裂斬】を放った。
しかもそれは一振りの斬撃から網目状に展開し、グランゴルド王の体を切り刻む。
「!」
直撃してよろめくものの、あの光背が光る。すると瞬時に傷が再生し、手の内の魔力の凝縮が再開した。
「また再生……」
様子を伺う黒のヴィクトリーだったが、グランゴルド王は瞬歩のような速度で距離を詰め、凝縮した魔力をその腹に押し付ける。
「塵と消えよ」
そう言い、魔力を起爆した。炸裂した魔力の威力は凄まじく、黒のヴィクトリーは勢いよく吹っ飛んでいく。
追撃を仕掛けようとグランゴルド王は浮かび、追いかけた。
「っくはははっ!」
だが、黒のヴィクトリーは腹を再生させながら両手を向けていた。その手から縄状の闇のエネルギーが放たれる。
「なに……!?」
突っ込んでいる最中のグランゴルド王はそれに直撃し、身体を拘束される。黒のヴィクトリーはそのまま振り回し、爆破された建物の中に勢いよくぶん投げた。
「いくぞ!!」
黒のヴィクトリーは拳を構え、疾走する。グランゴルド王も起き上がり、向き直した。
両者は激しく格闘し、その攻防を加速させる。拳、手刀、魔術が飛び交い、その余波は周囲のものを破壊し始めた。
加速する攻防に、高まる気……だが、不意にグランゴルド王の光背が光った。
「!!!」
黒のヴィクトリーは腕を交差し、防御姿勢を取る。だがその腕に強烈な魔導のエネルギーが直撃し、吹っ飛んだ。色々なものの起伏に触れて回転しながら、民家や建物や壁を何棟も突き破る。そして、国の外に投げ出されてしまった。
だが体勢を整えて着地し、余裕の笑顔を見せる。
「やってくれたなぁ!」
黒のヴィクトリーがそう言って見上げると、既にグランゴルド王はそこに居る。
「滅びの光で消滅せよ……【魔導滅光】」
彼はそう言い、遠慮無しの魔力を解き放った。無数のエネルギーが天から降り注ぎ、大爆発が連続する。
だが、黒のヴィクトリーは額に二本指をつけて連続で瞬間移動し、その全てを避けながらグランゴルド王に迫り、目の前に来る。
「そこだ」
だが、グランゴルド王が指したのは背後。直後に、そこに黒のヴィクトリーが姿を現した。
次の瞬間、黒のヴィクトリーを中心に、触れるもの全てを融かすような光の柱が立ち上がった。
「……?」
明らかに直撃の筈なのに、手応えに違和感。確認すると、既に黒のヴィクトリーは残像だった。
「!?」
「お返しだ……!!」
黒のヴィクトリーは、既に頭上を取っていた。しかも、その両手を合わせ、気を凝縮させており──
「【超ブラックかめはめ波】!!」
ドス黒く、凄まじい威力のかめはめ波を撃ち下ろした。グランゴルド王はそれに直撃して地面に叩きつけられ、エネルギーがドーム状に広がって大爆発する。
爆煙に包まれる、グランゴルド王。地面に降りて様子を伺う、黒のヴィクトリー。
不意に、爆煙の中から光背の光が差してくる。そして、身体の再生を終えたグランゴルド王が煙を吹っ飛ばした。
「ほう……さながら、魔人ブウのようだな」
そう言いながら、黒のヴィクトリーは納得する。
全て、あの光背が光った後だ。
唐草模様で火焔を描いたような光背……その意味は、『再生』や『生命力』。そして邪を焼き払う『力』。無限に湧く生命力と魔力は、それが故か。
「ックククク……はははははは! つくづくこの世界は想像以上だ……!!」
黒のヴィクトリーが、笑いながら力を解放する。金髪が更に荒々しく逆立ち、その身にバチバチと電光が伴われた。
「悪いが、鎮まってもらうぞ!」
そう言い、腕を伸ばして手刀に気を纏う。そして、その場で踊るように振り回した。
神裂斬を警戒したグランゴルド王は、それより速く手を向けるが──その腕に、気の刃が突き刺さった。
「なっ──」
遅れて、体に次々と気の刃が刺し込まれる。そして、それが一斉に光りだし──次の瞬間、爆発が連続したのだった。
「…………」
爆風に髪を煽られながら、黒のヴィクトリーは手を合わせ……そこに、炎を生み出した。
洗脳を解除する方法──洗脳主を倒すか、強烈な一撃で目を覚まさせるか。前者をルカ達に任せる事で、本来の歴史に沿わせる目的があった。なので、取るのは後者。
だが、超ブラックかめはめ波ではアッサリと再生されてしまった。なれば、事前に連続で大ダメージを与え、再生前に高火力で畳み掛ける。
「控えよ……王の……御前ぞ……」
グランゴルド王は身体に刺さった気の刃が爆発する中、光背を光らせ爆発した所を再生させながら歩み寄ってくる。
それを確認した黒のヴィクトリーは、一気に気を高めた。その額に瞳のような紋章が浮かび上がり、桁違いの闇の魔力が手の内に凝縮されて炎が勢いを増す。その炎を指先に集中させ、矢じりに見立ててグランゴルド王を指した。
「燃え尽きよ……【裁きの炎】」
黒のヴィクトリーの指先から、【裁きの炎】が飛ぶ。それがグランゴルド王に着弾した瞬間、とてつもない大爆発が柱のように天を
焼け野原となった場所で、黒のヴィクトリーは倒れたグランゴルド王を見下ろす。
その異形の身体が光となって散り、中から気絶している彼が姿を現す。ちゃんと、記憶通りの彼だった。
「さて……適当な所に投げておくか」
黒のヴィクトリーはそう言い、気絶したグランゴルド王を抱えてグランゴルドに戻るのだった。