もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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王妃の正体

 ラザロとマーリンは、崩れゆく地下水路から走って逃げる。だが、連続する地上での衝撃で揺れが増し、天井が音を立てていた。

 

「やべぇやべぇやべぇって!! このままだと間に合わねぇ!!」

「まさか、私たちが生き埋めにされる側になるとは……因果応報ですな」

「縁起でもねぇ事言ってる場合か!!」

 

 そう話していると……不意に何処からか土の力が波動し、崩落が止まった。先程までの揺れが嘘のように収まり、余韻の静寂が訪れ……やけに響く足音が、二人の背後から鳴ってきた。

 

「た、助かった……アンタは……?」

「通りかかった縁……助力してやろうと思ったまでじゃ」

 

 そう言う彼女は、そのまま通り過ぎようとする。

 

「ま、待ってくれ! 王妃の所に行くなら、これを持って行ってくれ!」

 

 ラザロがそう呼び止め、黒のヴィクトリーから渡されたものを彼女に託したのだった。

 

 

 ルカ達は外の様子が気になりつつも、真っ直ぐ進む。そして、玉座に辿り着いた。

 

「……やっぱ、王妃はおめぇか」

 

 ヴィクトリーは前に出て、玉座の主を見上げる。その先には、やはりリリスが悠々と座っていた。

 

「テロ騒ぎに、侵入者に……やはり、貴方たちでしたか」

「リリス……貴様が王妃として君臨し、グランゴルドを惑わせ、この世界に混乱をもたらしたのか! だが、それも今日で終わりだ!」

 

 アリスも、啖呵を切ってリリスに向かって構えた。

 

「お前は……奪ってはならないものを、たくさん奪ってしまった。許すことは出来ない……!!」

 

 ルカも、静かな怒りと共に剣を抜いて構える。それを始めに、後ろに控えていた仲間達も構える。

 

 見ていたリリスは、頬杖をついたまま溜息を吐いた。

 

「……あなた達は、少し思い違いをしているようですね。町一つならばまだしも、この国全域を堕落させる程の洗脳は私の手にも余ります……」

「どういう事だ……? 貴様が王妃ではないのか!?」

 

 アリスがそう聞いた、次の瞬間だった。

 

 場の空気が、一気に重くなる。押し潰されそうな程のプレッシャーが全員に掛かり、心臓を狙われているかのように神経が逆撫でされ、全身に鳥肌が立つ。

 

「くくくく……その通り。傾国こそ、ウチの悦びと知れ」

 

 その声と共に、それは姿を現した。

 

 絹のような金髪と狐耳、豊満な胸の谷間を見せるような肩出しの着物……そして、九本の狐の尾を有する妖女が出現したのだ。

 

「六祖が一人、白面金毛九尾の大化生──玉藻の名を、その魂に刻むがいい」

「お前はっ……狐神社のアイツ……か……!?」

 

 恐る恐る聞くヴィクトリーだが、アリスは首を振る。

 

「違う……余たちの知る玉藻ではない!!」

「その通り……ウチは、この世界の玉藻ではない。闇が征した世界より、ここに足を運んだ」

「まさかグノーシスやシオンみたいに、平行世界をジャンプしてきたのか……!!?」

「そんなバカな……」

 

 絶句するルカとヴィクトリーを前に、リリスは立ち上がって玉藻の後ろに控えた。

 

「今回の件は、玉藻様にご足労を掛けてもらったお陰です。我々三姉妹は、そのお手伝いをしていたに過ぎません」

「さて……今回の事に水を差す痴れ者が居ると聞く。貴様らだな?」

 

 玉藻はルカ達に向き、そう言った。それだけで本能的な恐怖が込み上げ、足が竦みそうになる。

 

「ね、ねぇどうするの!? あんな二人に迫られたら、私達なんて……!!」

「戦力は圧倒的……けど、やるしかないよ」

「けど……六祖が相手じゃ……」

「やれるだけやりましょう……その方が悔いが残りません」

「きゅぅ……」

 

 ソニア、ヒルデ、サラ、プロメスティンの順で(はな)し、ヌルコも構え直す。だが、その中でも冷静なのが一人──

 

「ヤケクソになるのはいけません。誰か一人でも生き残れるように足掻きましょう」

 

 ──メフィストが、いつもの調子で構えていた。圧倒的に格上の妖魔を相手に、全く億さずに杖を持ち……犠牲も覚悟の上、戦おうとしている。

 

「……ヴィクトリー、六祖なんて出てきたよ。こういう時、お前はワクワクするんじゃないのか?」

「悪いなルカ……今度ばっかしは殺されるかも知れねぇから、ゾクゾクしてるよ」

「余達がここで逃げても、グランドノアから突っぱねられるだけだ……やるだけやるぞ」

 

 ルカとヴィクトリーとアリスも、構える。それを見ていた玉藻が、扇子で口元を隠しながらクスクス笑った。

 

「蛮勇……だが、それが良き。せめてウチを愉しませてみよ」

「だりゃああっ!!」

 

 ヴィクトリーはいきなり(スーパー)サイヤ人2になり、全力の蹴りを放つ。見事にそれは、こめかみに直撃したが……手応えが、硬すぎる。

 

「…………」

 

 玉藻は蹴りを受けながら、にまにまと笑っている。避けるどころか、防ぐまでも無いようだった。

 

「【瞬剣・疾風迅雷】!!」

 

 ルカの風の力を発揮した猛スピードの突きが、玉藻の胸に直撃した。しかし、その手応えはまるで岩山に刃を突き立てているかの如く──剣を持っている手が、痺れる程だった。

 

「っ、ち……!!!」

「こ、こいつホントに生き物か……!!?」

「失礼な、ほれ」

 

 玉藻は二人の手をそれぞれ取り、自分の胸を揉ませた。桁外れの怪力に、為す術なく揉まされた胸は、マシュマロのように柔らかく指が沈む。

 

「わっ……!!?」

「え……」

「ふんっ!!」

 

 その感触に困惑してると、玉藻は二人を頭突きでぶっ飛ばした。

 

 勢いよく、後方にあった壁に一瞬で激突するルカとヴィクトリー。

 

「ルカ!!」

「ヴィクトリーさん!!」

「あ、あぅぅぅ……!!!」

「ぐ、が、か、ぁぁ……!!!?」

 

 ルカの元にソニアが、ヴィクトリーの所にプロメスティンがそれぞれ来る。ルカは打たれた所を押さえ、ヴィクトリーは鼻血をドクドク流しながら、二人は悶絶していた。

 

「ちぃいっ!!」

 

 アリスが両手を上げて炎の玉を作り、それをぶん投げる。だが、玉藻はそれをデコピンで跳ね返してきた。

 

「はっ!!?」

 

 間一髪で避けるアリスだったが、既に玉藻は目の前。

 

「それ、こんこんっと」

 

 そう言いながら玉藻は、狐の手でアリスの体を二度ほど小突く。

 

「っぁ……!!?」

 

 それだけでアリスは白眼を剥いてその場から崩れ、そのまま失神してしまった。

 

「確か、16世だったか……鍛え方が足らんのう」

「きゅきゅきゅーっ!!」

「切り裂く……!!」

 

 ヌルコとヒルデが、突撃する。だがそれを見た玉藻が目を光らせると、地面から大地の山のようなものが突き出し、二人を吹っ飛ばした。

 

「【烈風剣】!!」

 

 サラが、剣を振って斬撃を飛ばす。それに直撃した玉藻だが、やはり無傷だった。

 

「そなたは……そうか、サバサの女王か」

「でやぁあぁあっ!!」

 

 剣を構えて突撃するサラを前に、玉藻は扇子を閉じる。そして振り下ろされた剣を、その扇子で止めて見せた。

 

「くっ!!」

「そら、頑張れ頑張れ……♪」

 

 目にも留まらぬ怒涛の剣技の連打を、玉藻は扇子を扱う左手だけで防御する。

 

「うぐぐ……舐めないで、頂戴!!」

 

 防がれてるだけなのにビリビリと剣の持ち手が痺れ、取り落としそうになるが……サラは歯を食いしばって握力を込め、踏み込みと同時に鋭い突きを放った。

 

 しかし、玉藻はその突きに扇子の先を合わせる。そのまま柔らかく受け流しながら横に逸らし、サラは勢いだけを残して体がすっぽ抜けてしまった。

 

「きゃ……!!?」

「残念」

 

 そう言いながら尻を叩く。叩かれたサラの体は回転しながらぶっ飛び、壁に激突するのだった。

 

「だぁあっ!!」

「うおぉっ!!」

 

 ようやく持ち直したルカとヴィクトリーが、剣を抜いて玉藻を左右から挟み撃ちに走った。

 

「一本ずつで十分よな」

 

 玉藻は棒立ちのまま、九尾のうちの二本を操って二人を迎撃する。

 

 剣技の連打が左右から迫るも、その全てをふわふわの尻尾だけで全て弾く。ルカとヴィクトリーは諦めずに食らいつくが、その様子を玉藻は扇子を扇ぎながら見ていた。

 

「そら、もっと速く振らんとこの体に辿り着けんぞ?」

「あだだだだだだだだだ……!!!」

「はぁあぁああああああ……!!!」

 

 更に加速する二人の剣技だが、それに合わせて尻尾の防御も速くなっていく。完全に遊ばれており、このままでは(らち)が明かない──

 

「……む」

 

 玉藻は、ふと正面を見る。すると、そこにはメフィストが手を向けており、後ろにソニアとプロメスティンが控えている。

 

「メフィストさん、ありったけの魔力を捧げます!!」

「お願い、どうかこれで……!!!」

「分かっています……外しはしません」

 

 プロメスティンとソニアが、メフィストに魔力を注いでいる。三人の魔力を凝縮させた技が、既にその手に宿っていた。

 

「どうか、少しは効いてくださいよ……【メフィストフェレス】!!!」

 

 メフィストはその力を解き放ち、凄まじいエネルギー波を放った。

 

「わぁっ!?」

「やべっ!!」

 

 ルカとヴィクトリーは、高速移動で離脱してメフィスト達の横につく。

 

 リリスは特に動揺もせず、その場で魔力のバリアを張る。

 

 そして玉藻は棒立ちのままエネルギー波に直撃し、大爆発した。

 

「びっくりした……その技、指向性変えれるのか!」

「ええ、私が作った技ですので」

 

 メフィストはそう言いながら、歯噛みして爆煙を睨んでいた。追い詰められた、切羽詰まった表情だった。

 

「……あと、最悪な事が起きてますね」

「えっ……!?」

「玉藻の体力は、これっぽっちも削れてません」

 

 そう話してる間に爆煙が晴れ、そこで全く無傷の玉藻が扇子を扇いでいた。

 

「……そのホコリを巻き起こすだけの妖術が、貴様らの奥の手か?」

 

 ケホケホと咳をしながら、笑いながら言う玉藻。確かに直撃のハズだったのに、傷一つついた様子がない。

 

「そ、そんな……少なくとも、私は全部の魔力を捧げたのに……」

「失敗でしたね……現時点で六祖には挑むべきではありませんでした」

「……無念です」

 

 絶望する、ソニアとプロメスティン。メフィストも、もうお手上げと言った風だった。

 

 だが……ヴィクトリーとルカは、前に出て構え直した。

 

「……(わり)ぃけど、俺は諦めて降参するぐらいなら最後までやるぞ」

「ヴィクトリーがやるなら、僕もやるよ……ずっと一緒に冒険してきたんだ、最後まで付き合う!」

 

 二人は、なんとまだまだやる気らしい。そんな二人を見て、ソニアがルカに縋った。

 

「ちょっ……二人とも、もうどうしようも出来ないわよ!!」

「ソニア、ポケット魔王城に負傷者を押し込んで全力で逃げて」

「そんな事できる訳ないでしょ!! ラザロおじさんとマーリンさんと、生きて再会するって約束したじゃない!!」

「そうは言っても、今はこうするしかねぇ……うんと遠くまで逃げて、奇跡が起きる事でも祈っててくれよ」

 

 ルカとヴィクトリーは、頑なに動かなかった。それを見ていた玉藻は、ケタケタ笑いながら様子を伺っている。

 

「良いぞ良いぞ、顔のいい男子(おのこ)が二人。一人は可愛く一人は男前……たっぷり遊んでから、骨の髄までしゃぶり尽くしてやろうぞ……」

「……とか言ってるけど、どうするの? 作戦とかあるの?」

「ねぇよ。死ぬまで暴れるだけだ」

 

 向かい合う、三人……その後ろでプロメスティンがアリスを、メフィストがヒルデを、ソニアがサラを抱えていた。

 

「負傷者はこれで全てかと! 離脱しましょう!」

「ルカ、ヴィクトリー……!!」

「……行きましょう──」

 

 玉藻をルカとヴィクトリーに任せ、メフィストが駆け出そうとした時だった。

 

「待てい、まだ詰んではおらんぞ」

 

 不意に声が聞こえたかと思えば、男二人と玉藻に割って入るように人影が着地してきた。

 

「……おめぇは!?」

「まさか、来てくれたのか!!」

「そうじゃ……アルマエルマにあそこまでケツを蹴られては、流石に腐っては居られん」

 

 そう言ってここに来たのは、狐神社で落ち込んでいたはずの──この世界のたまもだった。

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