もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「…………」
リリスは、ヴィクトリーをジッと見ていた。そして、かつてラダイト村のあの少年から受けた拳を思い出し、自分の顎を撫でる。
自らよりも、強い者に立ち向かう……無駄と知りながら、それでも何かを残すために。その
「ふむ、封印中の身とは聞いたが……」
玉藻は、幼女となっているもう一人の自分を見て困惑するばかりだった。
「来る途中にヤクザを助けたが、良かったか?」
「ラザロおじさん達も助けてくれたの? ありがとう、たまも様!」
ソニアの礼を受けながら、たまもは『ラストエリクサー』を使った。
「こ、これはっ……」
「エリクサーの広範囲版か……!?」
回復はルカとヴィクトリーだけではない。後ろに控えていたアリス達にも及んでいた。
「ぐぬ……そこに居るのは、余達の知っているたまもか……!」
「状況確認……この世界のたまもが乱入。敵は、リリスと平行世界から来た玉藻」
「きゅぅ……」
「ヴィクトリーは……よかった、無事ね!」
エリクサーの効果が皆に及び、魔力も体力も全快した。これで、再び戦える。
「さて……この者の相手は荷が重かろう。ウチが預かるぞ」
「……ああ、頼む!」
たまもは、改めてもう一人の自分──玉藻と向き合う。幼女と大人の二人だが……幼女の方のたまもが、目を閉じて身体に気を集中させる。
「
そう詠唱してから、目を見開いた。
「──我が真身よ、有れ」
たまもは、真の姿を晒した。ビリビリと肌を焼くようなオーラが波動し、力強く大地が鳴動する。その力量は、相手の玉藻と同格。
「これで不足は無かろう、もう一人のウチよ……我らの力、全くの互角ぞ」
「リリス……あの者らの相手をせよ。こやつは、ウチが相手しよう」
真の姿となったこの世界のたまもと、向こうの闇の世界の玉藻が睨み合う。
入れ替わるようにルカとヴィクトリーの前に降り立ってきたのは、リリスだった。
「私達の主人は魅凪様……いかに玉藻様といえど、頭ごなしに命じられるなど筋違い……ですが、この場はご提案を受けましょう。残る勇者もヒーローも、私が相手しましょう」
「リリス……これ以上、お前達の好きにはさせない!! ここで決着をつけてやる!!」
「……ヒーローとして、おめぇを
リリスとルカとヴィクトリーが、向き合う。
「はぁああっ!!!」
リリスは、気を解放した。暴風と淫気が波動し、それが二人を吹き飛ばさんとする程に吹き荒ぶ。
「……やっぱ、グノーシス以上のとんでもねぇ気だ……!!」
「ああ……!!」
二人の会話を聞いたリリスが、「クスッ」と笑う。
「グノーシス……あぁ、あの熾天使の。なら、いい事を教えましょうか。我ら三姉妹と熾天使は、忌々しい事に互角の実力を持ちます。貴方の言う熾天使グノーシスは、我が次女のアスタロトと同格です」
「それって……まさか!?」
「気付きましたか……そうです、私はグノーシスよりも格上なのですよ」
笑いながら言うリリスだが……ルカとヴィクトリーは、怖気付く事は無い。後ろには仲間も控えており、総力戦を仕掛ける気なのが丸分かりだった。
「いくぞっ!!」
ルカが真正面から突撃し、リリスに肉薄する。そして、斬りかかると見せかけて大きく跳び上がった。
「おおっ!!」
ルカの股下から、アリスが飛び出す。レイピアの狙い済ました一撃を、リリスの顔に向けて放つ。
しかしリリスはそれを避け、アリスを風魔法で吹っ飛ばした。
「ぐわっ……!?」
「【ブレイブソードスラッシュ】!!」
「【壊斧・大山鳴動】!!」
アリスと入れ替わるように、ヴィクトリーが刃に気を込めた抜き胴を、ルカが土の力を込めた兜割りを放つ。
同時に迫る二つの技を前に、リリスは姿を消す。二人の技は、
「なにっ!?」
「うしろです」
背後に現れたリリスが、ルカとヴィクトリーの背中に風の魔力を押し付ける。それが炸裂し、爆発のような威力を発揮して二人を吹っ飛ばした。
「ぐぁあぁあっ!!」
「うわぁあっ!?」
「あはっ!」
リリスが追ったのは、ヴィクトリー。駆け出してすぐさま追いつき、その手に淫気を纏ってゆらりと構えた。
「っ、やるかっ!?」
ヴィクトリーも踏ん張って構え直し、そのままリリスと激突する。そのまま、超高速の攻防が展開されるのだった。
「少しは腕を上げたようですね……ですが、その程度では『あの時』の繰り返しですよ?」
「その手には乗らねぇぞっ!」
攻防の最中、強烈な一撃をぶつけ合わせて距離を離す。
リリスは舌打ちしながら手の痺れを振り払い、ヴィクトリーは依然として静かに構えた。
「何ですか、その澄ました顔は……私が憎くて、平静を装ってるつもりですか?」
ニヤニヤしながら言うリリス。冷静に構えたままのヴィクトリーと、彼の様子を伺う仲間達。
ルカとアリスとメフィストは、もう心配していなかった。
「怒りで我を忘れるなんてヘマはもうしねぇよ……俺は──」
アルマエルマの言葉──『あの子はヴィクトリーちゃん。戦う事が大好きで、ルカちゃんの相棒で、カッコイイ道着の──』
「──『ヒーロー』だ!」
そう言った次の瞬間、ヴィクトリーの顔面に張り手が入る。そのまま風の力を伴ってぶん投げられ、壁にまで叩きつけられた。
「ぐぁあっ!?」
「……かっこいい事を言うのは構いませんが、相応の実力を身につけてから言うべきですよ」
「いいじゃありませんか」
リリスの背後から、メフィストが炎を撃ち放つ。それを寸前に察知し、振り向きざまに弾き飛ばした。
「メフィスト……そう、貴女が彼に妙な事を吹き込みましたね?」
「とんでもない、彼は自分で貴女に復讐はしないと決めたのですよ」
そのまま向き合う二人。メフィストは杖を向け、魔力を集中させていた。
「そんな事より、貴女には私の実力を見せていませんでしたね……魔王の腹心である私の実力、ご覧に入れましょう」
「たかが現世の魔物が偉そうに……」
「だぁあっ!!」
一対一でぶつかり合うと見せかけ、サラが剣技で背後から強襲して来る。しかし、リリスは振り向かずにそれを尻尾で受け止めていた。
「おや……サバサの女王。背後から不意打ちとは、貴女らしくもない」
「リリス……貴女にされたことは、忘れもしないわ! 覚悟!!」
そのまま、サラとメフィストで挟み撃ちにして猛攻を仕掛ける。それを涼しい顔で避けるリリスだったが……突如、その頭に弾丸が撃ち込まれた。
「!!!」
「【淫滅弾】……命中」
ヒルデだった。淫魔を滅する弾丸を、見事に命中させたのだ。
しかし、リリスはゆっくりと顔を上げる。命中した額をゴシゴシと指で擦りながら、笑った。
「少しは効きましたよ……」
「このまま攻めるよ……!」
「余も続くぞ!」
「きゅっきゅーっ!!」
そこにアリスやヌルコも参戦し、大乱闘と化した。
ルカとヴィクトリーは、プロメスティンとソニアに回復してもらっていた。
「ね、ねぇ……このままなら、リリスを倒せるんじゃない?」
戦況を見ていたソニアがそう言うが、ルカとヴィクトリーは顔をしかめていた。
「いや、リリスは完全に遊んでる……もっと、僕達が攻め続けないと……!」
「や、やっぱ一晩だけの修行じゃ無理があったか……ちくしょー、精神と時の部屋が使えたらなぁ……!」
「これではグノーシス様の時の繰り返しです! どうにか状況を打破せねば……!!」
プロメスティンがそう言った時だった。
唐突に城の外で凄まじい轟音が鳴り響き、地響きが起こった。それで、リリス達は勿論、玉藻でさえも戦いを止めた。
「っ、なんだ!?」
「ラザロのおっちゃん、また爆破テロでもしてんのか!?」
ルカとヴィクトリーは驚いてそう言うが……それが違うといち早く気付いたのは、アリスとリリス……そして、味方のたまもと敵の玉藻だった。
「……ゴルド火山が噴火した訳でも無さそうです。今のは──」
「魔王の力……いや、それを遥かに超えているぞ……!?」
同じ方角を見て、リリスとアリスは動揺する。
「……アリスフィーズ様には遠く及ばんが、確かに邪神の力じゃな。なぜ現世に……?」
「隙あり!」
玉藻は動揺したままだが、その隙にたまもの方がぴょんとルカ達の方へ跳んだ。
「たまもさん!」
「今のは、一体……」
「ウチも気になるが、それより忘れていたものがあった……これじゃ」
たまもがそう言って手渡してきたのは、一対のイヤリングだった。金色に透き通る小さな水晶が付けられた、不思議な力を感じるものだ。
「これは……アクセサリ?」
「お、おい、これポタラじゃねーか!! なんでこんな所に!?」
ルカはなんだか分からない様子だが、ヴィクトリーが目を剥いた。
「ウチがここに来る途中で助けたヤクザから渡された物じゃが……これが何か、わかるのか?」
「ラザロさんが、なんでこんなモンを……!?」
ラザロから渡されたというそれは、確かに自分の世界由来の物だった。
なぜ、こんな所に? なぜ、ラザロが……? なんて、色んな疑問が浮かぶが……今は、追い詰められている真っ最中。
「ウチは確かに渡したからな、頼むぞ!」
たまもはそう言い、再び玉藻の目の前に跳ぶ。
「む……リリス、面倒な事になりそうじゃ! 一応の妨害をしておけ!」
「……今そう思っていた所です!」
玉藻に言われたリリスは、目を光らせて二人を見る。魅了の力が魔眼を通して飛んでくるが、アリスがそれを遮って切り払った。
「アリス!」
ヴィクトリーの横に居たルカが彼女の名を呼ぶ。
「余なら平気だ! それよりもヴィクトリー、そのイヤリングを使えば、この状況がなんとかなるのか!?」
「っ、保証は出来ねぇ! けど、今より状況がマシになるってのは確実だ!」
ヴィクトリーが言ってる間に、リリスはアリスを吹っ飛ばす。だが、入れ替わるようにメフィストが急襲してきて、その尾でリリスを打った。
「次から次へと……!」
「ヴィクトリー、速やかにそれを使ってください! 私達ではあまり時間を稼げません!」
メフィストだけではない。プロメスティンもソニアも、他の皆もリリスに食ってかかる。
「僕も……!」
「待ってくれ、ルカ!」
ヴィクトリーは飛び出そうとするルカを呼び止め、ポタラの片方を差し出した。
「頼む、ルカ! こいつを右の耳につけてくれ!」
「えっ……それ、今じゃなきゃダメ!?」
「いいかルカ! こいつはポタラっていう、俺の世界の切り札だ! 二人でそれぞれの耳に付けると、合体してとんでもねぇパワーが発揮する代物だ!」
「それって……フュージョンみたいな事!? でも、僕達じゃ出来なかっただろ!」
「それも含めてイチかバチかなんだ! 頼む!!」
ヴィクトリーに熱望されたルカは、ポタラを受け取る。
「も、もし合体できても、二度と元に戻らないとかじゃないだろうな!?」
「安心しろ、神様じゃねぇモン同士の合体は一時間しかもたねぇ!」
「……逆に言うと、一時間で勝負をつけろって事か……!」
二人が話していると、リリスはアリス達の猛攻を振り切ろうとしていた。四方からの攻撃にも関わらず涼しい顔で避けており、もう二人のところまで一直線に飛ぶだけだ。
それを見た二人は、急いでポタラをそれぞれの耳に付けた。
「っ、これでいいのか!?」
「ああ、サンキュー!!」
ルカは右耳に、ヴィクトリーは左耳に。それぞれ装着されたポタラが閃光を放ち、二人の体はふわりと持ち上がる。そのまま二人が衝突すると同時にその姿が眩い光に覆われた。
「くっ……間に合いませんでしたか……!」
ポタラの放つ閃光を前に、急ブレーキをかけて止まり、様子を伺うリリス。
「ま、間に合ったのか……!?」
「ねぇ、ルカとヴィクトリーが……!」
アリスとソニアを始めに、皆がそこに注目する。殺到する視線を浴びながら、その光から一人の男が飛び出した。
「おっしゃあ──っ!!!」
飛び出した男は黒紫の髪を靡かせ、オッドアイの眼をキッと鋭くしながら、笑顔を見せていた。そして、背にはそれぞれが使っていた剣を
「なっ……!!?」
「え──────っ!!?」
リリスも、ソニアを始めとした仲間達も驚く。
「あれは……二人が、一人になったというのか……?」
「ははははは、まさかまさかの合体とは! 愉快愉快!」
玉藻二人も思わず注目する。
誰が見ても、明らか──ルカとヴィクトリーは合体し、一人の戦士としてリリスの前に立つのだった。