もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

22 / 183
決■のか■■め波

 戦いのさなか、突如として凶悪化してしまったクィーンハーピー。淫熱に侵されている時よりも鋭い気を放ちながら、ヴィクトリーとルカに向かって闊歩(かっぽ)してくる。

 

 二人はそれを前に構え直し、静かに闘気を高める。そして、ヴィクトリーの方が先に踏み込んだ。

 

「だりゃああ──ーっ!!」

 

 滾らせていた気を全開放し、クィーンハーピーに突撃する。猛スピードで眼前にまで来てから拳を放つものの、それは避けられてしまう。拳を空ぶったことにより彼は無防備を晒し、「しまった」と言うまでもなく腹に蹴りが入る。そして、蹴り飛ばされた。その先にはルカがいる。

 

「うわぁあっ!」

「くっ!」

 

 ルカは何と、ヴィクトリーの足を掴んで一回転。勢い付けながら、クィーンハーピーへ投げ返した。ヴィクトリーも内心予想外だったが、機転を効かせて突撃する。

 

「ふんっ!」

 

 そのまま身体を真っ直ぐにして額に集中。自らの石頭を、クィーンハーピーに叩きつけた。

 

「ぐっ!?」

「だだだだだだっ!!」

 

 更に攻撃を連打し、渾身の蹴りで彼女を揺るがせる。

 

「ぐぅっ!!」

「くらえぇっ!」

 

 跳びながら一回転からの後蹴(うしろげ)りで、クィーンハーピーを蹴り飛ばした。

 

「あぐっ……!?」

 

 クィーンハーピーは勢いよく吹っ飛ぶものの、クルンッと一回転して壁に足を付ける。その壁を蹴って翼を広げ、猛スピードで二人に向かって滑空する。そして、ギロチンのようなダブルラリアットがルカとヴィクトリーに炸裂したのだった。

 

「ぐはぁあっ……!!」

「がっ……!?」

 

 そのまま、ドゴンッと壁にまで叩きつけられる。その衝撃で壁がひび割れ、揺れがこの部屋全体に響き渡った。

 

「うふふ……二人共、美味しそうですね……どちらから搾りましょうか……」

 

 クィーンハーピーはそう言いながら、舌舐めずりをして二人を見下ろす。今にも食いかかってきそうな眼光に映るのは、苦悶する男達。しかし、彼らはすぐに目を鋭くして睨み返してきた。

 

「ぐっ……!!」

「ふんっ!」

 

 まずヴィクトリーが、クィーンハーピーに頭突きする。

 

「ぐっ!?」

「ででででいっ!!」

 

 揺らいでるクィーンハーピーの胸に、ルカの蹴りが連打された。

 

「だぁあっ!!」

 

 トドメと言わんばかりのヴィクトリーの気合い砲が、クィーンハーピーをぶっ飛ばした。

 

「きゃあっ!」

 

 クィーンハーピーはぶっ飛ぶが、翼を翻して体勢を整える。そして、ハーピーらしく翼を揺らしながら空中に留まり、不敵な笑みを浮かべた。

 

 その身体に暗黒のエネルギーと風の魔力が滲み、溢れ、混ざり合う。身体を独楽(こま)のように廻しながら、暗黒と風のエネルギーは増幅し──

 

「ベイクドサイクロンッ!!」

 

 叫びと同時に巻き起こったのは、見上げるほど大きい竜巻。それも暗黒のエネルギーが混ざっており、禍々しい黒に染まっていた。

 

「な、なんだっ!!?」

「避けるぞっ!!」

 

 見た目は派手だが、正面からゆっくり迫ってくるそれを避けるのは造作もない。なのでそれを難なく避けたのだが……暗黒の竜巻(ベイクドサイクロン)は壁に当たると同時に一際強い突風を巻き起こし、鋭い斬撃を拡散させた。

 

「くっ!」

「ちくしょっ!」

 

 ヴィクトリーもルカも剣を抜き、斬撃を火花を散らしながらいなしていく。クィーンハーピーはその隙に、二人の背後に現れた。

 

「しゃあっ!」

「しまっ……」

 

 二人は、羽根の一撃でぶっ飛ばされる。

 

「くっ!」

 

 しかしヴィクトリーは剣を納めながら持ちこたえ、クィーンハーピーに拳で猛攻しにかかった。

 

「だぁあああああっ!!」

「あはははははっ! もっと楽しませなさい!」

 

 猛烈な打ち合いが展開され、拳と羽がぶつかり合い、蹴り足が入り乱れる。

 

「うぉおおっ!!」

 

 なんとそこにルカも割って入り、クィーンハーピーに猛攻した。

 

「だりゃりゃりゃりゃ……!!」

「うぉおおおおおおお……!!」

「うふっ!」

 

 激しい攻防の最中、クィーンハーピーは不敵に笑う。それと同時に高速移動で二人の背後へ回り込み、肘を落とそうとする。

 

「そっちか!!」

 

 しかしそれを察知したヴィクトリーの足払いが決まり、クィーンハーピーはすっ転んだ。

 

「なっ!?」

「だぁあっ!!」

 

 更にその顔面に、ルカが飛び蹴りする。

 

「うぐぁあっ!」

 

 クィーンハーピーはぶっ飛んで、壁に叩きつけられた。叩きつけられた壁が大きな音を立て、ヒビが入る程の威力だった。

 

「よ、よし……いけるぞ……!!」

「じゃあ、やってみっかぁ!」

「うふふ……」

 

 クィーンハーピーは笑い、二人を見る。そして、不気味に羽根を揺らめかせた。

 

「さぁ、来なさい……惨めに果ててもいいのならば……」

 

 意味深に構えるクィーンハーピーに、二人は構えて警戒する。

 

 頭の回転が早かったのは、ヴィクトリーの方だった。

 

 おそらくアレは、何らかのカウンター狙いの構え。先攻に接近して攻撃は明らかに不利である。だが……これは、絶好の好機。完璧とは言えなかったあの技を……今までの戦いで培ってきた力を、ここで試すしかない。

 

「か……め……は……め……!!」

 

 ヴィクトリーは腰を捻りながら左足を下げて踏ん張り、手を合わせてそこへエネルギーを集中させる。

 

「……!!」

 

 クィーンハーピーは何かを感じ取ったのか、構えを解いてすぐさまヴィクトリーに突っ込む。

 

 カウンター待ちの構えをキャンセルして、突撃してきたのにはヴィクトリーは少し驚いたが……しかし、動じなかった。何故なら──

 

「だぁあっ!!」

「っ!!?」

 

 ──ルカの、矢のような両足蹴りが地面に踏み込んだ瞬間のクィーンハーピーの胸に直撃した。

 

 ぶっ飛んだ彼女はそのまま、壁に叩きつけられた。

 

「波──ーっ!!」

「!!! しまっ……!!」

 

 壁に叩きつけられたままのクィーンハーピーに、青白い気の奔流が迫り来る。回避の余地を許さない速度で迫り、見事に直撃、爆発が巻き起こった。

 

「はぁ……はぁ……ここまでですか……くっ!」

 

 晴れる爆煙と共にクィーンハーピーの嫌な気が霧散し、凶悪化が解けた。どうやら、これで彼女を倒したことになったようだ……

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 ヴィクトリーは、辺りを見回す。しかし、すぐに舌打ちをしてクィーンハーピーに向き直した。

 

 周囲に、怪しい気配は無い。なぜ、クィーンハーピーは凶悪化した……? 

 

 アリスを始めとした控えのメンバーが、そんなヴィクトリーを横目にクィーンハーピーの前に立った。

 

「頭は冷えたか、クィーンハーピー? 一時的にだが、情欲も薄らいでいるはずだ」

「ええ……今は、なんとか理性を保っております。しかし、それも長くは続かないでしょう……同胞たちは大丈夫なのでしょうか。あなた達が薬を配ってくれたようですが……」

 

 自分がこんな状態だと言うのに、案ずるのは同胞の事……倒しても尚、感服するばかりである。

 

 心配するクィーンハーピーに、ソニアは答える。

 

「薬はだいたい行き渡ったみたい。他のハーピー達なら、大丈夫だよ」

 

 ソニアの言葉で、クィーンハーピーはほっとした顔を見せた。

 

「そうですか、良かった……ならば、私をここに置いて集落に戻るのです」

「そんな、女王様だけ置いてけぼりだなんて……」

「しょうがねぇさ……病気のまんま外に出たら、何が起きるか分かんねぇ」

 

 ヴィクトリーは、冷静にそう言いながらクィーンハーピーに向いた。

 

「ハーピー達は任せてくれ……おめぇの分の世界樹の実は、いつか持ってくる」

「助かります……その時は、私もここから出ることが出来るでしょう。もちろん、ハーピーの女王としてお礼致します」

 

 クィーンハーピーは頭を抱えながら、部屋の中心に座った。

 

「さぁ、それでは行ってください。同胞達には、既に思念で指示を出してあります」

 

 クィーンハーピーの治療は、延期になる。世界樹の実が足りないのだから、仕方がない。もう暫く我慢してもらうしかないのが心苦しいが……

 

「世界樹の実を持って、また来ます」

「きゅ!」

 

 ソニアとヌルコが、並んで言う。

 

「ああ……行こうぜ、ルカ」

「待っていて下さい、クィーンハーピー……絶対に、助けますから」

 

 ヴィクトリーとルカも言い、この場を後にする。

 

「……期待していますよ、強き旅人達」

 

 クィーンハーピーは、揃ってこの場を後にする戦士達の背にそう言ったのだった……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。