もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
黄金を持ってミダス村へと無事に帰還した戦士達。そこで黄金製の武器を手に入れて、遂に山脈越えをしようとしていた。
「この山脈洞窟を越えると、ロストルム地方だよね。東のタルタロスがある、無人の地域って話だけど……」
「どんな地方だ?」
ヴィクトリーの言葉を聞いて、アリスが真っ先に口を開いた。
「……誰もいない、無人の地方だ。ロストルム村もあったが、大異変から10年ほど後に滅びたという。小さな村ゆえ、生き残りも居なかったと言う事だが……」
「……滅びた原因も、タルタロスに関係あるのかな?」
「その可能性は高いだろうな。何者かの襲撃を受けたと言う事だが……まぁ、それも含めて調べてみるぞ。タルタロスには、大異変の手がかりがあるはずだ」
アリスとソニアが話した所で、ルカも頷く。
「よし、それじゃあ……」
「いっちょやってみっかぁ!」
「きゅっ!」
ルカとヴィクトリーに応えるように鳴く、ヌルコ。彼らは気合を入れて、山脈洞窟の中に入ったのだった。
※
あの実践訓練でレベルアップを果たしたルカとヴィクトリーにとって、山脈のモンスターなど雑魚同然だった。しかも、今は黄金製の装備を手にしているので、皆もパワーアップしていた。
ただ、そこそこ長い洞窟とだけあり、越えるには時間と体力を要した。
「よ、ようやく洞窟を抜けれたか……疲れた……」
抜けるなり、アリスはぐったりした様子でそう言った。
「とりあえず、野宿以外で休めるところを探そうよ。滅びたロストルム村でも、休む場所くらいはあるんじゃない?」
「そうだね……よし、ロストルム村に行ってみよう」
ルカがそう言って先頭に立ち、歩き続けて辿り着いたロストルム村……そこは完全に滅ぼされ、壊された建物とその瓦礫、僅かに残ってる民家、そして枯れ果てた草木が風に揺られている。
「ひどい……完全に滅ぼされてる……」
ソニアの言う通り、そして噂通り、ロストルム村は完全に滅びていた。
「いったい何者が、ここまで村を破壊したのだ……? ただの盗賊や、ならず者の仕業ではないのは確かだな」
「とにかく、体を休める場所を探そうよ。少し休憩してから、南のタルタロスに乗り込もう」
「きゅーっ!」
アリスやソニアが言うのに応じるヌルコ。
「……」
ヴィクトリーはというと、廃墟の一つに目を付けていた。
「……どうしたんだ、ヴィクトリー?」
ルカはヴィクトリーの様子に気付き、そう投げかけた。ヴィクトリーは、その廃墟に目をつけたまま口を開いた。
「そこから、覚えのある気がする……しかも二つ」
「本当か?」
「ああ……ここの生き残りじゃねぇのは確かだ。行ってみようぜ、面白そうだ」
そう言うと、ヴィクトリーはその廃墟に向かっていった。皆も彼の背に続く形となって歩いていく。
「……」
ヴィクトリーは、廃墟の玄関を開ける。そこには、見覚えのある羽根を生やした少女と、スライム娘の二人がいた。
「ふぅ、ようやくここで一休みできますね……あたたかいベッドでねむりたいです……」
その正体は、イリアスとそのお供スライム娘だ。
「むっ、イリアスではないか……もしかして、貴様もタルタロスに向かっているのか?」
見るなり、アリスが声をかける。
「あなた達こそ、タルタロスが何か分かっているのですか?」
「分かってるよ、別の世界線……いわゆる、並行世界へのトンネルだろ?」
ヴィクトリーは真っ先にそう答え、椅子に座った。
「ええ……私達の世界とは異なる可能性の存在する世界。何らかのパラドックスによって、発生したと考えられます」
「……ぱらどっくす?」
ルカは素っ頓狂な顔でそう言いながら、首を傾げた。
「時空そのものに生じた、ボタンの掛け違いのようなものです」
「話しただろ? 一本の苗木の話。あれが一番分かりやすい例だ。それでイリアス様、原因は分かるんか?」
「いいえ、まだ調査中です……また、タルタロスでは人間が変異するのを見たでしょう。あれは、アポトーシス化現象と呼ばれるもの」
「アポトーシス……!」
ヴィクトリーは、タルタロスの中にあった赤字を思い出した。『みんな、アポトーシスになる』という、不気味な文の事だ。
「歪んだ時空間による、聖素と魔素の不規則な生体侵食変異……それが、アポトーシス化の正体なのです」
「……ちなみに、こいつの正体は分かるか?」
ヴィクトリーは、ヌルコを抱っこして持ち上げる。
「きゅきゅー!」
「分かりません」
それを見たイリアスは、きっぱりと即答した。
「だってよ、ヌルコ」
「きゅーっ」
特に意に介してない様子のヌルコは、ヴィクトリーの膝でくつろぎ始めた。
「いったい、なんでそんな事が起きたの……?」
「それは、調査中です」
ソニアの問いにも、イリアスは即答した。
「……」
「つまり、まだ何にも分かってねぇって事か……」
とにかく、イリアスの方も頑張っているらしい。収穫無しなのは残念だが、分からない事だらけなのはお互い様である。
「じゃあイリアス様、何か分かったら頼むぜ。俺達も頑張るからさ」
「こんな奴、アテにならんがな……」
「何ですって……!? 今のは聞き捨てなりませんよ、魔王!」
「ふん、アテにならんからアテにならんと言っているだけだ! 文句あるか!」
「あーもう、やめろよ! ほら、かいさーんっ!」
アリスとイリアスの喧嘩を、ルカが収める。
「べーっ!」
「いーっ!」
この家から出ていくまで、アリスとイリアスは睨み合っていた。
何はともあれ、この村の宿屋……その廃墟で、少しばかり休憩する事になった。みんな山越えで、疲れている。
「イリアス様は、あんなスライム娘一人だけでどうやって山越えしたんだろうな?」
「さぁ……?」
※
少し休憩してから、戦士達はロストルム村を南下。そこにあるタルタロスへとやってきた。そこは南のタルタロスとは違い、学者達も居ない。
「誰もいない……なんだか、不気味な雰囲気……」
「調査隊はここまで来られないという話だったな。非戦闘員の学者達まで連れて、山脈越えは無理だろう」
人も動物の気配もなく、ただそこに空いている大穴。それは不気味な雰囲気を
「おっしゃあ、いっちょやってみっかぁ!」
そんな暗い空気など知らんと言わんばかりのヴィクトリーが、真っ先にタルタロスへと走り、大穴へと飛び込んだ。
「ちょっ!? ヴィクトリーっ!?」
「せっかちな奴め……余達も続くぞ!」
何故かヴィクトリーを先頭に、戦士達は大穴へと降りていった……