もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
タルタロスの中は、南のタルタロスと同じく超過技術でできた研究所風の所だった。戦士達は敵の強襲に備えながら、あちこちを調査する。
「おい見ろよヌルコ、おめぇこれ使えんじゃねぇのか?」
ヴィクトリーが運んできたのは、大砲型のマキナだった。
「きゅ!」
ヌルコはそれを持って、チャキーンと構える。どうやら、お気に召したらしい。
「あはは、似合ってるぞ!」
「きゅー!」
ヴィクトリーが笑いながら拍手して、ヌルコはエッヘンと言わんばかりに胸を張る。
「呑気な奴らめ……」
アリスはそれを見ながら、呆れるように呟いたのだった。
「ねぇ……」
ここで、ソニアが目の前に指を差しながら、他のメンバーに呼びかける。
彼女が指した先……そこには、森が展開されていた。
「なんで、大穴の中に森があるの……?」
「時空のねじれ……周囲の空間を巻き込み、取り込んでいるのか?」
「言われてみれば、境界線は削り出したみてぇな感じがするな」
アリスとヴィクトリーは、森の様子を見て考察する。
とりあえず、森の中も探索してみる。
先程のマキナのようなものがチラチラとあったり、森の中には洞窟まであった。使えそうなマキナは拝借してヌルコに渡したり、装飾品の類はルカが回収する。
「こうやって探索してると、ホントに剣と魔法のファンタジーの冒険って感じがするな」
「ここがタルタロスじゃなかったら、僕も頷いてたよ」
ヴィクトリーとルカは、そんな事を話し始める。
「ヴィクトリーはこういう所は慣れてるのか?」
「まぁな。こう見えても、過去と未来行ったり来たりしながら世界を救ってきたんだぜ」
「嘘くさー……」
「ほ、本当だ! 今はこんなんだけどよ、金髪になってとんでもねぇ力を発揮したり、神の力を解放したりも出来たんだぞ!」
熱弁するヴィクトリーに、ルカはジト目を向けたままである。無理もないことである。この間この手で勝利した、自分と同い年の男が世界を救ったヒーローだなんて信じられない。今の所この男は、この世界には無いおかしな技を使う異世界武道家だ。
「まったく、何が出てくるか分からんと言うのに」
「……ホントに……そうね……」
「きゅっきゅ」
男二人の背に控えているのは、探索するアリスに、相変わらず暗い様子のソニア、鳴いてるヌルコ。彼女らは、警戒を怠っていなかった。
そうやって進んでいると、アリスが真っ先に目を鋭くした。
「伏せろルカっ!!」
「っ!!?」
アリスの言われた通りに、体を伏せるルカ。そこにエネルギー波が飛んできて、ルカの髪の毛に掠った。
「外したか……まぁいい……」
「美味しそう……おなかもすいた……」
「あははっ! こんな所に来る人が居るなんてねぇ!」
現れたのは、三体のアポトーシスだった。エネルギー波は、最後に喋った奴が撃ったらしい。
「何だおめぇらは!」
ヴィクトリーがそう言いながら構え、他の皆も武器に手をかけて臨戦態勢を取る。
「私はライオット……そう呼ばれている」
「私はイーター……」
「ルクスルよ! よろしく!」
ライオットは戦士タイプの、竜人に似た魔物だ。イーターは触手と口が一つになったような奴で、中心には幼女の胴部がある。ルクスルは、機械に上半身の胴部と腹部がついたような姿をしていた。
とにかく、三体は声を揃えて次の言葉を合わせた。
「第一次断界接触……消去する」
そう言って、戦士達に飛びかかってくる。
「またそれか……」
「くるぞっ!! 構えろっ!!」
戦士達は構え、襲いかかるそれを迎えうつ。イーターはルカとソニアに目をつけ、ルクスルはアリスとヌルコに目をつける。
「がぁあっ!!」
「っ!!」
ライオットが、ヴィクトリーと激突する。腕と腕がぶつかり合って衝撃波が発生するが、二人は揺るがずに刀の鍔迫り合いのように睨み合う。
「貴様も生粋の戦士タイプか。私の好みだ!」
「サンキュー!」
褒められてるのかどうなのか分からないので、とりあえず礼を言うヴィクトリー。次の瞬間には、拳が疾風のように飛び交いドカドカと打ち合いが始まった。
「はぁあっ!!」
ライオットはトカゲのような尻尾を鞭に見立て、薙ぎ払いにかかる。
「ふんっ!」
ヴィクトリーはそれを掴んで、止める。そのままライオットをグルグルとぶん回した。
「ちっ!」
振り回されつつも彼女は、すかさずヴィクトリーの顔面を蹴る。
「うぐっ!?」
「はぁあっ!!」
そのまんま顔面に蹴りを連打して、渾身の力を込めて一蹴り。ヴィクトリーは尻尾を手放しながらぶっ飛んだ。
「くそっ!!」
ヴィクトリーは吹っ飛んでる最中に一回転して体勢を整え、ライオットを見る。
「はぁあっ!!」
既にライオットは、眼前に迫っていた。すかさず放たれた一撃だったが、どうにかガードを間に合わせる。
「くっ!?」
ガードした腕が、ビリビリと痺れる。
獣人の素早さと竜人のパワーを併せ持つ、速く重い一撃が遠慮なしに連打され、防戦を強いられるヴィクトリー。
「負けるかぁああっ!!」
しかし、ヴィクトリーも隙を見つけて負けじとライオットのこめかみにハイキックした。
「つっ……!!?」
「あだだだだだっ! どぉらぁあっ!!」
揺らいだライオットの胸に蹴りを連打してから、渾身の正拳突きを叩き込む。
「ぐっ!!」
ライオットは足を地面に擦らせながらも踏ん張り、そのまま地を蹴り出してヴィクトリーに一撃を放った。しかし彼はその一撃を避けて懐に踏み込み、両手を合わせる。
「なっ……!?」
「かめはめ波──ーっ!!」
そして、かめはめ波を放った。至近距離で、全エネルギーがライオットに叩き込まれた。
「ぐぉおおおっ!!?」
ライオットはかめはめ波によって押され、壁に叩きつけられて爆発した。
「ぐっ、もう無理か……!!」
そして戦闘不能になり、その体をボロボロと消散させたのだった。
「……よし!」
ヴィクトリーは、ルカやアリスの援護に回ろうとする。
「こっちも終わったぞ」
「僕も大丈夫だ」
しかし、丁度戦闘は終わった所だった。致命傷を負ったメンバーも居なさそうだ。
「よし、進もうか」
「ああ……」
戦士達は臨戦態勢を解き、再び奥へと進みだしたのだった。
※
「……さて、問題の扉だな」
「ああ……」
進んだその先……あの、開かずの扉が戦士達の道を塞いだのだった。
「やはり、ここにも扉が……南のタルタロスにあったものと同じようだな」
「きゅーっ、きゅーっ!」
興味深そうにしげしげと見るアリス。何やら興奮しているヌルコ。そんな彼女らとは違って、何やらソニアは様子が変だった。
「ねぇ、開けるのやめとこうよ……なんだか嫌な感じだよ」
やはり、一回目のタルタロスと同様に異常に怯えてる。忌避しているとも取れる態度であった。
「ここで引き返したら、何のためにここまで来たのさ……」
「待った、ルカ」
扉を開けようとするルカを、アリスが静止した。
「な、何だよアリス……」
「試しに、ヴィクトリーにこの扉を開けさせてみないか?」
「ええっ!? 俺かよ!」
まさかの提案だった。前の扉の時は、ルカが触るのがコンマ一ミリ早かった。あの時扉に触ってないのは、ヴィクトリーだけである。
「いいけどさ、多分無駄だと思うぜ……」
ヴィクトリーはそう言いながら、扉に手をつける。当然、何も起きない。
「ふんっ……!!」
しかし、力を込めると扉の反応が変わった。ゴゴゴッ、と動きかけているのだ。
「……なにっ!?」
「ふんっぎぎぎぎ……!!」
更にヴィクトリーは力を込め、扉を開けようとする。しんどい事には違いないが、確かな手応えがあるのだ。
「そ、そんな……私たちがやっても、ピクリとも動かなかったのに……」
「ど、どうなっている……!!?」
「きゅー……」
「ぐぐぐぐぐぎぎがぁああああ……!!!」
しかしどれだけ力を込めても、ミミズ一匹が通れるか通れないかぐらいの隙間しか開かなかった。ここであえなく、ヴィクトリーが折れた。
「ハァッ……ハァッ……や、やっぱ無理だよ……ルカ、何とか出来るか?」
「分かった、よっと」
ルカが手を触れると、簡単に扉が開いた。
「そうだよ、最初からこうすりゃいいのに」
「触れるだけで、簡単に開いたか……やはり、貴様は扉が開けるのだな」
「私達じゃピクリとも動かなかった扉を、僅かに動かした……ルカに至っては、触れるだけで全開……」
ここで、ヴィクトリーは息を吐いて拳をパンッと叩いた。
「よっしゃあ! 気合い込めて、行ってみようぜ!」
「ああ、行くぞ!」
ルカとヴィクトリーを先頭に、扉へと入る。その先には、やはり侵食された町があった。
「やっぱり、この気持ち悪い町……ねぇねぇ、さっさと抜けようよ」
「きゅ……」
怯えた様子のソニアを横目に、アリスとヴィクトリーは周囲を見渡していた。
「どこかの町が、時空異変に取り込まれたのだろうな」
「やっぱし、レミナか……?」
ヴィクトリーがそう言った直後、不意に彼はキッと民家を見た。
「どうしたんだ、ヴィクトリー?」
「……」
不審に思ったルカは、その視線の先を追う。そこは、そこそこ大きめの一軒の民家であった。
そして彼は、緊張した様子で口を開いた。
「あそこから、気を感じる」