もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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研究熱心な下級天使

 イリアス大陸東のタルタロス……そこでもやはり、超過技術が展開されていた。更には、南のタルタロスとは違う種類のアポトーシスモンスターが居た。

 

 そいつらを薙ぎ払い、そして次元の扉を越え……やはりその先も、侵食された街だった。

 

 そんな時、ヴィクトリーは何かに気づいたようだ。

 

「どうしたんだ、ヴィクトリー?」

「……あそこから、気を感じる」

 

 ヴィクトリーの言葉に、緊張が走る。あの変異する村人モドキでも居るのだろうか。

 

「なに……? あの壊れちゃった人が……?」

「いや、多分こいつは壊れちゃいねぇ……いったい、何者が……!!」

 

 ヴィクトリーの視線と、同じ方向を向いて警戒する戦士達。その民家の扉が開かれ、出てきたのは……

 

 赤髪を結んだ、眼鏡をした少女だった。

 

「!!」

 

 次の瞬間、ヴィクトリーに頭痛が走った。

 

「っ……!!」

 

 見えたヴィジョン……それは、嫌な笑いを向ける赤髪の研究者の姿。その体に藻を纏ったり、下半身が肉樹になったり……そして、それを迎撃する己の姿。燃え盛る紅蓮の気、神の力を宿した自分。

 

 そんな映像が、ヴィクトリーの頭に刷り込まれたのだ。

 

「ぐ……!!」

 

 思わず、跪いてしまう。情報量に頭がついていかない。

 

「ちょ、ヴィクトリーっ!?」

 

 ルカが、でかい声を上げる。

 

「……!」

 

 少女はそれに気付き、逃げるように民家へと入ってしまった。

 

「おい、何者だ!」

 

 男二人を横目にアリスが大声を出してそいつを呼ぶが、反応は無かった。

 

「ぐ……!!」

 

 ヴィクトリーは頭を押さえ、ブンブンと振る。ようやく落ち着いてきたものの、頭痛の余韻はガンガンと響く。

 

「大丈夫か? また例の頭痛か?」

「ああ……もう平気だ」

 

 ルカに支えられながらも、民家に歩み寄る。とりあえず今は、ヴィクトリーが先頭になった。

 

 あの少女は、何者なのだろうか。そして頭に浮かんだヴィジョンの、嫌な笑いを浮かべたあの女の人とは、どういう関係があるのだろうか。

 

「……お邪魔しま〜す」

 

 そう言いながら、民家に入るヴィクトリー。そこには、やはりさっきの赤髪の少女が居た。

 

「ひゃっ! あなた達はいったい……!?」

「貴様こそ何者だ! そこで何をしている!?」

 

 アリスが前に出てきて、少女に言い放った。

 

「わ、私はプロメスティン……司書をやっている、下位の天使です」

「天使だと……?」

「……」

 

 ヴィクトリーが気を感じてみると、プロメスティンからは、矮小ながらもあの滅んだ世界で感じたのと同じ聖なる気が感じられた。どうやら、天使で間違いないらしい。

 

「どうやら、そうみてぇだな……こんな所で何やってんだ?」

「説明の前に、一つお尋ねしたいのですが……今は何年でしょう?」

「えと、エイジ2017……って、これは俺の世界の暦だった。えと……」

「ヨハネス暦1455年のはずだけど……この場所だと、何年か分からないわね」

 

 先頭に立ってるヴィクトリーの代わりに、ソニアが答えた。

 

「いえ、あなた達がどの時代から来たか聞きたかったのです。しかし、ヨハネス暦1455年なんていう未来とは……」

「1455年が未来……という事は、貴様は過去の住人か? いったいなぜ、このような異空間にいるのだ?」

 

 そう言うアリスの顔を見る、プロメスティン。彼女は、何かに気付いたように反応をする。

 

「あなた、どこか沙蛇(さじゃ)に似ていますね……もしかして、あの大妖魔の血縁なのですか?」

「ええい、余の質問が先だ! 答えんと、この辺の薬を全部飲み干すぞ!」

「どう考えても危ねぇ薬だと思うぞ……」

 

 無茶苦茶な事を言ってキーキー鳴くアリスに、ツッコミを入れるヴィクトリー。彼女を「どうどう」と言いながらなだめるルカ。

 

「そ、それはやめて下さい! 私は、実験中にこの空間に飛ばされたんです……」

「実験? イリアスの命令で、天使どもが実験をしていたというのか?」

「いえ、私の独学による実験です。聖素と魔素の結合反応を試していたら、こんな所に……」

「イリアスの命令もなく魔導実験とは……貴様、とんだ不良天使だな」

 

 ルカは周囲を見ながら、息を吐いた。

 

「もしかして、大異変の原因って……君がやった実験のせいじゃないの?」

「いえ、それはありません。私のやった実験は、大規模なものではありませんでした。偶発的に、小規模な時空ゲートを開いてしまっただけ……それも、実験事故のような不本意な結果なんです」

 

 大規模な実験では無いとプロメスティンは言ったが……部屋中の研究器具や怪しげな薬品、テーブルに散乱した何やら難しい数式を書き連ねた紙……それなりの実験を、その身一つでやっていた事が伺える。それが彼女をただの不良天使では無い事を物語っていた。

 

 ヴィクトリーは、時空に関することは専門家のつもりだったが……息を飲むしか出来なかった。

 

「時空ゲートを、独学で……? おめぇ、ブルマさん以上の天才なんじゃねぇか?」

「私はそんなもの履きませんし、意味が分かりません」

 

 プロメスティンの言葉に、ずっこけそうになるヴィクトリー。

 

「そうじゃねぇ! 俺の知ってる人に、ブルマって人が居るんだ!」

「え、ええ……す、すみません」

 

 プロメスティンは困惑を残した様子でゴホンと咳をついて、続ける。

 

「ここに飛ばされてから、実験や観測を重ねたのですが……複数の時空をまたぐ、大規模な時空断裂が存在していました。私がここに飛ばされたのも、それに触れてしまったせいです。現在、そのような時空断裂が出来た原因を調べています……」

「ここに飛ばされてから、しばらく実験してたって……何日ぐらい前に、ここに来たの?」

 

 プロメスティンは、そう質問してきたソニアの方に向く。

 

「何日というか……200年ほど前でしょうか」

「えぇっ!?」

「に……」

「200年!!?」

 

 サラッと答えるプロメスティンに、驚く人間三人。アリスとヌルコはあまり驚いた様子は無く、「ふむ」や「きゅー」と言うだけだった。

 

「それで……あなた達は、どんな実験でここへ? よろしければ、実験状況など教えて頂きたいのですが」

「実験などしておらん。ここにいるエセ勇者と脳みそ筋肉は、時空を行き来出来るのだ」

「え、エセ勇者て……」

「脳みそ筋肉……」

 

 とりあえず、プロメスティンに自分達の身の上を説明する事にした。

 

「そんな……人間が、平行世界を渡る事ができるなんて……人間が特殊な能力を持ち得る時、前頭葉に変化が見られます。御二方、少し脳を解剖してもいいですか?」

 

 プロメスティンは目をキラキラさせながら、メスと変な色の薬品が入った注射器を用意した。

 

「僕、死ぬよね」

「丁重にお断りする」

「それでは、クローンを作らせて下さい。このビーカーに、精液を採取したいのですが……」

「ええい、付き合っていられるか! さっさと失せろ、このマッドサイエンティスト天使め……!」

 

 プロメスティンの話を遮り、アリスがそう言い放った。彼女も、頬を膨らませる。

 

「そちらからやって来ておいて……」

「まぁまぁアリス……見た所、おめぇすげぇ頭いいんだな……」

 

 ヴィクトリーは、改めて屋内を見回す。怪しげな薬、書き殴られた資料、よく分からない物体……たくさんの研究の跡。200年もずっと、ここで一人で研究を続けていたのだろう。

 

「これ、全部おめぇ一人で?」

「だから、そうと言ってるじゃないですか」

「……」

 

 ヴィクトリーは笑顔を向け、プロメスティンに手を差し伸べた。

 

「俺達の仲間になってくれねぇか?」

「!!」

 

 ヴィクトリーに、視線が殺到する。

 

「ヴィクトリーっ!? また得体の知れん奴をスカウトして……!!」

「ヌルコはまだいいけど、この子は完全なマッドサイエンティストよ! どうなるか分からないわよ!」

「きゅーっ! きゅーっ!」

 

 先程までの様子を見ていた女性陣が、猛反発した。

 

「まぁまぁ、いいじゃねぇかよ! こいつの頭脳、ここに居たまんまだともったいねぇだろ。いずれ俺達の役に立つかも知れねぇし……何より、こんな所でひとりぼっちなんて、かわいそうじゃねぇかよ」

「……ひとりぼっちなのは、気にしてませんけどね」

 

 プロメスティンは資料をまとめ、抱える。そして、こっちに向いた。

 

「それに、私も丁度同じ事を思っていたところです。ご一緒させて頂いてよろしいですか?」

「な? いいだろルカ?」

 

 ヴィクトリーはプロメスティンと並んで、何故かルカの方に向いた。

 

「ぼ、僕かよ……ご一緒って、仲間になるって事?」

「ええ、ぜひあなた達を観察……いえ、あなた達の力になりたいです」

「……ルカとヴィクトリーを、モルモットにするつもりじゃないよね?」

 

 ソニアの質問に、プロメスティンは笑顔を向けた。

 

「大丈夫です。前頭葉の一部を切除しても、ただちに影響はありません」

「やっぱり解剖する気だこの子!」

「大丈夫、そうなる前にぶっ飛ばす!」

 

 ヴィクトリーは拳を握りながら、そう言い放った。

 

「こっちはこっちで野蛮!」

「まぁ、ヴィクトリーの言う通り……その頭脳が仲間になるんなら、心強いよね……じゃあ、よろしくね!」

 

 ルカも快諾し、プロメスティンと握手した。

 

「それでは、よろしくお願い致します。至らない身ではありますが、精一杯頑張りますので」

 

 こうして、一抹の不安を抱えながらもプロメスティンが仲間になったのだった。

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