もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ヴィクトリーのスカウトによって、仲間になったプロメスティン。マッドサイエンティスト気質な彼女に警戒する声もあったが、知識豊富な研究員が仲間になるのは心強かった。
「二人とも、油断してたら解剖されるわよ。この子、清純そうに見えて真っ黒だから……」
特にソニアは、まだプロメスティンを警戒している模様。当のプロメスティンはと言うと、気にしないでワクワクした様子だった。
「あはは、気を付けておくよ……」
「よっしゃあ、先に進もうぜ!」
一行は民家を出て、町を進む。紫色の何かと次元異常に侵食された街並みは不気味で、只事では無い何かがあったと分かる。
ヴィクトリーは異世界超えは専門なのだが……面倒臭がらずタイムパトロールの知識を勉強しておけばよかったと今になって思う。
「それにしても、どうなってんだここは? いったい、何があったってんだ?」
ヴィクトリーが聞くも、プロメスティンは首を横に振った。
「分かりません……ただ、ただ事ではない何かが起こったとしか……」
プロメスティンが何も分からないとなると、いよいよお手上げである。
「あの不気味なモンスターについては、何か分かるか?」
「アポトーシスの事ですね」
プロメスティンはそう言いながら、資料を取り出した。
「私の考察ですが……あの存在は、この空間そのものの免疫機構と考えられます。空間に取り込まれた生物や無機物がその素材になってるようです。また、アポトーシスには全くの同一個体が存在します。ルクスルと呼称される種は、全員が同じ人間の記憶を受け継いでいます。アポトーシスは複製され、人格さえコピーされているようですね」
プロメスティンは、研究を続けていただけあり詳しかった。そして彼女の説明を聞いたヴィクトリーは、納得した様子を見せた。
「なるほど……通りで、同じ気しか感じなかったみてぇだ……」
「気……? 何なんですか、それ?」
「ああ、僕達も気になっていた所だよ」
「魔力の類であることは確かだが、『気』とは何なのだ。魔力や気配とどう違う?」
アリス達に聞かれたヴィクトリーは咳をついてから、頭を抱えた。
「説明が難しいな……どんな小さな存在にもある、体の中のエネルギーみてぇなものだ。極まればコントロールだって出来る。おめぇらの世界で言う魔力って言うのはわかりやすいかな。気配ってのは何となく感じるだけのもので、気ってのが確実に感じるものだ。例外はあるけど……」
「それで、その気とやらでアポトーシスを察知するとどんな感じがするのですか?」
「えーと……学校とか、いろんな人と一緒にいる空間は思い浮かべられるか?」
「イリアス神殿の教会だね」
「私も、ルカとよく行ってるわよ」
「魔王城だな」
「きゅ」
「学校では無いですけれど、司書の仕事場ならば」
「じゃあ、そこで自分以外の奴がみーんな同じ顔なのをイメージしてくれ。上司も、友人も、隣の人も、前の人も、皆だ。どうだ?」
皆の顔が、だんだんと引きつる。
「確かに……」
「気持ち悪いかも……」
「きつねがいっぴき、きつねがにひき……」
「き、きゅぅ……」
苦い表情で、口々にそう言う。
「……分かりやすい例えを、ありがとうございます」
プロメスティンだけが、センチメンタルな表情でそう応えた。彼女にとって司書の仕事場は、元々愉快な所でも無いらしい。
「それと同じ感覚を、俺はここでも味わってんだ……それでプロメスティン、なんでアポトーシスはみんな同じなんだ?」
「分かりません……空間侵食そのものの作用だと思われますが、根拠がありません。時間と設備さえあれば、解明も可能だと思いますが……」
「そっか……」
とりあえず、アポトーシスの事はこんな感じらしい。
そうこう話していると、やはり紫色の何かの穴の前に立っていた。
「やっぱここか……」
「みんな、行こう」
ルカが先頭になって、穴をくぐる。やはりその先は、あの星空の一本道だった。
「ここは……南のタルタロスと同じだな。おそらくここが、世界と世界の境界なのだろう」
「本当に、あの町から出られましたね。仲間も連れて、隔絶された時空を行き来できるなんて……」
「きゅ……」
会話しながら進み、奥に着く。そこには、やはり転移用の魔法陣があった。
「前回は、同じ魔法陣で異世界に飛ばされた。さて、今回はどうだ……? 以前と同じ、滅びた未来か……それとも、また別の平行世界なのか……」
「ドキドキしますね……この先に、どんな世界が広がっているのか……!」
「ああ、もしかしたらすげぇ奴が居るかも知れねぇからな……俺もわくわくしてるぞ!」
「きゅーっ!」
「よし、行ってみよう!」
ルカ達は思い思いの感慨を口に、魔法陣を踏む。
そして、光に包まれて次元を飛んだのだった。
※
「……来たきたあっ!」
ヴィクトリーの声と同時に光が晴れ、大地の感覚を踏みしめる。
目の前には、緑の自然が広がっていた。
「ここは……?」
「前と同じく、タルタロスの前だと思うけど……」
ルカとソニアの横で、アリスが腕を組む。
「少し光景が違うな……こっちの方が、自然が残っているのか?」
「前とは違って、周囲に危険な気は感じねぇ。行こうぜ」
「こういうのって、ドキドキしますよね。あっ!」
プロメスティンは走り、自然を見渡す。
「植物とか虫とか、サンプルを採っていいでしょうか!?」
「あははは、手短に終わらせろよー!」
この世界には、平和の気配が溢れている。思わず、気が抜けてしまうほどだ。
「じゃあ、まずはロストルム村に行ってみようか。ヴィクトリー、気はどんな感じだ?」
「……」
ヴィクトリーは額に指をつけ、目を閉じる。すぐに、にぱっと笑ってルカの方へ向いた。
「居るぜ! 住人がたくさん! この世界のロストルム村は、滅びてねぇぞ!」
「お、おぉっ! じゃあ、行こう!」
早足になる、ルカ達。果たして、この世界にあるものとは……