もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
イリアス大陸東のタルタロス……その先にあった平行世界は、平和に包まれていた。
平和な雰囲気の道中を何事もなく歩き、辿り着いたロストルム村……
「ほら、やっぱりみんな居るぜ!」
ヴィクトリーが指す通り、のどかな村の風景が広がっていた。多くはないが村人が往来しており、平穏に暮らしている。平和そのものだった。
「ほんとだ……」
「すると、20年以上は前になるのか……?」
ソニアもアリスも、驚いた様子を隠せない模様。
「おや、マルケルスさん」
不意に、青年がルカに話しかけてきた。
「この村に三度も立ち寄るなんて、よほどお気に入りみたいだね」
「えっ!?」
掛けられた言葉に、ルカは驚く。
「でも、来る度に雰囲気が変わるね。今回は背丈が違うような……」
「ち、違うよ……マルケルスは、僕の父さんなんだ!」
「えっ? 何を言ってるんだ……? ひょっとして、マルケルスさんとは別人? でもあの人、君くらいの子供がいる年齢じゃないはずだよ。まぁ確かに、外見は生き写しだけどね」
「あの」
プロメスティンが間に入り、青年の前に立つ。
「今年のヨハネス暦を伺ってもよろしいですか?」
「変な事を聞くんだな……今年はヨハネス暦1430年だよ」
ヨハネス暦1430年……ピンと来ないヴィクトリーの横で、アリスが納得した様子を見せた。
「なるほど、25年前か……ルカの父が冒険していた時期と重なるな」
ルカ達にだけ聞こえるように、静かに言うアリス。彼女の言う通りなら、マルケルスが来たという事は納得出来る。
すると、今度はヴィクトリーが前に出てきた。
「マルケルスって奴は、いつこの村に来たんだ?」
「最初は一ヶ月前だよ。三人の仲間を連れて、新米だが有望な勇者って感じだったな。二回目は、それより一週間後だ。その時は何故か一人だったよ。雰囲気もかなり違ったし……」
補足しておくと、マルケルスはどうやらラザロとマーリンとカレンという仲間が居たとの事。そんなマルケルスだったが……
「一週間後に、一人で再来した……? 雰囲気が違ったって、どんな感じだったんですか?」
怪訝な様子のルカに尋ねられた村人は、「うーん」と頭を捻る。
「歴戦の勇者の風格かな……しかも、なんだか鬼気迫る感じだったよ。たった一週間で、人があれほど変わる事はあるのかね? 何があったかは、俺は知らないよ」
村人から見ても、尋常ではない事が分かるほど変わっていたのは確からしい。
「仲間連れで村に訪れた新米の勇者……それが一週間後に一人で再訪、様子も違ってた……」
アリスがそう纏め、ルカとヴィクトリーは顔を見合わせる。
「どう考えてもおかしいな……村長さん辺りに聞いてみようぜ」
「うん、行こう」
「村長さんならあそこの家だ」
青年が、親切に教えてくれた。
「サンキュー!」
お礼を言って、村長の家に向かったのだった。
※
教えて貰った、村長の家の玄関を叩く。
「おっす! 村長いるか?」
「はいはい〜」
玄関を開けたのは、いかにもザ・村長という感じのお爺さんだった。村長はヴィクトリーに会釈した後、ルカを見る。
「おや、マルケルスさん? またずいぶんと雰囲気が変わって……」
「いえ、僕は別人です……」
「えっ……? それにしては、ずいぶんと似ておるのう……」
とにかく、村長はルカ達を家に上げる。お婆さんが、わざわざ人数分の茶を出してくれた。
「それで、そのマルケルスって奴の事を聞きたいんだけど……なんか分かるか?」
茶を飲んでから、ヴィクトリーが村長に聞いた。
「ふむ……彼については、村人達の方が詳しかろう。一度目に訪れた時は、儂も会ってはいなかったからな。会ったのは二度目。彼が我が家に訪ねてきた時の事は、よく覚えておるよ。話したのは、タルタロスと最近の異変の事じゃったな。群発する地震や農作物の異常について、興味深く聞いておった」
「やっぱりタルタロスの調査を……」
パーティで何となく休憩がてらに寄った一回目、単独でタルタロスの調査に来た二回目……事情が違うのは、分かりきっているだろう。
「そして、マルケルスはこうも言っておったよ。『数年以内に、この村に大きな異変が起きるかもしれない。そうなる前に、逃げた方がいい』とな」
ここで、アリスの眉がピクッと動いた。
「数年後に、大きな異変……? まさか、この村を滅ぼす事になる災厄の事か……?」
「でも、この時代のマルケルスさんがなぜそれを知ってるの? この村が滅びる事を、予言できたなんて……」
「ふーむ、実に興味深いですね」
「きゅーっきゅ」
アリスとソニアが話している後ろで、プロメスティンはいろいろとメモを取っており、ヌルコは茶を飲みながらのほほんとしていた。
「……まるで、見てきたかのような予言だよな」
ヴィクトリーが、意味ありげに言う。それを聞いた村長は、ゾッとした。
「村が滅ぶ……? 物騒な事は言わんで下され……ただでさえ、最近の異変に村人達は怯えているものでな。あと、マルケルスか? 手紙を預かったよ。この村に知人が訪れた時には、渡してほしいとな……」
「この村に訪れるかもしれない知人……?」
「いったい、誰の事だ?」
ルカとヴィクトリーの疑問に、村長は手紙を出し宛名を見る。
「ルカ、という少年じゃ」
「えっ……!?」
「なんだと……!?」
一同に、動揺が走る。
「馬鹿な、それはおかしい……! この時代、まだルカは産まれてもいないはずだぞ……いったいなぜ、マルケルスはそれを知っていた? 産まれてもいないルカに、手紙を残したのだ……?」
流石のアリスも、困惑している。そして、ヴィクトリーも困惑していた。
「同名の別人……なワケがねぇよな……いったい、どうなってんだ……!?」
「村長さん、僕がルカです! その手紙を見せてくれませんか!?」
「なんと、お主がルカじゃったか。それでは、彼との約束通り手紙を渡そう……」
村長はルカに、マルケルスからの手紙を差し出した。ルカはそれを受け取り、手紙を開封する。冒頭から、『我が息子、ルカへ』と書かれていた。
「我が息子、ルカ……!? この時代のマルケルスは、まだ僕の父さんじゃないのに……!」
ルカは、手紙を読み進める。
「この手紙……間違いなく、僕の父さんのものだ!」
「この時代のマルケルスじゃなく、お前の父……? 我々の時代のマルケルスが、ここに来ていたという事か!?」
「やっぱりな……一週間で人が変わったってのも頷けるぜ。そもそも別人なんだからよ……」
手紙の内容……それは、力になれない両親からの謝罪と、『迷いの森を抜けた先にある隠れ里エンリカに居る、ミカエラを頼れ』という趣の指示と、世界の闇を払うと宣言された手紙だった。
「父さん……」
「この手紙を書いたのは、我々の世界のマルケルス……すると彼も、時空の扉を行き来する事が出来るのか。なぜ人間が、そのような能力を……そして彼は、何をしようとしているのだ? ともかく、この手紙を残したのは一ヶ月前……足跡を辿る事は難しかろう」
「この世界には、いないかもしれない……僕達の世界に戻ったのか、また別の世界に行ったのか……」
「まぁいいや、それよりもミカエラって奴だ」
ヴィクトリーはそう言ってお茶を飲み干し、ルカとソニアの方に向いた。
「おめぇら、ミカエラって奴とは面識ねぇんか?」
「ううん、私は無いわ……」
「僕も初めて聞く名だよ。父さんの古い知り合いかな?」
現地民のルカとソニアですら会ったことのない、謎の人物ミカエラ。その人が居るエンリカに行けという、マルケルスからのメッセージ。これは、行かねばならないだろう。
「これで、次の行き先は決まったな。ミカエラとやらは、隠れ里エンリカにいるという。エンリカがあるのは、迷いの森を抜けた先……迷いの森は、イリアスヴィルの西に広がっていたな」
アリスが、地図を確認しながら言う。
「それじゃあ、隠れ里エンリカとやらに行こう!」
ルカは立ち上がり、拳を握った。
「迷いの森に出る強い魔物も、今の僕達なら戦えるはずだ!」
「小さい頃から、あの森に入らないように言われてたけど……まさか旅に出てから、探険する羽目になるなんてね」
現地民二人の言葉を聞き、ヴィクトリーは「へへへ」と笑った。
「強い魔物が出るのか……ワクワクしてきたぞ!」
「強い魔物が出てきてワクワク……物好きなのですね」
「きゅっきゅー」
ヴィクトリーの言葉に興味津々のプロメティンに、彼女の足元できゅーきゅー鳴くヌルコ。
「それじゃあ、ありがとうございました!」
「おお、こんな所で良ければまたいつでもおいで」
戦士達は村長にお礼を言ってから、外に出る。有益な情報も手に入れられたし、今回の異世界渡りはこれで充分そうだ。
「そんじゃあルカ、頼むぜ」
「ああ」
ルカはハーピーの羽を使い、一行を元の世界のイリアスヴィルへと飛ばしたのだった。