もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ルカの父、マルケルスからのメッセージ……『ミカエラを頼れ』。その言葉に従い、ルカ達はイリアスヴィルの西にある迷いの森を越え、エンリカにたどり着いたのだった。
「ここが、隠れ里エンリカか……」
ルカが、何やら感慨深そうにしている。来るのは初めての筈なのに、言い知れない郷愁に浸っている様子だ。
「不思議な雰囲気だな……それに、普通じゃねぇ存在がいくつもいるみてぇだ」
「ダークエルフは森の中にもいたが……この気配は、まさか天使までいるのか!?」
そう言うアリスの横で、ヴィクトリーは目を閉じて気を張り巡らせる。そして、一通りに気を感じた後にゆっくり開いた。
「間違いねぇな。天使か……」
「隠れ里とは、よく言ったものだ……」
プロメスティンに似た気を感じるかと思ったら、それは天使の気だった。
「さぁ、ミカエラさんを探さないと」
ヴィクトリーは、ふと南の方を向く。何処を見ても質素な民家しか無いが、彼の気の察知はその方向を指していた。
「……向こうに、そこそこな気を感じる。多分そいつがミカエラって奴じゃねぇのか?」
「行ってみよう」
ヴィクトリーを先頭に、一行は歩みを進める。
里の雰囲気は歓迎ムードではなく、エルフや天使が奇異の目でこちらを見てくるのみ。面倒事を持ち込んだ身なので、申し訳なさを感じつつも黙って歩く。
「……ここか」
そう言って立ち止まったのは、里長の屋敷ってほどのものではなく、やはり他の民家と同じく質素な家だった。
「……何の用ですか?」
ヴィクトリーの横から、ダークエルフが話しかけてきた。彼女は、さしずめ門番と言った所だろうか。
「なぁ、ミカエラの屋敷ってここでいいんか?」
「いかにも。ここはミカエラ様の屋敷……ですが、今はミカエラ様にお会いする事は出来ないでしょう」
「何でだ?」
「……」
ダークエルフは焦燥感と悲哀に近い感情を宿した目をして、視線を伏せる。どうやら、並々ならぬ感情と普通じゃない事情があるらしいが……
「……何だか知らねぇけど、邪魔するぜ。俺達はここの人に用があるんだ」
「それでは、どうぞ」
ダークエルフは、民家のドアを開ける。そして、一行を家に上げた。
「おや、隠れ里エンリカにようこそ」
そこに居たのは、そこそこできそうなエルフだった。きっと、ヴィクトリーの感じていた気の正体も彼女だろう。
「どうか、里の平和を乱さないようにお願いします」
ようこそと言ったのは建前。本音はこちらだろう。
「いや、そういうつもりはねぇんだけどさ……」
「そうだよ、僕達はミカエラって人に会いに来たんだ」
ルカがそう言うと、エルフは血相を変えてルカを見た。
「ミカエラ様に、会いに……!? まさか、あなたはルカという名では……ああ、どうか違うと言ってください……」
「え……」
「いや、こいつは間違いなくルカだ。恐らくは、貴様が思っている通りのな」
戸惑うルカの代わりに、アリスがそう答えた。他のメンバーも、「間違いない」といった様子で頷く。
エルフはそれを聞き、確信する。そして、目に涙を浮かべた。
「ああ、なんということでしょう……ミカエラ様……」
ぐしぐしと涙を拭きながら、エルフはそんなことを呟く。
「いったい、どういう事情なのだ? このルカが、何かやらかしたのか?」
「失礼、順を追ってお話しましょう……これはミカエラ様の遺言でもあるのです」
「ゆ、遺言……? じゃあ、ミカエラって人はもう……」
ソニアがそう言うと、エルフは頷いた。
「話は、半月前に通ります……」
そして語り始めた……
要約すると、どうしても倒さなきゃならない奴が居るので里を抜けると言って出ていったのだ。ついでに、もしもルカという少年が来たら自分は命を落としているとも言っていた。
「なんだと……?」
ヴィクトリーが、眉をひそめる。ルカの訪問と、ミカエラの死にどんな因果関係があるというのだろうか。
「ルカがここに来た場合、すでにミカエラは死んでいる……? いったい、どういう事なのだ?」
「因果関係が見えてきませんね……鍵を握ってるのは、ミカエラ様でしょう」
アリスと一緒になって考える、プロメスティン。天使である彼女も、ミカエラの真意は分からない。
「そして、ミカエラ様は里を出ました……それから半月もの間、まるで音沙汰もなく……そして今日、ルカという少年がここに……ああ、そんな……」
なんとも予言めいた、不吉な言葉。ミカエラが死んでいるというのは、本当なのだろうか。
「しかし……事が事なだけに、素直に受け入れられません。私は、ミカエラ様の生存を信じます。また、ミカエラ様はこうもおっしゃいました。ルカという少年は自分の血縁なので、力を貸すようにと……」
「血縁……?」
「ルカが、ミカエラさんの親戚って言いてぇのか?」
ルカは心当たりの欠片も無かったようだが、なぜかマルケルスはその事を知っていたようだ。ますます話が見えてこなくなり、マルケルスからのメッセージの意味も謎が深まっていく。
「そういうわけで、我々としても援助を惜しみません。どうぞ、これをお受け取り下さい」
渡されたのは、そこそこ強力な防具だった。エンリカ特製の服のようで、普通の服と変わらないぐらい軽いのに見た目以上に耐久力が高いのがうかがえた。
「ああ、サンキュー!」
「村で店を営んでいる者達にも、あなたに協力するよう言っておきましょう。彼女達にも生活がある以上、代金に便宜をはかる事は出来ませんが……」
「いえいえ、ありがとうございます!」
エンリカのあの排他的な雰囲気も、これで緩和されるだろう。ここで何か買い足すような準備ができるようになった。
さて、問題はここからだ。
ミカエラに会えなかった以上、旅を続けるしかないのだが……
「イリアス大陸にあるタルタロスは、二つとも制覇した。残るタルタロスに行くには、北の大陸に向かわねばならん」
「じゃあ、海越えをする必要があるのか……どうすんだ?」
「イリアスポートに行くのよ」
海越えに疑問を持つヴィクトリーに、ソニアが答える。
「イリアスポート?」
「そ。イリアスポートの港からそこに定期船が出てるの。この世界で北のセントラ大陸に行くには、それが常套手段なのよ」
「なるほど……」
とにかく、イリアスポートという港に行く必要がある。そして、そこで船に乗せてもらってセントラ大陸へ……それが、今後の大まかな流れだ。
「セントラ大陸に渡るのですか……存分にお気をつけ下さい。あの地では、大いなる争いが起きようとしておりますので」
物々しい雰囲気を
「大いなる争いかぁ……
「ええ、興味深いですね!」
ヴィクトリーはパンッと拳を叩き、プロメスティンがそれに応える。何かこの二人、妙に気が合うようだ。
それとは違い、難色を示すルカとソニアの純人間二人。
「でも、起こってることが起こってる事だしなぁ……」
「四大国が戦争しているんですよね。イリアス神殿でも、そのお話は聞きました」
ソニアの言葉に、エルフは首を振る。
「いいえ、その事ではありません。人間はご存知ないでしょうが、魔物の勢力も激動しているのです」
「なんだと……? 詳しい話を聞かせてもらおうか」
魔物勢力の激動……魔王であるアリスが、食いついてきた。
「では、お話します……セントラ大陸で、何が起きているのか……」
エルフは重々しく、語り出したのだった。