もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「現在、世界には三人の魔王が存在しているのです。これにより、魔物の勢力図は大きく塗り替えられる事となりました」
エルフがそう言うなり、アリスが驚く。
「なんと! 余が弱体化してる隙に、魔王の座を狙うドアホが二人も!?」
「……いいえ、二人ではなく三人です。アリスフィーズ16世は、数に入っておりません」
「なんだと!?」
アリス以外の、魔王を名乗る妖魔……そんなものが、三体も。名乗っているからには、相当の実力を持っていると伺える。
「余はすでに退位扱いか!?」
「俺からも、詳しく聞かせてくれ」
食い気味になる、アリスとヴィクトリー。魔王と聞いたアリスは当然として、ヴィクトリーは強い奴の情報なら黙っていられない
エルフの説明が始まる。
「アリスフィーズ16世亡き今、魔王軍を束ねる存在……それが前魔王アリスフィーズ15世です」
いきなりの情報。ルカ達は息を飲み、しかしアリスは困惑を隠せずに居る。
「なんだと、それはなんの冗談だ……? 母上は、既に亡くなられているのだぞ……そんな馬鹿な話があるか! そいつは、余の母を騙った偽物だ!」
「魔王軍には、かつて15世の配下であった古参も多いはず。そのような者まで、偽物が騙せるものでしょうか……?」
エルフの言葉に返す言葉が見当たらず、「ぐぬぬ」と言うしか出来なくなるアリス。ヴィクトリーは自らの顎に指を置き、口を開いた。
「……アリスの部下は、みーんなアリスの母ちゃんを名乗る魔王に取られちまったって訳か。だとすると四天王とやらも、もしかしたらな……」
「あんまり想像したくないけど、アリスの部下がそのまま取られたってなるとそういう事だよね……」
ルカも、戦々恐々とするしかない様子だった。
とにかく、ヴィクトリーの言う通り、今は15代魔王であるアリスの母が正当なる魔王位の継承を自負しているという訳だ。
「そんなの、余は認められん! 誰が何と言おうと、そいつは母様を騙った偽物だ!」
アリスは迷いながらも、そう言う。受け入れられない様子が見えて、少し心苦しかった。
「そいで、残り二人の魔王は……?」
「どうせロクでもない
ヴィクトリーとアリスに聞かれたエルフは、これまた重い口を開く。
「残る魔王二人のうち、一人は……「黒のアリス」を自称する、小柄の妖魔」
「黒のアリス……!? それは、アリスフィーズ8世の異名のはず……!」
驚愕が、その場に走る。ソニアもルカも驚いてる様子だが……異世界人であるヴィクトリーには、ピンと来てない模様。
「誰だ? その黒のアリスってのは」
「アリスフィーズ8世、黒のアリスって言ったら、伝説の勇者ハインリヒと戦った、恐ろしい魔王の事よ!?」
「この世界では誰もが知ってる伝説だよ……!」
「……マジか!?」
黒のアリスの凄さを知ったヴィクトリーは、ようやく皆の驚きに追いついた。
「……その実力は、歴代魔王の中でも最高クラスだと噂されています」
歴代魔王の中でも、上澄みの実力。そんな奴が、現世に蘇ったらしい。はたまた、名を騙っているだけなのか……
「黒のアリスは、魔王の融和方針に反対する妖魔を仲間に引き入れています。その結果、攻撃的な凶悪妖魔が多く傘下に入りました。アリスフィーズ15世率いる魔王軍と、直接戦闘はまだありませんが……両勢力の激突は、時間の問題と考えられています」
心中穏やかでは無さそうなアリスだったが、考える。
「伝説の魔王を騙る不届き者か、それとも本人か……ともかく、力弱き者に妖魔達は従うまい」
「ただ名前を騙ってるだけじゃねぇのは確かだな……」
二人目の魔王、黒のアリスとやらはそんな感じらしい。偽物だろうと本物だろうと、凄まじい強敵になりうるのは確かだ。
「出来れば俺の力が戻るまで……せめて、超サイヤ人になるまでは会いたくねぇな」
「超サイヤ人って言うのがなんなのか分からないけど、確かに今出会って敵対したらひとたまりもないな……」
「でも、伝説の魔王……その名前を名乗ってるんだから、その思想もお察しよね。運悪く出会わない事を祈るしかないわ」
胸中を話し合う、人間三人。みんな黒のアリスと出会う事が無いように、運頼みするしか無いといった様子だった。
「母様を名乗る不届き者に、伝説の魔王……それに加え、三人目の魔王なる奴も居るのだろう?」
「三人目の魔王とは……アリスフィーズ17世を名乗る少女です」
まさかの言葉に、アリスはずっこけそうになった。現魔王を差し置いて17世なんて出てくるものだから、もう不憫な事この上ない。
「アリスフィーズ17世だと!? 余は完全に死んだ者扱いか!」
「な、何者なんだ……その17世って奴は? そいつも妖魔を従えてたりするんか?」
喚くアリスをよそに、ヴィクトリーが聞いてみる。
「勢力も、配下も存在しません。17世は部下を率いず、単身で魔王を名乗っているのです」
「なんだそれは、ただの自称魔王ではないか! 単に、誰にも相手にされていないのではないか……?」
今のアリスも似たような状況に陥ってるのは、敢えて誰も言わなかった。
「いいえ……17世こそ、妖魔達が最も恐れている存在です。配下もいない単身の存在ながら、その力は異常なのです」
「単身で、強い奴……!? 一体、何したんだ?」
単体で、強くて、とんでもない奴。ヴィクトリー……いや、サイヤ人の大好物な事この上ない。食い気味に聞く彼に、エルフは若干引いている。
「貴婦人の村にて、ネーレイド家当主カサンドラを撃退。それにより、17世は大いに名を挙げました……その直後にプランセクト村に現れ、単身で全ての者を撃退。昆虫族と植物族をねじ伏せ、その領域を定めたとか」
「全ての者を撃退……? あの村にいる魔物は、百人や二百人程度ではないぞ!? クィーンビーにらプリエステス、昆虫族や植物族の精鋭達……その全員を、単身で倒したというのか!?」
実力者と一対一でやりあえて、それを撃破。無数の敵を相手にしても、無双して薙ぎ払う……まさに、一騎当千。妖魔相手だと言うから、これまたとんでもない。
「次に現れたのは、セントラ大陸北部の小さな村。ここはアラクネ軍団に占拠されていたのですが……」
「蜘蛛乃皇女率いる、アラクネ一族だな……余のおらん隙に、やりたいようにしおって」
「そんなアラクネ族も、ふらりと現れた17世によって壊滅。村を追い出され、孤独の地という洞窟に追い込まれました」
「アラクネ族と言えば、戦闘狂の猛者ばかり……それを単身で撃破とは、余でさえ手こずるぞ……」
魔王でさえ手こずる戦闘狂でさえ、単身で無双したらしい。凄まじい実力の持ち主というのは、もう充分に分かった。
「それからも17世は、あちこちに姿を現しました。まるで気まぐれに、名だたる強者を倒していくかのように……不思議な事に、一連の騒乱で死者は一人たりとも出ていません。17世に攻め込まれた女王達は、いずれも狭い領地に追い込まれたそうです」
「あくまで不殺か……降伏したら刃を止めるタイプか?」
「エンカウントしても、話し合えば通じそうですね」
「きゅー」
考察するヴィクトリーに、スラスラとメモを取って議事録しているプロメスティンが言う。彼女の足元で、ヌルコはりんごをもしゃもしゃ食べている。
「それから後、魔剣士グランべリアが討伐に向かいましたが……五時間の勝負の後、互角の攻防を繰り広げて決着は付きませんでした」
「ふん……さすがに、グランベリアは倒せなかったか。それでも引き分けに持ち込むとは、大した強者だな」
「グランベリアって、魔王軍四天王の中でも最強って言われてる剣士だよね……」
ルカは、不穏な様子で言う。別世界の自分が、イリアスベルクで心折れた相手……そう考えると、それと互角に戦う17世がどこまでヤバい奴なのか、想像もしたくない。
「そういうわけで、グランベリアとの戦いは引き分けに終わりました。さすがに、17世も疲れていたのでしょうね……」
「疲れていた? どういう事だ……?」
「お話した全てが、わずか1日の出来事だったのですよ。カサンドラ撃退から、グランべリアとの一騎打ちまで……」
「い……一日……!? 一日でそれだけの事をやったのか!?」
「ま、マジかよ!?」
凄まじさ、ここに極まれりだ。あんな一騎当千、百戦百勝の無双の激闘を、たった一日でこなしてしまうほどの実力者……それが、アリスフィーズ17世らしい。
「しかもグランべリアと引き分けた時、17世は言ったようです「まだ、真の力を見せるわけにはいかない」と。17世が最も恐れられている理由が、お分かり頂けたでしょうか。単体での戦闘能力は、15世や黒のアリスよりも間違いなく上でしょう」
「そ、そんな化け物みたいな妖魔がいるなんて……」
「まさに怪物だな……17世とやら、いったい何者なのだ……?」
エンカウントしたら、話が通じる事を祈るしかない。今の自分達が戦おうとしても、一瞬で
「相争う三人の魔王……15世、8世、17世……余の事は完全に忘れられた気がする……」
すっかり蚊帳の外にされてしまった魔王16世であるアリスはそう言い、ため息を吐いたのだった。