もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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謎の男の噂

 セントラ大陸で、三人の魔王が覇権を巡って争いを起こしている……そんなとんでもない話を聞かされ、ルカ達は思い思いに考察を巡らせる。

 

「……」

 

 そんな中、ヴィクトリーは震えていた。恐怖と戦慄に……そして、歓喜と武者震いで。笑いを隠せず、ワクワクが止まらない様子だった。

 

「へ、へへへ……世界を揺るがす、三人の魔王か……はははは、ははははっ……!」

「……ヴィクトリー?」

「わくわくしてきた……俺、こんなわくわく初めてだぞ……!」

 

 ルカの呼び掛けに対して、それを横目にヴィクトリーは笑っていた。強いやつと戦える喜びに……そして、強くなれる喜びに。

 

 今はまだ無理かもしれない。しかし、修行を積んで強くなってから、三人と戦ってみたい。そんな欲求が、ヴィクトリーの心から飽和していたのだ。

 

「……ヴィクトリー」

「あ、はいっ!?」

 

 エルフの呼びかけに、ハッとした。

 

「そうですか、貴方がヴィクトリーですか……なら、あの噂の事も話す必要があるでしょう」

 

 エルフの話は、まだ続くらしい。

 

「どうした? まだ何か居るのか?」

「はい、ある男の噂が魔物達の間では話題になっているのです」

「男だって……?」

「む……何故男がセントラ大陸で噂になっているのだ?」

「私達はイリアス大陸でしか活躍してないし……」

 

 ルカとアリス、更にはソニアやその他まで首を傾げていた。

 

「あの怪しい通りすがりのネロの事か?」

 

 ヴィクトリーが言うと、ルカ達は納得する。あの派手な格好にデカい得物、どう考えても怪しすぎるから……

 

「む……それも興味深いですが、違いますね」

「えっ、じゃあ誰なの……」

「勿体ぶってねぇで、教えてくれ」

 

 ルカとヴィクトリーは、気になって仕方ない様子だった。

 

「……『黒のヴィクトリー』」

「!!!」

「なんっ……!!?」

「ヴィクっ……!!?」

 

 当然、視線はヴィクトリーに殺到する。

 

「ヴィクトリー、心当たりは……」

「し、知らねぇ! 俺は何も知らねぇぞ!」

 

 ヴィクトリーはみんなにぶんぶんと首を振り、エルフに向いた。

 

「詳しく聞かせてくれ!」

「はい……彼が噂になったのは、例の17世の騒動の翌日です。ある魔物が羽も使わずに空を飛ぶ男を目撃しました。それから噂が広がったのです」

 

 羽も使わずに、飛ぶ……おそらくは、舞空術の類だろう。それを使える人間がこの世界に居るかどうかは分からないが、傍目からは奇異なものに映るだろう。

 

「しばらくして、その男は妖魔と積極的に接触するようになりました。それで名を尋ねると、名乗った名前が『黒のヴィクトリー』だとか……偽名なのか本名なのかは分かりませんが、異様な妖気を発したどこか恐ろしい男だったとか」

「……どんな格好だ?」

「その名の通り、黒い胴着に身を包んだ男です。そしてその左耳には、イヤリングが光っていたそうです」

 

 黒い道着にイヤリング……自分の世界由来の人物で思い当たるものと言えば、ゴクウブラックだ。あれは界王神のザマスという奴が、孫悟空の身体を乗っ取ったものだが……同じことを、別世界でされたのか? 

 

「……そのイヤリング、緑色だったか?」

「いいえ、かわいいウサギのイヤリングみたいでしたが……」

 

 イヤリングはポタラではなく、かわいいウサギのイヤリング。

 

 何処かの悪さをする界王神が由来ではなさそうだが、ならばどうして己の名を騙っているのかが分からない。

 

「あ、そう……なんでそいつは各地を飛び回っていたんだ?」

「手合わせをした妖魔曰く、「アリスフィーズ陛下とあの御方に尽くすため」……そう言ってきたようです」

「アリスフィーズ陛下……?」

「アリス、心当たりは?」

 

 ソニアとルカは、アリスに向く。しかし彼女は、首を横に振った。

 

「いや、分からん……しかし、魔王の名はアリスフィーズで統一されている。もしかしたら、例の三人の中の一人の差金かもな……「黒の」と言っているから、おそらくは黒のアリスと関わってる可能性が高い。しかし、そうなると気になるのが「あの御方」だな」

 

 エルフはそう言ってから、説明を続けた。

 

「彼は、あの17世が倒した妖魔達の所を回っていたようです」

「男なのに、あんな凶悪妖魔達の巣窟に……? 普通なら搾り殺されてしまうぞ。いったい、黒のヴィクトリーとやらは何をしていたのだ?」

「女王級の妖魔相手に、軽い手合わせを願ったようですね」

「まんま、俺みてぇな奴だな……」

 

 女王級の妖魔相手の、手合わせ……確かにクィーンハーピーとの戦いは昂ったし、強いヤツと戦うのはサイヤ人……ひいては、強さを求める武道家や戦士の喜びでもある。

 

「噂の中心になっているのは、その異様な戦闘風景です。戦闘が始まると、序盤はやられっぱなし……しかし戦闘中盤になってから徐々に戦闘力が飛躍、決着はいつも一方的に相手を叩きのめしていたとの事です」

「確かに異様だな……いや、手加減でもしているのか……?」

「いいえ、魔物達によると黒のヴィクトリーは終始必死で戦っていたようです……戦闘力を高めながら」

「戦いの中で強くなるのか……?」

「まるでサイヤ人だな……」

 

 いや……もしかしたら、本当にサイヤ人なのかもしれない。しかし、顔も分からない以上は真偽は不明だ。

 

「……問題は、黒のヴィクトリーが凶悪なアラクネ族の妖魔から命を狙われた時です。その凶悪な妖魔を、命乞いも聞かずに殺す一歩手前まで追い込む程の重症を負わせているのです」

「な、なんと……人間の男の筈だろう!? それなのに、アラクネ族を半殺しに……!?」

「昆虫族や植物族の負傷者は居ないようです。何せ、あそこのモンスターは比較的大人しいので命までは狙うような輩は居ません。黒のヴィクトリーは、歯向かう者にしか容赦しなかったようですね」

 

 話が通じるのか通じないのか、分からない奴だが……歯向かうのは止めた方が良さそうだ。おそらく、一歩違えば容赦なく殺されるだろう。

 

「そうか……」

 

 結局、黒のヴィクトリーの目的が分からずじまいだ。だが、彼は強くなるために世界を回っている……そんな気がしていてならない。放っておけば、いずれ強大な敵となって目の前に立ちはだかってくるかもしれない。

 

「そういうわけで、セントラ大陸ではお気をつけ下さい。三人の魔王の間での大きな騒乱と、黒のヴィクトリーと名乗る謎の戦士が徘徊しているので……」

「現魔王として、今の状況を看過はできんな。セントラ大陸で、もう一つ用事が出来たようだ」

「俺もセントラ大陸に用事が出来たみてぇだな……」

「なんだか、目的ばっかり増えていくね。まだ何も解決してないのに……」

 

 ソニアがそう言ってため息を吐くと、アリスはキッとした目になる。そして、ルカの方を見た。

 

「だが、実際は全てが一本の糸に繋がっている気がするのだ。大異変、タルタロス、貴様の父、三人の魔王、謎の戦士……全てな。だから、ここで歩みを止めるわけにはいかん。大陸横断船に乗り、セントラ大陸に乗り込むぞ!」

「ああ! わくわくしてきたぞ!」

 

 そういうわけで、次の目的地はイリアスポートだ。イリアスベルクから北上し、すぐそこにあるという。

 

「こうなったら、乗りかかった船よ! あたしも、ガンガン行っちゃうから!」

「きゅきゅきゅ〜!」

「それじゃあ、イリアスポート目指して出発だ!」

 

 戦士達は目標を固め、立ち上がった。

 

「私も、ご武運をお祈りしております。もしミカエラ様の事で何か分かれば、どうかお伝えください」

 

 エルフもそう言って、戦士達に頭を下げる。戦士達は頷いて、ミカエラの家を出た。

 

 新たな問題、動き続ける世界……ルカ達に降りかかる、数々の課題。様々な憶測や疑問を胸に押し込み、とにかく前を見る。

 

 次の目的地は、イリアスポートだ。

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