もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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野営~イリアスポート前~

 セントラ大陸の情勢が明らかになり、次の目的地も定まったルカ達。

 

 旅を続けてイリアスベルクから北上し、日が暮れてきたので野営していた。

 

 

 晩飯を食い終わり、皆と雑談をした後は自由行動だ。

 

 ヌルコはきゅーきゅー鳴きながらその辺をうろつき、プロメスティンははしゃいでる皆の頭に電極を刺してみたいとか訳分からん事言ったりしている。ソニアとアリスはルカと話している。

 

「……」

 

 一方、パチパチと燻る篝火の前で、ヴィクトリーはあぐらをかきながら目を瞑っていた。

 

「……」

 

 なんで、ポケット魔王城があるのにわざわざ野営してんだろう……そんな事を思いながら瞑想しながら皆の話に聞き耳を立てていた。

 

 アリスとルカの会話によると、アリスの母……アリスフィーズ15世はどうも、死んだんじゃなくて失踪したらしい。

 

 いきなり深夜に魔王城を抜け、最後に目撃されたのは魔王城の大陸のタルタロス……そこで姿を消し、今になってアリスと入れ替わったという事だ。

 

 アリスはエンリカでは啖呵を切ってたが、本当はアリスフィーズ15世が本人だと分かっている模様だった。

 

 だとすると、17世とグランべリアの激突……も、15世の指示だろう。

 

 そんな事はヴィクトリーにとってはどうでも良くて……問題は、『黒のヴィクトリー』の事だ。

 

 いったい、何者なのか。ただ同名なだけなのか、それとも自らの名を騙った誰かなのか。しかし、自分はまだこの世界に来てから間もない。そこまで有名にもなっていない筈だ。なのに、もう自分の偽物(かも知れない奴)が現れるとは思わなかった。

 

 考えれば考えるほど、「本物が大して活躍してねぇのに、偽物が出てくんじゃねぇ」と叫びそうになるが、どうにか抑えた。

 

 それに、敵の凶悪化現象と白兎の「ゼノバース」発言。間違いなく、自分の世界由来の何かが関わっている。なんなら、暗黒魔界の魔導師であるドミグラも関わってると思う。

 

 俺の世界の敵達が、まさかこんな世界にまで現れるとは。この世界はこの世界で強敵ばかりだというのに、埒が明かないものだ。

 

 早いところ自分が全力を取り戻して、せめて自分の世界由来の脅威は自分で対処しなければ。こちらの事情に巻き込んでしまうのは、流石に忍びない。

 

「……よし!」

 

 ヴィクトリーは立ち上がり、首を鳴らす。そして、一人で修行しようとした。

 

「おおっ、いい気合いだな。丁度いい、ルカとの修行を手伝え」

「いっ!?」

「頼むよ、ヴィクトリー!」

 

 アリスとルカに捕まり、三人で修行する事になった。今日は、突き技の修行をするらしい。

 

「この技は便利だぞ。魔剣・首刈りとは違って、体格が大きく戦いが筋力寄りの脳みそ筋肉な貴様でも充分な威力を発揮するはずだ。さぁ、その剣が飾りでは無いことを余に見せてみろ!」

「お、オッス!」

「ははは、アリスの修行は厳しいよ!」

 

 ルカと一緒になって、修行するヴィクトリー。思えば、誰かと一緒に技術を高め合うなんて、初めての事だった。いつも独りで修行して、自分だけの力を極め続けていた彼には、とても新鮮な体験だった。

 

「そうだ……上半身を安定させろ。踏み込みは深く、体の上下動は控えるのだ──」

「こ、こうかな……?」

「せ、繊細だな……!」

 

 ルカとヴィクトリーは、同時にアリスに言われた通りの突きを繰り出す。どうにか、形になったそれを見て、アリスは「ふむ」と応えた。

 

「一応、形は覚えたようだな。ヴィクトリーの方はまだ荒削りな感じだが……後は実戦でモノにするがいい」

 

 覚えた技は、血裂雷鳴突き。おどろおどろしい技名だが、踏み込んだ時の出が速く、発動の瞬間に恐ろしいスピードを発揮する。どういう訳か雷属性も纏われており、水場などで使えば更に威力を発揮しそうだ。

 

「あ、ありがとうアリス……はぁ、はぁ……流石にかなり疲れたよ……」

「し、しんどい……ま、魔剣士ってこんなんなのか?」

「貴様らの動きには、無駄が多すぎるからな。それで体に負担がかかり、疲労も過剰に蓄積するのだ」

 

 動きに無駄が多すぎる……それは、前の世界での自分の課題でもあった。身も心も、動きを最小限に……空のように静かに、雷のように動く。脳が身体に命令を伝達するのには時間がかかるので、考えるより先に身体が勝手に反応するように……さすれば、一切の動きの無駄もなく戦える。

 

 極まった神の御技がそういうものらしいが、結局最後までヴィクトリーには分からなかった。

 

「その動きに風を宿し、その身に土を宿し、その心に水を宿し、その技に火を宿す──それこそが、戦いの極意。これを体得しなければ真の強さなど手に入らんぞ!」

「む、ムズカシイ事を言うなぁ……俺、どうして剣から雷が出るのかすら分かってねぇのに」

「訳が分からないよ……そんな禅問答みたいな事を言われても……」

 

 ぶつくさ言う男二人に、アリスは頭を抱える。

 

「やれやれ、貴様らはまず心を鍛えねばならんな。ほら、禅でも組んで、瞑想してみろ」

「うぇぇ……こういうのは苦手だなぁ……」

「うーむ、空のように静かに、雷のように動く……ってのと似た感覚か? 難しい……」

 

 ルカは文句を言いつつ、ヴィクトリーは何やら独りでブツブツ言い、二人は座禅を組む。そうして目を瞑り、そのまま何も考えないようにした。

 

「ぶつくさ言うな。堕天使エリゴーラは、瞑想で己の傷を即座に癒したという。さすがにそれは眉唾だろうが、瞑想における精神統一で得るものは多いはずだ」

 

 アリスの言う通り……瞑想による精神統一は、荒ぶる気を鎮めて余計な力の放出を抑えるもの。ピッコロやベジータがこれに凝っていたのをよく覚えている。雑念を排除し、ただ必要な力を必要な時に必要なだけ出す……言うは易し行うは難し。だが、この世界で続けていれば……

 

 そう思っていると、横で瞑想してるルカの気が充実していくのを感じる。見れば、傷がみるみる塞がっているではないか。

 

「わぁあああ!?」

「ほ、本当だ……! 傷が治ったぞ……!」

「な、なんだと……!?」

 

 ドン引きした様子のアリスの横に、驚いて飛び退いたヴィクトリーが来る。

 

「お、おめぇ、どうなってんだ……!?」

「ん? 変なのか? 堕天使なんとかは、瞑想で傷を治したって話じゃ……」

「そんなの普通に考えればデマカセの類だろうが! 瞑想して怪我が治るなど、物理的におかしいぞ……!」

「で、でも……」

 

 ルカが再び瞑想すると、また体力が回復した。

 

「ほら、出来たじゃないか」

「なにそれ、こわっ……」

「トカゲか何かみてぇだな……おめぇもまさか宇宙人じゃねぇだろうな」

「ちょ、ちょっと……引かないでくれよ……!」

 

 一連の騒動に興味を持ったメンバーが、ぞろぞろと寄ってくる。

 

「へ、へぇ……ルカが、回復を……自前で……」

「きゅーきゅ」

「な、なんでそんなに怒ってるのさ……」

 

 ピクピクと目元を震わせるソニアの足元で、ヌルコは鳴きながらおやつのりんごを食べている。

 

「わけの分からん奴だ……魔力さえ使用せず、身体を癒せるとは……」

「ホントに俺と同じく宇宙人かもな……人外が血統にいるんじゃねぇか?」

「僕は純人間だよ……」

 

 宇宙人と魔物に人間かどうかを疑われる日が来るとは思ってもいなかった。

 

「ふーむ、興味深いですね。では是非、頭を解剖して脳を見せてもらえませんか?」

「だからそれ、僕死ぬよね!?」

 

 プロメスティンは、ミダス村で作った金のメスを取り出しながらウキウキしていた。

 

 とにかく、ルカは瞑想で回復できることが判明した。これは、戦闘において大きなアドバンテージになるだろう。

 

「いよいよソニアの回復魔法がルカには無用だな……」

「ホァアアア!?」

 

 ヴィクトリーは誰も言わなかった事を敢えて言い、ソニアが起爆した。彼女はそのままちーんと、地面に顔から倒れる。そんなに凹むとは思わなかったヴィクトリーとルカは、ソニアを慰めた。

 

「い、いつも棍技で助けて貰ってるから!」

「回復魔法も、俺とかヌルコは助かってるぞ!」

「うぅ……ルカがどんどん遠い存在に……あたしって……」

 

 

 色々あったが、そろそろ寝る時間。こうしてルカ達は、眠りについたのだった。

 

 明日は、イリアスポートだ。

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