もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
夜が明け、ルカ達はまた北上する。そして、イリアスポートに到着したのだった。
到着するなり、ソニアが背伸びをして目の前の光景を一望した。
「ここがイリアス大陸最大の港町、イリアスポート! の割には、ずいぶん寂れてない? 店も少ないし、行き交う人にも活気がないし……」
町を見回したソニアはそんな事を言い、呆気にとられていた。
確かに、港町という割には寂れた雰囲気があり、往来する人はほとんど居ない。
「なんかあったんかな……?」
戦士達は一旦解散し、情報収集にかかった……
※
今現在、このイリアスポートには悩みの種がある。それは、ここの船を沈めるほど凄まじい嵐の事だ。しかもそれは、決まって船が出る時に限って発生するという。
嵐の被害は相当なもので、行商は大ダメージを負っている。子供がとぼとぼ歩いてるので聞いてみれば、船の往来が無くなって父親の店が潰れて途方に暮れていたという、胸の痛い話まで出ている。
目撃者によると、強力なサキュバスが嵐を巻き起こしている所を見たと言う。アリスはそれを聞いて、『アルマエルマ』という淫魔の名前を出してきた。
魔王軍四天王の一人で、風を操るクィーンサキュバスだ。四天王の一人という事は、グランべリアと同格だろう。
そんな訳でセントラ大陸との貿易も出来ないので、こんなザマだという訳だ。
「……完全に行き詰まったな……」
ヴィクトリーがそう言って、首を傾げた時だった。遠くから誰かが、凄い早足で近付いてくるのを感じる。見てみるとそこには……
「……方法はありますよ」
例の、派手な格好の通りすがり、ネロが居た。
「むっ、貴様は……!」
「おや、奇遇ですね……」
奇遇というより、何か狙ってきたかのように登場している。
「今更通りすがりを装わんでもいい」
「おめぇ、相変わらず怪しいな……それで、今度はなんだ?」
「この町から西の方角に、洞窟があります。そこは、大海賊セレーネが数々の財宝を隠した場所なのです。その財宝の中に、『海神の鈴』というものがあります。どれだけ海が荒れても船が沈まない魔法具なのだとか」
「じゃあ、それがあれば……」
ルカがそう言いかけて、ネロは頷いた。
「ええ、セントラ大陸に船で渡れるでしょう……そういう事で、私は急いでいますので」
「あっ、ちょっと待って……」
さっさと去ろうとするネロを、ソニアが呼び止めた。
「何でしょうか?」
「ハピネス村で、世界樹の実をくれて感謝します。あれ、とっても高価なものだったんですよね……?」
「いえ、大して重要なものでもありません。人間とハーピーの信頼関係に比べれば……それでは、失礼します」
ネロはソニアに頭を下げ、足早に去っていった……
「海神の鈴か、確かに有益な情報ではあったが……奴の目的は、一体何なのだ?」
「理由は分からないけど、僕達を助けてくれるのは確かだよ。海神の鈴は、西の洞窟にあるって言ってたよね……」
「行ってみるしかねぇみてぇだな……」
ヴィクトリーはそう言いながら、帯を締めて気合を入れ直す。
「意図の読めん奴の言いなりになるのはシャクだが……他に手立てがない以上、仕方あるまい」
「それじゃあ、秘宝の洞窟に行こう!」
「次は洞窟ですか。サンプル採取の準備を整えなければ……」
また激しい戦いになりそうなので、プロメスティンだけではなく皆も準備を整える必要がありそうだ。とりあえずその場から店の方に行こうとした時……
「船が止まっているなんて……いったい、どうすればいいのでしょう」
聞き覚えのある声が、不意に耳に飛び込んできた。
「……?」
見ると、そこに居たのはイリアスだった。それとスライム娘に、新たに犬娘まで仲間にしている。
「な、何を見ているのです!?」
イリアスはこっちに気付き、びっくりした表情を向けた。
「冒険って楽しいね〜!」
「わんわん……犬かきじゃ無理だよね……」
スライム娘と犬娘も、なんだか楽しそうだ。楽しそうなのはいい事だが、船が無ければ先に進めないのは分かっているのだろうか……
「ひゃ〜……緊張感のねぇパーティ……」
「ヴィクトリー、行くよ」
ルカはヴィクトリーを引っ張り、準備に勤しんだ。
※
「ヴィクトリーさん」
一緒になって準備するプロメスティンが、不意にヴィクトリーを呼ぶ。
「ん、何だ?」
「いえ……先程、イリアスポート大学の魔導研究所で或る学生と話したのです。その学生は世界の総てを識り、解き明かしたいから研究を続けていると。私はそれに大いに賛同しました」
プロメスティンの言葉に、ヴィクトリーは分かったような分からないような顔で頷く。
「ですが、私の周囲に居た天使は……好奇心に触れる事すら許さず、ただ信仰を強要するばかり。安易な答え、生易しい嘘、そんなものに満足して……真実を求める気持ちを踏みにじる愚者達を、私は
「うげっ……やっぱ難しい質問じゃねぇか」
面食らったヴィクトリーではあったが、「んー」と唸って考える。
「学がねぇから、あんま気の利いた答えは出来ねぇけどよ……真実に向かって研究するってのは凄い立派な事だと思うぜ」
天界が崩壊する前……天使というのはイリアスの教えを広めるための、文字通りの天の使いだったそうな。人々にイリアス信仰を強いて、現代に至るその信仰の基盤を作ったもの達だ。
それはそれで凄いことではあるとは思うが……
「俺にはよく分かってねぇけど、多分真実に向かおう、何かを識ろうって思いは、武闘家の修行にも通じる精神だと思うんだ」
「修行にも通じる精神、ですか」
「ああ、俺だって強い奴が目の前に現れたら、とりあえず戦ってみてぇ! 相手を知りてぇ! 相手に触れてぇし、触れられてぇ!」
少なくともヴィクトリーは、ずっと今までそうしてきたのだ。サイヤ人の力を得て、期待と不安を胸の奥に秘めて冒険の扉を叩いた時から……
「……戦い続けた先に、求めるものあるのでしょうか」
明るく語るヴィクトリーの前で、プロメスティンはいつになく暗い表情をしていた。
「ではもし貴方が周りの愚者から嘲笑され、戦う事を否定され、周りに誰も居なくなって独りになったとしても……それでも貴方は戦い続けられるのですか?」
「あったりまえだ!」
ヴィクトリーの迷いの無い即答に、プロメスティンは驚く。
「俺はサイヤ人で、一人の武闘家だ! 強くなるのも、エッチなピチピチギャルに「あらアナタ強いのね、ウッフ~ン」って言われる為に強くなってる訳じゃねぇ! 誰にも負けないために限界を極め続けるために強くなってるんだ!」
力強いヴィクトリーの語りに、圧倒されるプロメスティン。彼は、まだ続ける。
「きっとプロメスティンがたった一人であんなに研究してたのも、総てを識って極めてぇからだろ? だから俺はプロメスティンの凄さが分かるし、それを馬鹿にする奴は許せねぇ!」
「……そうですか、ありがとうございます。お気持ちは嬉しいです」
語りきったヴィクトリーの前で、すんっとした表情に戻るプロメスティン。
「あ、あれ……」
「自称宇宙人である貴方に話して、どのような感想を抱くか気になっただけです」
「ただの愚痴じゃねぇか!」
突っ込むヴィクトリーに、表情を緩ませるプロメスティン。
「それに、貴方は脳みそ筋肉と呼ばれたり、自分で「学がない」と言ってる割には地頭はいいみたいですね。そこが意外でした」
「え、俺頭良いのか?」
「学がないので知能水準は低いままですがね」
「おめぇは一言が多い」
ヴィクトリーは、緩い表情のままのプロメスティンにビシッと言ってやった。
とにかく、準備を進めるヴィクトリー。水筒に水を入れ、自分の食糧を買い込み、鍛冶屋で自分の剣の手入れもしてもらい……そんな感じに、彼は彼で忙しい様子だった。
そんな彼の背を見つめるプロメスティンは、笑みを浮かべていた。
「……いかなる障害を踏み越え、己を窮めんとする探求者。あなたは、充分に私の同志ですよ」