もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
イリアスポートで準備を終え、秘宝の洞窟に辿り着いたルカ達。薄暗く、魔物の気配も多そうだ。
「ここが、秘宝の洞窟か……この中に、海神の鈴があるんだよね?」
「他にもいいアイテムがあるといいな」
いつも通り、ルカとヴィクトリーが先頭に立つ。アリスとソニアが次席につき、
その次席に居るアリスは何かを感じたらしく、鼻を鳴らしていた。
「む……やけに狐の匂いがするな」
「狐の匂いって……どんな匂いなんだ?」
ルカに聞かれたアリスは、頬を緩ませる。
「あぶらあげの匂い……」
なんだか、アリスの言う狐は美味しそうな匂いがするものである。そんな彼女だったが表情が一変し、真剣な目になる。
「ともかく、たまもまで我々を妨害しようというのか……? おのれきつねめ、何を企んでいる……」
「たまもって……?」
「誰だそりゃあ?」
ルカもヴィクトリーも知らない妖魔だが……アリスの様子を見るに、只者では無いことは察せられる。
「魔王軍四天王の一人、九尾の狐だ。今の戦力で対峙したくはないが……行くしかないな」
魔王軍四天王の一角、たまも……九尾の狐……相当な実力者なのだろう。
それを聞いたヴィクトリーは、堪えきれないワクワクに震えていた。
「おいアリス、あんま面白そうな情報を出すなよ……ワクワクしちまうじゃねぇか……! へへへへ……!」
「き、きしょっ!」
とにかくルカ達は、洞窟を進んだ。
「……お」
まだそんなに進んでもないのに、ヴィクトリーが何かに目をつけたようだ。その目線の先にあるのは、宝箱。
「おお、早速宝箱があるね」
「やはり秘宝の洞窟とだけあって、ころころと転がっているものだな」
ルカとアリスも、宝箱に目をつける。
洞窟と言えば、宝箱。この世界の洞窟やダンジョンには、当たり前のようにそこら辺に宝箱がある。ましてや海賊王の秘宝が眠る場所となると、中身にも期待してしまう。
「でも、大丈夫ですかね……?」
そう言ってきたのは、プロメスティンだった。
「宝の伝説がある場所の宝箱は、ミミック娘が擬態している可能性が高いです。開けるならば、安全を確保した方が宜しいのでは?」
「きゅーきゅー」
ミミック娘……宝箱に擬態し、冒険者を襲うという魔物娘。それだけならいいものの、普通に戦っててもその実力は高く、肉弾戦が得意な上に即死効果のある魔法まで使うという強敵だ。
プロメスティンの隣に居るヌルコも「そうだそうだ」と言わんばかりに鳴いている。
「いやぁ、でも大丈夫だろ! そういう魔物ってのは、いきなり出てこねぇって!」
しかしヴィクトリーが、意気揚々と声を出して前に出る。
「お、おいヴィクトリー……ホントに平気なのか? さっきの話を聞くに、迂闊に近付いたら不味いんじゃ……」
「大丈夫だってぇ! ミミックが居るとしても、こういう最初の宝箱にはたいてい土石か手頃な装備なハズ──」
呑気な事を言うヴィクトリーが宝箱に手をかけた次の瞬間、宝箱はガパッと口を開け、その上半身を咥え捕らえてしまった。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
ルカ、ソニア、アリス、プロメスティン、ヌルコ……そして食われているヴィクトリー本人、彼を食っているミミックも黙り込んでしまい、その場に静寂が訪れる。
「ぎぇええええ!!? なんだこりゃあぁああ!!?」
遅れてヴィクトリーは叫びながら足をバタつかせ、もがいた。
「だから言っただろ!!」
「底なしの馬鹿!!」
「青天井のドアホ!!」
「やっぱり学がないですね」
「きゅ──!!」
騒いでいると、ルカは何かに気付いて抜剣する。そして、構えながら周囲を見回す。辺りから魔物が集まってくる気配がするのだ。
「こんな時に……!」
「どうやら、騒ぎを聞きつけてきたようだな……! プロメスティン、そのドアホを頼む!」
「分かりました」
ルカ達は、いつの間にかモンスターに囲まれていたのだった。
「よーし、やっちゃうぞ〜!」
「へ、平気ですかね……」
銀狐二尾、かむろ二尾……少女型の下級妖狐が二体。
「うふふ……」
クモ娘……おそらく、この洞窟に元々住んでいたモンスター。それが複数体。
「蜘蛛は僕が相手する」
「ふん、狐は余のレイピアでどつき回してくれるわ!」
ルカもアリスも自らの得物を構え、気を解放する。
「きゅきゅー!」
「たまには僧侶らしく後衛に回らないとね! けど、それはそれとして棍技を振り回したい……!」
ヌルコはマキナを取り出し、ソニアは棍を構えながらも白魔法の準備をする。
そしてルカ達は、魔物の群れと激突した。
ヴィクトリーはというと……無様で格好の悪い状況に陥っていた。
「な、なんとかならねぇんかプロメスティン!」
「一旦落ち着いてください……ふむ、捕食の際は粘液を出して、牙はあくまで衣服に引っ掛けて捕らえる用と……」
ミミックにガブガブと噛まれながら、足をバタつかせてもがき抵抗するヴィクトリー。そんな彼を至極冷静に見つめるプロメスティンは、メモを取り始めた。
「レポートとってんじゃねぇーっ!!」
「むぅ、仕方ないですね……その姿勢では貴方の得意な力勝負も出来ないでしょう。そこで、ここはいっその事自分から口の奥に向かってはいかがです?」
「おめぇ、俺に諦めて喰われろって言ってんのか!!?」
「いえ、そうではなく……ミミックにも
「犬かコイツは!!」
とは言え、それしか方法は無さそうだ。
ヴィクトリーは食われたまま拳に気を溜め、口の奥に突っ込む。そのままその拳の気を起爆させた。
「きゃあっ!?」
ペッと吐き出されたヴィクトリーは、尻もちをついて倒れてしまう。しかし両手を地面につけて自らを持ち上げ、立ち上がった。
「ちょっと、乱暴しないでよ……もうすぐ美味しく食べれる所だったのに」
ミミック娘は宝箱の口を開け、その姿を
「不意打ちで美味しく食うんじゃねぇやい!」
「貴方が勝手に引っかかっただけでしょう」
ミミック娘はいきなり、発射されるかのように宝箱ごと跳び、ヴィクトリーに突撃してきた。
「うわっ!?」
その頭突きをどうにか両腕を交差してガードするも、あまりのパワーに吹っ飛ばされて壁に背中がつく。初撃だけで、壁際に追い込まれてしまった。
「ばぁあっ!!」
そんな彼に向かって超スピードで飛びついてくる。そして、ヴィクトリーに喰らいかかった。
「わぁあっ!?」
ヴィクトリーは、跳び避けて天井のつらら石に掴まる。その眼下でミミック娘が食らいついた壁が、その牙によって粉砕された。
「ひ、ひえぇ……!! なんちゅうやつだ……!!」
「流石の
プロメスティンがそう言いながら、手の中で薬品をボボボと発破させる。
「私が牽制します! 追撃を!」
「おう!」
プロメスティンはミミック娘に向け、燃焼反応を炸裂させた。爆発のようなそれに乗じたヴィクトリーが、絶好の好機と言わんばかりに天井から降りて、抜剣する。
「血裂雷鳴突き!!」
圧倒的なスピードで放たれる、雷を宿した突き。それは見事にミミック娘を捉え、ぶっ飛ばしたかに思えた。
「……いやっ!」
手応えが、固い。どうやら突きが刺さる寸前に宝箱を閉め、攻撃を防いだらしい。ならばと追撃しようと、踏み込もうとした時だった。
ミミック娘がそれより速く、反撃に出る。
「命を刈り取る死神の鎌よ……その魂を冥府に誘え……」
彼女は何か恐ろしい言の葉を紡いで詠唱し、充実した魔力を募らせた手をヴィクトリーに向ける。
「デス!」
そして、死の魔力をヴィクトリーに放った。魔力は大鎌を持った死神の姿を取り、その鎌を振りかぶってヴィクトリーを
これが、話にも聞いた即死魔法というものらしい。
「ヴィクトリーさんっ!!」
直撃したら不味いのは、傍目のプロメスティンにも分かる。それで、思わず彼の名を叫んだ。その声を背に受ける彼は、避けるのは無理と断じてその場に踏ん張る。
「ちっ……!! 一か八かだ!! かぁあああッッ!!!」
ヴィクトリーの絶叫を前にした死の魔力は、爆散する。遅れて強い旋風が巻き起こり、魔力と気合の残滓がバチバチと電光し、やがて消えたのだった。
「気合いでかき消した!!?」
ミミック娘はそう言って、驚愕する。死の魔力を気合でかき消すなんて、前代未聞である。
「ヒヤヒヤしましたよ、失敗したら死ぬんですからね!?」
「わりぃな、戦ってる時は勝つ事以外考えねぇタチでな!」
「そ、そんな……! こんな戦士が居るなんて……!」
狼狽えているミミック娘に、ヴィクトリーは剣を構えて踏み込む。
「この世界の技だ、くらえぇっ!!」
そして、再び血裂雷鳴突きを放った。
彼の使う血裂雷鳴突きは、使う度に動きが研ぎ澄まされ……攻撃タイミングもパーフェクトを叩き出し、見事本体をぶっ飛ばす事に成功した。
「そして、これが俺の技だーっ!!」
すかさず繰り出すは、かめはめ波。一瞬で納剣して手を合わせ、そこに気を込める。そしてその気を爆発させ、光を伴った青白いエネルギーを放った。
一直線に伸びたかめはめ波は直撃し、爆発した。
「あぅう……そ、そんな……」
ミミック娘はそれで倒れ、「むきゅう」と言いながら目を回して気絶したのだった。
「よっしゃー!」
「何とかなりましたね」
ヴィクトリーは拳を掲げ、プロメスティンは取り終わったレポートをしまう。
勝利したのは二人だけではなかった。
「な、なんて奴らなの……!」
クモ娘が、散り散りになって逃げていく。
「に、逃げるよかむろっ!」
「わわ、先輩〜! 待ってください〜!」
アリスにどつかれまくった妖狐達も、びゅーんと洞窟の奥へ逃げ去ってしまった。
どうにか、モンスターの群れを追い払う事が出来たのだった。
「わ、わりぃわりぃ……今回ばかりは俺が戦犯だったな……」
「全くもう! 人の話はよく聞きなさいよ!」
ソニアに怒られる、ヴィクトリー。ルカ達はそんなソニアを、まぁまぁとなだめた。
「仕方ないじゃないか、僕達もミミック娘とは初遭遇なんだから」
「まぁ、異世界から来た戦士にはこれで勉強になっただろう。これからも宝箱には気をつけねばな」
ルカ達はそんな事を話し合いながら、先へ進んだのだった。