もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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綿密な準備

 プチ聖魔大戦を収め、アリスを仲間に加えたルカ達。ルカの方は後で村長さんに挨拶しに行くと言い別行動をとることになった。

 ヴィクトリーはというと、しばらく村をウロウロすることにした。

 

「……」

 

 ソニアといい、胸の違和感が消えない。さっきの『白い兎』と『アリス』という組み合わせにも、何処か既視感のようなものが頭痛と共に襲ってきたのだ。

 この世界、何かありそうだ……そして、面白そうだ。

 そんな事を考えていたら……

 

「ヴィクトリーさんですね?」

 

 一人の男が声をかけてきた。紺色の髪をして、眼鏡をかけて、黒と赤の派手な衣装に身を包んだ青年だ。

 

「……誰だおめぇは」

「名乗る者の程ではありませんが……私はネロ。通りすがりの旅人です」

 

 明らかに、通りすがりなどという雰囲気では無い。感じられる気も底知れず、ヤバそうだ。

 

「何の用だ」

「いえいえ、ちょうどあなた達が旅立つ所だと聞きまして……少々、お顔を合わせておこうかな、と思ったまで」

 

 そして、事情を把握している……何やら、きな臭い奴に話しかけられたようだ。

 

「…………」

「……所で、その格好は?」

 

 ネロは閉口するヴィクトリーの服装を見て、疑問を抱いていた。当の彼も自分の格好を見るが、何もおかしい所なんてない。

 

「何かおかしい所でもあるか?」

「いいえ、あなたは山吹色の胴着と青いアンダーシャツを身につけていた筈なんですが……」

 

「え……」

 

 ──それは、自分が着る予定だった装備。なぜ、ネロが知っているのか……

 

「ッ!!」

 

 ヴィクトリーは、また頭を押さえた。

 頭痛だ。あの頭痛が、彼の頭を掴んで揺さぶっている。

 

「だ、大丈夫ですか……!?」

「うぐ……だ、大丈夫だよ……」

 

 頭痛は秒で収まり、顔色も戻っていくのが感じられた。もう大丈夫だろう。

 

 とにかく、何だか……この男に隠し事は出来ないと見た。ならば、正直に話すべきなのだろう。

 

「……いつもの服を入れてたカプセルがぶっ壊れちまってよ。生憎、今はこれしかねぇんだ」

「それは災難でしたね……」

 

 事情を理解したネロはそう言い、頷く。どうやら、納得してくれたらしい。

 

「それで、おめぇも旅をするのか?」

「はい。でも、その前にルカさんにも挨拶をする予定なので……」

「ルカなら村長さんの家だ。頑張れよ」

「はい! ヴィクトリーさんも、頑張って下さい!」

 

 ネロと別れ、また村をほっつき歩く。

 あの男、明らかに怪しいが……今の自分が言える立場でも無さそうだ。

 

 そんな事を考えながら歩いていると……

 

「うわーん!」

「……?」

 

 スライム娘の泣き声が聞こえてきた。

 

「だれかー!」

 

 東の方にある、洞窟っぽい所からのようだ。

 

「……ちっ!」

 

 ヴィクトリーは急いでそこに走り、洞窟に乗り込む。中は狭いが、毒の沼が広がっている。

 

「わーん!」

 

 毒の沼の中に、唯一マトモな地面が顔を出している。そこでスライム娘は立って、助けを呼んでいた。

 そして、それを見て歯噛みする兵士……

 

「うぅ……どうしよう……」

「何があったんだ?」

 

 ヴィクトリーは、兵士に声をかける。その兵士は、やはりヘタレで、オロオロしながらスライム娘を見ることしか出来ない様子だった。

 

「見ての通りさ……助けに行きたいのはヤマヤマなんだけど……俺のへっぽこな体力では、あそこまでたどり着けないんだ」

「なんだおめぇ兵士の癖になっさけねぇな……」

 

 彼はそう罵倒するが、兵士はその罵倒を甘んじて受け入れてしまった。

 

「ああ、かわいそうだなぁ……正義感溢れたガッツのある若者が、助けてくれないものか……」

 

 あろうことかそう言って、ヴィクトリーの方をチラチラと見る。自分で助けに行く気は、毛頭無いようだ。

 

「くそっ!」

 

 ヴィクトリーは上半身の服を脱ぎ捨て、毒の沼に飛び込んだ。飛沫を上げながら紫が舞う。そして、派手に飛び込んだはいいものの、深さは膝に達するぐらいでしかない。たぶん脱ぐ必要も無かっただろうか。なにより、毒の効果は肌がピリピリする程度だ。

 こんな毒でも……スライムにとっては、致命的なのだろうか。

 

 考えながらあっという間に毒沼を進み、スライム娘に手を伸ばす。

 

「大丈夫か!?」

「ぐすん……」

 

 スライム娘はようやく助けが来たことで安心したようで、泣き止んでヴィクトリーの手を取った。

 

「俺の体に掴まってろ!」

「うん……」

 

 そして彼はスライム娘をおぶり、毒沼から抜け出す。これで、何とか彼女を助ける事に成功した。

 

「ふぅ〜……」

「や、やるじゃない……」

 

 兵士はそう言って、薬草を持ってきてくれた。

 

「ああ、サンキュ……」

「わーい、ありがとー!」

 

 スライム娘はヴィクトリーに抱きついて、ぷにぷにと体を揺らした。ひんやりしていて心地いいが、少女に抱きつかれるのは不思議な気分になるものだった。

 

「へへへ……」

 

 抱きついてくる彼女を、笑いながら撫でるヴィクトリー。そんな彼の背後から、人がやってくる。

 

「あ、もう終わってたか……」

「そのようだな……」

 

 ルカとアリスが、ヴィクトリーの所に来ていた。どうやら、騒ぎになっていたらしく、駆けつけてきたらしいが……既に解決しており、安心したらしい。

 

「いいトコあるじゃない!」

 

 なんと、ソニアまで居る。きっと、ルカに張り付いて着いてきたのだろう。

 

「おめぇら……」

 

 聞いてみれば、これは本来はソニアの仕事だとか。まぁ、スライム娘も助かったんだし良いんじゃないかな。

 

「ねぇねぇ、キミ達について行っていい? あたし、外の世界を冒険してみたいなー!」

 

 スライム娘はそう言って、ルカとヴィクトリーを仲間になりたそうな目でこちらを見ている。

 

「連れて行ってもいいんじゃねぇか? 旅はメンバーが多い方がいいし……」

「スライムというのが頼りないが……」

 

 そう言うアリスに、ヴィクトリーが向く。

 

「そう言うなって。スライムだって、必死に努力すりゃあ魔王を超える事があるかもよ?」

「貴様、余に喧嘩を売ってるのか!?」

 

 ヴィクトリーは、怒られてしまった……

 

「あはは……まぁ、そういうわけだよ。歓迎するよ」

 

 ルカは二人を横目に、スライム娘と握手をした。

 

「わーい! 私はライム、よろしくね!」

「うん、よろしく!」

 

 こうして、スライム娘のライムが仲間に加わった。

 

「しかし、何とも頼りないパーティだな。余がこんな姿である以上、仕方ないが……」

「もう、ぐだぐた言わないの。さあ、行きましょう!」

 

 ソニアが、ブツブツ言うアリスを撫でる。

 

「よし、じゃあ行くぞみんな!」

「ああ!」

「ふふん……」

「そうね!」

「おー!」

 

 ルカは、ヴィクトリーとアリスとソニアとライムの四人を連れ、村を出た……

 

 

 

「まぁ待て、二人共。貴様に過ぎたるモノをくれてやろう」

 

 村を出た途端、アリスがルカに向かってそう言った。

 

「過ぎたるモノって……いったい、何をくれるの?」

「見た所貴様は、敵を傷つけるのを恐れるタチだ。そういう者は、往々にして自身の力を振るえん。そこで、この剣を……」

「……!」

 

 ヴィクトリーは、ここで妙な気を感じる。その次の瞬間、時間が止まった。

 

「……」

 

 ルカ達の近くに現れたのは、ネロだった。

 

「堕剣エンジェルハイロウは、あまりに危険すぎます……申し訳ありませんが、しばし預からせてもらいますよ。失礼……」

 

 ネロはアリスの道具袋から堕剣エンジェルハイロウを取り上げ、消えてしまった。

 そして、時間は動き出す……

 

「この剣を……あれっ、どこに行った? 妙だな、確かに持ってきた筈……」

 

 アリスは道具袋をゴソゴソしている……

 

「……」

 

 異常に気付いているヴィクトリーは、一人辺りを見回していた。さっきの妙な気、おそらく村で会ったネロって奴だろう。周囲にはもう居ないし……あいつ、一体何を……

 

「……なくした」

 

 とにかくアリスは、ルカに渡すものを無くしてしまったらしい。

 

「まあまあ、そういう事もあるさ。別にいいよ、僕は……」

「一度やると言ったものを撤回するなど、余の沽券に関わる! 同等の価値のあるものをやらねば、余は納得せんぞ!」

 

 彼女は引き続き、躍起になって道具袋をガサゴソと漁り始める。

 

「趣旨が変わってんぞ……」

「敵を傷付けて、力が振るえないって話じゃあ……」

「気にするな、全力で叩きのめしてやれ! どうせ魔物というのは頑丈なのだ、そうそう死にはせん!」

 

 そう言いながら、アリスは依然として道具袋に手を突っ込んだまま何かを探している。

 

「そんな大雑把な……」

「無茶苦茶だなぁ……」

「戦意を失った相手を攻撃したりしなければ、大丈夫だ。魔物も命は惜しい、死ぬまで抵抗したりはせん……」

 

 アリスはそこまで言いかけ、目を瞬かせた。

 

「……おっ、これならどうだ。この品の価値は、堕剣エンジェルハイロウに劣らんぞ」

 

 そう言って取り出したのは……

 

「ポケット魔王城〜!」

 

 ボタンの付いた、細かい細工の城のミニチュアだった。

 

「何だこりゃ?」

「お城の……模型……?」

 

「ただのミニチュアではないぞ。ほれ、ここのところをポチッと押してみろ」

 

 ルカは半信半疑で、ポケット魔王城とやらのボタンを押す。すると次の瞬間、空間が歪み、メンバーの体がポケット魔王城に吸い込まれる。

 

「っ!?」

「わわわ、吸い込まれる……!」

 

 そして光に包まれてから、空間の壁を突き破り、着地した。

 

「こ、ここは……!?」

「ひょっとして、さっきのミニチュアのお城の中?」

 

 どうやら、ソニア達も居るようだ。『アリスの仲間』という条件で、城の中に誘われるらしい。

 

「らしいな……」

 

 ヴィクトリーは、目の前の城を見上げる。ミニチュアで見るのとは打って変わって、なかなか立派で荘厳な城である。

 

「ふふっ、数千人が収容できる広さはあるぞ。この城を、拠点として使うがいい」

 

 ソニアもルカと並んで、城を見上げていた。

 

「すごい……あんたが魔王だって話、信じちゃいそうになっちゃった」

「だから、余は魔王だというに。さあ、中に入るぞ」

 

 アリスの言われるままに、一行は城に入る。内部も立派なもので、すごい広さだった。

 

「うわぁ、ひろ〜い!」

「はぇ〜……すっげぇおっきいな……」

 

 ソニアとヴィクトリーの感想が、被った。

 

「戦闘を重ねれば、魔物が仲間になる事もあろう。しかし、たくさんの仲間をゾロゾロ連れ歩く事は出来ん」

「一度に連れ歩けるのは、八人が限度だろうね」

「溢れた仲間達を、ここで待機させるってわけか……」

「その通りだ」

 

 その他にもヴィジョンで出来たメイドさんや、まだ使われていない屋台などがたくさんある。

 元のところに出たい場合は、正門を潜ればいいらしい。

 案外使い勝手はいいが、ダンジョンでは使えないとのこと。

 

「……まぁ、そんな所だな。せいぜい有効活用するがいい」

「ありがとう、アリス。このお城がいっぱいになるくらい、仲間を集めたいね」

「そしたら、武道大会みたいなのもやろうぜ!」

「それは流石にやらないとは思うけど……」

 

 イキイキと言うヴィクトリーに、ルカは苦笑いした。

 

「くくっ、せいぜい頑張るのだぞ……」

 

 ポケット魔王城の使い方が分かったので、とりあえず外に出る。正門から出て、元の所に戻った。

 

「……ふぅ、ちゃんと戻れたみたいだな。それじゃあ、いよいよ冒険の始まりだ!」

「ああ……わくわくすっぞ!」

 

 冒険に出ようとしたが……

 

「ねぇルカ、ちゃんと村の人達に挨拶はした? あたしが言うのもなんだけど、ちゃんとした方がいいよ」

 

 ソニアがそう言って、ルカを止めた。

 

「うん、そうだね」

「しょうがねぇなぁ……」

「あたし、毒沼にいた兵隊さんに会いたいな。いっぱい心配してもらったから、ちゃんと挨拶したいの」

 

 一行は再びイリアスヴィルに戻り、挨拶のついでに準備を進める。本格的な旅立ちは、まだ遠そうだ……

 

 

 

 挨拶をしてたら、道具屋の商人と兵士さんの勧誘があった。

 商人の方は『タラスの丘』という所で、相棒の商人が倒れてしまったらしい。それを助けに行ってほしいとの事だ。

 

 兵士の方は『試しの洞窟』とやらで、ルカ達の転職という奴に必要な『勇気の証』を取りに行くらしい。

 

「おっしゃルカ、商人の方は俺とライムに任せてくれ」

「じゃあ、僕はアリスとソニアと一緒に『試しの洞窟』に行くよ」

 

 そういう訳で、一行は解散してそれぞれの目的地に向かった……

 

「よーし、がんばるぞ〜!」

「ああ、行こうぜ!」

 

 ライムはお手製のおさかなブーメランとやらを持ち、ヴィクトリーに付いて行く。彼らは走り、『タラスの丘』とやらを目指す。

 

 さてさて、そこでは何が待つのか……

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