もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
探索中、何度も魔物と交戦したものの、特に苦戦せずに進んでいくルカ達。
その交戦している魔物の中でも、妖狐の割合が高い事にアリスは気付いた。
「やはり、洞窟内はきつねに占拠されているな。しかもこの、強大な妖気……たまも本人も来ているか……」
「撤退を前提に考えた方が良さそうですね。狐の体毛サンプルは、もう十分集まりましたし」
プロメスティンは狐の毛を瓶に納め、懐にしまう。そして、眼鏡を上げた。
「さっきから、やっつけた狐の尻尾の毛むしってたけど……あれ、狐イジメじゃなかったんだね」
ソニアは、サンプルを取ってウキウキしているプロメスティンをジト目で見ている。ロクな事に使われる気がしないが故である。
そんな会話をしながら洞窟を進み、再奥……その宝物庫らしき扉の前に、いかにもそれらしい妖狐がいた。上半身は女だが、下半身が狐で、尻尾は七本ある。
「……オッス」
ヴィクトリーはまず手を合わせ、その妖狐に頭を下げる。彼女もそれに気付き、会釈で返した。
「俺はヴィクトリー、おめぇは?」
「私はたまもの腹心、七尾と申します。言葉遣いはともかく、礼儀正しい人間には好感が持てますね」
七尾……口上の通り、たまもの腹心とだけあって凄まじい気を感じる。この肌にビリビリと感じる妖気は、明らかに格上のそれだ。
「しかし如何に礼儀が成っている者であろうと、ここから先は宝物庫。ゆえに通すことはできません。引き返すなら良し、それでも進むというのなら……」
「その先は、言わんでいい」
アリスが七尾の言葉を遮り、そう言って前に出た。
「我等の邪魔をするなら、痛い目に合うぞ」
七尾はそのアリスを見て、目をぱちくりさせていた。
「まさか、魔王様……? いや、これは何かのまやかし……?」
アリスの姿を見て、困惑を隠せない様子だ。そう言えばアリスがこのような姿になってイリアス大陸までぶっ飛ばされたことは、広まってなかったか。
しかし、七尾はすぐに元の調子に戻った。
「いかに魔王様に似ていようと、容赦はしませんよ。たまも様の命により、ここは通しません!」
そう宣言しながら、気を解放する。馬鹿でかい気が更に膨れ上がり、強烈なプレッシャーがルカ達にのしかかってきた。
「なんて強そうな魔物なんだ……でも、ここで逃げたりはしない!」
「ったりめぇだ……いくぞっ!!」
ここまで格上の相手となると、フェアな戦いには拘っては居られない。勝負を仕掛けるのであれば、総力戦しかない。
ルカとヴィクトリーは勿論、その後ろにいる仲間達も気を解放する。
「だぁああーっ!!」
まずヴィクトリーが七尾に突撃し、拳を振りかぶってその顔面に殴り掛かる。しかしその拳は片手で止められ、肘を持たれる。
「なっ!?」
「ハイッ!!」
そのまま投げ飛ばされ、勢いよく地面に叩きつけられた。叩きつけられた地面が粉砕して、小さなクレーターが出来上がる。
「っぐあぁあぁあ……!!?」
パンチを受け流され、投げで一本。これだけで七尾の筋力と技量……それを加味した戦闘力と、自分との差が嫌という程理解出来た。
しかしそんな彼にお構い無しに、七尾の尾の一本がヴィクトリーを殴りつけ、ルカ達の方へぶっ飛ばす。
「くっ!」
ぶっ飛ぶヴィクトリーをルカが受け止め、アリスとソニアが七尾に突っかかった。
「はぁああっ!!」
「うぉおおっ!!」
尖剣技と棍技が遠慮無しに連打され、絶え間なく襲い来る。しかし、それを七本の尾と両手で凌ぎ続ける七尾。その表情は冷静で、余裕を感じられる。
「ふん……!!」
七尾は二人の隙が重なったのを確認して、高速移動で姿を消す。
「なにっ!?」
「は、速……!!」
次の瞬間、七尾は二人の背後に現れ、その背中に肘を落とした。
「がはっ……!!」
「ぐぁあっ……!!」
重い一撃に、よろめくソニアとアリス。そんな彼女らの頭がガッと捕まれ、力任せに壁に投げつけられた。
「きゃあんっ!」
「ぐぬ……馬鹿力きつねめ……!」
悶える二人に、迫り来る七尾の尻尾。猛スピードで来るそれは、凄まじい威力が込められているのが分かり、当たれば只事では済まない。
「っ!!?」
次の瞬間、七尾の体が発火して尾が止まる。プロメスティンが、燃焼反応を起こしたのだ。
動きを止めることは出来たが、その手応えは良いとは言えない。
「……大したダメージにはなってないようですね」
「ぐっ!」
炎を振り払い、プロメスティンの方へ向く七尾。しかしそこに居たのは、プロメスティンだけでは無かった。
「きゅ……!!」
ヌルコが、マキナの大砲……デュエルカノンを七尾に向けていた。
「な……マキナ……!!」
「きゅーっ!!」
デュエルカノンが、七尾に撃ち放たれた。砲弾が真っ直ぐに七尾に飛び、直撃。凄まじい爆発が巻き起こり、ホコリやら煙やらが立ち込める。
「……ちぃいっ!!」
しかし、爆煙の中から七尾が飛び出す。どうやら、マキナの火力でさえ大したダメージにはならなかったようだ。
「なっ!?」
「きゅっ!?」
七尾は、プロメスティンとヌルコにダブルラリアットする。彼女らを捉えたその腕に力を込めて振り抜き、壁にまで投げ飛ばした。
「うぐぅっ……!!」
「きゅうぅ……!!」
水平に吹っ飛んで、3mほど後方にあった壁に一瞬で叩きつけられる二人。ダメージが大きく、そのまま倒れて悶絶した。
「さて、どうするのです? まだ続けますか? 挑まれた以上は、逃がすつもりもありませんが……」
ボロボロの戦士達を前に、七尾は冷徹に言う。
これが、四天王直属の精鋭の実力。とんでもない強さだった。しかも、その余裕の態度からは全く本気を出てないことがうかがえる。自分達の脅威度など、羽虫レベルだろう。
「へへへ……こ、こんなやべぇ状況なのにワクワクしてきたぞ……!」
「羨ましい奴……僕はおっかなくてゾクゾクしてるよ」
言葉を交わしながらも構え、気を解放するヴィクトリーとルカ。どうやら、降参してなすがままになる……なんて選択肢は無いようだ。
「殊勝な事ですね。来なさい」
「いくぞ!!」
まずヴィクトリーが、拳を振りかぶりながら全力で突撃する。七尾はそれに対し、回避してからの反撃を繰り出そうとするが──寸前でヴィクトリーは横に避け、彼の陰からルカが血裂雷鳴突きを刺してきた。
「!!!」
ルカの技が命中し、七尾の体に電撃が炸裂する。そうして揺らいだ彼女のこめかみを、ヴィクトリーの長い足のハイキックが打ち抜く。
「ぐあっ……!!」
確かなダメージを与えたものの、七尾にとっては小賢しい程度のこと。すぐに体勢を整えて、ヴィクトリーの方を向き直そうと頭を振る。
そこには、手を合わせてエネルギーを溜めている彼の姿。すかさず手を向けて魔力を集中させようとする七尾だったが、彼女の懐にルカが低く潜り込んできた。
「なッ!!?」
「魔剣・首刈りぃッッ!!」
七尾の喉元に、剣が突き上げられる。膝のバネを利用した、渾身の突き上げは彼女に確かにダメージを負わせ、それで一瞬だけ硬直させる事に成功した。
「波ぁああぁああ!!!」
その次の瞬間、ヴィクトリーがかめはめ波を放った。七尾には至近距離の真正面から全エネルギーを叩きつけられ、爆発が起こる。
爆発の旋風に乗るような形で後退する二人。距離をとってからも構え、臨戦態勢は解かない。
「っ、どうだ!?」
「……くそったれ!!」
爆発の煙が晴れると、そこには七尾が普通に立っていた。「ケホケホ」と咳き込みながら、顔のホコリを払っている。
「少しは効きましたよ……素直に、見事な連携と言わざるを得ません」
ぬけぬけと送る賞賛……ルカとヴィクトリーにとっては最高のコンビネーションだったが、こうもアッサリ受け止められるのは二人にとってもショックだった。
「その礼に、あなた達に技というものをお見せしましょう!」
七尾はそう言うと頭に木の葉を乗せてから合掌し、その身に力を集中させていく。溢れる気が充実し、練りあがっていくのが肌でビリビリと感じられた。
「やべぇぞ!!」
「分かってる……!!」
初見の大技を相手に取れる策は、全身に気を溜めて防御受け……あわよくば回避。最悪、甘んじて食らってソニアの白魔法をすぐに貰うしかない。
二人は防御の構えを取ったが……七尾は、そんな二人の心中を見透かすかのような目をした。
「愚策」
それだけ言い、七つの尾を揺らめかせながら走る。そして二人の前に躍り出たかと思いきや、尻尾を乱舞させて二人を超威力で乱打した。
「ぎゃああああ!!?」
「ぐぁああああ!!?」
ただ怪力で尻尾を叩きつけられてるだけじゃない。その尾には土の魔力が込められており、ゆえに剛力。そんな速く重い尻尾が遠慮無しに六度も連打され──
「はぁあああッッ!!!」
七度目の尻尾撃は、トドメと言わんばかりの痛恨の一撃。凄まじい威力で二人を打ち下ろし、地響きが鳴り、クレーターのような跡を残した。
「これが、私の技……『七つの月』。防ぐことも避ける事も敵わないのが、技というものですよ」
「ぐ……く……ち、ちくしょう……!!!」
「なんて強さだ……」
ヴィクトリーとルカは、ボロボロのまま倒れ伏す。あまりのダメージに立つ気力すら削られてしまい、倒れながら七尾を
「ぐぬぬ……なら、余たちが戦うしかあるまい……!」
「二人とも、待ってて……!」
アリスとソニアがそう言いながら、立ち上がる。二人ともソニアの白魔法で回復してはいるが、仕掛ける隙が見当たらず立ち踏みしか出来ずにいた。
「……非常にまずいですね。どうにか隙を作りたいのですが、火力不足で……」
「きゅ……」
プロメスティンも考えながら、立ち回ろうとしているが……あの七つの月とかいう技。あれを繰り出されたらこっちがどんな行動をしても終わるので、迂闊に行動出来ない。だが、あのままでは二人が危ない事も確かだ。
「さぁ、どうするのです? この男二人を置いて逃げるのであれば見逃しましょう」
「仲間を見捨てて逃げる訳無いでしょ!」
「余はこんな姿になったが、魔王としての誇りまでは変わらん!」
「二人の研究がまだ済んでないので……」
「きゅっきゅーっ!」
啖呵を切る、ソニア達。彼女らは、ルカとヴィクトリーの為に全力を出そうと、一斉に気を解放した。
「へへへへ……」
「仲間に恵まれてるね、僕達……!」
戦いは、ここからが本番。七尾も更なる気を解放し、本格的な激闘が繰り広げられる──はずだった。
「……いつまで、そんな奴に手間取ってるの?」
不意に、そんな声が聞こえてきた。皆は一斉に止まり、声の方に視線を殺到させる。
「っ!?」
「誰だっ……!?」
ルカとヴィクトリーは、思わず声を漏らす。
カツ、カツ、カツ……と、足音を鳴らしながらゆっくりと通路の奥の暗闇から姿を現す。そいつは何と、青い髪をした謎の少女だった。しかし、その風貌からは高位の妖魔である事が察せられる。
「……!!」
七尾はそいつを見て、驚愕の表情を浮かべた。
「その風貌、まさか……! あなたが例の、アリスフィーズ17世!?」