もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「なに!?」
16世魔王であるアリスの視線も、17世と呼ばれた謎の少女に向く。
「貴様がアリスフィーズ17世だと!? いったい、ここに何を……」
「そっちこそ、何やってるのよぉ。七尾は、あんた達が倒すはずでしょ……? なんか、どう見ても返り討ちコースじゃない。聞いてた話と違うんだけど」
青い髪を指でくるくると弄りながら、退屈そうに言うアリスフィーズ17世。
「と、とんでもねぇ気だ……!!」
ヴィクトリーはそれを感じ、それだけで彼女に圧倒されてしまった。
「おのれ、訳の分からない事を……! アリスフィーズ17世、その命はもらいます!」
七尾はアリスフィーズ17世に向いて、気を全開放する。さっきまで戦っていたのはまるで本気を出してなかったのが嫌という程分かる気の爆発に、ぶっ飛ばされそうになるルカ達。
そんな気の爆発に当てられてるアリスフィーズ17世は、余裕そうにクスッと笑う。そして、その手に剣を持った。
「だから……あたしが片付けちゃうね!」
アリスフィーズ17世は、気を解放する。七尾より遥かに馬鹿でかい気が爆発し、周囲に熱気と突風が波動する。
「紅蓮の炎を、この刃に託して……乱刃・気炎万丈!!」
アリスフィーズ17世は剣に紅蓮の炎を纏って、姿を消した。
「な……はやい……!?」
「みんな離れろ──ーっ!!!」
ヴィクトリーの指示で、その場の全員がハッとする。次の瞬間、周囲と七尾に無数の紅蓮の斬撃が走り、その斬撃を追うように紅蓮の炎が爆発した。
「くっ!!」
斬撃は上手いことルカ達を避けている。しかし七尾は紅蓮の斬撃に切り刻まれ、大ダメージを負った。
「ぐっ、なんという力……!! あぁぁぁっ……!!」
気を解放して、大技を一発。それだけで七尾は戦意を失い、倒れ伏したのだった。
「な、なんちゅう奴だ……!! 俺達じゃまるで敵わなかった七尾を、あんな一瞬で……!!」
「す、すごい……なんて強さなんだ……」
圧倒される、ルカとヴィクトリー。凄い奴と戦う羽目になったと思えば、それより更に凄い奴が現れて……二人は、ただ呆ける事しか出来なかった。
「今の技は、グランべリアの……!? いったい、どういう事だ……?」
アリスの言う通り…… 乱刃・気炎万丈はグランベリアの代名詞とも言える技である。そんな技を、なぜ彼女が使えるのだろうか?
「都合がいい展開なのは助かるけど……」
「うん、あの子は……味方、なのか?」
ヴィクトリーは仙豆を口にして、ルカは瞑想で回復。二人は立ち上がり、一応は構えておく。
七尾含め、その場がアリスフィーズ17世に注目する中……彼女は、宝物庫の扉に向いていた。
「これで、七尾は倒したわよ。ほぉら……そろそろ出てくる時間よね?」
そう言うと、宝物庫の扉が開いた。そこから出てきたのは、背丈の低い九尾の妖狐だった。
「……」
アリスはそれを睨み、目を鋭くする。
「たまも……貴様、何のつもりだ?」
「……すまんのう、お主達。ウチがさきさき進んでしまったばっかりに、そんな姿にされてしまったか」
「そんな姿とは……余のこの姿か? いったいどういう意味だ?」
「無駄よ無駄」
たまもに話しかけるアリスに、17世はそう言う。
「そいつはここの誰とも会話してないから。単に再生されているだけの虚像なのよ」
「少しばかり、ウチの魔力を分け与えてやろう。七尾……お主の魔力を満たすには、少しばかり時間が掛かる。悪いが、後にさせてもらうぞ」
たまもは全く別方向を見ながら、七尾に言う。
「何をおっしゃいます、たまも様? 私は、封印など受けてはおりませんが……」
困惑する七尾を置いてけぼりにしながら、たまもはルカ達の方へ向く。
「ふむ、お主達が勇者一行……勇者ルカと武闘家ヴィクトリーか……七尾を倒すとは結構な腕前じゃのう」
「え? 僕達が倒したわけじゃ……」
「いや、無駄みてぇだ……こいつ、本当に誰とも会話してねぇ」
ヴィクトリーは、そう言いながら頭を押さえている。また、キリキリとした頭痛に襲われているらしい。
「ヴィクトリー、また頭痛か……?」
「……?」
17世は、不思議な目でヴィクトリーを見た。
彼はと言うと、キリキリと痛む頭を押さえていた。突発的なヴィジョンと共にやって来るあの頭痛と似ているが……相変わらず、これが何なのかが分からない。
「おそらく、このたまもはここじゃねぇ何処かのたまもだ……何を言ってるか俺にも分かんねぇけど、そんな感じがするんだ……」
そう語るヴィクトリーを見つめる、17世。彼女は何か納得したような顔で、「そう」と答えた。
「正解。このたまもは、別の並行世界のコピー。その並行世界での行動を忠実になぞっているに過ぎないの。こんな事が出来るのは……」
17世がそう言いかけた途端、たまもはぴょんと跳ぶ。そして、ドロンッと違う姿になる。
「ばばーん!」
姿を現したのは、白兎だった。
「あれー、バレちゃった? 同じシチュからコピったから、途中までは上手くいったのに」
「まさか……ウサギだと!?」
「馬鹿な、それでは……私をここに連れてきたたまも様は、偽物!?」
どうやら、七尾も騙されていたようだ。
「偽物じゃないわよ、一応は。妖気の質もその力も、この世界のたまもと全く変わりない。あれは並行世界のたまも。それをこの世界にコピーしたのよ」
「……驚いたな、アイツ魔法使いか……?」
平行世界から事象ごとコピーして、ここで再現する……そんなトンデモ魔法は、ヴィクトリーの世界にも存在しない。強いて言うならば、ジャネンバという妖鬼が似たような技を使えそうではあるが……
「七尾を連れ、海神の鈴がルカ達の手に渡るのを防ぐ……酷似した状況からのコピーだから、上手くいってたわね。つまりは別世界の行動を再現してるだけの虚像だったわけ。白兎は、それをコピーする力を持ってるのよ」
「そうか、君もアリスなんだよね」
次の瞬間、白兎のドスが効いた声が響いた。普段、ルカ達には見せない目で、17世をギロッと見ている。
「アリスがいっぱい増えちゃって、困ったもんだよ……」
「いったい、なぜたまもの虚像を作り出した!? 貴様は、何を企んでおるのだ!」
「歴史を、本来あるべき形に少しでも近付けないとね。誰かさん達が、すぐメチャクチャにしちゃうんだから……」
「歴史……だと?」
気に入らないような態度で「ふん」とだけ言う17世。そんな彼女など知らんと言わんばかりに白兎はアリスの方を見て、にぱっと笑った。
「……言ったよね? ボクは導く役目なんだよ。アリスを正しい歴史へと……ね」
次に、ギロリと17世の方を向き直した。
「だから君はこの世界にいらないよ、17番目のアリス。この場で消去しちゃおうかな?」
「調整役のあんたが、自分で手を下す気? 白兎は、あくまで導く役じゃなかったの……?」
「キミが消えても、パラドックスは起き得ない。そういうわけでぇ……時間よ、止まれ!」
次の瞬間には、白兎が消えていた。
「ウサギが……消えた?」
「いったい、何が……」
ソニアも七尾も、目をぱちくりさせている。17世は、頭を抱えていた。
「うわぁ、恥ずかしいセリフ……ひくわ〜……あっ、こっちの話ね」
「……」
どうやら、17世には何が起きたか理解出来たらしい。何かとんでもない事があったのは確かだが……ルカ達には、知りようもなかった。
困惑していると、17世はルカの方を見てくる。
「……君は、いったい……」
「ねぇ、ルカ……」
17世はぴょんっとルカの所に来て、媚びるような上目遣いになった。
「あたしと、デートしよっ!」
「……はぁ!?」
「はぁ!?」
「はぁ〜!?」
ルカも、アリスとソニアも、素っ頓狂な声を上げて17世を見る。
まぁ、そりゃあそうだ。いきなり現れて、凄まじい実力を見せつけた上に、これだ。困惑するのも無理はない。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 君は、アリスフィーズ17世だよね……?」
「アリスフィーズ17世なんて、堅苦しい名前はイヤ! 本名のネリスって呼んでよ〜!」
「おい、ネリスとやら……!」
アリスがそう言いながら出てくるが、ネリスは彼女を睨んだ。
「あんたは、呼ぶな! あんたにルカは渡さないから!」
「な、なんだと……!?」
呆気にとられるアリスを横目に、ネリスは困惑しているルカに向いた。
「ねぇルカ、どこに遊びに行きたい? ルカのために、この世界のスポット色々調べたんだよ。サバサのオアシスでデートとか、素敵だよね。その後、グランドールで演劇でも見る? ルカなら、グランドノアのコロシアムの方が好きかな? 魔導学園も、見学自由なんだって。それとも……いきなりえっちしちゃう? ルカがしたいなら……あたしはいいよ」
ネリスは、まるで懐いている猫のようにルカに身体をスリスリと擦り付ける。ルカも「ふえぇ」なんて情けない声を出しながら、顔を真っ赤にしていた。
「こ、これは……ね、(禁断三文字)……!!?」
「寝てから言うべきでは?」
顔を真っ赤にしていきり立つソニアに、冷静に突っ込むプロメスティン。
「ええい、なんなのだ貴様……」
「ええい、うるさい! 私とルカがイチャついてるでしょーが!」
「だーっ!! 勝手にイチャつくでない!!」
アリスでは取り付く島もなさそうなので、彼女を静止してヴィクトリーが前に出た。
「おめぇ、いったい何者なんだ……なんで魔王の17世なんか名乗ってる?」
「あっ、デカ女好きのヴィクトリーだぁ!
初対面なのに性癖を言い当てられたヴィクトリーは、ずっこける。
「タッパがでけぇ女が好きで悪ぃーか!! 何で知ってんだ!!」
「バカ正直に認めるな!!」
アリスがそう声を上げると、ネリスはため息を吐いた。
「なんだか、外野がうるさいなぁ……デートは、またの機会にしようか。それじゃあね、ルカ! 次こそ、絶対にデートするんだよ!」
ネリスはそう言って額に指を置き、姿を消した。
「!!」
ヴィクトリーは、その所作を見逃さなかった。間違いない、あの瞬間移動は自分の世界由来のものだ。しかし、分かっていても言い出す事も出来ず……ただ、呆けるしかなかった。
嵐をどうにかしようと行った洞窟で、嵐のように現れた謎の戦士は、嵐のように消えていったのだった……