もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
再びナタリアポートに到着した、ルカ達。
「僕、イリアス大陸から出るのは初めてなんだよね」
不意に、ルカはそんな事を言った。
「そうなんか?」
「うん。お母さんと遠出する時は、いつもイリアスベルク止まりだったからね」
「私もセントラ大陸なんて初めてよ」
入ってきたのは、ソニアだった。
その横に、アリスとプロメスティン……その足元にはヌルコも居る。
「って事は、ここに居る皆が大陸越えは初めてという事か……」
「私はそもそも、下界に居ること自体があんまり無かったので……船からの景色、そして新大陸への興味が止まりません」
「きゅ!」
プロメスティンもヌルコも、わくわくしているようだ。
「セントラ大陸は、ここの魔物より強力な魔物が居る……準備は出来てるか?」
「ああ、もちろんだ!」
「ここら辺の魔物よりつえぇ魔物か……俺も、わくわくしてきたぞ……!」
そんな話をしながら歩いていたら、港が見えてきた。
「……そうか、セントラ大陸に行く前にこれがあったか……」
「ああ……だけど、今の俺達なら大丈夫だと思う」
嵐を巻き起こす、謎の淫魔……アリス曰く、アルマエルマという奴の仕業らしい。そのアルマエルマも、四天王だというから困ったものだ。
大きな期待と多少の不安を胸に、戦士達は船乗りに声をかけた。
「おっす!」
「あ〜……旅人さんか。街で聞いてるだろうけど、セントラ大陸行きの船は出てないぜ」
「あの……」
ルカは海神の鈴を出して、船乗りに見せた。
「海神の鈴っていう道具を持ってるんだけど……」
「海神の鈴? そりゃ、幻の貴重アイテムだぜ? こんなボロくさい鈴が……」
そこで、船乗りは何かを感じ取ったようだ。
海神の鈴から放たれている、不思議なエネルギー。それは一般人である船乗りにすら伝わり、この鈴が本物であることを理解させられた。
「間違いねぇ、こりゃ本物だ……よっしゃ、これで船が出せるぜ!」
「よっしゃ! それで、船代は?」
「そんなもんいらねぇよ! 貨物がしこたまあるから、船が出せるだけでも万々歳だぜ!」
どうやら、今回に限りタダで乗せてくれるらしい。
「よっしゃー!」
「じゃあ、今すぐにお願いします!」
「よし来た、それじゃあ乗ってくれ! さっそく出航だぜ!」
船乗りはびゅーんと走り、水を得た魚のように出航の準備をする。
「いよいよ、イリアス大陸を後にする時が来たか! さぁ、新たな大陸に旅立つぞ!」
アリスの言葉と共に、ルカ達は船へと乗り込んだのだった。
※
船を出発させてから暫く経った。今はまだ嵐の気配は無く、海の顔も穏やかなものであった。波の音と海鳥の鳴き声のセッションは、気持ちいい海の旅を彩ってくれている。
そんな船の甲板は広く、気兼ねなく修行できそうなスペースがあった。
「……ほれ!」
ヴィクトリーが手を合わせ、そこに気を集中させる。その手の中にはぼんやりと光る、エネルギーの塊があった。ルカはそれに注目していた。
「おお……これが『気』か?」
「ああ、他にもエネルギーとかエナジーとか言ったりもする。気功波として放ったり、体に込めて格闘技の威力を上げたり、上手いこと操作すりゃ空も飛べるんだ!」
気の使い方は、色々ある。その他にもバリヤーを張ったり、鞭や剣のような原始的な武器を再現する事で多様な攻撃を可能とするのだ。
この世界の武道家の筋の職業の冒険家にも使える奴は居るらしいが……ここまで器用に使えるのは、自分だけだろう。
「へぇー、便利な力なんだな……君の気功波もこれで放ってるのか?」
ルカは、その場でかめはめ波を撃つ真似をしてみせた。
「ああ……まぁ、実はかめはめ波は俺の技じゃねぇんだけどさ」
「え、そうなのか!?」
「そうだぞ。『亀仙流』って流派があってな、その師匠である亀仙人って人の技なんだ。スケベで元気な爺ちゃんなんだけど、この人も偉大な人なんだぜ」
「亀仙人……君がそこまで言うってことは、凄い人なんだろうな」
かめはめ波は、常人には撃つのに50年の修行を要する必殺技。全身の気を手の内に凝縮し、一気に撃ち放つ気功波。亀仙人の代名詞でもあり、その弟子でありヴィクトリーが最も尊敬する男……孫悟空の代表的な技でもあり、またドラゴンボールを代表する技でもある。
「僕にも撃てるかな?」
「気を扱って、やり続けりゃ出来るようになるさ! それまで、ひたすら修行だ!」
ウキウキした様子のルカを見た皆が、集まってきた。
「なになに? 面白そうな事してるじゃない!」
「ヴィクトリーの気のレッスンか……余も興味深いとは思っていたが」
「その手のぼんやり光ってるものが、気ですね? そのまま両手を切断しても、維持できるものでしょうか?」
「きゅーきゅ」
ソニア、アリス、プロメスティン、ヌルコ……思い思いのコメントをしながら、ヴィクトリーの手の中の気を覗き込む。
何だか一人不穏な事を言っている気がしたが、ヴィクトリーは「はは」って言って誤魔化しておいた。
「まぁ、かめはめ波ぐらいだったら言われたら教えられっからよ! 皆も気軽に言ってくれよな!」
「なら、僕に教えてくれないか!? 何だか、すっごく格好良いから!」
ルカは、目を輝かせている。男の子がかめはめ波に惹かれるのは、最早宿命か何かなのだろう。
対する女性陣はというと……
「私はどうしようかな……棍棒を振ってるのが性に合うから……」
「余なら教えられるまでもなく撃てそうだがな」
「異世界の技というのは興味深いですね。習得した方が知見にも繋がりそうです」
「きゅーきゅー!」
落ち着きながら考えるソニア達に対して、ヌルコだけは触手でかめはめ波を撃つ真似をしてはしゃいでいる。
それを見た皆はほっこりして、笑顔になったのだった。
※
気のレッスンを終えたルカとヴィクトリーは、剣を振るったり片腕で腕立て伏せをしながら修行する。
「船旅の最中まで修行とはな……たまには落ち着けばいいものを」
「でも、強敵が次から次に出てくるんだ。もっともっと、強くならないと……」
「ああ……俺も、この先の強ぇ奴らとやべぇ戦いに、燃えてんだ!」
汗水垂らしながら修行する男二人に、アリスは笑いかける。
「まぁ、あまり焦るな。ひとつ、面白い技でも教えてやろう……そら、ヴィクトリーも剣を抜け」
「お願いします!」
「お、おう!」
ルカとヴィクトリーは、またしても一緒になってアリスに剣技を教わる。その剣技は、高所から跳んで思いっきり兜割りを放つ技……
「高く跳んで……てやっ!」
「そう、落下エネルギーを加えた一撃を叩き込む……それが、天魔頭蓋斬なのだ」
天魔頭蓋斬。落下の勢いを乗せた、渾身の兜割り。本来なら槍で放つ技だが、威力は落ちるものの剣で放てる。また、跳び上がりに足の力も要求するため……端的に言うと、脚が速いとより威力が増す。
「素早さを活かした技って訳だな……ありがとう、アリス!」
「俺からも礼を言うぜ! よぉっし、この調子で俺は俺の新技をモノにしてやる!」
「全く、修行バカの脳みそ筋肉め……」
アリスが呆れていると、唐突に空が曇ってくる。そして、何を言うでもなく雨が降ってきて、それは強風と共に豪雨へと変わった。
「これが、例の嵐というやつか?」
「でも、船がぜんぜん揺れてない……」
「ああ……」
ヴィクトリーの視線の先……船の舳先にぶら下げた海神の鈴が、淡い光を放っている。不思議な魔力で、船を守っているようだ……
「やった! さすが、キャプテン・セレーネの秘宝だ!」
「ふむ、人間の残した秘宝にしては大したものよ。しかし……」
「……!!」
ヴィクトリーは、キッと上空を見上げる。
「えっ……!?」
一筋の風と共に、何か近付いてくる……嵐が止み、そいつは戦士達の目の前に着地した。水色の髪をした、強力な魔力を放っている淫魔だ。
「だ……誰だ!?」
「アルマエルマ……ではない!」
「おめぇは……!?」
「あたしはモリガン……アルマエルマとかいうのより、ずっと強いサキュバスさ」
モリガンと名乗ったサキュバスはそう言って、怠そうに首をゴキゴキ鳴らす。
「ふん、馬鹿を言うな……奴はクィーンサキュバス、淫魔の頂点なのだぞ」
「たかだか当代の女王ごとき、何だっていうのさ? そんなもの、あたしの足元にも及ばないよ」
馬鹿にしたような物言いだが……感じられる魔力は圧倒的なもので、それが超強敵と言わざるを得ない程のものだと嫌でも分かる。
「お前は、いったい……!」
「油断するなよ、二人共……アルマエルマ以上というのは眉唾だが、かなりの強者だぞ!」
「分かってるって……すげぇ気をビンビン感じてるぜ……」
ヴィクトリー達は構え、モリガンに向いた。
「あたし相手に、やるっていうの? 殺っちゃうのは、色々まずいんだけどさぁ……」
モリガンはそう笑いながら、掌を向けた。
「そういうわけで、かる〜く相手してやるよ。両手両足、お前らにいっさい触れないハンデだ!」
その手に、魔力を纏ってから構える。
「両手両足を? 随分と気前がいいんだな……」
「油断するなよ、ヴィクトリー!」
ヴィクトリーとルカはそう言って、気を全開放した。
「……ほお?」
「そんじゃあ、遠慮なく行かせてもらうぜぇっ!!」
突如として強襲したのはアルマエルマではなく、モリガンという謎の淫魔だった。
そして、ルカ達は彼女とぶつかり合ったのだった。