もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
ヴィクトリーに蹴り落とされ、波に掻き回され……何とか泳いで行こうとしたら、アイツが血を吐きながら沈んでいた。
助けようにも、激しい波で泳ぐ事すらままならない。もがいてる時でさえ、無情にもヴィクトリーは沈んでいく。
自分から5mは離れていただろうか。後ろからアリスの「諦めろ」という声が聞こえた気がしたが、すかさず彼女にヌルコを預けて泳ぎもがいた。諦めるぐらいなら死んだ方がマシだって思った。
だから死にものぐるいで泳ごうとして、それでも無駄で、そうしてる内に意識も朦朧としてきて……そしたら、後ろから誰かが現れて、ヴィクトリーを抱えた。
そいつは……青い服に赤い髪の、明らかに人外の男だった。
※
「うーん……」
ベッドから、むくりと体を起こすルカ。
辺りを見回すと、知らない民家のようだった。
「あら、お目覚めですか?」
ルカにそう声をかけたのは、下半身が魚で上半身が美女の魔物……
「お怪我は、全て私達が治しておきました。体の調子が良いようならば、こちらへどうぞ。すでに、お仲間さん達は目を覚ましていますよ」
そう言って、居間の方へ戻った。
「助かったのか……いや、助けてもらったのかな」
そう言って、ふと隣を見てみる。
そこには、ソニアが凄まじい形相で寝ていた。目を開けたまま白眼を剥いて、そのまま気絶している模様だ。
「そ、ソニア……? し、死んでる……?」
「きゅ〜……」
ヌルコも心配して、ソニアを見ているようだ。
「ひどい顔をしていますが、命に別状はありませんよ。水をずいぶん飲んだようなので、私達で癒しておきました。目を開けたまま気絶する人なんて、初めて見ました……」
「……」
ルカは、居間の方へと行く。
そこにはマーメイドが二人、そしてアリスとプロメスティンが居た。しかし、ヴィクトリーの姿は無い。
「……ヴィクトリーは?」
ルカは、アリスに聞いてみる。
「…………」
アリスは難しい表情をして、固まっている。何か言いたげだが、何から言えばいいのか迷ってる……そんな表情だった。
「え……? ま、マーメイドさんっ! 僕達の他に、赤い胴着を来た僕と同い年ぐらいの男、見ませんでしたか!?」
「い、いや……見てないわ。それがどうしたの……?」
ものすごく、嫌な予感がする。
思わず足が床を蹴って、この家を飛び出そうとする。しかし次の瞬間、いきなり玄関が開け放たれた。
「……」
「え……!?」
そこに居たのは、あの逆立った赤髪に白い肌で、青い貴族服のような格好の、謎の男だった。その片手には、誰かを引きずっている。
「な……何だお前はぁあっ!!」
「くっ!!」
「だ、誰ですか……!?」
マーメイド含む、その場にいる全員が臨戦態勢を取った。しかし彼は動じないまま、「ふむ」とだけ言ってルカ達を見回す。
「……剣を下ろすがいい。少なくともその程度の実力では私には全く勝てん」
「やってみるか?」
アリスが出てきて、赤髪の男にレイピアを突きつける。
「何者だ、貴様……余は貴様のような魔物は知らぬし、イリアスの差し金という雰囲気でも無いな?」
「答える義理など無い……私は、ただ届け物をしにきただけだ」
赤髪の男は、レイピアに臆する様子もなくそう言って床に誰かを投げ出す。それは、なんとヴィクトリーだった。
「ヴィクトリーっ!」
しかし凄まじく衰弱して、死にかけている。
「お前っ……よくもヴィクトリーをっ!!」
「誤解するな……私は何もしていない」
やれやれと言った様子の男は、全員の視線を受けながら踵を返す。そして、振り返った。
「早く助けてやる事だ。仙豆とかいう便利なものがあるだろう」
男はそう言って三歩ほど歩いて、煙のように消えてしまった。
「待て……!!」
「いや、今は奴よりヴィクトリーが先決だ!」
飛び出そうとするルカを、アリスは押さえた。
それを横目に、プロメスティンはヴィクトリーの持っていた袋を持つ。
その袋を開いて仙豆を取り出してから、まずヴィクトリーの喉を触る。その次に顎を触ってから、考えた。
「なるほど、呼吸は止まっている……意識も無い……ふむ」
プロメスティンは、仙豆を口にする。そして、ゴリゴリと噛み始めたのだった。それを見ていたアリスが、前に出てくる。
「プロメスティン、貴様が仙豆を食べてどうするのだ!?」
「ん、見てて下さい」
プロメスティンはそう言い、コリコリと仙豆を噛み続ける。暫く噛んだと思ったら、おもむろにヴィクトリーの口にキスした。
「〜っ!!?」
「えぇ……!?」
ルカもアリスも、唐突な事で驚きを隠せずにいる。
「きゃ……!!?」
「べ、べろちゅー!?」
マーメイド達も動揺しているみたいで、赤らめた顔を手で隠しながらも指の隙間から二人を凝視していた。
暫くプロメスティンは口をモゴモゴとしていたが、何かを確認したように「んっ」と言ってから静かに口を離した。
プロメスティンがとった行動は、口移しというものだった。咀嚼ができない相手にものを食わせるという状況なら、これが最適だと思ったのだろう。
「……?」
その内、ヴィクトリーの呼吸が戻り……程なくして、目を覚ました。
「ヴィクトリー、大丈夫か!?」
「ん、んぁ……? お、俺……生きてんのか……?」
ルカが呼びかけ、ヴィクトリーは徐々に意識をハッキリさせる。見た事ない民家の景色にうろたえながらも、どうにか状況を理解しようとしてる。
そんな所に、アリスが彼の前に来た。
「ヴィクトリー、何があったというのだ……そしてあの赤髪の男は誰だ?」
「赤髪の男……?」
「お前をここまで運んできた、白い肌で変な髪型した青い貴族服を着た男だ。心当たり無いのか?」
その特徴を聞き、考える……すると、ヴィクトリーに一人の魔神の名が浮かんだ。
「ドミグラ……!!?」
「知ってるのか!?」
ドミグラ……かつて、タイムパトロール兼ドラゴンボールヒーローズとして戦っていた時に、トランクスさんや時の界王神様から聞かされたことがある。
「……俺は、シオンって奴に殺されかけたんだ。おそらくその状況から助けてくれたのは、間違いなくドミグラだろうな」
「あんな胡散臭い男が、協力者だと言いたいのか? 正直あの通りすがりより信用ならんぞ!」
ドミグラは、それなりに頭の切れる野心家と聞く。それこそ、目的の達成の為ならば敵である自分達の勢力……タイムパトロールと協力することも
「それなりに考えてる事があるんだろうよ……多分、ロクでも無いことだけどな……」
どうやら、自分の命を助けてまでやりたいことがあるそうだが……今の所、目的は不明だ。考えても分からないだろうし、ここは保留するしかない。
「それにしても、シオン様の一撃を食らって生きてるとは大したものですね。サイヤ人というのは、相当に頑丈なようで」
プロメスティンはそう言いながら、ヴィクトリーを見る。
「おうプロメスティン、なんか知ってんのか?」
「知ってるも何も、三人の熾天使の一人です。肉弾戦に長けた、いかにも貴方が好みそうなタイプですね」
確かに、あんな激しくて強い天使まで居るとは驚いた。いつかもっともっと強くなったのなら、全力で戦いあってみたいものだ。
「まぁ……それにしても、仙豆食わせてくれたのはプロメスティンか? ありがとなぁ! 俺、仙豆食わなきゃおっ
「仲間として当然の事をしただけですよ……それに、サイヤ人の研究もまだまだ終わってませんしね。あっ、でも検死解剖出来た方が良かったかも……」
礼を言われて嬉しそうに笑うプロメスティンだが、やはり不穏な言葉が次から次に出てくる。アリスもこれには溜息を吐く。
「ヴィクトリー、こやつは全然貴様の事など思っておらん。礼を言うだけ無駄だ」
「それでも助けられたのは事実だ! 解剖されんのは嫌だけど、なんでも言ってくれよな!」
めげずに礼を言うヴィクトリーに、プロメスティンは色々なメスやらビーカーやらスポイトやらノコギリやらハンマーやらを何処からともなく取り出してきた
「なら、精液を提供できませんか? あと、体の各所の細胞と血と汗と骨と皮と髪の毛と……」
「ヴィクトリー、バラバラになって死ぬよね」
「俺はアンコウか何かか?」
ドミグラという男の謎は増えてしまったものの、とにかくヴィクトリーは一命を取り留めたのだった。