もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
綿密な準備を進める、勇者一行達。ルカ達は転職するために、そしてヴィクトリー達はある商人を救いにタラスの丘にやってきた……
「……ここか」
「そうだよ〜」
ヴィクトリーの隣にライムが並び、そう言う。彼より土地勘の強い彼女が言うのだから、間違いなさそうだ。
ここはタラスの丘。何の変哲もないただの丘だが、インプやマンドラゴラといったモンスターが住み着いているらしい。
特にマンドラゴラというモンスターは植物型のモンスターで、引っこ抜こうとすると絶叫する。その絶叫を聞いた者は、全身が麻痺して動けなくなってしまうのだ。
何が出ようと出まいと、気を付けて進むに越したことはない。
そう思いながら、二人はタラスの丘を進み始めた……
「わふー……」
「んぁ?」
声がする方を見ると、そこには犬耳と尻尾を付けた少女が立っていた。
「……!」
少女はヴィクトリーの顔を見るなり、急に飛びかかってきた。
「っ!」
「あぶないっ!」
ライムのおさかなブーメランが投擲され、曲線を描きながら飛び、少女をぶっ飛ばす。そうした後、それは彼女の手へと戻る。
「魔物か……!」
「あいつは犬娘! 気をつけて!」
ライムは己が手に戻ったブーメランを再び構え、犬娘に向かう。ヴィクトリーも拳を握り、構えた。彼の見た目通りの、武道の構えである。
「ぐるる……」
犬娘は起き上がり、再び襲いかかってきた。人型だというのに、四足歩行で走り、獰猛に飛びかかってくる。
「だりゃあーっ!」
ヴィクトリーは、その飛びかかりに合わせ、蹴りを放つ。それは見事に犬娘のこめかみを捉え、蹴り飛ばした。
しかし、死角からもう一匹、犬娘がやってきて、彼に襲いかかってくる。
「やぁっ!」
しかしライムの投擲したブーメランが犬娘の顔面にヒットし、その強襲の出を抑えることにした。
犬娘はというと、ブーメランの当たった顔を拭ってから、二人に向いている。
「サンキュー! いや、それより……」
「うん……」
ヴィクトリーとライムは背中を合わせ、構える。犬娘が一匹ずつ、襲いかかってきたのだ。
「その人を渡しなさい、スライム……」
「私達が、なめなめするんだもん……」
どうやら、目的は赤い道着の人間のオス。彼を欲のままに、めちゃくちゃにしてやろうという魂胆らしい。
「嫌だよ〜!」
「俺は犬の玩具じゃねぇからな!」
ライムの拒否に続いて、ヴィクトリーはそう言った後に、地面を蹴って犬娘の一匹の眼前に来る。
「っ……!?」
「やぁあっ!!」
そして、渾身の正拳突きを、その腹に放った。それは見事に直撃し、彼女の腹を打ち抜く。
「っ!」
拳でぶっ飛とばされ、勢いよく岩盤に叩きつけられる。
「きゃうぅん……」
会心の一撃が炸裂したことにより、その犬娘は気絶してしまった……
「よし……!」
まずは一匹倒した。
ヴィクトリーは、ライムの戦いに注目する。
「それそれ〜!」
ライムは器用にブーメランを操りながら戦っているようだ。投擲したブーメランの軌道を読み、ステップしながら足の踏み場を整え、自分の優位を譲らずにいる。遠距離戦闘の理想のような戦いをしていた。
「くぅ……! スライムのくせに……!」
「スライムだって、必死に努力すれば強くなれるよ……こんな風にね!」
ライムは、走りながら返ってきたおさかなブーメランを手に取り、バカッと犬娘の脳天に叩きつけた。
「ふぎゃあっ! くぅん……」
その一撃で、彼女も気絶してしまった……
「わーい! 倒したぞー!」
「おう、次に進むぜ」
戦士達は進み、先を目指す。
「つっても、何処で倒れてるか分かんねぇよな……ライム、おめぇ分かるか?」
「ううん、私も分かんない……」
そうなると、自力で探す他ない。気の察知でも使えたら楽なんだけど、そんなに甘くは無い。
序盤だし、出来ることが少なくてもまぁ多少はな? ……何が多少なのかは知らんけど。
「……む」
次に戦士達の前に立ちはだかったのは……小悪魔だった。幼女型だが、胸がやたら発達した小悪魔……
「うぅ……迷っちゃった……ここどこー!? レミちゃーん! ルミちゃーん!」
どうやら、立ちはだかるでも、邪魔をする訳でも無かったらしい。ただ迷子になってここまで来てしまったらしい。
「君は……インプのラミちゃん!?」
ライムが、小悪魔に向かった。
「ぇ……!? ライムちゃん……!?」
ラミと呼ばれたインプは、ライムを見て呆けた顔をする。
「知り合いなんか?」
「うん。よく遊ぶんだけど……こんな所で何してるの?」
「その……レミちゃんとルミちゃんで冒険ごっこしてたら、迷っちゃって……ふぇーん!」
「……」
何か、これだけ聞いたら可哀想な奴だ。まぁ、勝手に遠出して勝手に迷子になったから自業自得と言わざるを得ないが……
「だったら、俺と一緒に来ねぇか?」
「え、ほんと!?」
インプは目を輝かせながら、ヴィクトリーに向いた。
「ああ、正直このメンツだけじゃ不安もあるんだ。三人居れば何とやらって言うだろ?」
「えへへ……キミについていったら、イイ事ありそう! あたしも仲間になるよ!」
「ああ、ついでにルミちゃんとレミちゃんとやらも見つけてやる!」
「わーい!」
インプのラミを保護して、ヴィクトリーは歩を進めた……と、その時だった。
「あら、若い男がこんな所に……」
「しかも、ちょっと可愛いじゃない……」
「わふぅ……」
植物型のモンスター──マンドラゴラ娘二体と、犬娘が襲いかかってきた。
「上等ぉ……!」
「よーし、やるぞー!」
「あたしだって、戦えるもん!」
三人は構え、戦闘を開始した。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーの地面を蹴ってからの勢いつけた蹴り上げが、マンドラゴラ娘の顔面を蹴りとばす。
「っ!」
「隙ありっ……!」
その背後から襲いかかる、もう一体のマンドラゴラ娘……
「させないっ!」
しかし、彼女はライムのブーメランでぶっ飛ばされる。
「はぁあっ!」
「わふー!」
インプのラミと犬娘は、今は素手で攻防している。
乱戦状態。三対三の戦いで、静かなタラスの丘は戦場と化している。
「だりゃああっ!」
ヴィクトリーの渾身の肘打ちが、マンドラゴラ娘にヒットする。
「ぐぅうっ……!?」
「はぁあああっ!!」
ぶっ飛ぶ彼女に向かい、両手に気を溜める。そして、エネルギー弾を連射した。放たれたエネルギー弾が次々に彼女を打ち抜き、爆発が連続する。
「あ、あぅ……もうダメ……」
苛烈な連続エネルギー弾により、彼女は気絶してしまった。まずは、一体と言ったところか。
しかし、この作戦は悪手だった。
「はぁ……はぁ……!」
ヴィクトリーは肩で息をして、汗を垂らす。
自分が弱体化しているのを忘れていた……どうやら、今の連続エネルギー弾でパワーを使い果たしてしまったようだ。
「くっ……!」
もう一方のマンドラゴラ娘が隙を見てライムをぶっ飛ばして、おもむろにヴィクトリーに接近する。
「きゃ……!?」
「い や ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !!!」
マンドラゴラ娘は呪いの篭った叫び声を上げた。次の瞬間、ラミとヴィクトリーの体が麻痺してしまった。これが、例のマンドラゴラの叫びというものらしい。
「うぅっ……!?」
「わんっ!」
ラミは犬娘にぶっ飛ばされ、ヴィクトリーの所に向かう。
「くっ……」
迎撃しようにも、体が言うことを聞かない。動けるのは……ライムだけ。頼れるのは彼女だけだ。
「くっ!」
ライムは、相も変わらず巧みなブーメラン捌きでマンドラゴラ娘達に攻撃する。
「よっと!」
「わぉんっ!」
しかし、ブーメランとは軌道を読まれれば武器としては弱いものだ。呆気なく避けられてしまい、犬娘に蹴っ飛ばされてしまった。
「くぅうっ!」
「ぅぐ……!!」
ようやく、体が言う事を聞いてくれる。しかし、まだ万全には程遠い。
「はぁっ!」
「わおーん!」
二体からの猛攻を一身に受けるヴィクトリー。痺れる体に鞭打って、何とか猛攻を凌ぎ続ける。
「く、くそ……!」
しかし、二対一では流石に分が悪い。いつもの癖でぶっ飛ばした後のエネルギー弾連射で、気を使い果たしたのだ。
だが……こちらにも、アドバンテージになるものはある。
「っこれだぁあっ!!」
ヴィクトリーは剣を抜き、二体の攻撃を受け止める。
「なにっ……!?」
「っ!?」
突然出てきた、白銀の壁。それが刃であることを察するのに、時間は要さなかった。
飾りではなかったのだ。この武道家の背にあった、立派な剣は。
「はぁあっ!」
そして、剣を薙ぎ払って二体をぶっ飛ばした。
「ぐぁあっ……!」
「ぶ、武道家が……剣技……!?」
「……」
ヴィクトリーは、驚く二体の魔物を前に、剣をヒュンヒュンと振ってから、構える。
バーニングソード……彼は、勝手にこう名付けている。これは、トランクスという戦士が使っていた、業物の剣……その模倣品。悪い言い方をすれば、『贋作』だろうか。しかし──『贋作』が『原本』に及ばないとは、限らない。
「あたしも戦えるよ……!」
「あたしだって!」
ライムとラミが並び、構える。ラミの方は、ようやく体の麻痺が解けたようだ。
「はぁああっ!」
「やぁーっ!」
「はぁーっ!」
そして三人は、気を解放する。
「はーっ!!」
ラミは指先に魔力を集め、犬娘に雷電の黒魔法──サンダーを放った。小規模だが、雷が発生する。そして、犬娘に真っ直ぐ伸びて、彼女を撃ち抜いた。
「ぎゃうっ!? わうぅ……」
犬娘は、倒れて地に伏せる。目をグルグル回しながら、気絶したようだ。
「やぁーっ!!」
ライムはブーメランで、直接マンドラゴラをぶん殴る。どうせ軌道を読まれるのならば、接近して殴った方が早い。懸命な判断だ。
「あぐっ……!?」
「ふんっ!」
続けざまにヴィクトリーが勢いよく跳び、マンドラゴラ娘の腹を渾身の飛び蹴りで打ち抜いた。
「っぐぁあ……っ!」
マンドラゴラ娘も吹っ飛んで壁にたたきつけられ、気絶してしまった……
これで、魔物の群れを倒したようだ。
「ふぅ……」
ヴィクトリーは息を吐いて、剣を納める。
「ヴィクトリーって凄いんだね。格闘も強くて、剣技まで使えるなんて……」
ライムもブーメランをしまいながら、そう言う。
「剣技の方は少し齧っただけさ。それにしても……」
ヴィクトリーは、ラミの方を向く。
「おめぇ、なかなかつえぇじゃねぇか! さっきの魔法みてぇな奴、すげぇ威力だったぞ!」
「えへへ、黒魔法は勉強したんだ。これで大体の敵なら倒せるもんね!」
どうやら、ラミもただのインプではないのだろう。
一行はとりあえず臨戦態勢を解いて、先に進んだのだった……
そして……遠くに、倒れている商人を見た。
「……あれか」
ヴィクトリーは走って、その商人を揺する。
「おい、大丈夫か?」
「ううう……マンドラゴラの叫びを聞いて……」
商人がそう言った時、横から一体のマンドラゴラが現れた。彼は身構えようとするが、向こうには敵意は無かった。
「その人間、あたしを引っこ抜いちゃったのよ。それで叫び声を聞いて、ダウンしちゃったってわけ。仕方ないから、他の魔物に襲われないよう見張ってるの。私、けっこう面倒見がいいと思わない?」
「なるほど……サンキューな」
ヴィクトリーはそう言いながら、商人を揺すった。
「ま、満月草を……」
「満月草……」
確か、この依頼を受ける時に貰っていた気がする。記憶を信じ、袋を漁る。
「これか」
ヴィクトリーは袋から満月草を取り出した。
「……それで、どうやって使うんだ?」
「え、知らないの……? あたしに任せて!」
「あたしも手伝うよ!」
薬草の使い方を知らないヴィクトリーはとりあえず、ライムとラミに満月草を渡す。そして、二人は満月草を使った。この世界では、薬草の扱い方は常識か。覚えなければ。
「おお、体が……!」
満月草は麻痺に有効らしく、商人の全身の麻痺がたちまち解けていったようだ。
「ありがとうございました! この通り、すっかり良くなりました!」
「ああ、おめぇの知り合いみてぇな奴に頼まれてよ。魔物に襲われてたらどうしようか考えてたけど、これで安心みてぇだな」
「……なるほど、救助に来て下さったのですか。では村の道具屋に、お礼の品を受け取りに来て下さい。それでは、お先に!」
商人はそう言って、スタコラサッサと走って行った……これで依頼完了だ。
「よっしゃ、俺達もイリアスヴィルに戻るぜ」
「うん!」
「ルミちゃんやレミちゃん、大丈夫かなぁ……」
ヴィクトリー達も依頼を終えたと言うことで、イリアスヴィルに戻った……