もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
戦いを終えて、ソニアやプロメスティンから回復魔法をかけてもらうルカ達。回復魔法の世話になっているのは、彼らだけではなかった。
「すみません、ありがとうございます……」
正気に戻ったメイアも、4倍界王拳のかめはめ波のダメージを癒してもらっている。
「瞳孔の異常が無くなりました。精神的負荷が取り除かれたようですね」
回復させていたプロメスティンがメイアを診察して、そう言う。これでメイアは正気に戻ったというのが分かったが……
「しかし皆さんここで、何を……?」
「それはこっちの台詞だ。いったい何があったのだ……?」
アリスに聞かれたメイアは、頭を抱えながら考え込む……
「記憶が、だんだんはっきりしてきました……あれは数ヶ月前、婚姻届を出しに海底神殿を訪れて……」
メイアは、その日に起きた事を語った……
婚姻届を出そうと、南海の女王の所に向かったメイア……しかしそこに居たのは南海の女王ではなく、謎のサキュバスだった。その特徴は、ハーピーの村に来た三姉妹の一人と同じようだ。
ホントの南海の女王……クラーケンは、そのサキュバスにスルメにされてしまったらしい。
サキュバスはメイアに洗脳効果のある魔眼を使い、メイアをあんな風にしてしまった……
「それから、私は欲望の赴くがままに……ああ、なんて事をしてしまったのでしょう……」
「欲望の赴くままにやりすぎだぜおめぇ」
そう言うヴィクトリーの横で、アリス達が息を吐く。
「洗脳術によって、自身を南海の女王だと思い込まされ……さらに、倫理感も麻痺してしまったようだな」
「結局、気を失ってたって事じゃないか。これじゃ、メイアさんも被害者だよ」
「いえ……」
ルカのフォローにも関わらず、メイアはどこかセンチメンタルな顔をしていた。
「今さら、自分を擁護などできはしません。すぐに皆を解放し、地上へ戻しましょう」
メイアはそう言い、怪我から治ったばかりだと言うのにいそいそと準備を進めた。
「ここにも、例のサキュバス三姉妹が……連中はいったい何を……」
「うーん、きな臭くなってきたわね……」
「特徴を聞くに、その淫魔は……いえ、確たる情報が無いので今は黙っておきましょう」
「きゅ……zzz」
※
メイアさんは正気を戻したとはいえ……やはり凶悪化の犯人が出てこなかった。
人魚や漁師達は解放され、地上に戻される。その様子を、ヴィクトリーは黙って見ていた。
「……」
「浮かない顔してるね」
ルカが、ヴィクトリーの横に来た。
「ああ……」
「やっぱり、あの凶悪化が気になるか?」
ルカの言葉に、頷くヴィクトリー。
「あの現象は、間違いなくドミグラの仕業だ……だから、俺がどうにかしなきゃいけねぇってのに、こうやって皆を巻き込んじまってる。申し訳ねぇ」
「そんな事、気にするなよ……僕だって君を巻き込んでるし、付き合ってくれてる君に感謝してる。なにより、さっきは君が居ないと危なかった」
そう言うルカの横から、見かねたアリス達が来た。
「まぁ何だ、あまり自分の事を自分一人で背負わない事だな」
「私達だって、ルカやアリスの為にみんなで協力してるじゃない。だから、みんなで頑張ろう? ちゃんと協力するから!」
アリスの横に居たソニアまで、励ましてくれた……
「ああ、ありがとう……!」
「それに、いずれ我々の問題は一つに収束する……だから、あまり焦るな」
時空を超えたというのに、共に戦ってくれる時代を超えた仲間に出会えて良かった……ヴィクトリーは、改めてそう思ったのだった。
とにかく、失踪事件もこれで解決した。報告をしに、ルカ達はナタリアポートに戻るのだった。
※
ナタリアポートへと戻ったルカ達は、依頼主である人魚の家に改めて報告をした。
「ああ、皆を助けて下さったのですね……メイアから、すでに報告は聞いております。そのような強力な妖魔が存在するとは……なんとも恐ろしいですが、一応はこれで解決ですよね」
「はい、おかげさまで……」
「だけど、最終的にはあいつらもぶっ飛ばさねぇとな」
ルカの横で、ヴィクトリーはグッと拳を握ってそう言った。
「もちろん、今回の件でメイアに責任は全くありません。彼女も、被害者なのですから……」
「あの少年ハーレムに関しても?」
「……」
聞いたソニアも苦笑いし、マーメイドも複雑な表情で目を逸らしている……他人の性癖というのは、バラされる方も気まずいものである。
「ともかく、マーメイド一同感謝の限りです。お礼の品をお受け取り下さい」
そう言いながら出してきたのは、エリクサー、魔封じの杖、メロメロの香水……などといった、冒険に役立つアイテムだった。
「仙豆要らねぇんじゃねぇかな……」
ヴィクトリーは、エリクサーの入った瓶を持って揺らす。それを聞いたソニアは、「あはは」と苦笑いした。
「でも、薬だから味に難があるのよね……美味しくても隠れて飲む人が居そうで困るし……」
超貴重品であり、傷も気力も全回復して更には満腹にもなるという仙豆。製法が確立されている薬であり、体力と魔力を全回復するエリクサー。
使い所を見極め、臨機応変に使用するのが一番だろう。
「メイアにも会ってあげて下さいね。彼女は責任を感じ、家に閉じこもってしまいました……」
「いくら洗脳されてたって言っても、ショックだろうね。町の人達にも顔を合わせづらいだろうし……」
「変態だしな……」
ルカとヴィクトリーは、息を吐いて互いを見る。お互いに「やれやれだぜ」と言いたげな表情をしていた。
「本当に、ありがとうございました。我々一同、あなた方のご武運をお祈りしております」
人魚は頭を下げて、ルカに礼を言ったのだった。
※
先程の人魚に言われたままに、メイアの所を訪ねたが……彼女は、未だに落ち込んでいるようだった。そんな彼女の傍には、小さな男の子がいる。
「メイア、元気だしてよー!」
そう言う彼に、メイアは頭を撫でられている。何だか立場が逆な気もするが、落ち込んでるので仕方ない。
「もしかして、メイアさんのお子さん?」
まずソニアが、少年を見てそんな事を言った。
「確か新婚って聞いたけど、こんなに大きい子が……」
「ボク、25歳だよー! メイアの夫だよー!」
「ああ、うん……察した……」
ソニアは、苦笑いした……
「あなた達には、随分とご迷惑をおかけしました。洗脳を解いて下さり、感謝致します」
メイアは、ルカ達に頭を下げる。
「南海の女王が衰弱し切っている事は、皆には伏せてあります。どうか、女王様の身柄をお預かり下さい……」
そう言ってメイアが出したのは、スルメ……もとい、カラカラに干からびたクラーケンだった。
「おいしそう……」
アリスがさっそく、涎を垂らして出てくる。
「ダメだよ、元に戻してあげなくちゃ!」
一応ルカが受け取り、ペラペラとスルメを持つ。
「……水に漬けても、戻らないよね?」
「特殊な儀式を行い、魔力を与えねばなるまい。今の我々には、その力は無いだろうな……」
アリスは真面目な顔に戻り、カラカラになったクラーケンをしげしげと見ている……かと思いきや、くんくんと匂いを嗅いでヨダレを垂らしていた。
「おいしそう……」
ちなみにヨダレを垂らしてそんな事を言ってるアリスの言葉からして、死んでないのは確からしい。その証拠に、ヴィクトリーの気の察知にも引っかかる。
「フェニックスの尾でもダメそうだな……エリクサーや仙豆も、こんなんじゃ食えねぇだろうし……」
「じゃあ、大切に保管しておくか。うっかり食べかねないし……」
ルカはスルメを、道具入れの中にしまい込んだ……
「今回の一件、やはり私にも大きな責任があります。私が欲望に飲まれたから、あれほどの大事となったのです。それに……元凶となったあの淫魔。彼女を放置し、私のような者を増やすわけにもいきません。あなた方は、何か因縁があると見ました」
今の所、ハーピーの村に病気撒いたり船に強襲してきたりしか被害はないが……その内、もっと大きな被害が出る筈だ。
「この私も、仲間に加えて貰えませんか?」
「俺はどっちでもいいけど……ルカ、どうすんだ?」
「僕は構わないよ……みんなもいいよね?」
他のメンバーも頷いた。
「ありがとうございます! 回復なら、私にお任せ下さいね!」
しかし、少年が泣きそうな顔でメイアを見ていた。
「メイア、行っちゃうの……? やだよー!」
「旦那様……私は責任を取らなければなりません。それに、必ず旦那様の元に戻ってきますよ」
メイアは一旦、少年の目線にまでしゃがんて、その肩を叩く。
「旦那様はれっきとした成人。私が戻るまで、立派にやっていけるはずですから」
「うん、分かった……メイアが帰ってくるまで、がんばるから!」
少年とメイアはぎゅっと抱き合ってから、キスした。
「ああっ……」
「な、なんと大胆な……」
ソニアとアリスはそう言いながらも、ガン見している。
「……あいつは前線に出さねぇ方が良さそうだな」
「そうだね……ポケット魔王城で、傷ついた仲間の医療を担当してもらうよ」
男二人は、話し合っている。
「……」
「zzz……」
プロメスティンとヌルコは、眠たそうだ……というより、ヌルコは既に寝ている。
メイアは、少年としっかり抱き合ってから、ルカ達に向いた。
「……それでは、今後お世話になりますね。さあ、行きましょう!」
メイアも、新たにポケット魔王城の一員に加わった。
※
これで、ナタリアポートでの事件は解決した。
やはりサキュバス三姉妹の目的も、凶悪化の目的も分からないまんまだが、一応これで何も起きずに済む筈だ。
「よーし……次は、どこに行くんだ?」
「大聖堂サン・イリアだよ。そこで白兎と父さんの情報集めをしないとね」
既に、新たな旅路は決まっているようだ。