もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

52 / 183
サン・イリア

 ナタリアポートで、人魚の連続失踪事件を解決したルカ達が次に向かったのは、サン・イリアだった。

 

「うわぁ、すごい……ここがサン・イリアか……」

「ひゃ〜……」

 

 城下町の入口に立ったルカとヴィクトリーは、その荘厳さと街の規模に圧倒された。

 

 ここはサン・イリア大聖堂を中心に、城下町が広がっている国だ。街は活気に溢れ、ちょうど昼飯時の今は食い物のいい匂いが漂っている。そんな街の奥には、サン・イリアの威厳と格を象徴するかのように巨大な城がそびえていた。

 

「荘厳よね……私、一度ここに礼拝に来たかったのよ」

 

 目を輝かせながら言う、ソニア。そんな彼女の背後の男二人は、同時に口を開いた。

 

「そう言えばソニア、僧侶だったね……」

「そう言やおめぇ、僧侶だったな」

「ちょっと、何で被るのよ!! 私を棍棒か何かと勘違いしてない!? 地元じゃ清楚でおしとやかな神殿僧侶なんだからね!」

「そのぐらいにしておけ、ドアホめ……」

 

 男二人に向かってギャーギャー言うソニアを、アリスが押さえた。

 

「さぁ、ここで情報を集めるぞ。聞くべき情報は、白兎と貴様の父親……サン・イリア王にも、会わねばならんな」

「法王様は、冒険者には快く謁見してくれるっていう話だよね。その分待ち時間はちょっと長いみたいだけど……」

「じゃあ城下町で聞き込みをした後、法王様に謁見よね。さぁ、行きましょー!」

「きゅきゅ〜!」

 

 ルカ達は解散し、まずは情報集めにかかった……

 

 

 残念ながらこの旅に繋がりそうな情報は、特に無かった。

 

 賑わっている街並みには似合わず、セントラ大陸の大戦の準備に追われている様子が気になる所だった。

 

 それに、北のお化け屋敷やフェアリーが出る不思議な森……更に、ミスリルという鉱石が取れるというアモス山という所と、なんか嫌な感じの村が二つぐらいあるのは分かった。

 

 ミスリルの採取には許可が居るらしいが、装備を強くしたいので是非とも行ってみたい所だ。

 

 しかし、ルカの父親の事などの情報は無さそうだ。これには、アリスも落胆する。

 

「結局、城下町では大した情報は無かったな。仕方ない、サン・イリア王の情報網に期待するか……」

 

 ルカの父は、昔は名の知れた勇者だったはず。王様なら、何か知ってるかもしれない。

 

「ホントにこんな駆け出しの冒険者パーティに謁見してくれんのか?」

 

 疑問が拭えないヴィクトリーに、ソニアが振り向く。

 

「当然よ、サン・イリア法王様は寛大で知られてるんだから! きっと、私達にも道を指し示してくれるはず!」

「法王から何かしらの話を聞ければ僥倖だろうな。何も無ければ手探りするしか無いが……」

 

 ソニアの横で、一抹の不安を抱えるアリスがそんな事を言った。

 

「古くからの人間ならば、古い人間の情報もあるはずです。それが名の知れた勇者ならば尚更でしょう。期待してもいいでしょう」

「きゅーきゅ!」

 

 プロメスティンが言い、ヌルコも便乗するように鳴く。

 

「そうか、プロメスティンが言うなら期待できそうだな!」

「君のプロメスティンへの全幅の信頼は何なんだ……」

 

 ルカ達は話しながら、大聖堂へと入ったのだった。

 

 

「法王猊下との謁見をご希望でしょうか」

 

 早速、衛兵が声を掛けてきた。

 

「洗礼を受けているなら、出身地と洗礼年月日をお願いします」

 

 ルカは衛兵に応え、出身地と洗礼年月日を言う……

 

「……めんどくせぇな、ここ」

「シッ!」

 

 ヴィクトリーは、軽い気持ちで呟いたらソニアに怒られてしまった。

 

「はいはい、ちゃんとリストに載っていますね……あれ、これは……特別謁見許可!?」

 

 衛兵はそう言いながら目をぱちくりさせ、ルカ達を見る。

 

「えっと、こちらにどうぞ。猊下は、最優先であなた達にお会いになるそうです」

「ああ、そっか……」

 

 ソニアは、思い出したように呟く。なんの事か分からないヴィクトリーは、彼女の方へ振り向く。

 

「心当たりあるんか?」

「覚えてないの? 洗礼でイリアス様が降臨された話、上の人は知ってるのよ。VIP待遇とか、ちょっとキモチいい……」

 

 そう言えば、そんな事もあった。確かあの時、洗礼とやらはされてなかったが自分の名前も呼ばれていた筈だ。

 

「衛兵、ヴィクトリーって奴は載ってねぇか?」

「あ、はい! 載ってます! しかもルカ殿の隣で、これもルカ殿と同じく特別謁見許可があります!」

 

 なんと、自分にもルカと同じ区分の謁見許可があるらしい。洗礼されてない旅人まで名前を把握して会って話がしたいとは……これは、なかなか()()()()な事になってきた。

 

「じゃあ、そいつは俺だ」

「な、なんと! では、ルカ殿と共にお願いします」

 

 衛兵の案内で、サン・イリア王の所に行く。法王との謁見が、こんなにも早く叶うのは幸運な事だ。

 

 そう思いながら歩いてると、あっという間に王の間。玉座には、いかにもそれらしき老人の姿があった。

 

「私がペテロ14世、このサン・イリアを統治している」

 

 年寄りで物腰柔らかではあるが、その顔は寛大さを感じさせ、なおかつ王としての風格もある。法王とだけあって、威厳を感じさせる人間だ。

 

「お主達の洗礼の際、イリアス様が降臨された話も聞いている」

「法王様へのご拝謁、誠に光栄の限りです。じきじきのお目通り、なによりの喜びと……」

 

 ソニアがいつの間にか正装で長々と話している……が、アリスが割って入ってきた。

 

「へりくだった挨拶は後にして、さっそく要件だ。王よ、白兎という魔物に関して情報はないか?」

「白兎……残念ながら、聞いたことはないな。後に文献をあたってみるが、おそらく何もなかろう」

「まぁ、それもそうか……魔王にさえ秘中の秘、人間に伝承が残っているはずもない」

 

 白兎の事は、やはり収穫無し。こればかりは案件が案件なので、やはり仕方ないのだろう。

 

「じゃあ、ルカの父ちゃんのマルケルスって奴は知ってっか?」

「ちょっとヴィクトリー! 法王様にその口の効き方は失礼よ!」

「あっ、ごめん、えっと……し、知ってますか?」

 

 ヴィクトリーの質問に、サン・イリア王が頷く。

 

「別に構わんと言うのに……ふむ、勇者マルケルスか……彼については、色々と調査がなされた。数年前の、私に対する暗殺事件があったからな」

「そうか、法王様の暗殺未遂事件で……」

「暗殺未遂事件……?」

 

 法王暗殺事件……ヴィクトリーが来るちょっと前に、この爺さんの命を狙って爆弾を使った奴がいるらしい。

 

 その時に疑われたのが、ルカとソニアを育てたラザロという男だ。イリアスヴィルで世話になった時に、一度すれ違った事がある。腕がちょっと曲がった、ニヒルな感じのおっさんだった。

 

「ラザロおじさんが疑われたから、その周囲の人物の調査も……もちろん、ラザロおじさんは無実だけど。本当、誤解されやすい人だから……」

「ラザロは、君達の育ての親も同然だったな」

 

 サン・イリア王はルカとソニアを見て、そう言った。

 

「なんとも数奇な縁だが、今はあまり関係あるまい……その際の調査で得られた情報なのだが、おそらく君達の知らない事実はないはずだ。彼は品行方正で、その旅において多くの人を助けている。まったく怪しいところはない、勇者の鑑という事だ。しかし数年前に単独で旅に出て、その後の足取りは不明……そういう事になっている」

「確かに、どれも周知の情報だな。二回目の旅に出るまでは、不審な点はないということか」

 

 アリスやサン・イリア法王の言う通り……一回目の旅は普通の冒険者パーティといった感じだった。東のタルタロスで渡った異世界の時にも、それは確かな事だと分かっている。

 

「しかし最近において、何ヶ所かで目撃証言があるのだ。イリアス大陸東、そしてサバサのタルタロス……その近辺において、彼の姿が目撃されている」

「やっぱりタルタロスか……」

「またタルタロスかよ……」

 

 タルタロス……やはり、この旅には切っても切れないものらしい。

 

「やはり、異世界を行き来していたのでしょうか。それはいったい、何のために……」

 

 プロメスティンはそう言って、顎に指を当てて考え込む。

 

 マルケルスは、異世界に渡って……いったい、何をしようとしているのか。それとも、何かしている最中なのか……目撃情報だけあっても、謎は謎のままである。

 

「それ以外に、ひとつ気になる目撃談があるのだ。このサン・イリア城の地下図書館で、彼を見た者がいる」

「えっ、ここで!? それはいつの事ですか……?」

「一年ほど前の事だ。しかも彼は、地下図書館に一冊の本を寄贈していった。『四精霊信仰とその源流』という古書だが……その意図も、全く定かではないのだ」

「精霊信仰の本を置いていっただと……? それは、ずいぶん奇妙な話だな」

「きゅー! きゅきゅきゅー!」

 

 精霊信仰という言葉に、やけに反応するヌルコ。可愛いのでソニアがその頭を撫でるが、その横でヴィクトリーはきょとんとした顔になってる。

 

「精霊信仰……なんだそりゃ?」

「読んで字のごとくだ。火、水、風、土……その四大の力を司る精霊を、信仰する文化がこの世界にあったのだ。イリアス信仰が浸透してからは廃れて久しいと思ったが、文献が現存するとはな……」

 

 アリスの説明に、ヴィクトリーは「はえー」と、分かったような分からないような返答。

 

「その本って、今もあるんですか?」

 

 流れで聞くヴィクトリーにサン・イリア王は頷き、ウィンッと首を向けた。

 

「今も図書館の最奥に保管されているはず。親族であるルカに譲るのは、全く問題ないが……」

 

 そこまで言って、その顔がどんよりとした顔になった。

 

「頭の痛いことに、地下図書館は魔物に占拠されている。事実上のダンジョンと化し、立ち入りも難しい状況なのだ」

「それも、近年の異変の影響だろうな。イリアス信仰の膝元でさえそんな事態とは、無様な話だ」

 

 王城の地下ですら、魔物が蔓延(はびこ)るダンジョンと化す……異変の影響は、やはり深刻だ。

 

「それじゃあ、僕達が取りに行きます!」

「なぁに、本を取りに行くだけさ! 簡単だ!」

 

 ルカとヴィクトリーは、気合いを入れるようにそう言った。

 

「うむ、気を付けるがいい。何かいい情報が得られるよう、祈っているよ」

「よし、さっそく行くぞ! 何かルカあてのメッセージがあるかもしれん!」

「あの、ちょっと待ってよ」

 

 急ぐアリスを、ソニアが止めた。

 

「私達の要件は済んだけど、法王様もなにかお話があるんじゃ……」

「うむ、少し頼みたい事があるのだが……まずは、お主達の要件を済ませるがいい。例の本を手に入れた後、あらためて来て欲しい。その際に、私からの要件について話そう」

「分かりました。それでは、また来ますね」

「きゅきゅー!」

「よぉし、とっとと取って、法王様の頼みも聞いてやろうぜ!」

 

 ルカ達は、地下図書館へ向かうのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。